春画を売ったら王子たちに食べられた

四季

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(レイーシャさま、戻って来たかなあ)

 今日はレイーシャさまが会いに来てくれるかなっと朝からウキウキしている。

「リーナ、騎士さまがまた来たよ」

 ハンナおばさんが困った顔で、里奈を呼びに来た。

(レイーシャさま?)

 畳みかけの洗濯物を急いで畳んで入り口へ向かう。

「リーナ、本当に騎士さまは絵を見せてくれるだけだよね。決して恋愛的な気持ちはないのよね?」

(コーディーさまだ……)

 教会でメリーナさまに会った日以来、コーディーさまが里奈に会いに来た。そして絵を見に誘った。彼とどこかに一緒に行くのは嫌だったけれど、絵画を見たかったから毎回付いて行った。
 教会の中は広くて様々な絵画や壁画や彫刻があった。

 コーディーさまの口利きで壁画を描いる画家たちとも顔見知りになった。『均衡を司る女神』を描いている画家のいる足台まで登って、隣に座って彼の作業を見せてもらった。
 壁に漆喰をたっぷり塗って石灰水で溶いた顔料を塗りこむフレスコ画だった。色彩の組み合わせが独特でずっと見ていて飽きなかった。

 画家も里奈が非人なのに、丁寧に絵について教えてくれた。大体、時間を忘れて絵に夢中だった里奈をコーディーさまが帰る時間を教える。
 コーディーさまは大体里奈の近くにいるが、たまに席を外す。その時は、「絶対にここから動くな」と言う。

「うん、絵を見せてもらっているだけよ」

 ハンナお母さんはレイーシャさまが里奈に会いに来た時は、「恋愛感情を持ったらダメよ」と一度も言わなかったのに。コーディーさまとの関係には神経質になっている。里奈が王子さまとなにかあると思っていないんだろう。
 相変わらず、お城の人も国民たちもみんなレイーシャさまとメリーナさまの結婚式の話題で盛り上がっている。幼なじみの恋愛話は、どこの世界でも人の受けがいい。

 そしてポッと出の平凡な里奈がレイーシャさまとくっついたら、奪略愛で悪役だ。メリーナさまは変わった人だったけれど、本当にレイーシャさまのことが好きだ。レイーシャさまに会えない日が日に日に過ぎると、ますます彼が里奈に告白をしたのは夢だったのではと思う。それでメリーナさまから彼を取っていいのかと罪悪感が募る。

 洗濯場の建物の前にコーディーさまがいた。今日は紺色の近衛兵の騎士服を着ている。顔はレイーシャさまのようにイケメンじゃないけれど、整った顔立でなによりマッチョで体系がいい。

「土産」

 と、来る度に花を持ってくる。

「ありがとう」

 花は玄関口にある一輪挿しの挿す。

「行くぞ」

 毎日この会話の繰り返しだった。里奈は無言で彼の後ろを付いて行く。コーディーさまも里奈に合わせてゆっくり歩いてくれる。前、立ち止まった時に、彼も立ち止まって里奈を待っていた。
 コーディーさまは里奈がレイーシャさまと会わないか監視に来ているのだろうか……。

 教会の絵画を見た後に、いつものように彼の後に付いて帰ろうと礼拝堂を横切った。

「しずかに。帰還式の儀式をしている」

 礼拝堂の中央に人だかりがあった。

「危険な任務へ赴く騎士たちはここで家族や妻と出発式と帰還式をする」

 コーディーさまが小声で説明をしてくれたけれど、里奈の耳を素通りしていた。

「レイーシャさま……」

 レイーシャさまの腕にメリーナさまが手を添えて立っていた。遠目でも二人が仲睦まじいカップルに見えた。
 なにかメリーナさまがレイーシャさまに話しかけたら、彼はにっこりと返事をしていた。

「おい!」

 里奈は走って入り口から出た。もう何度も通っていたから、自分の寮までの道は分かっていた。

「おい! 待てよ!」

 コーディーさまにすぐに追いつかれて、腕を握られた。

「なんで急に走るんだ!?」

「レイーシャさまと、メリーナさまが……」

 続きの言葉が出ない。

「それが、どうしていきなり走り出すのだ?」

 コーディーさまはさっぱり意味が分からない顔をしている。

「二人は夫婦だ。メリーナさまはレイーシャさまの側室だ。近いうちに正式な妻になり、妃殿下になる」

 レイーシャさまはメリーナさまとは結婚しないと言っていた。でも、里奈がこの国のしきたりや仕組みが分からないから、騙されていたのかもしれない。

 次の日もレイーシャさまは里奈のところに来なかった。コーディーさまがいつものように里奈を誘いに来たが体調が悪いと言って断った。
 

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