18 / 49
2ー6
◇
レイーシャさまと両思いになれたと思ったのは、夢だったのだろうか。
いつものように食堂で朝食を取っていたら、「討伐して帰還したレイーシャさまとメリーナさまが、昨夜一緒に夜会へ出席した」と言う噂話でもちきりだった。
里奈はさっさと朝食をすませてハンナお母さんに街へ行くことを伝えて、建物から出た。お城で働いている使用人たちは週に一日休みがもらえる。
一週間や一ヶ月の日取りは日本とほとんど同じだった。
お城の裏門で馬車に乗った。裏門から出る馬車は、下男下女たちが使用するから安い。
街で3Pのエロ画をはじめ、合計で五枚の春画を売るつもりだ。今後、レイーシャさまとメリーナさまが幸せな家庭を築いていくなかで、近くで二人のことを見ることが辛くなったらハンナお母さんと田舎に移ろうと思う。だから絵が売れる時に稼ぐつもりだ。
お店に着くとすぐにいつもの応接間に通された。ワグナーさんは他のお客の接待をしているところだった。
『トントン』
返事をしようとしたらドアが開いた。
「ふ~ん。おまえが~」
部屋に入って来た男性が不躾に里奈の前に立ってジロジロ見た後に、二枚の紙を里奈の目の前に晒した。
「これを描いたのはおまえか?」
男の手にある紙は、里奈がワグナーさんに売ったエロ画だった。
「まさか子どもがこんな絵を描くとはな。おまえの親は知っているのか?
おまえはこんな絵を描いて売って治安を悪くしている。警備兵に報告し、おまえの親を呼び出してもらおう」
「ちょっ、ちょっと待って! 私は二十三歳の大人です!」
カーっとなって座っていた椅子から立ち上がり大声を出した。
「へ~、二十三歳。俺は二十六歳。三つ差だ。
おまえはこんな絵を描いて売って、世の中を混乱させていると分かっているのか?」
「混乱って……」
別にそんなに大量に描いて売っていないし……。どの世界にもどの時代にも春画なんてあるものじゃないの? 目の前の男の人の言っている意味が分からない。
「異国からのおまえには分からないか。
それより二十三歳でこんな絵を描いているのなら、おまえもそれなりの経験があると言うことだな」
「えっ?」
里奈は頭をあげて、目の前の男の顔を見上げた。
銀色の短髪がツンツン立っていて、でも一房ネズミの尻尾のように三つ編みされた後ろ髪が無造作に肩から前の方に流れていた。三つ編みは小さな藍色のリボンで結ばれいる。
メリーナさまが女性版の女神に愛された容姿をしているなら、この目の前の男の人は、男性版の女神に愛された容姿をしている。
どうして彼が部屋に入って来た時に彼の美しさに気づかなかったんだろう。
もし彼が男神と言われたら誰でも納得するだろう。普通の女性は彼の前に立つと自尊心が粉々に砕けるだろう。かけている眼鏡のせいで、冷酷な印象を受ける。
細い体は鍛えられていると分かるくらいがっちりしている。
彼はそこに立っているだけで、カリスマ性があふれていた。
彼の美しい姿形に圧倒されて目を反らしたくなったけれど、里奈にはできなかった。彼の瞳がレイーシャさまと同じだったから……。銀ブチのフレームの眼鏡で彼の端麗な顔や瞳の色を隠しているようだったが、それでも全然隠しきれていない。
大きな二重の切れ長の目に、里奈が大好きな海の色があった。コバルトブルーがキラキラ輝いていて、吸い込まれた。
「おまえがこの絵を描いたことを秘密にしておく。
そうだな、俺とこれをしよう。もちろん金は払う。そうだな、千テラでどうだ?」
脅しのようで違った。落ち込んでいた里奈には、よい誘いだった。もしかしたらレイーシャさまのことを諦められると思った。どのみち、身分差の恋愛なんて無理なんだ。
ましては王子と非人。
一生、結婚もできずに独身で生きないといけない非人なんだから、経験すませる機会なんていつくるか分からないし。
お金もたくさん貰えるし。
なによりはじめての人がイケメンだし。
……いろいろ理由を次から次に考えているけれど、里奈は目の前のコバルトブルーに惹かれていた。レイーシャさまと同じ目をしている彼に抱かれるなら幸せかもしれないと思った。
レイーシャさまと両思いになれたと思ったのは、夢だったのだろうか。
いつものように食堂で朝食を取っていたら、「討伐して帰還したレイーシャさまとメリーナさまが、昨夜一緒に夜会へ出席した」と言う噂話でもちきりだった。
里奈はさっさと朝食をすませてハンナお母さんに街へ行くことを伝えて、建物から出た。お城で働いている使用人たちは週に一日休みがもらえる。
一週間や一ヶ月の日取りは日本とほとんど同じだった。
お城の裏門で馬車に乗った。裏門から出る馬車は、下男下女たちが使用するから安い。
街で3Pのエロ画をはじめ、合計で五枚の春画を売るつもりだ。今後、レイーシャさまとメリーナさまが幸せな家庭を築いていくなかで、近くで二人のことを見ることが辛くなったらハンナお母さんと田舎に移ろうと思う。だから絵が売れる時に稼ぐつもりだ。
お店に着くとすぐにいつもの応接間に通された。ワグナーさんは他のお客の接待をしているところだった。
『トントン』
返事をしようとしたらドアが開いた。
「ふ~ん。おまえが~」
部屋に入って来た男性が不躾に里奈の前に立ってジロジロ見た後に、二枚の紙を里奈の目の前に晒した。
「これを描いたのはおまえか?」
男の手にある紙は、里奈がワグナーさんに売ったエロ画だった。
「まさか子どもがこんな絵を描くとはな。おまえの親は知っているのか?
おまえはこんな絵を描いて売って治安を悪くしている。警備兵に報告し、おまえの親を呼び出してもらおう」
「ちょっ、ちょっと待って! 私は二十三歳の大人です!」
カーっとなって座っていた椅子から立ち上がり大声を出した。
「へ~、二十三歳。俺は二十六歳。三つ差だ。
おまえはこんな絵を描いて売って、世の中を混乱させていると分かっているのか?」
「混乱って……」
別にそんなに大量に描いて売っていないし……。どの世界にもどの時代にも春画なんてあるものじゃないの? 目の前の男の人の言っている意味が分からない。
「異国からのおまえには分からないか。
それより二十三歳でこんな絵を描いているのなら、おまえもそれなりの経験があると言うことだな」
「えっ?」
里奈は頭をあげて、目の前の男の顔を見上げた。
銀色の短髪がツンツン立っていて、でも一房ネズミの尻尾のように三つ編みされた後ろ髪が無造作に肩から前の方に流れていた。三つ編みは小さな藍色のリボンで結ばれいる。
メリーナさまが女性版の女神に愛された容姿をしているなら、この目の前の男の人は、男性版の女神に愛された容姿をしている。
どうして彼が部屋に入って来た時に彼の美しさに気づかなかったんだろう。
もし彼が男神と言われたら誰でも納得するだろう。普通の女性は彼の前に立つと自尊心が粉々に砕けるだろう。かけている眼鏡のせいで、冷酷な印象を受ける。
細い体は鍛えられていると分かるくらいがっちりしている。
彼はそこに立っているだけで、カリスマ性があふれていた。
彼の美しい姿形に圧倒されて目を反らしたくなったけれど、里奈にはできなかった。彼の瞳がレイーシャさまと同じだったから……。銀ブチのフレームの眼鏡で彼の端麗な顔や瞳の色を隠しているようだったが、それでも全然隠しきれていない。
大きな二重の切れ長の目に、里奈が大好きな海の色があった。コバルトブルーがキラキラ輝いていて、吸い込まれた。
「おまえがこの絵を描いたことを秘密にしておく。
そうだな、俺とこれをしよう。もちろん金は払う。そうだな、千テラでどうだ?」
脅しのようで違った。落ち込んでいた里奈には、よい誘いだった。もしかしたらレイーシャさまのことを諦められると思った。どのみち、身分差の恋愛なんて無理なんだ。
ましては王子と非人。
一生、結婚もできずに独身で生きないといけない非人なんだから、経験すませる機会なんていつくるか分からないし。
お金もたくさん貰えるし。
なによりはじめての人がイケメンだし。
……いろいろ理由を次から次に考えているけれど、里奈は目の前のコバルトブルーに惹かれていた。レイーシャさまと同じ目をしている彼に抱かれるなら幸せかもしれないと思った。
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?