春画を売ったら王子たちに食べられた

四季

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 レイーシャさまと両思いになれたと思ったのは、夢だったのだろうか。
 いつものように食堂で朝食を取っていたら、「討伐して帰還したレイーシャさまとメリーナさまが、昨夜一緒に夜会へ出席した」と言う噂話でもちきりだった。

 里奈はさっさと朝食をすませてハンナお母さんに街へ行くことを伝えて、建物から出た。お城で働いている使用人たちは週に一日休みがもらえる。
 一週間や一ヶ月の日取りは日本とほとんど同じだった。

 お城の裏門で馬車に乗った。裏門から出る馬車は、下男下女たちが使用するから安い。

 街で3Pのエロ画をはじめ、合計で五枚の春画を売るつもりだ。今後、レイーシャさまとメリーナさまが幸せな家庭を築いていくなかで、近くで二人のことを見ることが辛くなったらハンナお母さんと田舎に移ろうと思う。だから絵が売れる時に稼ぐつもりだ。

 お店に着くとすぐにいつもの応接間に通された。ワグナーさんは他のお客の接待をしているところだった。
 
『トントン』

 返事をしようとしたらドアが開いた。

「ふ~ん。おまえが~」

 部屋に入って来た男性が不躾に里奈の前に立ってジロジロ見た後に、二枚の紙を里奈の目の前に晒した。

「これを描いたのはおまえか?」

 男の手にある紙は、里奈がワグナーさんに売ったエロ画だった。

「まさか子どもがこんな絵を描くとはな。おまえの親は知っているのか?
 おまえはこんな絵を描いて売って治安を悪くしている。警備兵に報告し、おまえの親を呼び出してもらおう」

「ちょっ、ちょっと待って! 私は二十三歳の大人です!」

 カーっとなって座っていた椅子から立ち上がり大声を出した。

「へ~、二十三歳。俺は二十六歳。三つ差だ。
 おまえはこんな絵を描いて売って、世の中を混乱させていると分かっているのか?」

「混乱って……」

 別にそんなに大量に描いて売っていないし……。どの世界にもどの時代にも春画なんてあるものじゃないの? 目の前の男の人の言っている意味が分からない。

「異国からのおまえには分からないか。
 それより二十三歳でこんな絵を描いているのなら、おまえもそれなりの経験があると言うことだな」

「えっ?」

 里奈は頭をあげて、目の前の男の顔を見上げた。
 銀色の短髪がツンツン立っていて、でも一房ネズミの尻尾のように三つ編みされた後ろ髪が無造作に肩から前の方に流れていた。三つ編みは小さな藍色のリボンで結ばれいる。
 メリーナさまが女性版の女神に愛された容姿をしているなら、この目の前の男の人は、男性版の女神に愛された容姿をしている。
 どうして彼が部屋に入って来た時に彼の美しさに気づかなかったんだろう。

 もし彼が男神と言われたら誰でも納得するだろう。普通の女性は彼の前に立つと自尊心が粉々に砕けるだろう。かけている眼鏡のせいで、冷酷な印象を受ける。
 細い体は鍛えられていると分かるくらいがっちりしている。

 彼はそこに立っているだけで、カリスマ性があふれていた。

 彼の美しい姿形に圧倒されて目を反らしたくなったけれど、里奈にはできなかった。彼の瞳がレイーシャさまと同じだったから……。銀ブチのフレームの眼鏡で彼の端麗な顔や瞳の色を隠しているようだったが、それでも全然隠しきれていない。
 大きな二重の切れ長の目に、里奈が大好きな海の色があった。コバルトブルーがキラキラ輝いていて、吸い込まれた。

「おまえがこの絵を描いたことを秘密にしておく。
 そうだな、俺とこれをしよう。もちろん金は払う。そうだな、千テラでどうだ?」

 脅しのようで違った。落ち込んでいた里奈には、よい誘いだった。もしかしたらレイーシャさまのことを諦められると思った。どのみち、身分差の恋愛なんて無理なんだ。

 ましては王子と非人。

 一生、結婚もできずに独身で生きないといけない非人なんだから、経験すませる機会なんていつくるか分からないし。
 お金もたくさん貰えるし。
 なによりはじめての人がイケメンだし。
 ……いろいろ理由を次から次に考えているけれど、里奈は目の前のコバルトブルーに惹かれていた。レイーシャさまと同じ目をしている彼に抱かれるなら幸せかもしれないと思った。

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