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2ー7◇R18注意◇
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◇
画廊商会の裏玄関から出ると、簡素だが綺麗な馬車があった。従者の男が扉を開いてくれて、里奈はコバルトブルーの手を借りて車内に乗った。
馬車で五分もせずに目的地に着いた。この世界に来てからお城をはじめ優美な建物をたくさん見た。でも今目の前にある建物は、さらに圧倒される。ホテルだろう。数人の客らしい人たちが、コバルトブルーの男の顔を見て頭を下げた。
馬車から出てすぐに、総支配人らしい人が待っていた。そして里奈の腕を握ってエスコートをしている男に丁寧に頭を下げて挨拶をして、そのまま建物の中に案内した。
ダンスホールのように中央に階段があった。まだ昼間だと言うのに室内のあっちこっちに魔力石が収まったシャンデリアでキラキラ輝いている。
里奈たちは二階の奥にあるスイートルームに案内された。広い空間は優雅な内装だった。とくに部屋の中央にどっしりと構えている一目見ても質のいいキングサイズベットが存在感があった。
里奈は部屋の中を目を輝かして見回した。ふんだんに使った真っ白いレースのカーテンやソファー、ベットカバー。その白い布にはパステルカラーで小さな花が詩刺繍されている。壁にもどこかの街の絵画が飾られている。
部屋の中を興味深そうにキョロキョロして見ている里奈を、男は止めることなく好きなようにさせていた。
彼は一緒に来た従者と一言話をしていた。
それからすぐに部屋の中に食事が運ばれて来た。
「この部屋が気に入ったか? ここは王都で一番のホテルのスイートルームだ。ここの料理もおいしいぞ。こっちに来て食べろ」
里奈を買った男は、レディーファーストのつもりなのか、里奈が座る椅子を引いて待っている。里奈はなにも言わずに椅子に座った。
彼は里奈の反対側に座ると次々と料理が運ばれた。
日本にいる時も貧乏でギリギリの生活をしていたから、料理のフルコースなんて食べたことがない。こっちに来てからもだ。
里奈を買ったならさっさとすればいいのに。
こうして一緒にご飯を食べたら、変な情が沸きそうで怖かった。
「あまり食がすすんでいないな。食事が気にいらないか?」
「いいえ、おいしいです……。あまり食べれなくて……」
体格のいいこの国の人に比べると、里奈の食は細い。なにより日本でも魚と野菜ばかりだったから、どうも肉食の文化に慣れずのますます食が細くなった。まあ、二十歳から横に増えやすくなったからいいんだけれど。
それより今は未知の経験を目の前に緊張していた。
「できるだけ、食べろ」
なんでそんなに里奈を気にしてくれるんだろう。
「これから持久戦になる」
「……」
目の前のイケメンが獣のように見えて、武者震いがする。
◇
嬉しいことに、部屋に大きなバスタブがあった。コバルトブルーの男は上級貴族だったようで、「『クリーン』を使えばいいではないか?」と言ったが、大きなお風呂に入った。
こっちに来て大きなお風呂に入ったことがない。寮では盥一杯のお湯を髪と全身を洗う分しかない。体を使うお風呂なんて、一体どれくらいの魔力を使うのだろう。
男は里奈の好きなようにさせてくれた。風呂場から出て、備え付けのバスローブを使う。部屋に戻ると男がいた。
何度見ても綺麗な人。さっきは一目で上等と分かるフロップコートを着ていたが、今は白いシャツにズボンで靴を履いていない。
「こっちへ来い。髪が濡れている」
ベットの端に腰掛けている男の前のおどおど近寄る。
「ドライ」
彼の手から熱い空気が出て、ふわりっと里奈の髪の毛が宙に浮いた。
「これでいい。もう少しここに寄れ。俺は『クリーン』で清浄したから綺麗だ」
里奈の髪の毛をとくように長い指先で撫でている。
「おまえが何人の男と寝たか知らないが、今は俺を見ろ」
と言ったと思ったら、里奈の体はすっぽりと男の腕の中に囚われていた。
「俺を見ろ。おまえの名前はなんだ? 俺の名前はレオンだ」
里奈はベットの横に立っているのに彼を見上げる形だ。日本でもこんなに背の高い人はないかったなあ。ほんと、この世界の人は背が高すぎる。
ってことは!? まさかあっちも大きい? サーと里奈の顔から血の気が下がっていく。
「み、ミイシャ」
異世界の名前なんて知らないから、友人の名前をとっさに口ずさんだ。
「ミイシャ? ありふれた名前をしているのだな。この国に連れて来られた時に、名前もこの国のをつけられたのか?
まあ、いい。
どうして体が固まっているぞ。
緊張しているのか? それともウブなふりするつもりか?」
さっきまで付けていた銀ブチの眼鏡を外して少しは冷酷で意地悪な顔が緩んで見えるようになったと思ったが全然違った。ギリシャ神話の女神も彼の足元にひれ伏したくなるくらい綺麗な顔が、里奈の顔を観察しながらじーっと見ている。
「媚薬が効いてきたころか」
もともとお酒を飲まないから、最初ワインをすすめられた時に断った。でも「いくら経験が豊富でも知らない他人とするのは緊張するだろう」と、媚薬入りのワインのグラスを渡された。
里奈もなにも考えずに未知の行為を楽しみたかったから、素直に媚薬入りのワインを飲んだ。
「あの絵のように俺たちも気持ちよくなろう」
画廊商会の裏玄関から出ると、簡素だが綺麗な馬車があった。従者の男が扉を開いてくれて、里奈はコバルトブルーの手を借りて車内に乗った。
馬車で五分もせずに目的地に着いた。この世界に来てからお城をはじめ優美な建物をたくさん見た。でも今目の前にある建物は、さらに圧倒される。ホテルだろう。数人の客らしい人たちが、コバルトブルーの男の顔を見て頭を下げた。
馬車から出てすぐに、総支配人らしい人が待っていた。そして里奈の腕を握ってエスコートをしている男に丁寧に頭を下げて挨拶をして、そのまま建物の中に案内した。
ダンスホールのように中央に階段があった。まだ昼間だと言うのに室内のあっちこっちに魔力石が収まったシャンデリアでキラキラ輝いている。
里奈たちは二階の奥にあるスイートルームに案内された。広い空間は優雅な内装だった。とくに部屋の中央にどっしりと構えている一目見ても質のいいキングサイズベットが存在感があった。
里奈は部屋の中を目を輝かして見回した。ふんだんに使った真っ白いレースのカーテンやソファー、ベットカバー。その白い布にはパステルカラーで小さな花が詩刺繍されている。壁にもどこかの街の絵画が飾られている。
部屋の中を興味深そうにキョロキョロして見ている里奈を、男は止めることなく好きなようにさせていた。
彼は一緒に来た従者と一言話をしていた。
それからすぐに部屋の中に食事が運ばれて来た。
「この部屋が気に入ったか? ここは王都で一番のホテルのスイートルームだ。ここの料理もおいしいぞ。こっちに来て食べろ」
里奈を買った男は、レディーファーストのつもりなのか、里奈が座る椅子を引いて待っている。里奈はなにも言わずに椅子に座った。
彼は里奈の反対側に座ると次々と料理が運ばれた。
日本にいる時も貧乏でギリギリの生活をしていたから、料理のフルコースなんて食べたことがない。こっちに来てからもだ。
里奈を買ったならさっさとすればいいのに。
こうして一緒にご飯を食べたら、変な情が沸きそうで怖かった。
「あまり食がすすんでいないな。食事が気にいらないか?」
「いいえ、おいしいです……。あまり食べれなくて……」
体格のいいこの国の人に比べると、里奈の食は細い。なにより日本でも魚と野菜ばかりだったから、どうも肉食の文化に慣れずのますます食が細くなった。まあ、二十歳から横に増えやすくなったからいいんだけれど。
それより今は未知の経験を目の前に緊張していた。
「できるだけ、食べろ」
なんでそんなに里奈を気にしてくれるんだろう。
「これから持久戦になる」
「……」
目の前のイケメンが獣のように見えて、武者震いがする。
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嬉しいことに、部屋に大きなバスタブがあった。コバルトブルーの男は上級貴族だったようで、「『クリーン』を使えばいいではないか?」と言ったが、大きなお風呂に入った。
こっちに来て大きなお風呂に入ったことがない。寮では盥一杯のお湯を髪と全身を洗う分しかない。体を使うお風呂なんて、一体どれくらいの魔力を使うのだろう。
男は里奈の好きなようにさせてくれた。風呂場から出て、備え付けのバスローブを使う。部屋に戻ると男がいた。
何度見ても綺麗な人。さっきは一目で上等と分かるフロップコートを着ていたが、今は白いシャツにズボンで靴を履いていない。
「こっちへ来い。髪が濡れている」
ベットの端に腰掛けている男の前のおどおど近寄る。
「ドライ」
彼の手から熱い空気が出て、ふわりっと里奈の髪の毛が宙に浮いた。
「これでいい。もう少しここに寄れ。俺は『クリーン』で清浄したから綺麗だ」
里奈の髪の毛をとくように長い指先で撫でている。
「おまえが何人の男と寝たか知らないが、今は俺を見ろ」
と言ったと思ったら、里奈の体はすっぽりと男の腕の中に囚われていた。
「俺を見ろ。おまえの名前はなんだ? 俺の名前はレオンだ」
里奈はベットの横に立っているのに彼を見上げる形だ。日本でもこんなに背の高い人はないかったなあ。ほんと、この世界の人は背が高すぎる。
ってことは!? まさかあっちも大きい? サーと里奈の顔から血の気が下がっていく。
「み、ミイシャ」
異世界の名前なんて知らないから、友人の名前をとっさに口ずさんだ。
「ミイシャ? ありふれた名前をしているのだな。この国に連れて来られた時に、名前もこの国のをつけられたのか?
まあ、いい。
どうして体が固まっているぞ。
緊張しているのか? それともウブなふりするつもりか?」
さっきまで付けていた銀ブチの眼鏡を外して少しは冷酷で意地悪な顔が緩んで見えるようになったと思ったが全然違った。ギリシャ神話の女神も彼の足元にひれ伏したくなるくらい綺麗な顔が、里奈の顔を観察しながらじーっと見ている。
「媚薬が効いてきたころか」
もともとお酒を飲まないから、最初ワインをすすめられた時に断った。でも「いくら経験が豊富でも知らない他人とするのは緊張するだろう」と、媚薬入りのワインのグラスを渡された。
里奈もなにも考えずに未知の行為を楽しみたかったから、素直に媚薬入りのワインを飲んだ。
「あの絵のように俺たちも気持ちよくなろう」
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