春画を売ったら王子たちに食べられた

四季

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 真っ暗な闇にチカチカ光が照らされた。
 里奈は自分が眠っているのか起きているのかわからずにいた。

(ここは、どこ?)

 目を開けているのか閉じているのか、自分が霊体になったのか中身のある人間なのかわからなかった。

『ここは、私のいる空間』

 声のする方を見ようとしても体がないし、どこから声がするかわかっていない。かと言って頭に直接テレパスされているわけでもない。

「均衡の女神、さま?」

 里奈も自分が声を出したのか、頭に浮かんだ言葉なのかはっきりしない。

『ああ、僕は、私は、おまえを呼んだ、均衡の女神』

『わしは地上の人の均衡を司る者。遠い昔、あたしたち天上人の者たちが地上人に恋した』

『天上人が地上人と結ばれると魔力を持つ者が産まれた』

 声は一つではなかった。男性のように太く低い声だったと思えば、子どものように甲高い声になったり、柔らかい母親のような声になったり、老人のようにかすれた声になったり、病人のように息耐えた声になったりした。

『天上人が地上に降りてこの世の理が崩れた。地上に魔力を持つ獣や産まれた。魔力が環境が汚染された』

『なにより天上人のように多くの魔力を持つ者も産まれた。魔力の多い者たちが国を造った』

『これ以上、地上にいる者が魔力を天上人より持つことを恐れた天上人が破滅の魔力を男の王族たちに移した』

 王族の魔力とは「破滅の魔力」と言うことなの?
 里奈は実態のないはずの体がブルッとふるえた。

『破滅の魔力を持つ者は子どもができない。ただ魔力の少ない者とだったらできる』

『魔力の少ない者は元々の地上人に近い者だ。ただここ百年、またこの世の理が崩れていった』

『魔力の少ない者が殺害され、破滅の魔力を持つ王族の数が減っていった』

 もともと天上人たちは強い魔力の力を持った王族を抑えるために、破滅の魔力を与えたなら、王族が地上から消えることはいいことではないのだろうか……。

『すでにこの世の理は少しづつ変化していった。だから、やっと落ち着いたこの世の均衡が崩れるわけにはいかない』

『魔力の少ない者や破滅の魔力を持つ王族がこの世から減ることは、この世の均衡を司る俺が許さない』

『よって、わてがおまえをこの世に引き込んだ』

「えっ?」

 普通異世界トリップで神様に呼ばれるのは、トリップ直後じゃない? どうして今こんなふうにネタバレするんだろう?
 まさか里奈は死んでまた二度目のトリップ最中とかって言わないよね。
 どんどん悪い方向に思考がいく。

『地上人はわたくしを敬うと言うならこの世の理を崩さないようにしろと、破滅の魔力を持つ者に伝えろ』

 里奈は神様の伝言係でこの世界に呼ばれたのだろうか……。

『魔力のない者が少なくなったからおまえがここへ来た』

「ちょっと、なんで私なんですか? ここに連れて来た責任って普通取るでしょう?」

 今すごく理不尽な気持ちでイライラしている。魔力なしで非人とバカにされて生活していた。それがこの世界の理を整えるために調整にと連れて来られたんだ。それって里奈が救世主じゃない? なのに、トリップ直後もピコピコに殺させられて、今だって殺され掛けているし。

(って、私、死んでいるの?)

『私はおまえをこの世界へ呼んでいない。おまえが勝手に入って来た。だが、俺様はピコピコを送ってお前を助けた』

「はあぁ~~? ピコピコって女神、さまのお使いなの~?」

 きっと実物の体があったら、里奈はマヌケな顔をしていると言う自身がある。
 里奈は特別選ばれてここに来たわけじゃなかった。特別な使命があって呼ばれたわけでもなかった。あばずれお母さんのお腹の中にいたころから続いていた不幸は、異世界まで続いていた。

 全然うれしくない事実だった。

『あんたにはピコピコをつける』

 パーっと目の前に輝くばかりの光があった。

「ちょっと!!」

『ゲホッ、ゲホッ』

 口の中に入ってくる水。だんだんと体が重くなっていく。プールに入った時に潜水して時と違っていた。なにより自分の体が自分のものじゃない気がした。

(私は……死ぬの……)
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