恋の織物

四季

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恋の戦い 1

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 私はマイシの後ろに座っている。タケルイとダニーとサファイアやスカイに乗った時は二人の前に座って、二人にもたれかかっていたけれど、マイシにそんなこと出来ない。大体私とマイシの身長ってほとんど同じだ。どこからどうみても私とマイシは女同士に見える。とっても微妙な夫婦。夫婦だけれど決してマイシには言わない。言ったら最後乙女を失ってしまう。早く安全地帯のダニーのところへ帰らないと。と言っても最近のダニーもなぜか色気が出まくっていて危険な感じがする。

 確かに愛されたいと望んだけれどそんな体の愛を望んでいなかったのに……。でも早くダニーに会って、自分の無事を教えてあげないと。メリエッシのことを伝えないと。どんな風に言えばいいの? 私は戻って、メリエッシの結婚式なんかに参列なんて出来ない! 私は彼女の顔を見ることなんて出来ない。


「ねえ、マイシ。どこへ飛んでいるか分かるの?」

 ちょっと気になったことを聞いた。

「そんなの知るか」

ーーが~ん。どうしよう。

「そんなんじゃいけないでしょ!」


「そんなんだったら、ミーナが案内すれよ。ミーナは外から来たから詳しく知っているだろう?」

 マイシが前でブツブツ言っている。

ーー確かにそうだけれど。

 確かに島の外に始めて出たマイシに道を知っていると思うのが間違いと知っているけれど。私にも道案内なんて出来ない。ミーユはあの村から出たことないし、美奈は異世界出身。私は神殿からほとんど出たことがなかった。なんと世間知らずの組み合わせ……。ダニーに頼りきりだった。タケルイにも頼っていた。私は二人が急に恋しくなる。二人にどんなに頼って生活していたんだろう。

「ブラックに任せるしかないね……」

「ああ、そうだな」

 マイシが静かな声で答える。はじめて意見が一致した感じ。

「また人がいる所に着いたら、人にヤイ国の王都の位置を聞けばいいよ」

 一応まともな異見だ。

「ヤイ国って、この国のことだよなあ。じっちゃんもヤイ国の騎士だったんだ」

 私はそのじっちゃんと言う人が、どうしてそんな風に島流しをされたか気になった。


『ギャーガーギャー』

「ど、どした! ブラックどうしたんだ!」

『ギャーガーギャー』

 急にブラックがすごい声を出して、猛スピードで前方へ急ぐ。私はそのスピードで体制が整えられないので、さっきまであんまりマイシと体を密着したくなかったけれどマイシにしがみ付く。マイシも体を倒してブラックにしがみ付く。
 ブラックや他の龍に乗っている時は、私達の周りには空気が平常だけれどスピードで体のバランスを保てない。

「ど、どうした!?」

 マイシがブラックに再度尋ねたが、今度はブラックは何も叫ばなかった。ただ前へものすごい早さで進む。

『ギャー』

ブラックが下へ降りて行く。ジェットコースターに乗っているようで気持ちが悪い。お腹の中身が段々と上の方へ逆流。唯一の救いが今朝の朝食以来何も口にしていないことだった。

「うそだろう……」

 やっとブラックの暴走が落ち着いた時に、マイシが体を起こして呟いた。

「あれは、何の生き物だ……お、恐ろしい」

 マイシが奮えているのが背中越しに伝わったので、私も周りを見る。

「えっ、魔獣!?」

 そこは海に面した町だった。私が始めて保護された町くらいの大きさ。でも小さいけれど栄えている町だった。海沿いに何匹かの魔物がいる。ミーユの村を襲った魔獣とも違う。顔は蛇のようで体も蛇だけれど、足か手がたこのように何本もある。何匹かはすでに町に侵入していて建物や人を無闇に襲っていた。

「キャー、助けて」

「逃げろ」

 一瞬ミーユのあの日の記憶がフラッシュバックした。ミーユの悲しみと恐怖が体を支配して固まる。

「おい、アレは龍だ! ブラックより小さいけれどアレは龍だ。ミーナ、あれは龍か? 何か人も乗っているぞ。あれは、龍騎士だ。彼が被害を最小限に抑えているんだ。オイ、ミーナ聞いているのか!?」

私はマイシの声で、はっと我に返った。

ーーあ、あれは、タケルイとサファイア?

「タケルイー、サファイアー」

 私は思いっきり大きな声で叫ぶ。

「タケルイ、タケルイ、タケルイ」

 でも魔獣との戦いに忙しいタケルイに私の声は届いていない。

「やっぱりお前の知り合いか? でも、あの龍やべーぞ。ほとんで力つきて、倒れかかっているぞ」

 マイシが焦った声で言った。確かに、サファイアが魔獣に押されぎみなのが分かる。

「マイシ。私をあの龍の近くに連れて行って!」

 タケルイが弱っているんだ。だからサファイアも弱っている。この一ヶ月、私とタケルイは離ればなれ。タケルイが私から力を受け取れなかった。それなのに、魔獣が出て来たから戦わないといけないんだ。

「ああ、分かった。ブラックよろしく」

 マイシがブラックに言った。

『ギャーギャー』

ブラックが叫ぶ。ブラックはタケルイの所へ向かう。その時に、一匹の魔獣が私達の前に立ちはだかった。

『ギューアー』

とブラックが奇妙な声を出したと思ったら、口から火が出た。

「っえ、龍って火吐くの?」

 マイシも驚いている。

「さあ……」

 私もあっけにとられる。目の前の魔獣は火が苦手のようで後ずさったけれど間に合わなかった。そしてあっけなく丸こげして倒れた。本当にあっけなく。さっきの恐怖もぱーとなくなった。目の前に倒れている魔獣はうなぎの蒲焼のような焦げた匂いがする。

「ブラック、つえー。このい調子でお願い」

 マイシがそう言うと、ブラックが『ギャー』と言って次々魔獣を倒していく。魔獣が次々倒されるのを見ていた人々もその場に固まってブラックを見ている。

戦いはあっけなく終わった。本当にそれしか言葉がない。

「ミーナか!?」

 結局タケルイの所へ行く前に、ブラックは魔獣を倒すことを先決にした。やっとタケルイの所へ行けると思った時に、空からダニーの声がした。

「ダニー、ダニー」

 
ダニーとスカイが空から降りてくる。私は嬉しくてダニーの名前を呼ぶ。本当はブラックから降りたいけれどブラックは空中に飛んでいる。

 スカイがブラックの横に並んだ。こうしてスカイとブラックが並ぶと大きさの違いが分かる。

「ミーナ、無事だったんですね」

 ダニーが言った。

「うん。ダニー、タケルイが! タケルイの所へ行かないと」

 私はダニーといろんなことを話たかったけれど、今はタケルイが心配。

「分かっています。ミーナ、早くタケルイの所へ行って下さい」


 ブラックとスカイが地面で倒れているサファイアの所へ降りた。サファイアの周りには人垣が出来ていたけど、私達が降り立つ所は自然と空間が出来た。

「タケルイー」

 私はブラックから飛び降りた。この時は、運動神経のいいミーユの体でよかったと思う。私の後にマイシが付いてくる。ダニーもスカイから降りて、タケルイの所へ行く。

「……っ!?」

 私はタケルイが倒れている所の近くに着いて立ち止まった。私のすぐ後ろに付いて来たマイシが、勢いよく私の背中へぶつかり、私は前に倒れそうになった。

「ミーナ、大丈夫?」

ダニーが倒れそうになった私を、捕まえてくれた。

「あっ、ありがとう」

「いいえ。どうしたのですか? タケルイの元へ行きましょう」

 ダニーが私の右腕を支えながら言った。

「う、うん、で、でも……」

「ん? どうかしましたか?」

 ダニーが私の見ている方向を見て尋ねる。

「ああ。タケルイは、ミーナなしでは生きていけません。きっと彼女はタケルイを心配しているだけですよ」

「う、うん」

 茶色の長い髪を上で綺麗に結って綺麗な服を着た女性が、倒れているタケルイを抱きしめて泣いていた。

「ほら行きますよ」

 私はダニーに少し引きずられながら歩く。マイシは何も言わずに、周りをきょろきょろしながら付いてくる。
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