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次の花嫁
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その様子を見守っていた招待客の皆さんからも口々に驚きの声が漏れる。
一花さんの最初の状態を知っているからこそ、自力で立ち上がったことが夢じゃ無いかと思ってしまう。
目の前の光景に茫然としつつ、尚孝さんに視線を向けると顔の前で両手をギュッと握り締め、祈っている様子が見える。
ああ……なるほど。尚孝さんだけはこのサプライズを知っていたというわけか……。
そういえば……
――谷垣くん、一花から週末の話を聞いたか?
会長がこの結婚式の話を尚孝さんに尋ねたときに身体を震わせていたな。
あの時はてっきりまだ会長に対して緊張感が抜けないものだとばかり思っていたが、その時にはすでに一花さんからこのサプライズの計画を告げられていたのなら、あの挙動不審な動きも全て納得がいく。
私にもこの計画を知られないようにするために必死だったんだろう。
素直で嘘がつけない尚孝さんだから、今日まできっと大変だっただろうな。
「征哉さん、僕……歩けるようになりま――わっ!!」
尚孝さんに笑みを向けていると、一花さんが歩いて会長に近づこうとしてそのまま倒れ込んでしまいそうになった。
けれど、そこはさすが会長だ。
一花さんの驚きの姿に茫然としつつも、その状況にはすぐに身体が動いていて一花さんの身体が床に倒れ込んでしまう前に、さっと腕の中に抱きしめていた。
数歩しか歩けなかったと謝っていたが、立ち上がるだけでもすごいことなのに歩き出すなんて思っても見なかったことだ。
しかもあの重い白無垢と草履という歩きやすいとはかけ離れた格好で自分から一歩踏み出そうと思えただけですごいとしか言いようがない。
招待客の皆さんもそれがわかっているから、すごかった、感動したという言葉が次々に飛んでくる。
一花さんはそれらの言葉に心から安堵の表情を向けていた。
いつもの会長なら、一花さんをこれ以上無理はさせないように抱きかかえて終わらせただろう。
だが、皆さんにお礼がしたいという一花さんの思いを受け止めたようで一花さんの身体を支えながら二人で一緒に立ち上がった。
腰にピッタリと腕を回し、しっかりと支えながら二人で立つと、美しい新郎新夫の姿に夥しいシャッター音が鳴り響いた。
その時の二人の表情はこの上なく綺麗で、幸せ満載の笑顔だった。
感動に包まれながら結婚式が終了し、ようやく私の肩の荷が下りた。
すぐに今日の主催者である天沢さんと恋人の千里さんが会長と一花さんの元に駆け寄った。
千里さんは先ほどの一花さんのサプライズに涙が止まらない様子。
あれほどの感動だったんだ、無理もない。
「あの、今日の結婚式のために私……これを作ったんです」
千里さんが持っていた紙袋から出したのは小さなブーケが二つ。
一つは一花さんの思い出のために。そしてもう一つは幸せのお裾分けのためらしい。
なるほど、ブーケトスか。和装だったからそれは考えてなかったな。
さすが千里さんだ。
「美しいドレスや着物で私たちの結婚式に花を添えてくださった皆さま。一花がブーケトスで幸せのお裾分けをしますので、既婚、未婚、未成年問わず、どうぞ中央にお集まりください」
会長の言葉に絢斗さんが賛同し、美しい花たちに中央に集まるように声をかけてくださった。
尚孝さんも絢斗さんの誘いに中央へ足を進める。
一気に中央が華やかになるが、その中でも尚孝さんの美しさは別格だ。
一体誰が一花さんのブーケを受け取るのか……。
楽しげな中央の花たちとは対照的に、スマホを構えるスーツの男たちには緊張が走る。
私も例に漏れず、スマホを構えて尚孝さんだけを映していた。
椅子に座ったままの一花さんが私たちに背を向けて座り、
「はーい。じゃあ、いきまーすっ!! えいっ!!」
と可愛らしい掛け声と共に小さなブーケを投げた。
その小さなブーケは風に乗ってリボンをはためかせながら吸い寄せられるように尚孝さんの腕の中にポスっと落ちた。
「ああーっ、尚孝さんだ! おめでとう!!」
みんなからの祝福の声に顔を真っ赤にしながらも嬉しそうな尚孝さんを見て、私は一瞬にして身体が動いた。
これだけの証人がいる前で、尚孝さんへの永遠の愛を誓おう。そう思ったのだ。
私は急いで尚孝さんに駆け寄り、片膝をついて手を伸ばした。
「これで、尚孝さんが次の花嫁ですね。私の花嫁になってください!」
あれほど騒がしかったその場は一瞬にして静寂が広がった。
しんと静まり返った中、
「はい。僕でよければ喜んで……」
私だけを見つめる尚孝さんの承諾の声が私の耳に入った。
と同時に、
「わぁー! おめでとう!!」
という祝福の声と大きな拍手が響き渡った。
ああ、今日は最高に幸せな日になったな。
一花さんの最初の状態を知っているからこそ、自力で立ち上がったことが夢じゃ無いかと思ってしまう。
目の前の光景に茫然としつつ、尚孝さんに視線を向けると顔の前で両手をギュッと握り締め、祈っている様子が見える。
ああ……なるほど。尚孝さんだけはこのサプライズを知っていたというわけか……。
そういえば……
――谷垣くん、一花から週末の話を聞いたか?
会長がこの結婚式の話を尚孝さんに尋ねたときに身体を震わせていたな。
あの時はてっきりまだ会長に対して緊張感が抜けないものだとばかり思っていたが、その時にはすでに一花さんからこのサプライズの計画を告げられていたのなら、あの挙動不審な動きも全て納得がいく。
私にもこの計画を知られないようにするために必死だったんだろう。
素直で嘘がつけない尚孝さんだから、今日まできっと大変だっただろうな。
「征哉さん、僕……歩けるようになりま――わっ!!」
尚孝さんに笑みを向けていると、一花さんが歩いて会長に近づこうとしてそのまま倒れ込んでしまいそうになった。
けれど、そこはさすが会長だ。
一花さんの驚きの姿に茫然としつつも、その状況にはすぐに身体が動いていて一花さんの身体が床に倒れ込んでしまう前に、さっと腕の中に抱きしめていた。
数歩しか歩けなかったと謝っていたが、立ち上がるだけでもすごいことなのに歩き出すなんて思っても見なかったことだ。
しかもあの重い白無垢と草履という歩きやすいとはかけ離れた格好で自分から一歩踏み出そうと思えただけですごいとしか言いようがない。
招待客の皆さんもそれがわかっているから、すごかった、感動したという言葉が次々に飛んでくる。
一花さんはそれらの言葉に心から安堵の表情を向けていた。
いつもの会長なら、一花さんをこれ以上無理はさせないように抱きかかえて終わらせただろう。
だが、皆さんにお礼がしたいという一花さんの思いを受け止めたようで一花さんの身体を支えながら二人で一緒に立ち上がった。
腰にピッタリと腕を回し、しっかりと支えながら二人で立つと、美しい新郎新夫の姿に夥しいシャッター音が鳴り響いた。
その時の二人の表情はこの上なく綺麗で、幸せ満載の笑顔だった。
感動に包まれながら結婚式が終了し、ようやく私の肩の荷が下りた。
すぐに今日の主催者である天沢さんと恋人の千里さんが会長と一花さんの元に駆け寄った。
千里さんは先ほどの一花さんのサプライズに涙が止まらない様子。
あれほどの感動だったんだ、無理もない。
「あの、今日の結婚式のために私……これを作ったんです」
千里さんが持っていた紙袋から出したのは小さなブーケが二つ。
一つは一花さんの思い出のために。そしてもう一つは幸せのお裾分けのためらしい。
なるほど、ブーケトスか。和装だったからそれは考えてなかったな。
さすが千里さんだ。
「美しいドレスや着物で私たちの結婚式に花を添えてくださった皆さま。一花がブーケトスで幸せのお裾分けをしますので、既婚、未婚、未成年問わず、どうぞ中央にお集まりください」
会長の言葉に絢斗さんが賛同し、美しい花たちに中央に集まるように声をかけてくださった。
尚孝さんも絢斗さんの誘いに中央へ足を進める。
一気に中央が華やかになるが、その中でも尚孝さんの美しさは別格だ。
一体誰が一花さんのブーケを受け取るのか……。
楽しげな中央の花たちとは対照的に、スマホを構えるスーツの男たちには緊張が走る。
私も例に漏れず、スマホを構えて尚孝さんだけを映していた。
椅子に座ったままの一花さんが私たちに背を向けて座り、
「はーい。じゃあ、いきまーすっ!! えいっ!!」
と可愛らしい掛け声と共に小さなブーケを投げた。
その小さなブーケは風に乗ってリボンをはためかせながら吸い寄せられるように尚孝さんの腕の中にポスっと落ちた。
「ああーっ、尚孝さんだ! おめでとう!!」
みんなからの祝福の声に顔を真っ赤にしながらも嬉しそうな尚孝さんを見て、私は一瞬にして身体が動いた。
これだけの証人がいる前で、尚孝さんへの永遠の愛を誓おう。そう思ったのだ。
私は急いで尚孝さんに駆け寄り、片膝をついて手を伸ばした。
「これで、尚孝さんが次の花嫁ですね。私の花嫁になってください!」
あれほど騒がしかったその場は一瞬にして静寂が広がった。
しんと静まり返った中、
「はい。僕でよければ喜んで……」
私だけを見つめる尚孝さんの承諾の声が私の耳に入った。
と同時に、
「わぁー! おめでとう!!」
という祝福の声と大きな拍手が響き渡った。
ああ、今日は最高に幸せな日になったな。
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