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それぞれの甘いキス
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満面の笑みを浮かべながら、会長と昇くんがこちらの席に戻ってきた。
次は誰だと期待が膨らむが、誰も立ちあがろうとする気配がない。
もしやキスはこれで終わりなのか?
これだけ期待しているというのに、これで終わりなのだとしたらそれは確実に罰ゲーム。
私はもちろん、蓮見さんも、甲斐先輩も、それに磯山先生も落胆するしかない。
私たち四人に諦めと絶望感が漂ったその時、突然フランがサークルから飛び出してきた。
そのまま一直線に蓮見さんに駆け寄って行ったかと思えば、蓮見さんの袖を噛んで引っ張り始めた。
蓮見さんの服は自分のブランドの一点物。
手間暇かけて作っている物だからかなりの値段がする物だろう。
普通ならすぐにでも引き離すところだが、優しい蓮見さんは全く気にする様子がない。
本当に度量が広い人だ。
そんなフランと蓮見さんの戯れを浅香さんが嬉しそうに見つめているのもとても印象的だった。
結局蓮見さんはフランの引っ張りに屈して、そのまま引っ張られて連れて行かれたのは浅香さんの目の前。
「あらあら、もしかしてフランは浅香さんにもキスを見せて欲しいんじゃないかしら?」
二人を揶揄うように未知子さんがいうと、フランは嬉しそうに大きな鳴き声を上げた。
その時の蓮見さんの嬉しそうなことと言ったら、私たちも思わず笑顔になってしまうほどだった。
「敬介……フランがこう言ってるよ」
普段私たちが聞くことのない、甘い囁きに浅香さんの顔が一気に赤くなった。
「なるほど、未知子さんの作戦か」
磯山先生の言葉に納得する。たとえ、あの四人でキスゲームが終わったのだとしても、こんなことをされては浅香さんも断れるわけがない。
浅香さんは蓮見さんの首に腕を回し、思いっきり背伸びをすると、そのまま自分の唇を蓮見さんの唇に当てた。
その大人のキスに、先ほどキスを終えたばかりの一花さんと直純くんから歓声が聞こえる。
尚孝さんは……ふふ、真っ赤な顔をしているな。
彼もまた大人のキスに魅了されたのかもしれない。
フランが二人を見て嬉しそうに吠えていたかと思ったら、今度は伊月さんが甲斐先輩の名前を呼んだ。
甲斐先輩はもうこのキスゲームも、蓮見さんたちの大人のキスで終わりだと思っていたんだろう。
驚きの声をあげながら、急いで駆け寄って行った。
真っ赤な顔で一生懸命背伸びをする伊月さんに、甲斐先輩の方が顔を近づけると二人の唇は甘く重なった。
その優しいキスに尚孝さんたちがうっとりしているのが見える。
すると、尚孝さんに絢斗さんが近づいて、声をかけているのがかすかに聞こえる。
もしかしたら私も、キスのチャンスが?
そんな期待しかない。
尚孝さんの視線がそっと私に向くのを見逃さず、笑顔で返すと尚孝さんは一気に顔を赤らめた。
そしてスッと立ち上がったかと思うと、私の名前を呼んでくれる。
呼ばれたことの喜びが隠せないまま、尚孝さんに駆け寄った。
「良かった。尚孝さん、ずっと待ってました」
どっしり構えるくらいの態度でいた方が男らしいと思われたかもしれないが、尚孝さんに呼ばれることだけをずっと考えていたことを伝えずにはいられなかった。
「あの、さっきのプロポーズ……嬉しかったです」
人前での突然のプロポーズをこんなにも喜んでくれて嬉しいとしか言いようがない。
「唯人さん、大好きです」
尚孝さんの心からの告白に幸せを感じながら、背伸びをする尚孝さんの唇にそっと自分のそれを当てた。
甘く柔らかな感触に至福のひと時を味わっていると、突然フランが大声で泣き始めた。
その声に驚いた尚孝さんの唇が離れてしまう。
せっかくの尚孝さんからのキスだから勿体無いと思ってしまったが、この続きは夜の楽しみにしておくとしよう。
「最後は、絢斗くんね」
そんな声が未知子さんから聞こえた。
「そうですよ、教授もしないと! 磯山先生がお待ちですよ!」
「熟年夫夫のキス、見せてください!」
「パパとあやちゃんのキス、見たいです!」
浅香さんも有原くんも、そして直純くんまで絢斗さんに訴えるものだから、絢斗さんは少し照れながらも磯山先生を見つめて呼びかけた。
途端、満面の笑みを浮かべた磯山先生はさっと絢斗さんに駆け寄って
「もう呼ばれないのかと心配したよ」
と冗談っぽく話しておられたが、きっと本心だろう。
絢斗さんの告白に嬉しそうな笑顔を見せた磯山先生がそっと顔を近づけてキスをする。
有原くんのいうように、これが熟年夫夫のキスなのかと見入ってしまうほど美しいキスにおもわずため息が漏れた。
私と尚孝さんも、磯山先生と絢斗さんのように愛を育んでいきたいものだ。
次は誰だと期待が膨らむが、誰も立ちあがろうとする気配がない。
もしやキスはこれで終わりなのか?
これだけ期待しているというのに、これで終わりなのだとしたらそれは確実に罰ゲーム。
私はもちろん、蓮見さんも、甲斐先輩も、それに磯山先生も落胆するしかない。
私たち四人に諦めと絶望感が漂ったその時、突然フランがサークルから飛び出してきた。
そのまま一直線に蓮見さんに駆け寄って行ったかと思えば、蓮見さんの袖を噛んで引っ張り始めた。
蓮見さんの服は自分のブランドの一点物。
手間暇かけて作っている物だからかなりの値段がする物だろう。
普通ならすぐにでも引き離すところだが、優しい蓮見さんは全く気にする様子がない。
本当に度量が広い人だ。
そんなフランと蓮見さんの戯れを浅香さんが嬉しそうに見つめているのもとても印象的だった。
結局蓮見さんはフランの引っ張りに屈して、そのまま引っ張られて連れて行かれたのは浅香さんの目の前。
「あらあら、もしかしてフランは浅香さんにもキスを見せて欲しいんじゃないかしら?」
二人を揶揄うように未知子さんがいうと、フランは嬉しそうに大きな鳴き声を上げた。
その時の蓮見さんの嬉しそうなことと言ったら、私たちも思わず笑顔になってしまうほどだった。
「敬介……フランがこう言ってるよ」
普段私たちが聞くことのない、甘い囁きに浅香さんの顔が一気に赤くなった。
「なるほど、未知子さんの作戦か」
磯山先生の言葉に納得する。たとえ、あの四人でキスゲームが終わったのだとしても、こんなことをされては浅香さんも断れるわけがない。
浅香さんは蓮見さんの首に腕を回し、思いっきり背伸びをすると、そのまま自分の唇を蓮見さんの唇に当てた。
その大人のキスに、先ほどキスを終えたばかりの一花さんと直純くんから歓声が聞こえる。
尚孝さんは……ふふ、真っ赤な顔をしているな。
彼もまた大人のキスに魅了されたのかもしれない。
フランが二人を見て嬉しそうに吠えていたかと思ったら、今度は伊月さんが甲斐先輩の名前を呼んだ。
甲斐先輩はもうこのキスゲームも、蓮見さんたちの大人のキスで終わりだと思っていたんだろう。
驚きの声をあげながら、急いで駆け寄って行った。
真っ赤な顔で一生懸命背伸びをする伊月さんに、甲斐先輩の方が顔を近づけると二人の唇は甘く重なった。
その優しいキスに尚孝さんたちがうっとりしているのが見える。
すると、尚孝さんに絢斗さんが近づいて、声をかけているのがかすかに聞こえる。
もしかしたら私も、キスのチャンスが?
そんな期待しかない。
尚孝さんの視線がそっと私に向くのを見逃さず、笑顔で返すと尚孝さんは一気に顔を赤らめた。
そしてスッと立ち上がったかと思うと、私の名前を呼んでくれる。
呼ばれたことの喜びが隠せないまま、尚孝さんに駆け寄った。
「良かった。尚孝さん、ずっと待ってました」
どっしり構えるくらいの態度でいた方が男らしいと思われたかもしれないが、尚孝さんに呼ばれることだけをずっと考えていたことを伝えずにはいられなかった。
「あの、さっきのプロポーズ……嬉しかったです」
人前での突然のプロポーズをこんなにも喜んでくれて嬉しいとしか言いようがない。
「唯人さん、大好きです」
尚孝さんの心からの告白に幸せを感じながら、背伸びをする尚孝さんの唇にそっと自分のそれを当てた。
甘く柔らかな感触に至福のひと時を味わっていると、突然フランが大声で泣き始めた。
その声に驚いた尚孝さんの唇が離れてしまう。
せっかくの尚孝さんからのキスだから勿体無いと思ってしまったが、この続きは夜の楽しみにしておくとしよう。
「最後は、絢斗くんね」
そんな声が未知子さんから聞こえた。
「そうですよ、教授もしないと! 磯山先生がお待ちですよ!」
「熟年夫夫のキス、見せてください!」
「パパとあやちゃんのキス、見たいです!」
浅香さんも有原くんも、そして直純くんまで絢斗さんに訴えるものだから、絢斗さんは少し照れながらも磯山先生を見つめて呼びかけた。
途端、満面の笑みを浮かべた磯山先生はさっと絢斗さんに駆け寄って
「もう呼ばれないのかと心配したよ」
と冗談っぽく話しておられたが、きっと本心だろう。
絢斗さんの告白に嬉しそうな笑顔を見せた磯山先生がそっと顔を近づけてキスをする。
有原くんのいうように、これが熟年夫夫のキスなのかと見入ってしまうほど美しいキスにおもわずため息が漏れた。
私と尚孝さんも、磯山先生と絢斗さんのように愛を育んでいきたいものだ。
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