ウブで真面目な理学療法士の初恋のお相手はセレブなイケメン敏腕秘書でした

波木真帆

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ようやくこれから……

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花たちが集まって賑やかに写真撮影をしている間、私たちはそれを邪魔しないように少し離れた場所に集まった。

会長が仕事の終わった天沢さんと麻生さん、そしてプリムローズの社長である佐久川さんも誘い、話を始めた。
天沢さんは慣れた様子で、麻生さんは日南さんの様子をチラチラと確認しながら、そして佐久川社長は少し緊張した様子を見せていた。

「そういえば、佐久川さん。うちの小石川と恋人になったとか?」

天沢さんからの名指しの質問に佐久川さんは少し狼狽えながら、恋人になったことを報告していた。
事後報告になったと謝っていたが、天沢さんは笑顔で返した。

「小石川はうちの従業員ですが、もう大人ですからプライベートなことには口は出すつもりはありません。昼休憩の時間もそれこそ仕事中ではありませんから。それにうちも報告しなければいけないようですし……」

そう言って、天沢さんは麻生さんに視線を向けた。

「麻生さんも佐久川さんに報告があるんでしょう?」

恋人になったのだろうと言いたげだが、先ほどからの心配そうに日南さんに向けるあの視線は恋人のそれとはまた違う気がする。いや、思いは寄せていることに間違いはないが、まだ少し距離感がある。

「麻生さんは彼が一仕事を終えるのを待っているんだよ。あとは時間の問題だ。麻生さん、そうでしょう?」

「ええ、まぁ。そうなればいいと思っていますが」

「大丈夫ですよ、彼の様子を見る限り麻生さんに好意は持っているようですし」

そんな会長の言葉に、麻生さんは安心したように笑っていた。
今日の主役であり、一番の幸せを味わっているだろう会長に言われれば安心するのも不思議はないかもしれない。

二組のカップルが幸せになるのは喜ばしいことだ。
だが会長秘書として支えてきた私からすると、気になるのはこれからのことだ。

佐久川社長と日南さんは東京にオフィスを構えて仕事をしていらっしゃる。
小石川さんと麻生さんはこの地を離れることはできない。
そうなれば、必然的に遠距離恋愛ということになるだろう。

私も尚孝さんという恋人の存在がいるからこそわかるが、思いが通じ合いながらも、離れた場所に住み続けるのはかなりの覚悟が必要になってくる。それを耐えることができるだろうか。

そこがどうしても気になって佐久川社長に尋ねてみた。

「私もそのことは考えていたんですがお互いにとっていい方法がなかなか思いつかなくて……」

やはり佐久川社長もその点は考えていたようだが、どちらにもいいアイディアというのはなかなか難しい。
とはいえ、生活のためには仕事を辞めるわけにはいかない。

当人たちだけでなく、私たちもみんな頭を抱えてしまっていたが、そこに蓮見さんが一言告げた。

「それならばいっそのこと、その会社を畳んだらいいんじゃないか?」

その言葉に一同呆気に取られたが、蓮見さんも会社経営をやっている身として、適当なことをいいはしないだろう。
そんなことを言うにはそれなりの理由があるに決まっている。

「蓮見さん、それはどういうことですか?」

佐久川社長も意見を聞きたいのだろう。
素直に尋ねると蓮見さんは真剣な表情で返した。

「この結婚式に参加するにあたって、プリムローズという会社を調べさせてもらったが、まだ会社としての規模は小さいものの、ウェディングプロデュースを手がけた相手からの評判ははすこぶるいい。それはつまり、式を挙げるカップルのニーズをしっかりと受け入れてそれを実行できる能力に長けているということだ。それならば、いろいろな店を相手にせずとも、この店に新たに婚礼部を作り、この店での結婚式に力を注げば良いのではないか? そうすれば、結婚式と食事会を兼ねた披露宴も打ち合わせがしやすくなるし、ここで式を挙げたいというカップルにも利点は大きい」

想像していなかった角度からの蓮見さんの言葉に目を丸くしつつも佐久川社長は素直に受け入れたようだ。
実際にいろんな店のプロデュースを仕掛けるよりも、一店舗に集中した方がやりやすいのは確かだろう。

その意見に天沢さんも納得し、双方合意の様子だ。
これならきっとこの意見でうまくいく。

しかもこの機会に、一定ランクの客には今までイリゼホテルだけでしか着ることができなかった蓮見さんのドレスを着られるようにしてくれるというのだから、いい目玉になるだろう。

話もまとまったところで、花たちの写真撮影も終わり、それぞれ宿泊所に向かうことになった。

車には全て荷物を詰め込み終わり、あとは保養所に向かうだけだ。

「私は挨拶をしてから駐車場に向かうから、二人は先に行っていていいぞ」

「わかりました。では失礼します」

会長たちと離れ、尚孝さんの元に向かう。

「尚孝さん、車に移動しましょうか」

「一花くんたちは一緒じゃなくていいんですか?」

「招待客の皆さんにご挨拶されてからくるそうです。ですから先に行って待っていましょう」

尚孝さんの腰を抱き、一緒に店を出た。

「尚孝さん、楽しかったですか?」

「はい。たくさんお友だちもできましたし、久しぶりに伊月くんとも会えてすごく楽しかったです」

「それじゃあ旅行が終わったら、伊月くんとまた会えるように甲斐先輩に話をしておきましょうか」

「わぁー! 嬉しいです!!」

無邪気に喜んでくれるが、尚孝さんの頭の中に私以外の人を入れるのはもうこれで終わりだ。

「その代わり、これからずっと私のことだけ考えていてくださいね。これから一週間は寝ても覚めても私だけの尚孝さんです」

「唯人さん……」

甘く囁けば一気に顔を赤らめて小さく頷いた。

ああ、可愛い。
ようやく私だけの尚孝さんになるんだ。
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