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番外編
支度部屋へ
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<side沙都>
「沙都? どうしたんだ?」
スマホを見ていると、寛さんが不思議そうに声をかけてきた。
私が画面を見てニマニマしてしまっていたから気になったのかもしれない。
「これ、見て」
見せたのは、珍しく卓が送ってくれた絢斗くんと直くんの可愛い戯れの動画。
いつも絢斗くんがいっぱい動画や写真を送ってくれるけれど、卓からは珍しい。
それくらい二人が可愛くてたまらないのだろう。
とはいえ、二人の顔しかほとんど写っていないのは、絢斗くんの寝巻き姿を見せたくないから。
私が寛さんに見せるのをわかっているのよね。
本当にこんなところまで独占欲を発揮するんだから。
「ほお、可愛いな」
「ええ。今日は史紀くんの結婚式だから直くんが早起きしたみたいよ。早くドレスが着たいみたい」
「ははっ。すっかりドレスが気に入ったようだな。保も可愛かったから、早く二人を会わせたいものだな」
本番のお楽しみということでそれぞれ仮試着は別の日だった。
今日、初めてドレス姿をお互いに見せ合うからそれはすごく楽しみ。
「保のドレス姿は実によく似合っていたから、しっかりと守ってやらなければいけないな」
「あなたったら」
保を箱入り娘のように囲うつもりなのかしら。
それくらい可愛いということなんだろうけど、それでも運命と出会ったらどうすることもできないわ。
朝食を終えて、みんなで銀座のイリゼホテルに向かう。
卓たちも毅たちも、それに征哉くんのところもまだ来ていない。
保の支度は子どもたちより時間がかかるからということで少し早めに来るように言われていた。
「私も着物に着替えてくるから保、また後で会いましょうね」
「は、はい」
寛さんはロビーにコーヒーを飲みに行き、私と保はそれぞれの支度室に入った。
部屋に入るとかけられていた着物の美しさに目を奪われる。
この歳になるといつも同じような色味の着物を選んでしまうものだから、今回は敬介くんにお任せと無理なお願いをしてしまった。けれど、おかげで当日までウキウキワクワクした気持ちで過ごせた。
そうしてお任せで選んでもらった着物は、淡い藤色のため息が出るほど美しい着物だった。
こんな素敵な着物を用意してくれるなんて……寛さんも惚れ直してくれるんじゃないかしら。
着付けは自分でしたけれど、メイクとヘアセットはお願いしたからいつもより若く見えるかもしれない。
鏡に映る、自分の姿を見ながら思わず笑みが溢れた。
「保はお支度終わったかしら?」
「あちらはもう少しかかりそうです」
「あら、そう。それなら私、ロビーに行ってくるわ。きっと卓たちも来ている頃だから」
私はひと足さきに支度室を出てロビーに向かった。
あちらこちらから視線を感じるけれど、私の視線は寛さんだけ。
こっちを向いてくれないかしら?
近づきながらじっと見つめると私の視線に気づいたみたい。
私を見つけた途端、一瞬固まったように見えたけれど、すぐにものすごい勢いでこちらに駆け寄ってきた。
「沙都」
「あなたに見せたくて急いできてしまったの。どうかしら?」
「いつも美しいが、今日はさらに輝いて見えるよ。誰にも見せずに閉じ込めておきたいくらいだ」
優しく抱きしめられるその温もりが嬉しい。
寛さんからここまでの独占欲を感じたのは久しぶりかもしれない。
「父さんたち、目立ちすぎですよ」
そう声をかけてきたのは、卓と毅。
「あら、二人ともいたのね」
ロビーに着いた途端、寛さんしか見えてなかったわ。
「お邪魔して悪いですが、そろそろ離れましょう」
少し呆れたように息子たちに言われて、彼らを連れて支度室に戻る。
するとちょうど支度室から保が出てきた。
「あ、お義父さん。お義母さん。それにお義兄さんも」
笑顔で出てきた保を見て、寛さんと息子たち二人は茫然とその場に立ち尽くしていた。
「沙都? どうしたんだ?」
スマホを見ていると、寛さんが不思議そうに声をかけてきた。
私が画面を見てニマニマしてしまっていたから気になったのかもしれない。
「これ、見て」
見せたのは、珍しく卓が送ってくれた絢斗くんと直くんの可愛い戯れの動画。
いつも絢斗くんがいっぱい動画や写真を送ってくれるけれど、卓からは珍しい。
それくらい二人が可愛くてたまらないのだろう。
とはいえ、二人の顔しかほとんど写っていないのは、絢斗くんの寝巻き姿を見せたくないから。
私が寛さんに見せるのをわかっているのよね。
本当にこんなところまで独占欲を発揮するんだから。
「ほお、可愛いな」
「ええ。今日は史紀くんの結婚式だから直くんが早起きしたみたいよ。早くドレスが着たいみたい」
「ははっ。すっかりドレスが気に入ったようだな。保も可愛かったから、早く二人を会わせたいものだな」
本番のお楽しみということでそれぞれ仮試着は別の日だった。
今日、初めてドレス姿をお互いに見せ合うからそれはすごく楽しみ。
「保のドレス姿は実によく似合っていたから、しっかりと守ってやらなければいけないな」
「あなたったら」
保を箱入り娘のように囲うつもりなのかしら。
それくらい可愛いということなんだろうけど、それでも運命と出会ったらどうすることもできないわ。
朝食を終えて、みんなで銀座のイリゼホテルに向かう。
卓たちも毅たちも、それに征哉くんのところもまだ来ていない。
保の支度は子どもたちより時間がかかるからということで少し早めに来るように言われていた。
「私も着物に着替えてくるから保、また後で会いましょうね」
「は、はい」
寛さんはロビーにコーヒーを飲みに行き、私と保はそれぞれの支度室に入った。
部屋に入るとかけられていた着物の美しさに目を奪われる。
この歳になるといつも同じような色味の着物を選んでしまうものだから、今回は敬介くんにお任せと無理なお願いをしてしまった。けれど、おかげで当日までウキウキワクワクした気持ちで過ごせた。
そうしてお任せで選んでもらった着物は、淡い藤色のため息が出るほど美しい着物だった。
こんな素敵な着物を用意してくれるなんて……寛さんも惚れ直してくれるんじゃないかしら。
着付けは自分でしたけれど、メイクとヘアセットはお願いしたからいつもより若く見えるかもしれない。
鏡に映る、自分の姿を見ながら思わず笑みが溢れた。
「保はお支度終わったかしら?」
「あちらはもう少しかかりそうです」
「あら、そう。それなら私、ロビーに行ってくるわ。きっと卓たちも来ている頃だから」
私はひと足さきに支度室を出てロビーに向かった。
あちらこちらから視線を感じるけれど、私の視線は寛さんだけ。
こっちを向いてくれないかしら?
近づきながらじっと見つめると私の視線に気づいたみたい。
私を見つけた途端、一瞬固まったように見えたけれど、すぐにものすごい勢いでこちらに駆け寄ってきた。
「沙都」
「あなたに見せたくて急いできてしまったの。どうかしら?」
「いつも美しいが、今日はさらに輝いて見えるよ。誰にも見せずに閉じ込めておきたいくらいだ」
優しく抱きしめられるその温もりが嬉しい。
寛さんからここまでの独占欲を感じたのは久しぶりかもしれない。
「父さんたち、目立ちすぎですよ」
そう声をかけてきたのは、卓と毅。
「あら、二人ともいたのね」
ロビーに着いた途端、寛さんしか見えてなかったわ。
「お邪魔して悪いですが、そろそろ離れましょう」
少し呆れたように息子たちに言われて、彼らを連れて支度室に戻る。
するとちょうど支度室から保が出てきた。
「あ、お義父さん。お義母さん。それにお義兄さんも」
笑顔で出てきた保を見て、寛さんと息子たち二人は茫然とその場に立ち尽くしていた。
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