虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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番外編

自信持っていいのかな

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とうとう今日は史紀さんの結婚式。
ものすごく楽しみだけど、そこでドレスを着ると思うと手放しでは喜べない自分がいる。

お義父さんもお義母さんも似合っていると言ってくれるけれど、いつも優しいことを言ってくれるからお世辞だと思う。
でも今更ドレスを着ないなんてことは言えないし、何より代わりに着る礼服を持っていない。

今日の結婚式が史紀さんたちだけというのが不幸中の幸いかもしれない。
それだけでも恥ずかしいけれど、みられてしまうのが少ければ少ないほどいい。

当日にぐだぐだ言っても仕方がない。
もうこうなったら観念して今日一日を乗り切るしかないんだ。

ものすごく似合っている絢斗さんの隣で恥ずかしい思いをするだろうけど、とりあえず笑顔で切り抜けよう。

お義父さんの運転でイリゼホテルに到着。
お義母さんと一緒に支度部屋に向かい、それぞれの部屋に入る。

楽しげなお義母さんと違って僕は少し憂鬱だ。
笑顔で切り抜けようなんておもっていたけれど、やっぱり緊張と恥じらいでなんとも言えない表情になってしまっている。

「おはようございます。本日お支度をお手伝いさせていただきますスタッフの真中まなかと申します。こちらはヘアセット担当の――」

メイクの担当さんも合わせて三人も僕のために集まってくれている。
男に女装させるなんてあまり経験もないだろう。申し訳ないくらいだ。

「あの、男の僕がドレスだの、メイクだのって申し訳ないです……あの、どんなふうになっても、それは僕の顔の問題で皆さんの腕じゃないですから気にしないでください」

ドレスを試着させてもらった時は可愛いかも……と思ったけれど、それは男の姿に見慣れていたからだ。
それに比べたら華やかなドレスは顔を綺麗に見せてくれる。

でも何度もドレスを見ると、似合わないんじゃないかという感想のほうが多くなってしまった。
きっと真中さんたちもそうおもっているはず。

そうおもったけれど、彼女たちは僕の言葉を聞いてふっと優しい笑顔を見せてくれた。

「心配されなくていいですよ。私たちはお客さまがお綺麗だとわかっていますから」

「そうですよ。私たちにお任せください」

「それでは早速始めましょうか」

笑顔の彼女たちに誘導され、まずはメイクからすることになった。

「色白で綺麗な肌ですね」

「そ、そうですか?」

「ええ、とってももっちりとしていて男性でここまで綺麗な人はなかなかみないですよ。良いお手入れをしていらっしゃいますね」

うっとりとした表情で褒めてくれる。
けれど正直言ってそんな念入りに手入れをしたことはない。

お義母さんに言われてお風呂上がりに化粧水と乳液をつけるようになったくらいだ。
これまで何もしていなかったから肌が驚いて効果を発揮してくれているのかもしれない。

メイクは何をされているのかもわからず、言われた通りに口を少し開けたり目を閉じたり開けたりするくらい。
そうしてあっという間にメイクが終わったみたいだ。

「さぁ、終わりましたよ」

ようやく鏡を見せられて、現れた美人に「えっ」と声が出た。

「これ、僕ですか?」

「ええ。でもほとんどメイクしてないんですよ。ナチュラルでこんな美人さんをメイクできて嬉しいです」

そんな言葉も耳に入らないとほど、綺麗な人が鏡にいて僕は驚きを隠せなかった。
そしてそんな状態のまま今度はヘアセット。

さすがに髪が短すぎてどうにもできないだろうとおもったけれど、スタッフさんが用意してくれたのは数種類のウイッグ。
髪の色が僕のにそっくりなのは先日のドレスの仮試着の時に確認されたからだろう。
顎くらいの長さから、三つ編みをふんわりさせたような長い物まである。

「当日のメイクとお客さまの状態を見てどれにしようか決めようとおもっていたんですが、これが良さそうですね」

そう言って鏡越しに僕の頭につけてくれたのは、三つ編みをふんわりさせたようなウイッグ。
まるで昔見た、塔の上にいる美女みたいな髪型だ。

それをどうやったのかわからないほど手際よく僕の地毛と融合させて、あっという間に仕上げてくれた。

「どうですか?」

鏡を見せられて、メイクの時よりも驚いた。

「うわ……っ! 女性みたい!」

「とてもお綺麗ですよ」

僕の反応に笑いながらも褒めてくれた。

これなら男だとバレないかもしれない。
すごいな、さすがイリゼホテルのスタッフさんだ。

そんなところに感心しながら、最後にドレス。

カーテンに囲われた試着室の中でドレス用の下着に着替える。
そして、真中さんに手伝ってもらいながらドレスに袖を通した。

仮試着の時よりもさらに僕の身体にフィットしている気がする。
それだけ細部までこだわって作ってくれたというのがわかる。

柔らかくてヒラヒラとした袖が肘のあたりまであるスレンダーラインのドレスは、丈がふくらはぎの半分くらいまであるから足が隠れていい。淡い青色のドレスがこの上なく綺麗だった。

「なんて綺麗なんでしょう……」

スタッフさんたちが見惚れてくれているのがわかる。

支度部屋に入った時はこんなにも綺麗になれるなんて思わなかった。

でも今なら自信を持てる。
これなら人前に出ても恥ずかしいとは思わないな。

「こんなに綺麗にしてくださってありがとうございます」

「いえ、元々お綺麗なんですよ」

そう言われたのは多分お世辞だろうけど、それでも嬉しかった。

お義母さんにもぜひ見せたくて、僕はそっと支度部屋をでた。
ロビーにいるらしいと聞いて行ってみようとおもったんだけど部屋を出たらちょうどお義母さんと、一緒にお義父さんとお義兄さんたちも一緒にいた。

「あ、お義父さん。お義母さん。それにお義兄さんも」

ちょうど会えて嬉しい。
そうおもって笑顔で声をかけると、お義父さんとお義兄さんたちは僕を見つめたままその場に立ち尽くしていた。
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