虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

文字の大きさ
115 / 122
番外編

世界一の幸せ者

<side卓>

姫のように美しくなって現れた保を家族で囲んでいると、

「おはようございます」

と背後から声が聞こえてきた。

「あら、櫻葉さんと征哉くん。一緒に来られたんですか?」

母がすぐに二人に声をかける。

「一花から着替えが終わった頃に来るように、と念を押されまして……少し遅れて来たらロビーで櫻葉会長とお会いしたんです」

私たちがロビーを離れた後に二人とも来たのだろう。ちょうどすれ違ったようだ。

「麻友子からもうそろそろ着替えが終わりそうだとメッセージをもらったので、こちらに来たんですよ。麻友子たちはまだ出て来ていないようですね」

「ええ。もうそろそろ出てくる頃じゃないかしら? その前に私たちの可愛い息子をお見せするわ。保、こちらにいらっしゃい。櫻葉さんと征哉くんに挨拶するわよ」

母は私たちの影になっていた保の手をとって、彼らの前に出した。

「お、おはようございます」

私たちに褒められて少しホッとしていた保だったが、家族以外の前に出されてかなり緊張しているようだ。
だが、櫻葉さんも征哉くんも保が現れると驚きの表情を浮かべたまま、その場に立ち尽くしてしまった。

「あ、あの……」

二人の様子に不安になったのだろう。
保が助けを求めるように、私たちをみる。
すると、父はすぐに保を安心させようと声をかけていた。

「大丈夫だよ。保。お二人とも保の美しさに見惚れているだけだ」

優しく肩に手を置く父を見て、櫻葉さんと征哉くんはようやく我に返ったようだ。

「いや、見違えたな。実に美しい。どこのお嬢さんかと思ったよ。なぁ、征哉くん」

「はい。本当に驚きました」

そう言いつつもまだ保に見惚れている節があるが彼からは一切恋愛の情は全く感じないから安心だ。
まぁ彼には一花くんがいるからそれも当然か。

そう思っていると、少し離れた部屋の扉が開くのが視界に入ってきた。

「せいくーん!」
「ちゅぐぅちゃ!」
「卓さん!」
「一眞さん!」
「毅さん!」

愛しい人の声に私だけでなく、そこにいた全員がすぐに反応をした。
私に向かってトコトコとかけてくる花びらドレスを纏った妖精とその後ろを見守りながらついてくる美しい女神の姿に私は昇天しつつも、可愛い妖精を抱き留めるためにその場に膝をついた。

「ちゅぐぅちゃ、なお。かーいー?」

ぽすっと飛び込んできて、小さな手で抱きついてくる。

「ああ、可愛いよ。本当に可愛い。直は可愛い妖精になったんだな」

愛おしさが込み上げて抱き上げると、私たちの様子を嬉しそうに見つめる絢斗と目があった。

「ふふ、卓さん。嬉しそう」

「ああ、幸せだからな。絢斗もおいで」

私が手を差し出すと笑顔で近づいてくる。
直くんを片手で抱きながら、絢斗をそっと抱き寄せる。

ああ、愛しい伴侶と愛しい子どもをこの腕に抱けるなんて……私は世界一の幸せ者だ。

<side毅>

姫のような出立ちで現れた保を見てただただ驚きしかない。
あの試着の時も美しくて見惚れてしまったが、今日のドレスはそれ以上だ。

父からも兄からも、この美しい弟を守らなければいけないとかなりのプレッシャーを与えられるが、この姿を見れば守らなければいけないのは当然だと思える。

私たちの後からやってきた櫻葉会長と征哉くんも保の美しさに驚いているくらいだからな。

海外のV.I.Pが泊まっているということで今日はV.I.Pの関係者と結婚式に招待されている人以外はこのホテルには入れない事になっていて本当に良かった。
保を不特定多数の人に見られたらそれこそ守るのが大変になるところだった。

「保。心配しないでいいよ。私がしっかりと守るから」

声をかけると、「毅お兄さん。ありがとうございます」と笑顔を見せた。
それが弟というよりは可愛い妹にしか見えないのだが、なんとか笑顔で返した。

少し離れた場所の扉が開く音が聞こえたと思ったら、直くんやら絢斗さんやらの声が聞こえてきた。
その後で私の耳にしっかりと飛び込んできたのは愛しい二葉の声。

「毅さん!」

その声に視線を向ければ、なんとも美しいドレスを身に纏った二葉が笑顔でこちらにきていた。

さっと駆け寄り二葉の手を取る。

「毅さん、どうかしら?」

「あまりにも美しすぎて緊張してしまうな。とてもよく似合っているよ」

抱き寄せると、二葉は嬉しそうに笑った。

「キスをしても、構わないかな?」

「ええ。少しだけなら……」

メイクを崩さないように、重ねるだけのキス。
それでも美しい妻とのキスにすっかり興奮してしまっている私がいた。
感想 250

あなたにおすすめの小説

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

恋人が出て行った

すずかけあおい
BL
同棲している恋人が書き置きを残して出て行った?話です。 ハッピーエンドです。 〔攻め〕素史(もとし)25歳 〔受け〕千温(ちはる)24歳

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

私の弟なのに

あんど もあ
ファンタジー
パン屋の娘マリーゼの恋人は、自警団のリートさん。だけど、リートには超ブラコンの姉ミラがいる。ミラの妨害はエスカレートしてきて……。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?