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保さんへの贈り物
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「お父さん、それはまたゆっくり考えたらいいよ。保さんだってすぐには決められないだろうし」
「んっ? ああ、そうだな」
このまま絢斗の実家で暮らすことが決まったらうちの両親の手前どうしようかと思ったが、絢斗のとりなしのおかげで助かった。
「ねぇ、卓さん。保さんは食事制限なんかはないんでしょう?」
「そうですね。主治医の林先生からはのんびりと身体を休ませることが一番の薬だと言われていますから、食事も特に制約はありません。むしろカロリーを摂ったほうがいいと言われているくらいです」
「それならよかった。保さん、次に来る時は甘いものを持ってくるわ。何か好きなものはあるかしら?」
秋穂さんは甘いものに目がないからな。絢斗は秋穂さんに似たのは間違いない。
「甘いものはなんでも好きです。あ、でも……先日、磯山先生が持ってきてくださったプリンが、ものすごく美味しかったです」
「あ、もしかしてfascinateの?」
「ああ。そうだよ、絢斗が好きなプリンを持っていったんだ」
「あら、あのプリンが好きなら好みは似てそうね。じゃあ、私のおすすめを持ってくるわ」
秋穂さんは嬉しそうに賢将さんに笑顔を向ける。秋穂さんが一人で来ることは絶対にないから賢将さんも一緒に買いに行くんだろう。
「それじゃあ、今日はそろそろ失礼しようか。訪問者がいっぱいで保さんも疲れただろう。ゆっくり休んだほうがいい」
「は、はい。ありがとうございます」
医師の賢将さんの言葉に保さんは素直に従った。
「それじゃあ、また来るわね」
絢斗と秋穂さんは保さんに手を振りつつ、私たちは部屋を出た。
少し離れた場所に移動して今日のお礼を伝えた。
「賢将さん、秋穂さん。今日は来てくださってありがとうございます」
「いや、私たちも可愛い孫と優しい息子に会えて良かったよ」
「息子、ですか?」
「ああ、直くんの父なのだから私たちの息子も同然だろう」
当然のようにそう言ってくれる懐の広さに嬉しくなる。
「賢将さんたちが保さんを息子だと思ってくださるのは嬉しいです」
「私たちは本当に彼を我が家に迎え入れてもいいと思っている。その点は寛さんたちと話し合わなければいけないな」
保さんの状態を考えれば、医師の賢将さんの家に住むのが安心なのかもしれないが、父と母のあの喜び具合を見ていると絢斗の実家に頼むことにしたとは言いづらい。
さて、どうしたものか……。
そんなことを考えていると、
「卓!」
後ろから私の名を呼ぶ声が聞こえた。
その声に、私はもちろん絢斗たちも一斉に振り向くとそこには父と母の姿。
「どうしたんですか?」
「買い物を終えたから早速持ってきたんだよ。沙都がすぐに保さんに着せたいというからな」
「だって、あの服のままじゃ可哀想だわ」
その言葉がグサリと胸に刺さる。
「絢斗くん、秋穂さんも一緒に渡しに行かない?」
「あ、行きたいです!」
「私も行きたいわ」
三人で早速渡しに行こうとしているが、さてどうする?
私と父と賢将さんの間に一瞬、ピリッとした空気が流れるが、私に任せろと言わんばかりの父の表情に私も賢将さんも頼むことにした。
そうして、父は三人と共に保さんの部屋に向かった。
<side寛>
沙都の買い物に付き合い、保さんのパジャマと羽織りのカーディガン。そして直くんにも可愛いクマの着ぐるみパジャマを買ってきた。直くんの着ぐるみパジャマは診察の邪魔にならないように上から下までスナップボタンで外れるから問題ない。
可愛い耳と尻尾もついていてハンガーにかかっているだけも可愛かったから早く着せたいものだ。
すぐにでも渡したいという沙都の気持ちに寄り添って病院に戻った。
この時間ならまだ卓たちもいる頃だろう。
そう思って、保さんの病棟に行くと予想通り卓たちの姿を見つけた。
沙都は絢斗くんと秋穂さんを誘い、保さんの部屋に行くという。
保さんが沙都たちに何かするとは一切考えていないが、やはり三人だけを部屋に行かせるわけにはいかない。
それは卓と賢将さんも同じ気持ちだったようだ。
私が三人に付き添うことに決めて、部屋に向かった。
何度も部屋に訪問して少し疲れさせているかもしれないと思ったが、部屋の中からは明るい声が聞こえた。
その声にホッとして扉を開け、名前を告げて中に入った。
「何度も来てしまって悪いね」
「い、いえ。そんなことは。お話ができて嬉しいです」
そう言ってくれる彼の表情は嘘をついているようには見えなかった。
「ありがとう。実はね、うちの沙都が君に贈り物を買ってきたんだよ」
「えっ? 私に、ですか?」
驚きの表情を見せる彼の前に沙都と絢斗くん、そして秋穂さんが現れて、彼を囲むように近づいた。
そして笑顔で紙袋を渡した。
「保さん、開けてみて」
「は、はい」
保さんは少し手を震わせながら紙袋から包みを取り出し、開けていく。
「わ! これ、パジャマですか?」
「正解!」
「わぁー! 綺麗な色!!」
「本当、沙都さん趣味がいいわ!」
色味をずっと悩んでいたから秋穂さんたちに褒められて沙都は嬉しそうだ。
だが、本当にあのアクアブルーの爽やかな色味は保さんによく似合っている。
これにあのクリーム色のカーディガンは最高の組み合わせだろうな。
「んっ? ああ、そうだな」
このまま絢斗の実家で暮らすことが決まったらうちの両親の手前どうしようかと思ったが、絢斗のとりなしのおかげで助かった。
「ねぇ、卓さん。保さんは食事制限なんかはないんでしょう?」
「そうですね。主治医の林先生からはのんびりと身体を休ませることが一番の薬だと言われていますから、食事も特に制約はありません。むしろカロリーを摂ったほうがいいと言われているくらいです」
「それならよかった。保さん、次に来る時は甘いものを持ってくるわ。何か好きなものはあるかしら?」
秋穂さんは甘いものに目がないからな。絢斗は秋穂さんに似たのは間違いない。
「甘いものはなんでも好きです。あ、でも……先日、磯山先生が持ってきてくださったプリンが、ものすごく美味しかったです」
「あ、もしかしてfascinateの?」
「ああ。そうだよ、絢斗が好きなプリンを持っていったんだ」
「あら、あのプリンが好きなら好みは似てそうね。じゃあ、私のおすすめを持ってくるわ」
秋穂さんは嬉しそうに賢将さんに笑顔を向ける。秋穂さんが一人で来ることは絶対にないから賢将さんも一緒に買いに行くんだろう。
「それじゃあ、今日はそろそろ失礼しようか。訪問者がいっぱいで保さんも疲れただろう。ゆっくり休んだほうがいい」
「は、はい。ありがとうございます」
医師の賢将さんの言葉に保さんは素直に従った。
「それじゃあ、また来るわね」
絢斗と秋穂さんは保さんに手を振りつつ、私たちは部屋を出た。
少し離れた場所に移動して今日のお礼を伝えた。
「賢将さん、秋穂さん。今日は来てくださってありがとうございます」
「いや、私たちも可愛い孫と優しい息子に会えて良かったよ」
「息子、ですか?」
「ああ、直くんの父なのだから私たちの息子も同然だろう」
当然のようにそう言ってくれる懐の広さに嬉しくなる。
「賢将さんたちが保さんを息子だと思ってくださるのは嬉しいです」
「私たちは本当に彼を我が家に迎え入れてもいいと思っている。その点は寛さんたちと話し合わなければいけないな」
保さんの状態を考えれば、医師の賢将さんの家に住むのが安心なのかもしれないが、父と母のあの喜び具合を見ていると絢斗の実家に頼むことにしたとは言いづらい。
さて、どうしたものか……。
そんなことを考えていると、
「卓!」
後ろから私の名を呼ぶ声が聞こえた。
その声に、私はもちろん絢斗たちも一斉に振り向くとそこには父と母の姿。
「どうしたんですか?」
「買い物を終えたから早速持ってきたんだよ。沙都がすぐに保さんに着せたいというからな」
「だって、あの服のままじゃ可哀想だわ」
その言葉がグサリと胸に刺さる。
「絢斗くん、秋穂さんも一緒に渡しに行かない?」
「あ、行きたいです!」
「私も行きたいわ」
三人で早速渡しに行こうとしているが、さてどうする?
私と父と賢将さんの間に一瞬、ピリッとした空気が流れるが、私に任せろと言わんばかりの父の表情に私も賢将さんも頼むことにした。
そうして、父は三人と共に保さんの部屋に向かった。
<side寛>
沙都の買い物に付き合い、保さんのパジャマと羽織りのカーディガン。そして直くんにも可愛いクマの着ぐるみパジャマを買ってきた。直くんの着ぐるみパジャマは診察の邪魔にならないように上から下までスナップボタンで外れるから問題ない。
可愛い耳と尻尾もついていてハンガーにかかっているだけも可愛かったから早く着せたいものだ。
すぐにでも渡したいという沙都の気持ちに寄り添って病院に戻った。
この時間ならまだ卓たちもいる頃だろう。
そう思って、保さんの病棟に行くと予想通り卓たちの姿を見つけた。
沙都は絢斗くんと秋穂さんを誘い、保さんの部屋に行くという。
保さんが沙都たちに何かするとは一切考えていないが、やはり三人だけを部屋に行かせるわけにはいかない。
それは卓と賢将さんも同じ気持ちだったようだ。
私が三人に付き添うことに決めて、部屋に向かった。
何度も部屋に訪問して少し疲れさせているかもしれないと思ったが、部屋の中からは明るい声が聞こえた。
その声にホッとして扉を開け、名前を告げて中に入った。
「何度も来てしまって悪いね」
「い、いえ。そんなことは。お話ができて嬉しいです」
そう言ってくれる彼の表情は嘘をついているようには見えなかった。
「ありがとう。実はね、うちの沙都が君に贈り物を買ってきたんだよ」
「えっ? 私に、ですか?」
驚きの表情を見せる彼の前に沙都と絢斗くん、そして秋穂さんが現れて、彼を囲むように近づいた。
そして笑顔で紙袋を渡した。
「保さん、開けてみて」
「は、はい」
保さんは少し手を震わせながら紙袋から包みを取り出し、開けていく。
「わ! これ、パジャマですか?」
「正解!」
「わぁー! 綺麗な色!!」
「本当、沙都さん趣味がいいわ!」
色味をずっと悩んでいたから秋穂さんたちに褒められて沙都は嬉しそうだ。
だが、本当にあのアクアブルーの爽やかな色味は保さんによく似合っている。
これにあのクリーム色のカーディガンは最高の組み合わせだろうな。
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