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本当の息子のように
すみません。予約投稿時間を間違えてました(汗)
* * *
フルーツがたくさん載ったチーズケーキは保くんの口にあったようだ。
最後まで苺を残して食べているのが可愛いと思ってしまった。
直くんにも早く果物を食べさせてやりたい。
今はまだ柔らかいバナナくらいだと話していたから、いつ頃になるだろうか。
果物が食べられるようになったら、みんなで果物狩りに行くのもいい。
そんなことを考えながら甘さ控えめのチーズケーキを私も平らげた。
持ってきた英語の本は、保くんの興味を大きく惹いたようで、時折私に尋ねながら読み進めていく。
その目が輝いていて見ているだけで嬉しくなる。
本を一冊読み終えると、達成感に溢れた表情を見せてくれて本当に本に飢えていたようだ。
「そういえば、櫻葉会長に保くんのことを話したんだよ」
「えっ? 本当ですか?」
「ああ。ぜひ面接をしたいと仰っていた。これから海外事業部を拡大する予定らしくてね。保くんのような人材を探していたところだそうだよ」
櫻葉グループは現在でも世界中で大きな力を発揮しているが、いずれ中東に事業を拡大する予定らしくその準備のためにも優秀な人材を集めているとのことだった。
本当にこのタイミングでの話に、保くんにとっては幸運だろう。
「まだ面接を受ける機会をもらっただけで、採用と決まったわけじゃないから緊張はしなくていいよ。だが、もし決まれば、保くんの夢に大きく前進するはずだ」
「はい」
今までのその機会を奪われていた彼にとっては最高の話だろう。
保くんのこれまでの経緯も、息子の直くんのこともおおよそのことは話に聞いていたようだ。
彼の前会社が貴船コンツェルンの子会社だからそれも当然だ。
だから、詳細を話すことで保くんの事情もしっかりと考慮してもらえた。
特に直くんについては、櫻葉会長にもあまり歳の変わらない可愛い息子さんがいらっしゃるから心を痛めていた。
いつか息子の一花くんと会わせたいともおっしゃっていた。
一花くんは元気いっぱいで誰からも好かれる子だから、直くんのいいお兄さん的存在になることだろう。
昇と一花くんと、頼りになる兄的存在がいることで直くんの成長も促されるに違いない。
それからは保くんから櫻葉グループのことについて質問が止まらなかった。
私も聞かれるままに話をしたが、その度に目を輝かせて相槌を打つ。
きっとこれが保くんのやりたいことだったんだろうな。
そんな話をしているとあっという間に夕食の時間がやってきた。
私たちの分も含めて三人分の料理が運び込まれる。
それを全てベッドテーブルに並べるとかなり豪華だ。
「それじゃあいただこうか」
「は、はい」
きちんと手を合わせていただきますという彼に好感を持ちながら、私たちも挨拶をする。
病院食とは思えないほど豪華な食事に舌鼓を打っていると、保くんが突然泣き始めた。
「どうしたんだ?」
「す、すみません。なんだか両親が生きていた頃を思い出して……嬉しくなって……」
「そうか」
さっとハンカチを渡し、沙都が湯呑みを渡す。
涙を拭いた彼はお茶を一口飲んで笑顔を見せた。
「やっぱり家族で食べる食事って嬉しいですね」
その言葉を聞けただけで今日来た甲斐があったな。
そこからはお互いに会話を楽しみながら食事を進めていく。
保くんの好きなものを聞き出し、しっかりと頭に叩き込む。
特に苦手な食材はないと知って、これから色々なものを食べさせてやれると喜んだ。
「それじゃあ、そろそろ私たちは失礼しよう」
「はい。今日はすごく楽しかったです。来てくださってありがとうございます」
また来るから、そう言って私たちは部屋を出た。
「私たちと食事をして両親を思い出してくれたって嬉しいわね」
「ああ、そうだな」
私の中で保くんはもうすっかり自分の息子のように思えていた。
* * *
フルーツがたくさん載ったチーズケーキは保くんの口にあったようだ。
最後まで苺を残して食べているのが可愛いと思ってしまった。
直くんにも早く果物を食べさせてやりたい。
今はまだ柔らかいバナナくらいだと話していたから、いつ頃になるだろうか。
果物が食べられるようになったら、みんなで果物狩りに行くのもいい。
そんなことを考えながら甘さ控えめのチーズケーキを私も平らげた。
持ってきた英語の本は、保くんの興味を大きく惹いたようで、時折私に尋ねながら読み進めていく。
その目が輝いていて見ているだけで嬉しくなる。
本を一冊読み終えると、達成感に溢れた表情を見せてくれて本当に本に飢えていたようだ。
「そういえば、櫻葉会長に保くんのことを話したんだよ」
「えっ? 本当ですか?」
「ああ。ぜひ面接をしたいと仰っていた。これから海外事業部を拡大する予定らしくてね。保くんのような人材を探していたところだそうだよ」
櫻葉グループは現在でも世界中で大きな力を発揮しているが、いずれ中東に事業を拡大する予定らしくその準備のためにも優秀な人材を集めているとのことだった。
本当にこのタイミングでの話に、保くんにとっては幸運だろう。
「まだ面接を受ける機会をもらっただけで、採用と決まったわけじゃないから緊張はしなくていいよ。だが、もし決まれば、保くんの夢に大きく前進するはずだ」
「はい」
今までのその機会を奪われていた彼にとっては最高の話だろう。
保くんのこれまでの経緯も、息子の直くんのこともおおよそのことは話に聞いていたようだ。
彼の前会社が貴船コンツェルンの子会社だからそれも当然だ。
だから、詳細を話すことで保くんの事情もしっかりと考慮してもらえた。
特に直くんについては、櫻葉会長にもあまり歳の変わらない可愛い息子さんがいらっしゃるから心を痛めていた。
いつか息子の一花くんと会わせたいともおっしゃっていた。
一花くんは元気いっぱいで誰からも好かれる子だから、直くんのいいお兄さん的存在になることだろう。
昇と一花くんと、頼りになる兄的存在がいることで直くんの成長も促されるに違いない。
それからは保くんから櫻葉グループのことについて質問が止まらなかった。
私も聞かれるままに話をしたが、その度に目を輝かせて相槌を打つ。
きっとこれが保くんのやりたいことだったんだろうな。
そんな話をしているとあっという間に夕食の時間がやってきた。
私たちの分も含めて三人分の料理が運び込まれる。
それを全てベッドテーブルに並べるとかなり豪華だ。
「それじゃあいただこうか」
「は、はい」
きちんと手を合わせていただきますという彼に好感を持ちながら、私たちも挨拶をする。
病院食とは思えないほど豪華な食事に舌鼓を打っていると、保くんが突然泣き始めた。
「どうしたんだ?」
「す、すみません。なんだか両親が生きていた頃を思い出して……嬉しくなって……」
「そうか」
さっとハンカチを渡し、沙都が湯呑みを渡す。
涙を拭いた彼はお茶を一口飲んで笑顔を見せた。
「やっぱり家族で食べる食事って嬉しいですね」
その言葉を聞けただけで今日来た甲斐があったな。
そこからはお互いに会話を楽しみながら食事を進めていく。
保くんの好きなものを聞き出し、しっかりと頭に叩き込む。
特に苦手な食材はないと知って、これから色々なものを食べさせてやれると喜んだ。
「それじゃあ、そろそろ私たちは失礼しよう」
「はい。今日はすごく楽しかったです。来てくださってありがとうございます」
また来るから、そう言って私たちは部屋を出た。
「私たちと食事をして両親を思い出してくれたって嬉しいわね」
「ああ、そうだな」
私の中で保くんはもうすっかり自分の息子のように思えていた。
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