63 / 117
パーティーをしよう
しおりを挟む
今日で完結予定でしたが、ちょっと長くなってしまったので明日に持ち越します。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side寛>
「なおくん、こっちなげて~!!」
「えーいーっ!!」
昇の声かけに直くんが柔らかなボールを投げる。
と言ってもほぼ転がしているだけだが。でもそれが可愛くてたまらない。
「なおくん、じょうずー!!」
「きゃっ、きゃっ!!」
我が家に用意した直くんのための部屋で、遊びに来た昇とはしゃいでいる直くんを見ると自然と頬が緩む。
孫たちの楽しそうな声というのはどれほど大きくても幸せとしか感じないものだな。
「ねぇ、寛さん。今日は保くんの面接の日だったでしょう?」
「そうだな。だが、心配はいらない。絶対に採用されるよ」
私の口利きだからという理由ではない。
保くん自身の能力を櫻葉グループの人事部なら絶対に見抜くだろうし、みすみす逃したりはしない。
「もちろん。私もそう思っているわ。だからね、うちでパーティーをやったらどうかと思って……」
「それはいいアイディアだな。賢将さんから連絡が来たら提案してみよう」
保くんと生活を共にしている賢将さんたち。
直くんとの生活を始めている卓たち。
そして、毅たち。
彼らが気兼ねなく集まれる場所は我が家が最適だろう。
「あんなふうに昇と直くんが駆け回っている姿を、保くんが見たら安心するんじゃないかしら」
「保くんは元気になった直くんとはまだ会っていないから、パーティーで楽しみながら会うのはいいタイミングだな」
目の前で楽しそうに昇と遊んでいる直くんを見ながら、保くんがどんな反応をするか、それが楽しみになっていた。
それからすぐ後に賢将さんから無事に採用されたという連絡がきて、これからのためにすぐ着られるスーツとオーダーメイドのスーツを用意したと言われた。
――実は、鞄をまだ用意できていないんですよ。これは寛さんのほうでお願いしてもいいですか?
これは賢将さんの優しさだろう。
保くんの新しい門出に私たちも携わらせてくれようとしている。
ーああ、任せておいてくれ。明日にでも保くんの就職祝いのパーティーでもしようと思っていたんだ。その時に渡せるようにしておこう
都内で革工房を経営している友人がいる。
丁寧な手作業で品質は太鼓判を押す。
卓と毅にも就職祝いの時にはそこの鞄を用意したものだ。
彼に頼んで保くんに合いそうな鞄をいくつか送ってもらうとしよう。
ーパーティー! 私たちも明日はどうですかと提案しようと思っていたところです。
ーははっ。やっぱり考えることは同じだな。卓たちと毅たち家族にも声をかけておくから、我が家でパーティーをしよう。
ーそれはありがたいですね。何か必要なものがあれば声をかけてください。持っていきますよ。
ーいや、気を遣わなくていいよ。あ、でもそうだな。絢斗くんと女性陣、それに子どもたちが食べられるスイーツでも買ってきてもらおうか。保くんも一緒に食べられるだろう。
ーそれじゃあ秋穂に聞いて、最高のスイーツを選んでいきますよ。
ー時間やそのほかはまた後で連絡しよう。
和やかなままに電話を終えた後は。すぐに卓に連絡を入れた。
我が家で直くんを預かっているから、きっとすぐに電話をとるだろうと思ったが、私の想像を遥かに超える勢いで繋がった。
ー父さん。直くんに何かありましたか?
ー大丈夫だ。昇と楽しく遊んでいるよ。
ー昇と? どうして?
ー今日は午前中授業だったから、二葉さんが昇を連れてきてくれたんだよ。お兄ちゃんらしく遊んでくれているから直くんも楽しそうだよ。心配なら後で沙都が撮った動画を送るよ。
そこまでいうと安心したようだ。
ーそれより、保くん……櫻葉グループに採用が決まったそうだ。
ーそうですか。それはよかった。
電話口からでも卓が安堵しているのがわかる。
やはり気になっていたのだろう。
ーそれで賢将さんとも話したのだが、明日我が家で保くんの就職祝いのパーティーをやろうと思ってね。どうだ?
ーええ、それはもちろん構いませんよ。でも、ようやくですね……
ーそうだな。ようやく、直くんと保くんが顔をあわせる時がきたというわけだな。
ーそれで記憶が甦るということもあるでしょうね。
卓はそれが少し不安だったのだろう。
あれだけ愛情を注いで育てている直くんだ。
もし、保くんが父親として直くんへの愛情を全て思い出して、親子二人での生活を望んだら……。
里親である卓は受け入れるしかない。
ーもちろんその可能性はゼロではない。だが、保くんも直くんも今のこの生活が二人にとってベストなんだ。父と息子であることは一生変わらないが、直くんにとっても今、自分を大切に育ててくれる大人が卓を含めて大勢いてくれるこの環境が一番いい。大きな家族になると言ったのは卓だろう?
ーそう、ですね。私は少し不安になり過ぎていたのかもしれません。直くんにはパパという存在がいることもちゃんと教えていますし、賢い直くんはちゃんと理解してくれていると思っています。
ーそれなら心配はいらない。明日は、その目でしっかりと親子の対面を見届けるんだ。
ーはい。わかりました。明日、パーティーの準備もあるでしょうから早めに伺います。今日は直くんをよろしくお願いします。
ー任せておきなさい。
卓は少し心配もあるだろうが、それ以上に絢斗くんとの時間を作れることが嬉しいに違いない。
でもそれを咎めたりはしない。
ストレスを溜めない育児が何よりも大切だということをわかっているからな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side寛>
「なおくん、こっちなげて~!!」
「えーいーっ!!」
昇の声かけに直くんが柔らかなボールを投げる。
と言ってもほぼ転がしているだけだが。でもそれが可愛くてたまらない。
「なおくん、じょうずー!!」
「きゃっ、きゃっ!!」
我が家に用意した直くんのための部屋で、遊びに来た昇とはしゃいでいる直くんを見ると自然と頬が緩む。
孫たちの楽しそうな声というのはどれほど大きくても幸せとしか感じないものだな。
「ねぇ、寛さん。今日は保くんの面接の日だったでしょう?」
「そうだな。だが、心配はいらない。絶対に採用されるよ」
私の口利きだからという理由ではない。
保くん自身の能力を櫻葉グループの人事部なら絶対に見抜くだろうし、みすみす逃したりはしない。
「もちろん。私もそう思っているわ。だからね、うちでパーティーをやったらどうかと思って……」
「それはいいアイディアだな。賢将さんから連絡が来たら提案してみよう」
保くんと生活を共にしている賢将さんたち。
直くんとの生活を始めている卓たち。
そして、毅たち。
彼らが気兼ねなく集まれる場所は我が家が最適だろう。
「あんなふうに昇と直くんが駆け回っている姿を、保くんが見たら安心するんじゃないかしら」
「保くんは元気になった直くんとはまだ会っていないから、パーティーで楽しみながら会うのはいいタイミングだな」
目の前で楽しそうに昇と遊んでいる直くんを見ながら、保くんがどんな反応をするか、それが楽しみになっていた。
それからすぐ後に賢将さんから無事に採用されたという連絡がきて、これからのためにすぐ着られるスーツとオーダーメイドのスーツを用意したと言われた。
――実は、鞄をまだ用意できていないんですよ。これは寛さんのほうでお願いしてもいいですか?
これは賢将さんの優しさだろう。
保くんの新しい門出に私たちも携わらせてくれようとしている。
ーああ、任せておいてくれ。明日にでも保くんの就職祝いのパーティーでもしようと思っていたんだ。その時に渡せるようにしておこう
都内で革工房を経営している友人がいる。
丁寧な手作業で品質は太鼓判を押す。
卓と毅にも就職祝いの時にはそこの鞄を用意したものだ。
彼に頼んで保くんに合いそうな鞄をいくつか送ってもらうとしよう。
ーパーティー! 私たちも明日はどうですかと提案しようと思っていたところです。
ーははっ。やっぱり考えることは同じだな。卓たちと毅たち家族にも声をかけておくから、我が家でパーティーをしよう。
ーそれはありがたいですね。何か必要なものがあれば声をかけてください。持っていきますよ。
ーいや、気を遣わなくていいよ。あ、でもそうだな。絢斗くんと女性陣、それに子どもたちが食べられるスイーツでも買ってきてもらおうか。保くんも一緒に食べられるだろう。
ーそれじゃあ秋穂に聞いて、最高のスイーツを選んでいきますよ。
ー時間やそのほかはまた後で連絡しよう。
和やかなままに電話を終えた後は。すぐに卓に連絡を入れた。
我が家で直くんを預かっているから、きっとすぐに電話をとるだろうと思ったが、私の想像を遥かに超える勢いで繋がった。
ー父さん。直くんに何かありましたか?
ー大丈夫だ。昇と楽しく遊んでいるよ。
ー昇と? どうして?
ー今日は午前中授業だったから、二葉さんが昇を連れてきてくれたんだよ。お兄ちゃんらしく遊んでくれているから直くんも楽しそうだよ。心配なら後で沙都が撮った動画を送るよ。
そこまでいうと安心したようだ。
ーそれより、保くん……櫻葉グループに採用が決まったそうだ。
ーそうですか。それはよかった。
電話口からでも卓が安堵しているのがわかる。
やはり気になっていたのだろう。
ーそれで賢将さんとも話したのだが、明日我が家で保くんの就職祝いのパーティーをやろうと思ってね。どうだ?
ーええ、それはもちろん構いませんよ。でも、ようやくですね……
ーそうだな。ようやく、直くんと保くんが顔をあわせる時がきたというわけだな。
ーそれで記憶が甦るということもあるでしょうね。
卓はそれが少し不安だったのだろう。
あれだけ愛情を注いで育てている直くんだ。
もし、保くんが父親として直くんへの愛情を全て思い出して、親子二人での生活を望んだら……。
里親である卓は受け入れるしかない。
ーもちろんその可能性はゼロではない。だが、保くんも直くんも今のこの生活が二人にとってベストなんだ。父と息子であることは一生変わらないが、直くんにとっても今、自分を大切に育ててくれる大人が卓を含めて大勢いてくれるこの環境が一番いい。大きな家族になると言ったのは卓だろう?
ーそう、ですね。私は少し不安になり過ぎていたのかもしれません。直くんにはパパという存在がいることもちゃんと教えていますし、賢い直くんはちゃんと理解してくれていると思っています。
ーそれなら心配はいらない。明日は、その目でしっかりと親子の対面を見届けるんだ。
ーはい。わかりました。明日、パーティーの準備もあるでしょうから早めに伺います。今日は直くんをよろしくお願いします。
ー任せておきなさい。
卓は少し心配もあるだろうが、それ以上に絢斗くんとの時間を作れることが嬉しいに違いない。
でもそれを咎めたりはしない。
ストレスを溜めない育児が何よりも大切だということをわかっているからな。
1,039
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『目には目を歯には歯を』
プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる