虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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パーティーをしよう

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今日で完結予定でしたが、ちょっと長くなってしまったので明日に持ち越します。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<side寛>

「なおくん、こっちなげて~!!」

「えーいーっ!!」

昇の声かけに直くんが柔らかなボールを投げる。
と言ってもほぼ転がしているだけだが。でもそれが可愛くてたまらない。

「なおくん、じょうずー!!」

「きゃっ、きゃっ!!」

我が家に用意した直くんのための部屋で、遊びに来た昇とはしゃいでいる直くんを見ると自然と頬が緩む。
孫たちの楽しそうな声というのはどれほど大きくても幸せとしか感じないものだな。

「ねぇ、寛さん。今日は保くんの面接の日だったでしょう?」

「そうだな。だが、心配はいらない。絶対に採用されるよ」

私の口利きだからという理由ではない。
保くん自身の能力を櫻葉グループの人事部なら絶対に見抜くだろうし、みすみす逃したりはしない。

「もちろん。私もそう思っているわ。だからね、うちでパーティーをやったらどうかと思って……」

「それはいいアイディアだな。賢将さんから連絡が来たら提案してみよう」

保くんと生活を共にしている賢将さんたち。
直くんとの生活を始めている卓たち。
そして、毅たち。

彼らが気兼ねなく集まれる場所は我が家が最適だろう。

「あんなふうに昇と直くんが駆け回っている姿を、保くんが見たら安心するんじゃないかしら」

「保くんは元気になった直くんとはまだ会っていないから、パーティーで楽しみながら会うのはいいタイミングだな」

目の前で楽しそうに昇と遊んでいる直くんを見ながら、保くんがどんな反応をするか、それが楽しみになっていた。

それからすぐ後に賢将さんから無事に採用されたという連絡がきて、これからのためにすぐ着られるスーツとオーダーメイドのスーツを用意したと言われた。

――実は、鞄をまだ用意できていないんですよ。これは寛さんのほうでお願いしてもいいですか?

これは賢将さんの優しさだろう。
保くんの新しい門出に私たちも携わらせてくれようとしている。

ーああ、任せておいてくれ。明日にでも保くんの就職祝いのパーティーでもしようと思っていたんだ。その時に渡せるようにしておこう

都内で革工房を経営している友人がいる。
丁寧な手作業で品質は太鼓判を押す。
卓と毅にも就職祝いの時にはそこの鞄を用意したものだ。
彼に頼んで保くんに合いそうな鞄をいくつか送ってもらうとしよう。

ーパーティー! 私たちも明日はどうですかと提案しようと思っていたところです。

ーははっ。やっぱり考えることは同じだな。卓たちと毅たち家族にも声をかけておくから、我が家でパーティーをしよう。

ーそれはありがたいですね。何か必要なものがあれば声をかけてください。持っていきますよ。

ーいや、気を遣わなくていいよ。あ、でもそうだな。絢斗くんと女性陣、それに子どもたちが食べられるスイーツでも買ってきてもらおうか。保くんも一緒に食べられるだろう。

ーそれじゃあ秋穂に聞いて、最高のスイーツを選んでいきますよ。

ー時間やそのほかはまた後で連絡しよう。

和やかなままに電話を終えた後は。すぐに卓に連絡を入れた。
我が家で直くんを預かっているから、きっとすぐに電話をとるだろうと思ったが、私の想像を遥かに超える勢いで繋がった。

ー父さん。直くんに何かありましたか?

ー大丈夫だ。昇と楽しく遊んでいるよ。

ー昇と? どうして?

ー今日は午前中授業だったから、二葉さんが昇を連れてきてくれたんだよ。お兄ちゃんらしく遊んでくれているから直くんも楽しそうだよ。心配なら後で沙都が撮った動画を送るよ。

そこまでいうと安心したようだ。

ーそれより、保くん……櫻葉グループに採用が決まったそうだ。

ーそうですか。それはよかった。

電話口からでも卓が安堵しているのがわかる。
やはり気になっていたのだろう。

ーそれで賢将さんとも話したのだが、明日我が家で保くんの就職祝いのパーティーをやろうと思ってね。どうだ?

ーええ、それはもちろん構いませんよ。でも、ようやくですね……

ーそうだな。ようやく、直くんと保くんが顔をあわせる時がきたというわけだな。

ーそれで記憶が甦るということもあるでしょうね。

卓はそれが少し不安だったのだろう。
あれだけ愛情を注いで育てている直くんだ。
もし、保くんが父親として直くんへの愛情を全て思い出して、親子二人での生活を望んだら……。

里親である卓は受け入れるしかない。

ーもちろんその可能性はゼロではない。だが、保くんも直くんも今のこの生活が二人にとってベストなんだ。父と息子であることは一生変わらないが、直くんにとっても今、自分を大切に育ててくれる大人が卓を含めて大勢いてくれるこの環境が一番いい。大きな家族になると言ったのは卓だろう?

ーそう、ですね。私は少し不安になり過ぎていたのかもしれません。直くんにはパパという存在がいることもちゃんと教えていますし、賢い直くんはちゃんと理解してくれていると思っています。

ーそれなら心配はいらない。明日は、その目でしっかりと親子の対面を見届けるんだ。

ーはい。わかりました。明日、パーティーの準備もあるでしょうから早めに伺います。今日は直くんをよろしくお願いします。

ー任せておきなさい。

卓は少し心配もあるだろうが、それ以上に絢斗くんとの時間を作れることが嬉しいに違いない。
でもそれを咎めたりはしない。
ストレスを溜めない育児が何よりも大切だということをわかっているからな。
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