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番外編
幸せな時間
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あのパーティーの続きのお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side卓>
「ぱぱ。こりぇ、おいちーよ」
「ありがとう」
パーティーが始まって、保くんの席の隣にベビーチェアの直くんを配置すると、直くんは自分が食べて美味しかったものを保くんに渡し始めた。
パパと美味しいものを共有したいんだろう。
その姿を微笑ましく思う反面、少し寂しい気持ちもする。
いやいや、直くんがようやくパパとの時間を過ごせるようになったのだ。
あの実母との生活で唯一の拠り所だったかもしれない保くんとの時間を思い出したのだから、邪魔をしてはいけない。
「おいちー?」
「美味しいよ」
「そりぇはよかっちゃー」
直くんのその満足げな表情を見られるだけで、幸せだと思わなくてはな。
直くんは隣に保くんがいるからか、いつもよりはしゃいでいて食事もぱくぱく食べていた。
やはりパパの力は偉大なのだと思わされる。
そんな二人の姿を気にしながら食事をしていると、少しずつ直くんの食事のペースが落ちてきた。
これは眠たくなってきているとすぐにわかった。
私はさっと立ち上がり、直くんの元に駆け寄り、優しく声をかけた。
「直くん、少しねんねしようか」
「ねんね、ちゅるー……」
眠いのにちゃんと返事ができる直くんを愛おしく思いながら、母が差し出してくれたお手拭きで直くんの汚れた口と手を拭いた。
そのまま寝かしつけようと抱き上げようとしたが、せっかくパパである保くんがいるならその役目を任せた方がいいんじゃないか?
それが直くんにとっても嬉しいかもしれない。
そう思って保くんに直くんを託そうとしたのだが、
「ちゅぐぅちゃ、らっこ……っ」
直くんが私に手を伸ばしてくる。
「えっ? パパじゃなくていいのか?」
パパが隣にいるのだからてっきりパパを選ぶと思ってついそんなことを尋ねてしまった。
「ふぇっ……ちゅぐぅちゃ……」
「――っ!!」
私を求めて涙を流しながら手を伸ばしてくれるその姿に、申し訳なさが込み上げてくる。
私は可愛い息子に選ばせるようなことをして何をしているんだ。
急いで直くんを抱き上げて向かい合わせに抱っこすると、直くんは安心した表情を見せ目を瞑った。
直くんを寝かしつけるために父たちが用意しておいてくれたリクライニングできる一人掛けのソファーに腰を下ろし、少し背もたれを倒す。
直くんは安心しきった様子で私の胸元に顔を擦り寄せて一気に夢の世界に落ちていった。
「やっぱり直くんはその場所が一番お気に入りだね」
絢斗が柔らかなブランケットを持って私たちの元にやってきた。
直くんの身体を覆うようにブランケットをかける。
「私のお気に入りの場所でもあるけど、今は直くんに貸しておいてあげる。直くんは卓さんの抱っこで寝るのが好きだからね」
「絢斗……」
私が保くんに嫉妬めいた感情を抱いてしまっていたのに気づいているのかもしれない。
それでも絢斗の優しい言葉に救われる。
直くんは誰が一番かなんて何も考えていない。
ただ純粋に愛してくれる人を望んでいるだけだ。
私は直くんの温もりを感じながら、保くんへの嫉妬はもうやめようと心に誓った。
それから一時間ほどして、直くんが目を覚ました。
もうすでにみんなも食事を終えて、リビングに集まっていた。
「あ、なおくん。おきたー!」
直くんが起きるのを待っていた昇は待ってましたとばかりに私と直くんの元に駆け寄ってきた。
「なおくん、ボールであそぼう」
「ぼぉる。あちょぶ!」
昇とのボール遊びが大好きになっている直くんはその言葉に一気に目を覚ました。
気をつけるんだよと声をかけながら直くんを下ろすと、昇が保くんのところに掛けて行った。
「なおくんのパパもいっしょにぼーるであそぼう!」
「えっ?」
昇からの突然の誘いに保くんは驚きの様子を隠せなかったが、
「ぱぱ、あちょぼう!」
とトタトタと駆け寄ってきた直くんにも誘われて、嬉しそうに立ち上がった。
「昇、ボールなら庭で遊びなさい」
「はーい」
毅の声に昇は直くんの手を取って縁側に向かう。
そこにはもうすでに直くん用の小さな靴が用意されていた。
歩くと音が鳴る、幼児用の可愛い靴だ。
父曰く、母が絶対にこれだと譲らず買ったそうだ。
絢斗も昔この靴を好んで履いていたそうで、母はその話を秋穂さんが聞いて羨ましいと思っていたようだからこうして直くんが夢を叶えてくれて喜んでいる。
手際よく昇が直くんに靴を履かせ、三人で縁側から庭に下りて行った。
直くんが歩くたびに、ぴよぴよと可愛い音が鳴って頬が緩む。
直くんの顔くらいの大きさのボールを直くんが
「えーいっ」
と投げる姿が可愛くてたまらない。
「ぱぱも-!」
「あ、ああ」
きっと初めてなのだろう。
慣れない手つきで優しく投げると、直くんから
「ぱぱー、じょうじゅー!」
と褒められて嬉しそうだ。
そんな二人を昇がいい感じにまとめていてなんとも微笑ましい空間になっている。
私たちはその様子をしっかりと動画に撮り、父は嬉しそうに自慢のカメラでシャッターを切っていた。
この幸せな時間が一生続くようにしていきたい。
そう思わずにいられなかった。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side卓>
「ぱぱ。こりぇ、おいちーよ」
「ありがとう」
パーティーが始まって、保くんの席の隣にベビーチェアの直くんを配置すると、直くんは自分が食べて美味しかったものを保くんに渡し始めた。
パパと美味しいものを共有したいんだろう。
その姿を微笑ましく思う反面、少し寂しい気持ちもする。
いやいや、直くんがようやくパパとの時間を過ごせるようになったのだ。
あの実母との生活で唯一の拠り所だったかもしれない保くんとの時間を思い出したのだから、邪魔をしてはいけない。
「おいちー?」
「美味しいよ」
「そりぇはよかっちゃー」
直くんのその満足げな表情を見られるだけで、幸せだと思わなくてはな。
直くんは隣に保くんがいるからか、いつもよりはしゃいでいて食事もぱくぱく食べていた。
やはりパパの力は偉大なのだと思わされる。
そんな二人の姿を気にしながら食事をしていると、少しずつ直くんの食事のペースが落ちてきた。
これは眠たくなってきているとすぐにわかった。
私はさっと立ち上がり、直くんの元に駆け寄り、優しく声をかけた。
「直くん、少しねんねしようか」
「ねんね、ちゅるー……」
眠いのにちゃんと返事ができる直くんを愛おしく思いながら、母が差し出してくれたお手拭きで直くんの汚れた口と手を拭いた。
そのまま寝かしつけようと抱き上げようとしたが、せっかくパパである保くんがいるならその役目を任せた方がいいんじゃないか?
それが直くんにとっても嬉しいかもしれない。
そう思って保くんに直くんを託そうとしたのだが、
「ちゅぐぅちゃ、らっこ……っ」
直くんが私に手を伸ばしてくる。
「えっ? パパじゃなくていいのか?」
パパが隣にいるのだからてっきりパパを選ぶと思ってついそんなことを尋ねてしまった。
「ふぇっ……ちゅぐぅちゃ……」
「――っ!!」
私を求めて涙を流しながら手を伸ばしてくれるその姿に、申し訳なさが込み上げてくる。
私は可愛い息子に選ばせるようなことをして何をしているんだ。
急いで直くんを抱き上げて向かい合わせに抱っこすると、直くんは安心した表情を見せ目を瞑った。
直くんを寝かしつけるために父たちが用意しておいてくれたリクライニングできる一人掛けのソファーに腰を下ろし、少し背もたれを倒す。
直くんは安心しきった様子で私の胸元に顔を擦り寄せて一気に夢の世界に落ちていった。
「やっぱり直くんはその場所が一番お気に入りだね」
絢斗が柔らかなブランケットを持って私たちの元にやってきた。
直くんの身体を覆うようにブランケットをかける。
「私のお気に入りの場所でもあるけど、今は直くんに貸しておいてあげる。直くんは卓さんの抱っこで寝るのが好きだからね」
「絢斗……」
私が保くんに嫉妬めいた感情を抱いてしまっていたのに気づいているのかもしれない。
それでも絢斗の優しい言葉に救われる。
直くんは誰が一番かなんて何も考えていない。
ただ純粋に愛してくれる人を望んでいるだけだ。
私は直くんの温もりを感じながら、保くんへの嫉妬はもうやめようと心に誓った。
それから一時間ほどして、直くんが目を覚ました。
もうすでにみんなも食事を終えて、リビングに集まっていた。
「あ、なおくん。おきたー!」
直くんが起きるのを待っていた昇は待ってましたとばかりに私と直くんの元に駆け寄ってきた。
「なおくん、ボールであそぼう」
「ぼぉる。あちょぶ!」
昇とのボール遊びが大好きになっている直くんはその言葉に一気に目を覚ました。
気をつけるんだよと声をかけながら直くんを下ろすと、昇が保くんのところに掛けて行った。
「なおくんのパパもいっしょにぼーるであそぼう!」
「えっ?」
昇からの突然の誘いに保くんは驚きの様子を隠せなかったが、
「ぱぱ、あちょぼう!」
とトタトタと駆け寄ってきた直くんにも誘われて、嬉しそうに立ち上がった。
「昇、ボールなら庭で遊びなさい」
「はーい」
毅の声に昇は直くんの手を取って縁側に向かう。
そこにはもうすでに直くん用の小さな靴が用意されていた。
歩くと音が鳴る、幼児用の可愛い靴だ。
父曰く、母が絶対にこれだと譲らず買ったそうだ。
絢斗も昔この靴を好んで履いていたそうで、母はその話を秋穂さんが聞いて羨ましいと思っていたようだからこうして直くんが夢を叶えてくれて喜んでいる。
手際よく昇が直くんに靴を履かせ、三人で縁側から庭に下りて行った。
直くんが歩くたびに、ぴよぴよと可愛い音が鳴って頬が緩む。
直くんの顔くらいの大きさのボールを直くんが
「えーいっ」
と投げる姿が可愛くてたまらない。
「ぱぱも-!」
「あ、ああ」
きっと初めてなのだろう。
慣れない手つきで優しく投げると、直くんから
「ぱぱー、じょうじゅー!」
と褒められて嬉しそうだ。
そんな二人を昇がいい感じにまとめていてなんとも微笑ましい空間になっている。
私たちはその様子をしっかりと動画に撮り、父は嬉しそうに自慢のカメラでシャッターを切っていた。
この幸せな時間が一生続くようにしていきたい。
そう思わずにいられなかった。
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