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番外編
秘密の計画
それから数日後、私たちはイリゼホテルに来ていた。
駐車場で待ち合わせをしていたが、私たちの車が到着した時、すでに毅たちの車が止まっていた。
そして、私たちの車が止まるや否や、車から昇が降りてきた。
他の車が来ないかどうか確認して駆け寄ってくるあたりはさすがだが、昇には直くんしか見えていないらしい。
すぐに直くんが座っていた窓に近づき、トントンと叩く。
窓を開けてやれば嬉しそうに直くんに声をかける。
「よかった。直くん、起きてた」
「のぼりゅー!」
直くんも嬉しそうに手を伸ばす。その微笑ましい光景に絢斗は直くんの隣で女神のような微笑みを浮かべていた。
私も車を降りると、毅と二葉さんがこちらにやってくる。
「早かったな」
「昇が早く行きたいってうるさくて」
さっきの態度を見ていてもそれはよくわかる。
チラリと後ろに目を向けると、後部座席で絢斗が直くんをチャイルドシートから下ろそうとしているのが見えて、私は急いで後部座席に向かった。昇を扉から離し、直くんを受け取る。
そして反対側に回って、絢斗をエスコートして下ろした。
今の私は片手に直くん、もう片方に絢斗と両手に花だ。
「じゃあ、行こうか」
「あ、待って」
駐車場で話していても仕方がない。揃ったところでホテルに入ろうと声をかけると、絢斗がそれを止めた。
「どうした?」
「もうすぐ来るはずだから」
絢斗がそう発した途端、駐車場に二台の車が入ってきた。
その車に見覚えがある。
父と賢将さんの車だ。
「えっ? どうして?」
今日の衣装合わせは直くんと昇、それにすでに到着している一花くんだけのはずだ。
驚く私と毅をよそに絢斗と二葉さんは楽しげに笑っている。
「史紀くんと話をして、私と保くんもドレスを作ってもらうことにしたんだー」
「えっ? 絢斗と保くんのドレス?」
二葉さんはともかく、絢斗と保くんがドレスを作る?
「まだ保くんには内緒だけどね。今日は直くんのドレスを作るから一緒に考えて欲しいって連絡したんだ。ちなみにお母さんたちは知ってるよ。ね、二葉さん」
「「えっ!」」
私も毅も思いもよらないことに茫然とするしかなかった。
いつの間にか母と秋穂さん、二葉さんと絢斗の四人で計画が練られていたようだ。
「二葉さんとお母さんたちは完成しているドレスでもサイズが合うものがあるけど、私と保くんは流石に採寸しないと綺麗には着こなせないから一緒にオーダーメイドで作ってもらうことにしたんだよ」
絢斗がドレスを着たら……想像するだけで可愛いが、まさか結婚式という公の場でその姿を見られるとは思ってもなかったな。しかも母たちもその計画に参加しているのならもう決定事項だろう。
たとえ、保くんが恥ずかしがってもきっとうまくのせられてオーダーメイドのドレスをつくることになる。
ドレスが完成してしまえば、着ないのは勿体無いからと結局着ることになるだろう。
私は心の中で義弟となった保くんに頑張れと呟いた。
<side絢斗>
史紀くんの結婚式で直くんと一花ちゃんがフラワーガールをすることになった。
その話がじっくり聞きたくて、卓さんがいない間にこっそり史紀くんに電話をすると、安城くんのリクエストで史紀くんがドレス姿を披露することになったと教えてくれた。
――恥ずかしいんですけど、一生に一度の機会なのでリクエストを聞こうかと……だから一花くんにもお願いしてドレスを着てもらうことにしたんです。可愛い子がいれば私のドレス姿も隠れるかと……
電話口でもわかるほど照れていたけれど、その声がすごく幸せそうだった。
家族と親しい友人だけを招待することにしたのもそれがあるからだろう。
それならこっちにも都合がいい。
――ねぇねぇ、じゃあ私と保くんもドレス、着るっていうのはどうかな?
そんな提案に史紀くんは驚いていたけれど、その声は楽しそうだった。
――それ、めちゃくちゃいいですね!!
すぐに賛成してくれて、そこから計画が進んだ。
一花ちゃんと直くん、そして昇くんの衣装を決める時に私と保くんのドレスも作ってもらう。
せっかくなので二葉さんとお母さんたちの衣装も周平くんのドレスの好きなものを選んでもらうということで話が決まった。
そして、当日。
保くんたちが車でやってきたところで、卓さんと毅さんに計画を話すと二人して同じ反応をして驚いていた。
そんな兄弟の姿に、私と二葉さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
さぁ、これから楽しい時間。いいドレスができるといいな。
駐車場で待ち合わせをしていたが、私たちの車が到着した時、すでに毅たちの車が止まっていた。
そして、私たちの車が止まるや否や、車から昇が降りてきた。
他の車が来ないかどうか確認して駆け寄ってくるあたりはさすがだが、昇には直くんしか見えていないらしい。
すぐに直くんが座っていた窓に近づき、トントンと叩く。
窓を開けてやれば嬉しそうに直くんに声をかける。
「よかった。直くん、起きてた」
「のぼりゅー!」
直くんも嬉しそうに手を伸ばす。その微笑ましい光景に絢斗は直くんの隣で女神のような微笑みを浮かべていた。
私も車を降りると、毅と二葉さんがこちらにやってくる。
「早かったな」
「昇が早く行きたいってうるさくて」
さっきの態度を見ていてもそれはよくわかる。
チラリと後ろに目を向けると、後部座席で絢斗が直くんをチャイルドシートから下ろそうとしているのが見えて、私は急いで後部座席に向かった。昇を扉から離し、直くんを受け取る。
そして反対側に回って、絢斗をエスコートして下ろした。
今の私は片手に直くん、もう片方に絢斗と両手に花だ。
「じゃあ、行こうか」
「あ、待って」
駐車場で話していても仕方がない。揃ったところでホテルに入ろうと声をかけると、絢斗がそれを止めた。
「どうした?」
「もうすぐ来るはずだから」
絢斗がそう発した途端、駐車場に二台の車が入ってきた。
その車に見覚えがある。
父と賢将さんの車だ。
「えっ? どうして?」
今日の衣装合わせは直くんと昇、それにすでに到着している一花くんだけのはずだ。
驚く私と毅をよそに絢斗と二葉さんは楽しげに笑っている。
「史紀くんと話をして、私と保くんもドレスを作ってもらうことにしたんだー」
「えっ? 絢斗と保くんのドレス?」
二葉さんはともかく、絢斗と保くんがドレスを作る?
「まだ保くんには内緒だけどね。今日は直くんのドレスを作るから一緒に考えて欲しいって連絡したんだ。ちなみにお母さんたちは知ってるよ。ね、二葉さん」
「「えっ!」」
私も毅も思いもよらないことに茫然とするしかなかった。
いつの間にか母と秋穂さん、二葉さんと絢斗の四人で計画が練られていたようだ。
「二葉さんとお母さんたちは完成しているドレスでもサイズが合うものがあるけど、私と保くんは流石に採寸しないと綺麗には着こなせないから一緒にオーダーメイドで作ってもらうことにしたんだよ」
絢斗がドレスを着たら……想像するだけで可愛いが、まさか結婚式という公の場でその姿を見られるとは思ってもなかったな。しかも母たちもその計画に参加しているのならもう決定事項だろう。
たとえ、保くんが恥ずかしがってもきっとうまくのせられてオーダーメイドのドレスをつくることになる。
ドレスが完成してしまえば、着ないのは勿体無いからと結局着ることになるだろう。
私は心の中で義弟となった保くんに頑張れと呟いた。
<side絢斗>
史紀くんの結婚式で直くんと一花ちゃんがフラワーガールをすることになった。
その話がじっくり聞きたくて、卓さんがいない間にこっそり史紀くんに電話をすると、安城くんのリクエストで史紀くんがドレス姿を披露することになったと教えてくれた。
――恥ずかしいんですけど、一生に一度の機会なのでリクエストを聞こうかと……だから一花くんにもお願いしてドレスを着てもらうことにしたんです。可愛い子がいれば私のドレス姿も隠れるかと……
電話口でもわかるほど照れていたけれど、その声がすごく幸せそうだった。
家族と親しい友人だけを招待することにしたのもそれがあるからだろう。
それならこっちにも都合がいい。
――ねぇねぇ、じゃあ私と保くんもドレス、着るっていうのはどうかな?
そんな提案に史紀くんは驚いていたけれど、その声は楽しそうだった。
――それ、めちゃくちゃいいですね!!
すぐに賛成してくれて、そこから計画が進んだ。
一花ちゃんと直くん、そして昇くんの衣装を決める時に私と保くんのドレスも作ってもらう。
せっかくなので二葉さんとお母さんたちの衣装も周平くんのドレスの好きなものを選んでもらうということで話が決まった。
そして、当日。
保くんたちが車でやってきたところで、卓さんと毅さんに計画を話すと二人して同じ反応をして驚いていた。
そんな兄弟の姿に、私と二葉さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
さぁ、これから楽しい時間。いいドレスができるといいな。
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