89 / 117
番外編
秘密の計画
しおりを挟む
それから数日後、私たちはイリゼホテルに来ていた。
駐車場で待ち合わせをしていたが、私たちの車が到着した時、すでに毅たちの車が止まっていた。
そして、私たちの車が止まるや否や、車から昇が降りてきた。
他の車が来ないかどうか確認して駆け寄ってくるあたりはさすがだが、昇には直くんしか見えていないらしい。
すぐに直くんが座っていた窓に近づき、トントンと叩く。
窓を開けてやれば嬉しそうに直くんに声をかける。
「よかった。直くん、起きてた」
「のぼりゅー!」
直くんも嬉しそうに手を伸ばす。その微笑ましい光景に絢斗は直くんの隣で女神のような微笑みを浮かべていた。
私も車を降りると、毅と二葉さんがこちらにやってくる。
「早かったな」
「昇が早く行きたいってうるさくて」
さっきの態度を見ていてもそれはよくわかる。
チラリと後ろに目を向けると、後部座席で絢斗が直くんをチャイルドシートから下ろそうとしているのが見えて、私は急いで後部座席に向かった。昇を扉から離し、直くんを受け取る。
そして反対側に回って、絢斗をエスコートして下ろした。
今の私は片手に直くん、もう片方に絢斗と両手に花だ。
「じゃあ、行こうか」
「あ、待って」
駐車場で話していても仕方がない。揃ったところでホテルに入ろうと声をかけると、絢斗がそれを止めた。
「どうした?」
「もうすぐ来るはずだから」
絢斗がそう発した途端、駐車場に二台の車が入ってきた。
その車に見覚えがある。
父と賢将さんの車だ。
「えっ? どうして?」
今日の衣装合わせは直くんと昇、それにすでに到着している一花くんだけのはずだ。
驚く私と毅をよそに絢斗と二葉さんは楽しげに笑っている。
「史紀くんと話をして、私と保くんもドレスを作ってもらうことにしたんだー」
「えっ? 絢斗と保くんのドレス?」
二葉さんはともかく、絢斗と保くんがドレスを作る?
「まだ保くんには内緒だけどね。今日は直くんのドレスを作るから一緒に考えて欲しいって連絡したんだ。ちなみにお母さんたちは知ってるよ。ね、二葉さん」
「「えっ!」」
私も毅も思いもよらないことに茫然とするしかなかった。
いつの間にか母と秋穂さん、二葉さんと絢斗の四人で計画が練られていたようだ。
「二葉さんとお母さんたちは完成しているドレスでもサイズが合うものがあるけど、私と保くんは流石に採寸しないと綺麗には着こなせないから一緒にオーダーメイドで作ってもらうことにしたんだよ」
絢斗がドレスを着たら……想像するだけで可愛いが、まさか結婚式という公の場でその姿を見られるとは思ってもなかったな。しかも母たちもその計画に参加しているのならもう決定事項だろう。
たとえ、保くんが恥ずかしがってもきっとうまくのせられてオーダーメイドのドレスをつくることになる。
ドレスが完成してしまえば、着ないのは勿体無いからと結局着ることになるだろう。
私は心の中で義弟となった保くんに頑張れと呟いた。
<side絢斗>
史紀くんの結婚式で直くんと一花ちゃんがフラワーガールをすることになった。
その話がじっくり聞きたくて、卓さんがいない間にこっそり史紀くんに電話をすると、安城くんのリクエストで史紀くんがドレス姿を披露することになったと教えてくれた。
――恥ずかしいんですけど、一生に一度の機会なのでリクエストを聞こうかと……だから一花くんにもお願いしてドレスを着てもらうことにしたんです。可愛い子がいれば私のドレス姿も隠れるかと……
電話口でもわかるほど照れていたけれど、その声がすごく幸せそうだった。
家族と親しい友人だけを招待することにしたのもそれがあるからだろう。
それならこっちにも都合がいい。
――ねぇねぇ、じゃあ私と保くんもドレス、着るっていうのはどうかな?
そんな提案に史紀くんは驚いていたけれど、その声は楽しそうだった。
――それ、めちゃくちゃいいですね!!
すぐに賛成してくれて、そこから計画が進んだ。
一花ちゃんと直くん、そして昇くんの衣装を決める時に私と保くんのドレスも作ってもらう。
せっかくなので二葉さんとお母さんたちの衣装も周平くんのドレスの好きなものを選んでもらうということで話が決まった。
そして、当日。
保くんたちが車でやってきたところで、卓さんと毅さんに計画を話すと二人して同じ反応をして驚いていた。
そんな兄弟の姿に、私と二葉さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
さぁ、これから楽しい時間。いいドレスができるといいな。
駐車場で待ち合わせをしていたが、私たちの車が到着した時、すでに毅たちの車が止まっていた。
そして、私たちの車が止まるや否や、車から昇が降りてきた。
他の車が来ないかどうか確認して駆け寄ってくるあたりはさすがだが、昇には直くんしか見えていないらしい。
すぐに直くんが座っていた窓に近づき、トントンと叩く。
窓を開けてやれば嬉しそうに直くんに声をかける。
「よかった。直くん、起きてた」
「のぼりゅー!」
直くんも嬉しそうに手を伸ばす。その微笑ましい光景に絢斗は直くんの隣で女神のような微笑みを浮かべていた。
私も車を降りると、毅と二葉さんがこちらにやってくる。
「早かったな」
「昇が早く行きたいってうるさくて」
さっきの態度を見ていてもそれはよくわかる。
チラリと後ろに目を向けると、後部座席で絢斗が直くんをチャイルドシートから下ろそうとしているのが見えて、私は急いで後部座席に向かった。昇を扉から離し、直くんを受け取る。
そして反対側に回って、絢斗をエスコートして下ろした。
今の私は片手に直くん、もう片方に絢斗と両手に花だ。
「じゃあ、行こうか」
「あ、待って」
駐車場で話していても仕方がない。揃ったところでホテルに入ろうと声をかけると、絢斗がそれを止めた。
「どうした?」
「もうすぐ来るはずだから」
絢斗がそう発した途端、駐車場に二台の車が入ってきた。
その車に見覚えがある。
父と賢将さんの車だ。
「えっ? どうして?」
今日の衣装合わせは直くんと昇、それにすでに到着している一花くんだけのはずだ。
驚く私と毅をよそに絢斗と二葉さんは楽しげに笑っている。
「史紀くんと話をして、私と保くんもドレスを作ってもらうことにしたんだー」
「えっ? 絢斗と保くんのドレス?」
二葉さんはともかく、絢斗と保くんがドレスを作る?
「まだ保くんには内緒だけどね。今日は直くんのドレスを作るから一緒に考えて欲しいって連絡したんだ。ちなみにお母さんたちは知ってるよ。ね、二葉さん」
「「えっ!」」
私も毅も思いもよらないことに茫然とするしかなかった。
いつの間にか母と秋穂さん、二葉さんと絢斗の四人で計画が練られていたようだ。
「二葉さんとお母さんたちは完成しているドレスでもサイズが合うものがあるけど、私と保くんは流石に採寸しないと綺麗には着こなせないから一緒にオーダーメイドで作ってもらうことにしたんだよ」
絢斗がドレスを着たら……想像するだけで可愛いが、まさか結婚式という公の場でその姿を見られるとは思ってもなかったな。しかも母たちもその計画に参加しているのならもう決定事項だろう。
たとえ、保くんが恥ずかしがってもきっとうまくのせられてオーダーメイドのドレスをつくることになる。
ドレスが完成してしまえば、着ないのは勿体無いからと結局着ることになるだろう。
私は心の中で義弟となった保くんに頑張れと呟いた。
<side絢斗>
史紀くんの結婚式で直くんと一花ちゃんがフラワーガールをすることになった。
その話がじっくり聞きたくて、卓さんがいない間にこっそり史紀くんに電話をすると、安城くんのリクエストで史紀くんがドレス姿を披露することになったと教えてくれた。
――恥ずかしいんですけど、一生に一度の機会なのでリクエストを聞こうかと……だから一花くんにもお願いしてドレスを着てもらうことにしたんです。可愛い子がいれば私のドレス姿も隠れるかと……
電話口でもわかるほど照れていたけれど、その声がすごく幸せそうだった。
家族と親しい友人だけを招待することにしたのもそれがあるからだろう。
それならこっちにも都合がいい。
――ねぇねぇ、じゃあ私と保くんもドレス、着るっていうのはどうかな?
そんな提案に史紀くんは驚いていたけれど、その声は楽しそうだった。
――それ、めちゃくちゃいいですね!!
すぐに賛成してくれて、そこから計画が進んだ。
一花ちゃんと直くん、そして昇くんの衣装を決める時に私と保くんのドレスも作ってもらう。
せっかくなので二葉さんとお母さんたちの衣装も周平くんのドレスの好きなものを選んでもらうということで話が決まった。
そして、当日。
保くんたちが車でやってきたところで、卓さんと毅さんに計画を話すと二人して同じ反応をして驚いていた。
そんな兄弟の姿に、私と二葉さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
さぁ、これから楽しい時間。いいドレスができるといいな。
935
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『目には目を歯には歯を』
プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。
戦場からお持ち帰りなんですか?
satomi
恋愛
幼馴染だったけど結婚してすぐの新婚!ってときに彼・ベンは徴兵されて戦場に行ってしまいました。戦争が終わったと聞いたので、毎日ご馳走を作って私エミーは彼を待っていました。
1週間が経ち、彼は帰ってきました。彼の隣に女性を連れて…。曰く、困っている所を拾って連れてきた です。
私の結婚生活はうまくいくのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる