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直への相談
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「はるかちゃん、これたべていーい?」
碧斗くんと琳が直のおじいさまの両側に座り、キラキラの紙に包まれたチョコレートを手のひらに乗せて僕に見せてくる。
あれ一つなら食事が入らないこともないだろう。
「いいよ」
そう言ってあげると、嬉しそうに包みを開け始めた。
「へぇ。子どもたち、二人して西条じゃなくて友利さんに聞くんだな」
子どもたちが美味しい! と嬉しそうにチョコレートを食べているのを見て磯山さんが不思議そうに呟く。
「ん? ああ、そうだな。子どもたちの食べるものは全て遥が把握してくれているからな」
「そうなのか。友利さん、二人の母親みたいだな。西条と友利さん、役割もできててすっかり夫夫みたいじゃないか」
夫夫なんてサラッと言われて恥ずかしくなってしまう。
でも四人で家族として過ごすのはすごく気楽でいい。
ちらっと西条さんに目を向けると、西条さんが紙袋を持っているのが見えてお土産を持ってきたことを思い出した。
「あ、悠臣さん。それ」
「ああ、そうだったな。磯山、これ好きだっただろう? みんなで召し上がってくれ」
一つ目の紙袋から取り出して渡したのは、老舗和菓子店<星彩庵>のお菓子。
さすが、西条さん。美味しいお店を知ってるな。
磯山さんも直も受け取って嬉しそうにお礼を言っている。
もう一つの紙袋には僕が持ってきたお土産。
老舗和菓子店のお菓子と比べると申し訳ない気もするけれど、せっかく作ってきたから渡したい。
「直、マドレーヌ作ったんだけどよかったら皆さんで召し上がって」
「えっ? 遥の手作り? 嬉しい! ありがとう!! ねぇねぇ、開けてみてもいい?」
「うん、もちろん!」
想像以上に喜んでくれて嬉しい。
紅茶とレモンと抹茶味のマドレーヌを作ったんだけど気にいるものがあるといいな。
「わぁー! すごく美味しそう!! みて、昇さん」
「うわ、本当だ! 売り物みたいだな」
「遥、ありがとう。どの味もすっごく美味しそう!!」
二人の表情を見ると、心から喜んでくれているのがわかる。
手作りをここまで喜んでくれると嬉しいな。
「おじーちゃん。りん、おそとであそびたーい!」
「あおともー! おじーちゃん、いっしょにあそぼー!」
突然そんな声が聞こえてくる。
この広い庭を見たら遊びたくなるのもわかるけれど、直のおじいさまは百歳を超えている。
元気そうに見えるけれど、さすがに四歳児二人と遊ぶのは厳しいだろう。
「琳、碧――」
二人を止めようと声をかけると、さっと西条さんに制された。
「磯山のおじいさん、碧斗と琳と遊ぶのを楽しみしていたらしい。せっかくだから遊ばせてあげよう。大丈夫、私と磯山もついていくから」
そう言って西条さんと磯山さんが三人のもとに向かった。
そうして五人で縁側から庭に下りていく。
「おじーちゃん、あそこ、おはながいっぱいだねー!」
「琳くんはお花が好きか?」
「うん! きれーだからすきー!」
「そうか、一緒に見に行こうか」
直のおじいさまが琳と手を繋ぐと、琳が急に走り出したりしないように琳のもう片方の手を西条さんが握ってゆっくりと歩く。同じようにおじいさまが碧斗くんの手を握ると、碧斗くんのもう片方の手をさりげなく磯山さんが握り同じようにゆっくり歩き出した。
「すごい。ちゃんとわかってるんだ……」
さりげなく支える方法をよく知っていることに驚く。
「子どもたちとおじいちゃまのことは昇さんと西条さんに任せおけば大丈夫だから、僕たちはここでちょっとおしゃべりしよう」
案内された席からは庭の様子もよく見えて、何かあればすぐに駆けつけられる。
「メッセージではすごく悩んでそうだったけど、遥の顔見たら安心したよ」
「えっ? 顔?」
「うん。西条さんとの雰囲気もすごくいいし、特に気にすることはなさそうだけど、何が心配?」
心配というか、僕が何も知識がないから困っているというか……何が普通なのかよくわからない。
「その、普通って……難しいなって」
「普通?」
「うん。全ての挨拶に、キ、キスするところとか、唇についたチーズとかぺろっと舐められたりとか、ピッタリくっついて座ったりとか、どれも恋人なら普通のことって言われても、僕は何も知らないから全てにドキドキしちゃって……うまく反応できないから、悠臣さんを困らせてるんじゃないかなって思って……」
ここ数日のなんとも言えない感情を必死に伝えると、真剣に聞いてくれていた直が優しい笑みを浮かべた。
「遥が困惑する気持ち、僕もすごくわかる。でも、人によって普通ってそれぞれ違くて当然でそれを二人の中で普通にしていけたらいいんじゃないかな」
「違くて、いいのかな?」
「うん。だって、僕たちみたいに男同士のカップルそのものが普通じゃないっていう人もいるよね? でも普通っていう人もいて、それをどちらに気持ちを向けるかを決めるのは本人だし、誰かに決められるものじゃない。遥が、西条さんにされることが普通だと言われても嫌だったらそれはやめればいいし、いいと思えばそれは二人の中で普通なことになって行くんじゃないかな。遥は、西条さんとキスするのは嫌?」
西条さんとのキスはドキドキが止まらなくなるけど、決して嫌なわけじゃない。
むしろ離れた時は寂しいと思ってしまう。
「今のその気持ちが遥の本心じゃない?」
「えっ?」
「遥、顔に出てるよ。西条さんとのキスが好きだって」
直にそんなことを言われて、一気に顔が熱くなる。
慌ててほっぺたを両手で押さえた僕を見て直は楽しそうに笑っていた。
碧斗くんと琳が直のおじいさまの両側に座り、キラキラの紙に包まれたチョコレートを手のひらに乗せて僕に見せてくる。
あれ一つなら食事が入らないこともないだろう。
「いいよ」
そう言ってあげると、嬉しそうに包みを開け始めた。
「へぇ。子どもたち、二人して西条じゃなくて友利さんに聞くんだな」
子どもたちが美味しい! と嬉しそうにチョコレートを食べているのを見て磯山さんが不思議そうに呟く。
「ん? ああ、そうだな。子どもたちの食べるものは全て遥が把握してくれているからな」
「そうなのか。友利さん、二人の母親みたいだな。西条と友利さん、役割もできててすっかり夫夫みたいじゃないか」
夫夫なんてサラッと言われて恥ずかしくなってしまう。
でも四人で家族として過ごすのはすごく気楽でいい。
ちらっと西条さんに目を向けると、西条さんが紙袋を持っているのが見えてお土産を持ってきたことを思い出した。
「あ、悠臣さん。それ」
「ああ、そうだったな。磯山、これ好きだっただろう? みんなで召し上がってくれ」
一つ目の紙袋から取り出して渡したのは、老舗和菓子店<星彩庵>のお菓子。
さすが、西条さん。美味しいお店を知ってるな。
磯山さんも直も受け取って嬉しそうにお礼を言っている。
もう一つの紙袋には僕が持ってきたお土産。
老舗和菓子店のお菓子と比べると申し訳ない気もするけれど、せっかく作ってきたから渡したい。
「直、マドレーヌ作ったんだけどよかったら皆さんで召し上がって」
「えっ? 遥の手作り? 嬉しい! ありがとう!! ねぇねぇ、開けてみてもいい?」
「うん、もちろん!」
想像以上に喜んでくれて嬉しい。
紅茶とレモンと抹茶味のマドレーヌを作ったんだけど気にいるものがあるといいな。
「わぁー! すごく美味しそう!! みて、昇さん」
「うわ、本当だ! 売り物みたいだな」
「遥、ありがとう。どの味もすっごく美味しそう!!」
二人の表情を見ると、心から喜んでくれているのがわかる。
手作りをここまで喜んでくれると嬉しいな。
「おじーちゃん。りん、おそとであそびたーい!」
「あおともー! おじーちゃん、いっしょにあそぼー!」
突然そんな声が聞こえてくる。
この広い庭を見たら遊びたくなるのもわかるけれど、直のおじいさまは百歳を超えている。
元気そうに見えるけれど、さすがに四歳児二人と遊ぶのは厳しいだろう。
「琳、碧――」
二人を止めようと声をかけると、さっと西条さんに制された。
「磯山のおじいさん、碧斗と琳と遊ぶのを楽しみしていたらしい。せっかくだから遊ばせてあげよう。大丈夫、私と磯山もついていくから」
そう言って西条さんと磯山さんが三人のもとに向かった。
そうして五人で縁側から庭に下りていく。
「おじーちゃん、あそこ、おはながいっぱいだねー!」
「琳くんはお花が好きか?」
「うん! きれーだからすきー!」
「そうか、一緒に見に行こうか」
直のおじいさまが琳と手を繋ぐと、琳が急に走り出したりしないように琳のもう片方の手を西条さんが握ってゆっくりと歩く。同じようにおじいさまが碧斗くんの手を握ると、碧斗くんのもう片方の手をさりげなく磯山さんが握り同じようにゆっくり歩き出した。
「すごい。ちゃんとわかってるんだ……」
さりげなく支える方法をよく知っていることに驚く。
「子どもたちとおじいちゃまのことは昇さんと西条さんに任せおけば大丈夫だから、僕たちはここでちょっとおしゃべりしよう」
案内された席からは庭の様子もよく見えて、何かあればすぐに駆けつけられる。
「メッセージではすごく悩んでそうだったけど、遥の顔見たら安心したよ」
「えっ? 顔?」
「うん。西条さんとの雰囲気もすごくいいし、特に気にすることはなさそうだけど、何が心配?」
心配というか、僕が何も知識がないから困っているというか……何が普通なのかよくわからない。
「その、普通って……難しいなって」
「普通?」
「うん。全ての挨拶に、キ、キスするところとか、唇についたチーズとかぺろっと舐められたりとか、ピッタリくっついて座ったりとか、どれも恋人なら普通のことって言われても、僕は何も知らないから全てにドキドキしちゃって……うまく反応できないから、悠臣さんを困らせてるんじゃないかなって思って……」
ここ数日のなんとも言えない感情を必死に伝えると、真剣に聞いてくれていた直が優しい笑みを浮かべた。
「遥が困惑する気持ち、僕もすごくわかる。でも、人によって普通ってそれぞれ違くて当然でそれを二人の中で普通にしていけたらいいんじゃないかな」
「違くて、いいのかな?」
「うん。だって、僕たちみたいに男同士のカップルそのものが普通じゃないっていう人もいるよね? でも普通っていう人もいて、それをどちらに気持ちを向けるかを決めるのは本人だし、誰かに決められるものじゃない。遥が、西条さんにされることが普通だと言われても嫌だったらそれはやめればいいし、いいと思えばそれは二人の中で普通なことになって行くんじゃないかな。遥は、西条さんとキスするのは嫌?」
西条さんとのキスはドキドキが止まらなくなるけど、決して嫌なわけじゃない。
むしろ離れた時は寂しいと思ってしまう。
「今のその気持ちが遥の本心じゃない?」
「えっ?」
「遥、顔に出てるよ。西条さんとのキスが好きだって」
直にそんなことを言われて、一気に顔が熱くなる。
慌ててほっぺたを両手で押さえた僕を見て直は楽しそうに笑っていた。
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