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お泊まりしたい!
「えっ? お泊まり?」
「うん! このおうち、おっきなおふろがあるんだよー!」
「おもちゃもいっぱいあって、あそんでいいってー! ひよこさんもいっぱいいたんだよー!」
平家でこれだけの広さがある家だ。
マンションのお風呂も僕と琳が住んでいたアパートよりずっと広いけれど、ここのは別格なのかもしれない。
「でも、今日はお着替えも何も持ってきてないから今度にしよう」
おむつもミルクもいらない年齢だけど、手ぶらで、しかも初対面のおうちに泊まらせてもらうわけにはいかない。
「ああ、着替えなら気にしないでいいよ」
「えっ?」
突然絢斗さんにそんな言葉をかけられて驚いてしまう。
気にしないでいいってどういうこと?
「直くんから西条くんたちが子どもたちを連れて遊びに来てくれるって聞いて、何かあった時のためにと思って着替えやそのほかはぜーんぶ用意してるから。だから手ぶらで泊まってもらって構わないよ」
「えっ、でもそんな……っ、明日は悠臣さんもお仕事だし」
「それなら碧斗くんと琳くんだけお泊まりさせたらいいよ。ここは大人がいっぱいいるから危険なことにはならないよ」
「子どもたちだけって……でも……」
もちろん直のおじいさまのおうちだし、直のお父さんたちが見てくれるなら危ないことにはならないだろうけど。でも……いいのかな?
「ねぇ、はるかちゃん。おねがーい! りん、このおうちにおとまりしたーい!」
「あおともー! ねぇ、いいでしょー?」
二人が僕の足にしがみついて、うるうるとした目で見上げてくる。
僕がこの目に弱いとわかっててやってるんだ。
「悠臣さん、どうしますか?」
西条さんならうまく子どもたちを説得してお泊まり回避できるかも……なんてちょっと期待していたけれど、反応は全く違った。
「緑川教授がそこまで仰ってくれるなら大丈夫だろう。碧斗、琳。騒がずにお利口さんにお泊まりできるか?」
「うん! りん、おりこーさん!」
「あおともー! おりこーさん!」
「よし! じゃあ、泊まらせてもらおうか」
西条さんのその言葉に二人が「わーい!」と大声をあげて喜ぶ。
「ははっ。子どもたちの元気な声を聞いていると、私も元気になってくるよ」
直のおじいさまが目を細めて子どもたちをみる。
「碧斗くん。琳くん。明日、起きたらじじと散歩に行こうか。焼きたてのパンを買いに行こう」
「わぁー! やきたてのぱん。りん、だいすきー! はるかちゃんがやいてくれるのー! ねっ」
琳が屈託のない笑顔で僕を見てくれる。
初めてパンを焼いたのは、妹が亡くなってすぐの頃。
焼き上がりのパンを見て、久しぶりに笑顔を見せてくれた。
あれ以来、週に一度はパンを焼くようになったんだっけ。
「そうか。遥ちゃんのパンには負けるかもしれんが、そこのパンも美味しいぞ」
「おじーちゃんもぱんすきー?」
「ああ。一緒に選びに行こう!」
「うん! やくそくー!!」
琳がおじいさまに駆け寄ると、碧斗くんも一緒に駆け寄って三人で小指を重ねて約束をしている。
「遥くんも西条くんもいい子に育てたね。子どもたちは親を見て育つっていうから、いい教育をしているんだと思うよ」
「絢斗さん……ありがとうございます」
妹が亡くなって無我夢中で育ててきたから、こうして褒められるとたまらなく嬉しくなる。
そっと近づいてきた西条さんが僕の肩を抱き、優しく頭を撫でてくれる。
その温もりと優しさに涙が出そうになっていた。
「ご飯できたよー」
直の声にハッと我にかえる。
西条さんを見上げると、「行こうか」と笑顔を向けられる。
優しく立たせてくれてテーブルにいくけれど、ここには子ども用の椅子がない。
大人用の椅子に座らせるわけにもいかないから、僕と西条さんの膝に乗せるしかないか。
そう思っていると、
「琳くん。おいで」
と直が琳を膝に乗せてくれる。
隣では磯山さんが碧斗くんを膝に乗せてくれていた。
「直、ありがとう。でもそれだとゆっくりご飯食べられないよ。代わるから」
「いいよ。遥はいつも大変だろうから人手がある時くらい頼って。それに僕も琳くんたちと一緒にご飯食べるの楽しみにしてたんだから。ねぇ、昇さん」
「ああ。直が西条と友利さんのために一生懸命作ってたから味わって食べて。子どもたちのことは気にしなくていいよ」
子どもたちの前には子ども用のプレートに食事が載せられていて、今日のために準備してくれていたのがよくわかる。
「遥、今日は磯山たちに甘えよう」
「は、はい。そうですね」
目の前には手の込んだ料理がたくさん並んでいる。
時間と手間をかけて作ってくれたのがよくわかる。
「料理のプロに食べてもらうのはちょっと緊張しちゃうな」
「プロだなんてそんなことっ」
一応お金もらって作ってるからプロといえばそうなんだろうけど改めて言われると照れる。
「いただきます」
美味しそうな匂いを漂わせていたビーフシチューをいただく。
お肉がほろほろでどれだけ煮込んでいたんだろうとびっくりする。
「ん! 美味しい!!」
普段人が作ったものを食べる機会があまりないから、余計に美味しく感じられる。
「わぁ、遥に褒められると嬉しい!」
喜んでくれる直に、琳も「これ、おいしー!」と笑顔を向けていた。
食事の最中、気になったことを思い出して西条さんに尋ねてみた。
「あの、さっき緑川教授って……誰のことですか?」
「ああ、絢斗さんのことだよ。私や磯山、それに直くんが通っていた大学の教授だったんだ。今はもう退官しているけどね」
「えっ! 大学、教授?」
僕のイメージする教授と絢斗さんとのイメージがあまりにも違いすぎて、思わず大きな声を上げてしまった。
「うん! このおうち、おっきなおふろがあるんだよー!」
「おもちゃもいっぱいあって、あそんでいいってー! ひよこさんもいっぱいいたんだよー!」
平家でこれだけの広さがある家だ。
マンションのお風呂も僕と琳が住んでいたアパートよりずっと広いけれど、ここのは別格なのかもしれない。
「でも、今日はお着替えも何も持ってきてないから今度にしよう」
おむつもミルクもいらない年齢だけど、手ぶらで、しかも初対面のおうちに泊まらせてもらうわけにはいかない。
「ああ、着替えなら気にしないでいいよ」
「えっ?」
突然絢斗さんにそんな言葉をかけられて驚いてしまう。
気にしないでいいってどういうこと?
「直くんから西条くんたちが子どもたちを連れて遊びに来てくれるって聞いて、何かあった時のためにと思って着替えやそのほかはぜーんぶ用意してるから。だから手ぶらで泊まってもらって構わないよ」
「えっ、でもそんな……っ、明日は悠臣さんもお仕事だし」
「それなら碧斗くんと琳くんだけお泊まりさせたらいいよ。ここは大人がいっぱいいるから危険なことにはならないよ」
「子どもたちだけって……でも……」
もちろん直のおじいさまのおうちだし、直のお父さんたちが見てくれるなら危ないことにはならないだろうけど。でも……いいのかな?
「ねぇ、はるかちゃん。おねがーい! りん、このおうちにおとまりしたーい!」
「あおともー! ねぇ、いいでしょー?」
二人が僕の足にしがみついて、うるうるとした目で見上げてくる。
僕がこの目に弱いとわかっててやってるんだ。
「悠臣さん、どうしますか?」
西条さんならうまく子どもたちを説得してお泊まり回避できるかも……なんてちょっと期待していたけれど、反応は全く違った。
「緑川教授がそこまで仰ってくれるなら大丈夫だろう。碧斗、琳。騒がずにお利口さんにお泊まりできるか?」
「うん! りん、おりこーさん!」
「あおともー! おりこーさん!」
「よし! じゃあ、泊まらせてもらおうか」
西条さんのその言葉に二人が「わーい!」と大声をあげて喜ぶ。
「ははっ。子どもたちの元気な声を聞いていると、私も元気になってくるよ」
直のおじいさまが目を細めて子どもたちをみる。
「碧斗くん。琳くん。明日、起きたらじじと散歩に行こうか。焼きたてのパンを買いに行こう」
「わぁー! やきたてのぱん。りん、だいすきー! はるかちゃんがやいてくれるのー! ねっ」
琳が屈託のない笑顔で僕を見てくれる。
初めてパンを焼いたのは、妹が亡くなってすぐの頃。
焼き上がりのパンを見て、久しぶりに笑顔を見せてくれた。
あれ以来、週に一度はパンを焼くようになったんだっけ。
「そうか。遥ちゃんのパンには負けるかもしれんが、そこのパンも美味しいぞ」
「おじーちゃんもぱんすきー?」
「ああ。一緒に選びに行こう!」
「うん! やくそくー!!」
琳がおじいさまに駆け寄ると、碧斗くんも一緒に駆け寄って三人で小指を重ねて約束をしている。
「遥くんも西条くんもいい子に育てたね。子どもたちは親を見て育つっていうから、いい教育をしているんだと思うよ」
「絢斗さん……ありがとうございます」
妹が亡くなって無我夢中で育ててきたから、こうして褒められるとたまらなく嬉しくなる。
そっと近づいてきた西条さんが僕の肩を抱き、優しく頭を撫でてくれる。
その温もりと優しさに涙が出そうになっていた。
「ご飯できたよー」
直の声にハッと我にかえる。
西条さんを見上げると、「行こうか」と笑顔を向けられる。
優しく立たせてくれてテーブルにいくけれど、ここには子ども用の椅子がない。
大人用の椅子に座らせるわけにもいかないから、僕と西条さんの膝に乗せるしかないか。
そう思っていると、
「琳くん。おいで」
と直が琳を膝に乗せてくれる。
隣では磯山さんが碧斗くんを膝に乗せてくれていた。
「直、ありがとう。でもそれだとゆっくりご飯食べられないよ。代わるから」
「いいよ。遥はいつも大変だろうから人手がある時くらい頼って。それに僕も琳くんたちと一緒にご飯食べるの楽しみにしてたんだから。ねぇ、昇さん」
「ああ。直が西条と友利さんのために一生懸命作ってたから味わって食べて。子どもたちのことは気にしなくていいよ」
子どもたちの前には子ども用のプレートに食事が載せられていて、今日のために準備してくれていたのがよくわかる。
「遥、今日は磯山たちに甘えよう」
「は、はい。そうですね」
目の前には手の込んだ料理がたくさん並んでいる。
時間と手間をかけて作ってくれたのがよくわかる。
「料理のプロに食べてもらうのはちょっと緊張しちゃうな」
「プロだなんてそんなことっ」
一応お金もらって作ってるからプロといえばそうなんだろうけど改めて言われると照れる。
「いただきます」
美味しそうな匂いを漂わせていたビーフシチューをいただく。
お肉がほろほろでどれだけ煮込んでいたんだろうとびっくりする。
「ん! 美味しい!!」
普段人が作ったものを食べる機会があまりないから、余計に美味しく感じられる。
「わぁ、遥に褒められると嬉しい!」
喜んでくれる直に、琳も「これ、おいしー!」と笑顔を向けていた。
食事の最中、気になったことを思い出して西条さんに尋ねてみた。
「あの、さっき緑川教授って……誰のことですか?」
「ああ、絢斗さんのことだよ。私や磯山、それに直くんが通っていた大学の教授だったんだ。今はもう退官しているけどね」
「えっ! 大学、教授?」
僕のイメージする教授と絢斗さんとのイメージがあまりにも違いすぎて、思わず大きな声を上げてしまった。
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