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碧斗くんは真剣な表情でまずは自分の名前を書き始めた。
『あ』も『お』も平仮名の中では難しい部類に入るだろう。
昨日覚えたばかりでどうかなと思ったけれど、碧斗くんが書いた字は読めなくもない。
というか、書き始めたばかりで上手なほうだ。
「わぁー! あおとくん、じょーず!」
琳が誉めたのが嬉しかったのか、碧斗くんは満面の笑みを浮かべている。
「ぱぱー、ここにりんくんの、おなまえかいてー!」
碧斗くんが西条さんに鉛筆を渡すと、西条さんは少し緊張した様子だったけれど、自由帳の上のほうに『りん』と平仮名で書いてくれた。
字は人を表すというけれど、その通り筆圧が強く、線のバランスがいい西条さんの字は、しっかりと自分というものを持っている几帳面な人という印象を受けた。
碧斗くんは西条さんの字をお手本にして、琳の名前を書いてくれる。
『ん』の字の波が難しいみたいで二個くらい波が付いている文字もあったけれど、西条さんはそれを注意することもなく、碧斗くんが書くのを見守っていた。
すると、何度か書く頃には、『り』も『ん』もびっくりするくらい上手に書けるようになっていて驚いた。
ある意味、自分の名前である『あおと』よりも上手なくらいだ。
それには琳も大喜びしていた。
「あおとくん、じょーずだね! ねぇねぇ、えほんみながらほかのじもいっぱいかいてみよー!」
「うん!! かくー!!」
碧斗くんは琳に誘われるままに椅子から下りる。
僕がそっと琳を椅子から下ろしてやると、二人で手を繋いでサークルの方に入って行った。
その後ろを西条さんが付いていき、碧斗くんと琳をサークルの中に入れてこちらに戻ってきた。
「幼稚園に入れば字なんてすぐに覚えるだろうと、碧斗の自主性に任せていたが、りんくんのおかげで字への興味が湧いたようだ。やっぱりこの年齢の子には友だちの力はすごいな」
「そうですね。子ども同士の方がやる気になるのは多いかもしれませんね」
西条さんはサークルの中で遊ぶ二人に視線を送り、僕を見た。
「りんくんは、どんな漢字を書くんだ?」
そう尋ねられて僕は目の前にあった、もう一冊の自由帳を開いた。
そして、<琳>と書いて見せると西条さんは頷いていた。
「なるほど。宝石か、綺麗な名前だな。碧斗と同じ意味とはこれも運命なんだろうな」
そう言われれば、碧斗くんの碧も美しい宝石の意味。
あの子たちが出会ってすぐにこんなにも仲良くなれたのは、同じ意味を持つ者同士、何か通じ合うものがあったのかもしれない。
――清らかで、光り輝く幸せな人生を歩んでほしい。
そんな意味を込めてつけたと琳の名前の由来を教えてくれた妹に、碧斗くんと一緒にいて幸せそうな琳の姿を見せてやったらきっと喜ぶだろうな。
少し仕事をしてくる。そう言って部屋に戻った西条さんを見送り、碧斗くんと琳を見つつ、雑用を終えて夕食の準備に取り掛かる。
さっきおやつも食べたし、子どもたちの分は少なめにしておこうか。
いや、碧斗くんの食欲なら普通に食べられるかな。
西条さんは……昼間スパゲッティーだったし、夜はご飯がいいかな。
こうしてそれぞれにあうメニューを考えるのも楽しい。
そして熟考の結果、炊き込みご飯を作ることにした。
子どもたちはそれをおにぎりにして出したら、琳も自分で食べられる。
あとは卵スープと……唐揚げにしようかな。
西条さんには、カレイの煮付けでも作ろうか。メニューが決まれば早い。
ささっと炊き込みご飯を仕込んで炊飯器のスイッチを押した。
具材が多めの味噌汁と、唐揚げの下味をつけて、魚の煮付けも作り始めた。
そういえば、先にお風呂に入るかな?
西条さんに聞いておこう。
西条さんの自室に行き、声をかけると少し慌てた様子で出てくるのが見えた。
もしかしてリモートで打ち合わせでもしていたのかもしれない。
「お邪魔して、すみません。あの、夕食とお風呂どちらを先にするか、聞くのを忘れてしまって……。先にご飯にしますか? それともお風呂に入ります?」
お風呂に入るなら、お湯のスイッチを入れておかないと……なんて考えながら、答えを待っているとなかなか答えが聞こえない。
「西条さん?」
もう一度尋ねると、西条さんはなぜか僕を見ながら固まっていたけれど、ハッとした様子で答えてくれた。
「あ、悪い。そうだな、先に碧斗と風呂に入ろうか」
「わかりました。お湯を張って、碧斗くんに声をかけておきますね」
頼むよという言葉に笑顔で返し、パタンと扉を閉める。
仕事中の邪魔しちゃって申し訳なかったな。
明日からはちゃんと前もって聞いておかないと!
僕はもっていたメモ帳に忘れないように書いておいた。
『あ』も『お』も平仮名の中では難しい部類に入るだろう。
昨日覚えたばかりでどうかなと思ったけれど、碧斗くんが書いた字は読めなくもない。
というか、書き始めたばかりで上手なほうだ。
「わぁー! あおとくん、じょーず!」
琳が誉めたのが嬉しかったのか、碧斗くんは満面の笑みを浮かべている。
「ぱぱー、ここにりんくんの、おなまえかいてー!」
碧斗くんが西条さんに鉛筆を渡すと、西条さんは少し緊張した様子だったけれど、自由帳の上のほうに『りん』と平仮名で書いてくれた。
字は人を表すというけれど、その通り筆圧が強く、線のバランスがいい西条さんの字は、しっかりと自分というものを持っている几帳面な人という印象を受けた。
碧斗くんは西条さんの字をお手本にして、琳の名前を書いてくれる。
『ん』の字の波が難しいみたいで二個くらい波が付いている文字もあったけれど、西条さんはそれを注意することもなく、碧斗くんが書くのを見守っていた。
すると、何度か書く頃には、『り』も『ん』もびっくりするくらい上手に書けるようになっていて驚いた。
ある意味、自分の名前である『あおと』よりも上手なくらいだ。
それには琳も大喜びしていた。
「あおとくん、じょーずだね! ねぇねぇ、えほんみながらほかのじもいっぱいかいてみよー!」
「うん!! かくー!!」
碧斗くんは琳に誘われるままに椅子から下りる。
僕がそっと琳を椅子から下ろしてやると、二人で手を繋いでサークルの方に入って行った。
その後ろを西条さんが付いていき、碧斗くんと琳をサークルの中に入れてこちらに戻ってきた。
「幼稚園に入れば字なんてすぐに覚えるだろうと、碧斗の自主性に任せていたが、りんくんのおかげで字への興味が湧いたようだ。やっぱりこの年齢の子には友だちの力はすごいな」
「そうですね。子ども同士の方がやる気になるのは多いかもしれませんね」
西条さんはサークルの中で遊ぶ二人に視線を送り、僕を見た。
「りんくんは、どんな漢字を書くんだ?」
そう尋ねられて僕は目の前にあった、もう一冊の自由帳を開いた。
そして、<琳>と書いて見せると西条さんは頷いていた。
「なるほど。宝石か、綺麗な名前だな。碧斗と同じ意味とはこれも運命なんだろうな」
そう言われれば、碧斗くんの碧も美しい宝石の意味。
あの子たちが出会ってすぐにこんなにも仲良くなれたのは、同じ意味を持つ者同士、何か通じ合うものがあったのかもしれない。
――清らかで、光り輝く幸せな人生を歩んでほしい。
そんな意味を込めてつけたと琳の名前の由来を教えてくれた妹に、碧斗くんと一緒にいて幸せそうな琳の姿を見せてやったらきっと喜ぶだろうな。
少し仕事をしてくる。そう言って部屋に戻った西条さんを見送り、碧斗くんと琳を見つつ、雑用を終えて夕食の準備に取り掛かる。
さっきおやつも食べたし、子どもたちの分は少なめにしておこうか。
いや、碧斗くんの食欲なら普通に食べられるかな。
西条さんは……昼間スパゲッティーだったし、夜はご飯がいいかな。
こうしてそれぞれにあうメニューを考えるのも楽しい。
そして熟考の結果、炊き込みご飯を作ることにした。
子どもたちはそれをおにぎりにして出したら、琳も自分で食べられる。
あとは卵スープと……唐揚げにしようかな。
西条さんには、カレイの煮付けでも作ろうか。メニューが決まれば早い。
ささっと炊き込みご飯を仕込んで炊飯器のスイッチを押した。
具材が多めの味噌汁と、唐揚げの下味をつけて、魚の煮付けも作り始めた。
そういえば、先にお風呂に入るかな?
西条さんに聞いておこう。
西条さんの自室に行き、声をかけると少し慌てた様子で出てくるのが見えた。
もしかしてリモートで打ち合わせでもしていたのかもしれない。
「お邪魔して、すみません。あの、夕食とお風呂どちらを先にするか、聞くのを忘れてしまって……。先にご飯にしますか? それともお風呂に入ります?」
お風呂に入るなら、お湯のスイッチを入れておかないと……なんて考えながら、答えを待っているとなかなか答えが聞こえない。
「西条さん?」
もう一度尋ねると、西条さんはなぜか僕を見ながら固まっていたけれど、ハッとした様子で答えてくれた。
「あ、悪い。そうだな、先に碧斗と風呂に入ろうか」
「わかりました。お湯を張って、碧斗くんに声をかけておきますね」
頼むよという言葉に笑顔で返し、パタンと扉を閉める。
仕事中の邪魔しちゃって申し訳なかったな。
明日からはちゃんと前もって聞いておかないと!
僕はもっていたメモ帳に忘れないように書いておいた。
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