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お風呂に入ろう
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お風呂の湯張りスイッチをオンにして、僕はサークルにいる琳たちの元に向かった。
「碧斗くん、そろそろお片付けしようか。パパがご飯の前にお風呂に入ろうって」
「おふろ? りんくんもいっしょ?」
碧斗くんからすぐに琳の名前が出てきて驚くけれど、さすがに西条さんに琳のお風呂は頼めない。
「ううん。琳はご飯の後に僕と一緒に入るよ」
「ええー、りんくんもいっしょがいいー! おててけがしてるし、あおとがおてつだいしなきゃ! ねー、りんくんもいっしょがいいよね?」
「うん! りんもあおとくんといっしょにはいるー!! はるかちゃん、いいでしょー?」
どうしてこんな短時間に仲良くなったんだろう……と思うくらい、二人の息が合っている。
琳と碧斗くんの二人にキラキラとした目で見つめられても西条さんにそんなことは頼めない。
どうしようか……。
「いいでしょー?」
「はるかちゃん、いいっていってぇー」
サークル越しに二人に詰め寄られていると、西条さんが自室から出てきた。
碧斗くんに声をかけてくると言ったのに、まだサークルの中に碧斗くんがいるのを見て、何をやっているんだろうと思われたのかもしれない。
「大騒ぎしてどうしたんだ? 碧斗、風呂に入るぞ」
西条さんが声をかけるも、逆に碧斗くんからこっちにきてと呼ばれ、不思議そうな表情をしながら西条さんがこちらにやってきた。
「あのねー、りんくんといっしょにおふろはいりたいのー! ぱぱがりんくんのおてつだいをするようにってあおとにいったよね? だから、あおと。おてつだいするのー!!」
西条さんを見るなり、碧斗くんが笑顔で告げるけれど、西条さんは僕の顔を見て困惑の表情を浮かべた。
「いや……それは……」
西条さんが困惑するのもわかる。子どもをお風呂を入れるのは結構大変な作業だ。
自分が髪や身体を洗っているときに、溺れたりしないか目を離さないようにしないといけない。
その上、琳をお風呂に入れるとなると、手を怪我しているから手を濡らさないようにしないといけないし、洗うのも集中しないといけない。普段碧斗くんだけを入れているよりも三倍も四倍も大変になる。
だから簡単に良いよとは言えない状況だ。
でも碧斗くんは一緒に入る気満々だし、琳もすっかり碧斗くんにお世話されることに慣れてしまっている。
ふぅ……仕方がないな。
「わかった、じゃあご飯食べ終わってから僕と三人で入ろうか。西条さんは一人でのんびり入って――」
これが一番良い妥協案だろうと思って提案したけれど、僕の声を遮るように西条さんの声が響き渡った。
「それはダメだ!」
「えっ」
その声に僕も、あれほど騒いでいた子どもたちも一瞬でピタッと静まり返り、西条さんを見つめた。
「あ、いや……食事も作って、二人も風呂に入れるのは遥くんに負担がかかるだろう?」
「そんなことは――」
お風呂はともかく、食事も片付けも仕事としてやっているくらい楽しいし、負担と思ったこともない。
だから西条さんが気にしなくても良いのだけど、西条さんは気になったんだろうか。
「私が二人を入れよう。それなら何の問題もない」
そんな提案をしてきた。
「でも、一人で二人の子どもを入れるのは大変ですよ」
「大丈夫。問題ないよ」
そういうが早いか、すぐに碧斗くんと琳にお風呂に行こうと誘い、二人をサークルから抱きかかえて出してくれる。
「わぁーい! りんくん、いっしょにおふろだよー!」
「よかったねー、たのしみだねー!」
すっかりウキウキの様子の二人を見ながら、僕は西条さんに声をかけた。
「あの、それじゃあ琳の身体を洗ったら声をかけてください。脱衣所まで琳を受け取りに来ます。碧斗くんのときも声をかけてくれたら受け取りに行きますよ。着替えやその他は僕がしますので、その後、少しのんびりと入ってください」
子ども二人をお風呂にいれるのは結構体力も消耗するから、洗ってもらったあとは一人でのんびり浸かってもらおう。お風呂場からリビングに知らせるボタンがあったのを覚えていてよかった。
「だが……その、そちらの方が大変じゃないか?」
「いえ、後でゆっくりお風呂に入らせてもらえると思ったら楽でしかないですよ」
琳と一緒に生活するようになってからは一度も一人で入ったことはないから、ちょっと楽しみにも思えてしまう。
「……そうか、ならそうしようか」
「はい。あ、後でパソコンをお借りできますか?」
さっき思い出したことを忘れないうちに西条さんに尋ねてみた。
「パソコン?」
「あの……会社に今日の報告書を送らないといけなくて……」
これまでは仕事を終えた後、会社に戻って報告書を書いていた。
幸いなことに、今は西条さんご自宅での専属契約で拘束時間が長いからメールで報告書を送っていいと言われていたけれど、まさかこんなことになるとは思っていなかったからパソコンを持ってきていない。西条さんにそのことを話した。
「そうか、わかった。後で遥くんが使えるようにしてパソコンを渡すよ」
「ありがとうございます」
そうして、西条さんは碧斗くんと琳を連れて、脱衣所に入っていった。
「碧斗くん、そろそろお片付けしようか。パパがご飯の前にお風呂に入ろうって」
「おふろ? りんくんもいっしょ?」
碧斗くんからすぐに琳の名前が出てきて驚くけれど、さすがに西条さんに琳のお風呂は頼めない。
「ううん。琳はご飯の後に僕と一緒に入るよ」
「ええー、りんくんもいっしょがいいー! おててけがしてるし、あおとがおてつだいしなきゃ! ねー、りんくんもいっしょがいいよね?」
「うん! りんもあおとくんといっしょにはいるー!! はるかちゃん、いいでしょー?」
どうしてこんな短時間に仲良くなったんだろう……と思うくらい、二人の息が合っている。
琳と碧斗くんの二人にキラキラとした目で見つめられても西条さんにそんなことは頼めない。
どうしようか……。
「いいでしょー?」
「はるかちゃん、いいっていってぇー」
サークル越しに二人に詰め寄られていると、西条さんが自室から出てきた。
碧斗くんに声をかけてくると言ったのに、まだサークルの中に碧斗くんがいるのを見て、何をやっているんだろうと思われたのかもしれない。
「大騒ぎしてどうしたんだ? 碧斗、風呂に入るぞ」
西条さんが声をかけるも、逆に碧斗くんからこっちにきてと呼ばれ、不思議そうな表情をしながら西条さんがこちらにやってきた。
「あのねー、りんくんといっしょにおふろはいりたいのー! ぱぱがりんくんのおてつだいをするようにってあおとにいったよね? だから、あおと。おてつだいするのー!!」
西条さんを見るなり、碧斗くんが笑顔で告げるけれど、西条さんは僕の顔を見て困惑の表情を浮かべた。
「いや……それは……」
西条さんが困惑するのもわかる。子どもをお風呂を入れるのは結構大変な作業だ。
自分が髪や身体を洗っているときに、溺れたりしないか目を離さないようにしないといけない。
その上、琳をお風呂に入れるとなると、手を怪我しているから手を濡らさないようにしないといけないし、洗うのも集中しないといけない。普段碧斗くんだけを入れているよりも三倍も四倍も大変になる。
だから簡単に良いよとは言えない状況だ。
でも碧斗くんは一緒に入る気満々だし、琳もすっかり碧斗くんにお世話されることに慣れてしまっている。
ふぅ……仕方がないな。
「わかった、じゃあご飯食べ終わってから僕と三人で入ろうか。西条さんは一人でのんびり入って――」
これが一番良い妥協案だろうと思って提案したけれど、僕の声を遮るように西条さんの声が響き渡った。
「それはダメだ!」
「えっ」
その声に僕も、あれほど騒いでいた子どもたちも一瞬でピタッと静まり返り、西条さんを見つめた。
「あ、いや……食事も作って、二人も風呂に入れるのは遥くんに負担がかかるだろう?」
「そんなことは――」
お風呂はともかく、食事も片付けも仕事としてやっているくらい楽しいし、負担と思ったこともない。
だから西条さんが気にしなくても良いのだけど、西条さんは気になったんだろうか。
「私が二人を入れよう。それなら何の問題もない」
そんな提案をしてきた。
「でも、一人で二人の子どもを入れるのは大変ですよ」
「大丈夫。問題ないよ」
そういうが早いか、すぐに碧斗くんと琳にお風呂に行こうと誘い、二人をサークルから抱きかかえて出してくれる。
「わぁーい! りんくん、いっしょにおふろだよー!」
「よかったねー、たのしみだねー!」
すっかりウキウキの様子の二人を見ながら、僕は西条さんに声をかけた。
「あの、それじゃあ琳の身体を洗ったら声をかけてください。脱衣所まで琳を受け取りに来ます。碧斗くんのときも声をかけてくれたら受け取りに行きますよ。着替えやその他は僕がしますので、その後、少しのんびりと入ってください」
子ども二人をお風呂にいれるのは結構体力も消耗するから、洗ってもらったあとは一人でのんびり浸かってもらおう。お風呂場からリビングに知らせるボタンがあったのを覚えていてよかった。
「だが……その、そちらの方が大変じゃないか?」
「いえ、後でゆっくりお風呂に入らせてもらえると思ったら楽でしかないですよ」
琳と一緒に生活するようになってからは一度も一人で入ったことはないから、ちょっと楽しみにも思えてしまう。
「……そうか、ならそうしようか」
「はい。あ、後でパソコンをお借りできますか?」
さっき思い出したことを忘れないうちに西条さんに尋ねてみた。
「パソコン?」
「あの……会社に今日の報告書を送らないといけなくて……」
これまでは仕事を終えた後、会社に戻って報告書を書いていた。
幸いなことに、今は西条さんご自宅での専属契約で拘束時間が長いからメールで報告書を送っていいと言われていたけれど、まさかこんなことになるとは思っていなかったからパソコンを持ってきていない。西条さんにそのことを話した。
「そうか、わかった。後で遥くんが使えるようにしてパソコンを渡すよ」
「ありがとうございます」
そうして、西条さんは碧斗くんと琳を連れて、脱衣所に入っていった。
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