ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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意識をさせるために…… 6

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碧斗と琳くんと一緒におもちゃをサークルの中に運び入れていると、遥くんが私を呼びかける。
すぐに反応して遥くんを見ると私が買ってきた遥くんと色違いの揃いのパジャマを胸に当てている。

それだけで私のパジャマを着ているようでグッとくるが必死に冷静を装った。

「それは私のだ。せっかくだから私の分も買ったんだよ」

あくまでもついでだと思わせるように話をしてみたのだが、

「そうなんですね。西条さんのすっごくおっきくてびっくりしました」

遥くんからそんな答えが返ってきて一気に妄想が膨らんだ。

――西条さんのすっごくおっきくて……

まずいっ! そこだけが頭の中でエンドレスに流れていく。
とめどなく興奮が高まりかけた時、目の前の遥くんが心配そうに私を見つめる。

「西条さん? どうかしましたか?」

「あ、いや。なんでもない。私のパジャマを脱衣所に運んでおいてくれないか」

必死になんでもないと誤魔化して、遥くんをこの場から遠ざけた。
素直で助かる。

ズボンの中で首を擡げそうになっていた昂りを叱咤しながら何度も深呼吸して心を落ち着かせた。

「ぱぱー、おかたづけしたー!」

碧斗の声にホッとして、サークルから二人を出した。

ラグに座って話をしている私たちを見ながら、脱衣所から戻ってきた遥くんがそのまま夕食の支度を始める。
いつの間にか元の服に戻っている。料理をするから着替えたのか……。
汚れても別に構わないが、遥くんは汚したくないと思ってくれたのだろう。
次は気兼ねなく着て貰えそうな服を選ぶとしようか。

包丁で軽快に食材を切る音になんだか居心地の良さを感じていると、碧斗が夕食後にお風呂に入ろうと誘ってきた。きっと琳くんも一緒に入りたいと言うだろうと思って琳くんを誘ったまでは良かったが、碧斗が遥くんも一緒に入ろうと誘い始めた。その声に琳くんまで賛同して誘い始めたが、琳くんはともかく碧斗とは一緒に入らせたくない。それどころか、一緒に入って遥くんの裸を目の当たりにしたら子どもたちの前とはいえ、欲望を抑える自信がない。

遥くんはどう思っているだろうと視線を向ければ、断って欲しいと目で訴えてくるのがわかる。

もちろん断るつもりだが、すぐに断っては面白くない。
わざと一旦受け入れて見せると遥くんの表情が一気に赤くなった。
少しずつ意識しているのがわかって嬉しくなる。

それがわかればいい。

「碧斗、琳くん。遥くんは朝からずーっと私たちのために家のことをしてくれているから、お風呂はゆっくり一人で入ってもらおう」

二人にそう提案したが、

「えーっ、いっしょのほうがたのしーよ」
「うん! ぜったいたのしー!!」

一緒になって誘い続けてくる。

ここは楽しいことで気を紛らわせるしかない。

私はとっておきの秘策を考えた。
碧斗と琳くんだけに聞こえるように二人の耳に口を近づけて囁いた。

「遥くんをみんなで姫にしてあげよう」

「ひめ?」

「そう、お風呂でゆっくり過ごしてもらって、お風呂から出てきたら碧斗と琳くんは肩を叩いてあげて、みんなでお世話するんだ。遥くん、きっと気持ちよさそうに眠ってしまうぞ。みんなで姫にしてやろう。これは遥くんには秘密だ。なっ」

私が話したことをどれほど理解してくれているかわからないが、秘密という言葉に二人は目を輝かせた。
すっかりやる気になった二人は遥くんを一緒の風呂には誘わなくなりホッとした。
よし、これで二人がマッサージするのにかこつけて、私も遥くんの世話ができる。

これこそ一石二鳥だな。

「はるかちゃん、おふろひとりではいっていーよ!」

「ゆっくりしてねー!!」

キッチンで料理をする遥くんに浮かれた様子で話しかける碧斗と琳くんを可愛いと思いながら、私はこれからのことを楽しみにしていた。

夕食の支度が整い、遥くんがテーブルに料理を並べ始めた。
そろそろ頼んでいたものが届いてもおかしくないが……と思っていたところにコンシェルジュからの連絡が来た。
荷物搬入用のエレベーターの操作をして、玄関に向かうと碧斗と琳くんもついてくる。
すっかり二児の父になった気分だ。

玄関を開け、コンシェルジュからの荷物を受け取ると、

「わぁー、おっきぃー!! ぱぱ、これなぁに?」

と碧斗が目を輝かせて聞いてくる。
さっきのお土産も見た後だからきっと嬉しいものが入っていると思っているんだろう。

「ははっ。いいものだぞ」

もったいつけて一緒にリビングに戻り二人の目の前で箱を開けてやると一部分が見えただけで碧斗はすぐにわかったようだ。

「これは琳くんのだ。碧斗のとお揃いだからたべやすくなるぞ」

「わぁー!! りんのいすー!!」

「よかったね、りんくん。あおとのとおなじだよー!!」

やはりお揃いという言葉を出した方が喜ぶな。
琳くんの椅子をテーブルにセットしてやると、碧斗は嬉しそうに自分の椅子を琳くんの椅子に近づけ始めた。
男の子と言ってもまだ三歳。さすがに重すぎて動かせない様子だ。

「こんなに近いと食べにくくないか?」

「いいの! りんくんのちかくがいーの!!」

「ははっ。わかった、わかった」

素直に気持ちを伝えられる碧斗を羨ましく思いながら、椅子をピッタリとくっつけてやると碧斗はこの上ない笑顔を見せた。

そして食事が始まった。
キッチンにつけるように置いている半円のテーブルの真ん中に碧斗と琳くんを座らせ、私と遥くんが両端に座る。
遥くんとの距離は遠いが、食べる姿を自然に見られるのはこの席の特権だろう。
慣れない左手でフォークを持って食べている琳くんの間を縫うように、碧斗が琳くんの食べたそうなものを口に運ぶ。
この数回の食事ですっかりそれに慣れたようだ。
そのおかげで碧斗と変わらないくらいの速さで琳くんも食事を進めている。

遥くんはそんな二人の様子を驚きながら食事をして、やることがないと思ったのか私のおかわりに声をかけてくれた。

私の味噌汁のおかわりを遥くんがよそってくれる。なんともいえない家族のような時間が心地いい。
渡してくれる時にそっと遥くんの指に触れる。それもドキドキする。
私はすっかり恋にハマった中学生のようだ。

「ぱぱー、きょうねー。おそとでごはんたべたんだよー!」

食事をしながら碧斗が教えてくれるが外で食事とは一体どういうことだろう?
あの後の映像は見なかったからわからない。

不思議に思っていると、遥くんが気分を変えるためにテラスで食べたと教えてくれた。
なるほど、そういうことか。子どもたちの興味を惹くためによく考えてくれていると感心する。

「碧斗も琳くんも楽しめてよかったな」

「あのねー、とまとぴゅーしたの」

「ん?」

とまとぴゅー?
一体何のことだと思っていると、すぐに遥くんから説明が入る。
どうやらトマトの汁が飛んだと教えてくれようといたらしい。
だから着替えたのか。それで碧斗が琳くんの服を選んだんだと嬉しそうに教えてくれた。

「そうか、貸してあげられて偉かったな」

碧斗の頭を撫でて褒めていると琳くんが不思議そうに私を見ていた。
どうしたんだろう? 琳くんも頭を撫でられたいんだろうか?
だが、私が頭を撫でるのは碧斗が嫌がりそうだが……。
すると、思いもかけない言葉が飛び出した。

「おじちゃんは、ぱぱなの? おじちゃんなの? さいじょーさんは、だれ?」

キョトンとした顔で質問されるが、質問の意図が全くわからない。
さすがの遥くんもわからないようで琳くんに聞き返す。その説明で遥くんはわかったようだが私はまだわからないままだ。

「遥くん、どういうことなんだ?」

尋ねてみれば、なんとも難しそうに言葉を選びながら教えてくれた。

「あの、僕が西条さんと呼びかけているのが不思議に思ったみたいです。保育園では保護者はみんな子どもの名前にパパ、ママをつけて呼び合っていたので……」

なるほど、初日に碧斗に名前を統一したいと頼んできたのはこうなることをわかっていたからか。
確かに碧斗は私をパパと呼び、遥くんは西条さんと呼ぶ。私のことをおじちゃんと呼んでいた琳くんが混乱するのも無理はない。それなら琳くんも同じにしたらいい。

「私のことは碧斗くんのパパでもいいが、長いから琳くんにはいいにくいだろう。琳くん、私のことは碧斗と同じでパパと呼んでくれて構わない」

私の言葉に素直に琳くんは小首を傾げる。

「ぱぱ?」

その言い方が悶絶しそうなくらい可愛い。
碧斗とはまた違った可愛さでこれはこれで最高だ。

「あの、パパは碧斗くんだけの呼び方にした方が……」

遥くんは碧斗の気持ちを思ってくれたのかそんなことを言ってくるが、碧斗は問題ない。

「いや、私の子どもだと思ってもらった方が、これからいろいろと・・・・・安心だろう?」

含みを持たせて言ってやれば遥くんは勘違いしたようだ。
外で琳くんが私をパパとと呼べば、もしあいつらに見られても誤魔化せると思っている。
もちろんその意味もあるが、これから先私たちが本当の家族となった時に、琳くんが私をパパと呼ぶことに抵抗がなくなっている方がありがたい。

もう私の中ではこの四人で家族になることを決めているのだから……。
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