パパ活相手は婚約者? 〜セレブなイケメン社長に抗えません

波木真帆

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待ち合わせのカフェで

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「なぁ、史希しき。今日、時間ある?」

「うん。今日は講義も全部終わったし、バイトもない日だし大丈夫だよ。あ、映画でも見にいく? この前映画観たいって言ってたよね?」

「ああ。映画は観たいんだけど……今日はそうじゃなくて……史希に頼みがあるんだ!!」

「頼み?」

「あのさ………………」

「ええーっ!! 無理無理!!」

「大丈夫だって! 新規の人だし、俺じゃないってバレないから! 今日彼女とのデートの約束入れてたの忘れてて……今日ドタキャンしたらまずいんだよ。なっ、頼む! 唯奈ゆいなに振られたら俺、困るんだよ……」

「でも……」

「これ、今日の場所と相手の連絡先な」

「あっ、ちょ――っ!!」

「頼むぜー!」

走って教室を出ていくつかさを急いで追いかけたけれど、隣には彼女の唯奈ちゃんの姿が見えて僕は追いかけるのをやめた。

手の中にある、さっき司から渡されたメモを見ながら僕ははぁーーーっと大きなため息をついた。


僕は安曇あずみ史希しき。都内の大学に通う20歳、大学生。
実家は九州で、こっちで一人暮らしをしている。
さっきのは高崎たかさきつかさ
大学に入ってから知り合った同じ学部の友達。

九州から出てきて友達のいなかった僕に最初に声をかけてきてくれたのが司だった。

同じバイトしたり、休日には映画を見たり遊びに行ったり……まぁ仲がいい友達だけど、司は割と頻繁に彼女が付き合ったり別れたりを繰り返してる。
今回の唯奈ちゃんは僕が知る限り5人目の彼女。
でも、今回は司も本気みたい。
3ヶ月以上続いた人は初めてなんじゃないかな、たぶん。

その唯奈ちゃんとのデートと司の秘密のバイトが被って焦って僕に頼んできたんだ。

その秘密のバイトっていうのが……パパ活。

よくは知らないけれど、自分のお父さんくらいの男性と一緒に食事したり、おしゃべりしたりするのがアルバイトらしい。
そんなのでバイトになるのはきっと司の話が面白いからだと思うんだけど。
だから、僕なんかが代わりにはなれないと思うんだけどな……。

でも、ドタキャンしたら司の評価が下がってしまうんだって。
だからとりあえず行って2時間だけ相手をすれば評価が下がることはないらしい。

時間あるって言っちゃったし……。
今更デート中の司を呼び出したりもできないしな。

はぁーーーっ。

気が重いけど行くしかないか。

僕は机の荷物を片付け、紙に書いてある待ち合わせ場所のカフェへ向かった。


僕たち学生が行くよりも少しお高めのコーヒー専門店のテラス席にいるスーツの男性……。

うーん、何人かいるけど、どの人かわからない。
そういえば名前も書いてないな。
どうやって確認したらいいんだろう?
今日の僕のパパ活の相手ですか? なんて聞けないし……。
どうしようかな……。
あ、そっか。
この番号に電話かけてみる?

慌ててバッグからスマホを取り出そうとした時、

「あの、お客さま。どなたかお探しですか?」

コーヒーも頼まずにテラス席の前でうろちょろしてバッグまさぐってたら店員さんに声をかけられてしまった。

僕、絶対不審者に見られてるよね。

「あ、あの……いや、ちょっと……待ち合わせの相手を探してて……」

「ああ。こんなところにいたのか。待ってたよ」

「わっ!」

必死に店員さんに話をしていたら、肩をポンと叩かれて驚いてしまった。

「悪い、驚かせたか?」

にっこりと笑顔を向けてくれるそのスーツの長身の彼がきっと司の言っていた今日のパパ活の相手なんだろう。
あれ? でも、この人……どこかで見た覚えがある。
どこで会ったんだっけ?
驚いたせいで、頭が全然働かない。

「あ、いいえ。大丈夫です」

「じゃあ、行こうか」

「えっ? あ……っ」

驚いているうちに僕はさっと肩を抱かれてそのまま店から連れ出されてしまった。

司からは今日はあのカフェで2時間話をするだけって聞いてたんだけどな。
予定が変わったのかな?

「あ、あの……どこに行くんですか?」

「ああ。そうだね……今日は大学からそのまま来たの?」

「あ、はい。だめ、でしたか?」

「ああ、大丈夫。とりあえず私の行きつけのところに連れて行くから気にしないでいいよ」

「えっ? 行きつけ? ってどういう?」

意味がわからなくて戸惑っている間に僕は彼が乗り込んだ運転手付きの大きな車に乗せられて、あっという間に銀座のハイブランドのお店に連れて行かれてしまった。

「さぁ、行こうか」

店の前で先に降りたかと思えば、手を出してエスコートされる。
恥ずかしく思いながらも、僕は彼の手にそっと乗せた。

大きくてがっしりとした手のひらに包まれながら、車を降りると彼はにっこりと笑顔を浮かべながらさっと僕の腰に手を回し店へと歩き出した。

彼からはふわりと爽やかな匂いが漂ってくる。
知らなかった……大人の男の人ってこんないい匂いがするんだ……。

ドキドキしながら、彼に連れられ学生の僕には分不相応なハイブランドの店に足を踏み入れた。
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