歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

滝川くんの提案

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<side一眞>

まさか一花に叱られるとはな。
だが、自分の立場をあれほど理解し、私が特別扱いをすることをキッパリと断るなんて……。
一花はあれほど過酷な環境で成長しながら、素直でいい子に育ってくれたものだ。
これも征哉くんと未知子さんのおかげだろう。
一花を救い出してくれたことは、どれだけ感謝しても足りないくらいだ。

こうして私の腕に戻ってきてくれた一花。
十八年間成長を見守ることは奪われてしまったが、これから先の人生はまだまだ長い。
奪われてしまった時間以上に、一花との時間を大切にすればいい。

「さっきの桜の飾り、本当に可愛かった。史紀さんも持ってるんですか?」

「私は車の鍵につけていますよ。ほら」

私の腕に抱かれたまま、一花が史紀と楽しげに会話をしている。
史紀がポケットから取り出した車の鍵を見て、一花が目を輝かせている。

「わぁー! 本当だ。可愛い! でもちょっとさっきのと形が違う?」

一花が可愛らしく首を傾げる。
その姿に滝川くんは悶えてしまいそうになるのを必死に抑えているようだ。
まぁ、もう少し一緒に過ごせば一花の可愛さにも慣れるだろう。

「ほお、よくわかったな。毎年、少しずつ変えているんだよ。その年の限定のほうが嬉しいだろう?」

「ああ、そっかー。さすがパパ!」

「ははっ。一花に褒められるのは嬉しいな」

この年で息子に褒められてこんなに嬉しいとはな。
きっと一花が上っ面の賛辞ではなく、素直な気持ちを伝えてくれているからだろう。

「あ、あの……」

突然、滝川くんが声をかけてきて驚いた。

「ん? 滝川くん、どうした?」

「あ、あの……ご子息に桜カフェの新メニューを考えていただく、というのはいかがでしょうか?」

「一花が、新メニューを?」

「はい。現在飲料部門で新作メニューのコンペを行っています。もちろん忖度のないように名前を伏せてご子息に考えていただいたメニューを応募して、それが通ればご子息も櫻葉グループの一員として仕事をしていただいたことになりますので、入社記念のキーホルダーを差し上げることも問題ないか、と……」

思いがけない滝川くんの提案に驚きつつも、それは面白いという気持ちのほうが強かった。

「それはなかなか斬新な提案だが、一花はどうだ? やってみるか?」

「しん、めにゅー? ってなんですか?」

一花がキョトンとした顔で尋ねてくる。
それがとてつもなく可愛い。
滝川くんも史紀も思わず笑ってしまっている。

「ははっ。そうだな、それから勉強しようか。我が社のために一花に頑張ってほしい」

「はい! 僕、頑張ります!」

この笑顔、麻友子によく似ている。

今、桜カフェで定番になっている人気メニューも麻友子が考案してくれた。
そこに一花の考えてくれたメニューが並んだら……こんなに嬉しいことはないな。

エレベーターが私の部屋がある階に到着する。
先ほどのロビーと違ってしんと静まり返っているが、一花は興味深そうな表情を向けた。

「ここがパパのお部屋のある階ですか?」

「ああ、そうだ。史紀の部屋はすぐ下の階にあるよ」

「わぁー! 史紀さんのお部屋も見てみたいです!」

一花が笑顔を向けると史紀はすぐに笑顔で頷いた。

「いいですよ、私の部屋には秘密基地があるんです。一花くんだけそこに案内しますよ」

「ひみつきち? なんだか楽しそう!」

史紀があの部屋に他人を入れるとはな。
あそこは私でも足を踏み入れたことがない部屋だ。
長い間、負担をかけてきた史紀が精神を保つための場所。
そこがあったから頑張れたと何度も言っていた。

ある意味、そこは史紀の聖域のものだったろう。
そこに一花が入れるとは……想像していた以上に、史紀は一花を気に入っているようだ。
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