歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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「征哉、あなたがそんな表情をしているってことは、解決したの?」

「ああ。今日、磯山先生とこれからのことを打ち合わせしていたら、あの女が事務所に来たんだ。しかも、息子も一緒に」

「えっ? それで、どうなったの?」

「息子の方は数年前から母親に少し不信感を抱いていたようで、母親が隠し持ってた一花のネックレスを忍ばせて持ってきていて、それがあの女を捕まえる証拠になった」

「そう、なの……辛かったわね」

自分が持ってきた証拠で、母親が警察に捕まった。
正義感の強い子だからどうしても許せなかったのかもしれないが、やはり母親が自分の目の前で捕まるのはショックだただろう。

「しかも、その女往生際悪く息子を置き去りにして逃げようとして、ちょうど到着した櫻葉会長に行く手を遮られて警察に捕まったよ」

「子どもを置き去りにするなんて、なんてこと……」

「そのあと、父親を呼び出して櫻葉会長と話をしたんだが、父親はうちの子会社の社員だったんだ」

「そうなの?」

「ああ、一花や櫻葉会長への影響も考えて流石にこのまま雇い続けるわけにもいかないし、それに今日事件の一報が出ることになってるから、大騒ぎになるだろう? それでも一花と櫻葉会長のために償いがしたいというものだから、櫻葉グループの新規事業先の中東に単身で行ってもらうことにしたんだ」

「えっ? 単身って、じゃあ息子さんは親戚の家に?」

「いや、頼れる親戚はいないというから、磯山先生のお宅で預かってもらうことになったよ」

「まぁっ! それなら安心だわ」

さっきまでの不安げな表情が一気に和らいでいくのが見える。
それほど息子・直純くんのことが心配だったのだろう。

「ああ、緑川教授には話もせずに決めてしまったのが少し心配だけれど、磯山先生が大丈夫だと仰っていたから大丈夫だろう」

「ええ、あの方なら決して嫌だとは言わないわ。むしろ、連れて帰ってきたことを褒めてあげそう。ふふっ」

確かに。
緑川教授ならあり得る。
親友の鳴宮教授も当時高校生だった安慶名先輩を引き取って養子に迎えていたし、その話はたくさん聞いていることだろう。

あの時は他に選択肢もなく磯山先生に押されるように預け先を決めたが、直純くんにとってはいい人選だったと思う。

「それで、母さんに頼んでおきたいことがあるんだが……」

「ふふっ。わかってるわ。一花くんに情報を知らせないようにってことでしょう?」

「ああ、多分今夜から大騒ぎになる。テレビもネットも一花には見せないようにしてくれ」

「大丈夫よ。一花くん、そもそもテレビを見る習慣がないから見たいとは言い出さないし、パソコン関係も今は渡していないでしょう?」

「ああ、そうだな。ただスマホから情報が入るかもしれない」

「ニュースが入らないようにはできないの?」

「ちょっとやってみるよ」

「お願いね、一花くん。写真を見るのを楽しみにしているのよ」

そうか。
待ち受けか。
私たちと映ったものと、幼い一花を囲んだ家族写真。
ようやくできた家族だからな。

「わかった。なんとかしよう。これから志摩くんに連絡を入れるから、母さんは一花のところに戻ってやってくれ」

「わかったわ」

母が部屋から出ていくのを見届けて、私は志摩くんに電話を入れた。

ー会長。そちらはいかがですか?

ーああ、心配かけて悪いな。今日も君に任せてすまない。だが、おかげで全てうまくいったよ。

ーそうですか、よかったです。

心からホッとしたような声に心配をしてくれていたのだとよくわかる。
本当にありがたい。

ーそれで、今夜にも事件の一報が入る。おそらく我が家の周辺も騒がしくなるだろう。決して我が家には近づけさせないが、心配なのは谷垣くんのことだ。この事件関連から彼の事故のこともまた蒸し返されることも考えられる。それでも一花のリハビリは今まで通り続けて欲しいんだが大丈夫そうか?

ー大丈夫です。今、彼は一花さんのリハビリを楽しみにしていますから、辞めたいとは言い出さないでしょう。彼には事件の話を一花さんの前ではしないように話をしておきますね。

ーああ、そうしてくれ。

ー明日はいつも通り、尚孝さんを会長のご自宅に送りますから、そのあと少しお話しできますか?

ーああ、そうだな。今回の件も詳しく話したいし、これからのこともある。いつもより少し早く来てくれ。

ー承知しました。

電話を切り、私はようやく一花の元に向かった。


「一花」

「あっ、征哉さん。見てください! これ、お父さんがくださったんです」

「おお、帽子か。可愛いな。一花によく似合っているよ」

「ふふっ。嬉しいです」

ほんのりと頬を染めて恥じらう一花が可愛い。
それにしても本当によく似合っている。
さすが父親とでもいうのだろうか。
私も負けないように一花に似合う服を作らないとな。

「一花、この帽子をかぶって近いうちに麻友子の墓参りに行こう!」

「わぁ、本当ですか!」

「ああ、約束だ。ほら、約束」

櫻葉会長が小指を差し出すとそっと指を絡める。
ふわっと嬉しそうな笑顔を見せる一花を見ていると、私の心に嫉妬心が渦巻くことはなかった。
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