歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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どうするべきか……

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昨日のグリsideのお話。
意外と好評で嬉しかったです。ありがとうございます!
またいつかグリside書いてみます!!お楽しみに♡

  *   *   *
  


<side征哉>

偶然居合わせた有原くんと、浅香さんと三人でのお茶会はかなり楽しかったようだ。
いささか、周りに聞こえてはいけないような話もしていたが、一花がそんな話をできるような相手ができたのは良いことだろう。
その相手が蓮見さんの恋人である浅香さんと、榎木くんの恋人である有原くんならなんの問題もない。

まだ完全に治っていない足のことはもちろん、例の事件の影響も考慮して一花を外出させるのは控えていたが、今日の一花の楽しそうな表情を見ていると、今よりもう少し他の人との関わりを増やしてもいいかと考えさせられる。

今までなら外出して帰ってきたら身体を休めていたが、今日はそのままグリと遊ぶという。
それは、ここでの穏やかな日々、そして栄養バランスの良い食事と谷垣くんのリハビリの成果もあり、一花も体力がついてきた証拠だろう。

一花をグリのサークルに座らせて、その様子を録画でもしようと内ポケットに入れていたスマホを取り出すと、そのタイミングでメッセージが入ってきた。

<今日は一花くんとの時間を作ってくださってありがとうございます。次回、そちらにお邪魔できる日を楽しみにしています。浅香>

本当に律儀な人だな。
大学の後輩でもある私にこんなに丁寧に……。

こんなに一花を友人だと思ってくれる浅香さんの優しさが嬉しくて、私はすぐにメッセージを返した。

<今、一花がグリと遊んでいるのですがこっそりその様子を見ていただきたいのでビデオ通話をしても構いませんか? 貴船>

すると、既読がつくや否や、すぐに電話がかかってきた。
震えて知らせるから一花は電話がかかってきたことに気づいていない。

ふふっ。これならいいか。

ビデオ通話をタップして

ー今から一花を映しますね。

と一度声をかけてからカメラを切り替えた。

ふふっ。浅香さんの後ろに蓮見さんの姿が見えたな。
きっと私に電話をかけると聞いて少し心配しているのだろう。
すぐに一花の姿に切り替えてやれば、蓮見さんも安心することだろう。

グリと戯れる一花の様子を映していると、一花がいつものようにグリに一日の出来事を話して聞かせているのが見えた。

有原くんという新しい友達ができたこと。
その彼が一花の主治医である榎木くんの恋人であること。

を話した後で、

「――それでね、佳史さんとおしゃべりしながら思ったんだ。いつか、浅香さんも敬介さんって呼べるようになったらいいなって。でも、僕から呼んでいいですかって聞くのはドキドキするよ。グリ……なんて言ってお願いしたらいいかなぁ?」

とグリに相談を持ちかけている姿が実に可愛らしい。

浅香さんも同じことを思ったようで、

ーふふっ。名前で呼んでくれたら嬉しいよ

と一花に向けて優しい声をかけていた。

突然の浅香さんの声に驚いた一花の表情が可愛すぎて、思わずビデオ通話しながら写真を撮ってしまった。
本当に一花は可愛くて困る。

一花にスマホを渡し、一花と浅香さんが話しているのを見ると微笑ましく感じられる。
ああ、やはり浅香さんなら安心だ。

一花の膝に乗って大人しくしていたグリだったが、浅香さんの姿に懐かしくなったのかスマホの画面に鼻を擦り付けている。
ふふっ。浅香さんからの電話に喜んだのは一花だけではなかったらしい。

今度我が家で集まることになっていたが、一花のためだけでなく、グリにとっても楽しい時間になりそうだな。

ビデオ通話を終え、一花は

「征哉さん……敬介さんって、呼ばせてもらえることになりました」

と嬉しそうに私にスマホを渡してきた。

「ああ、浅香さんも名前で呼ばれる方がいいって仰っていたからな。よかったよ」

「はい。なんだかすごく嬉しいです」

「じゃあそろそろ食事にしようか。スイーツもたくさん食べたから軽いものにしておこう。シェフに話してくるから、一花はここでゆっくりしておいて」

「ありがとうございます」

一花の頬にチュッとキスをして部屋を出ると、ちょうど母が部屋から出てくるところだった。

「あら、食事?」

「ああ、少し軽いものにしてもらおうと思って」

「それなら私が言っておいたわ。今日はお茶をしに行くって聞いていたからそうなるかなと思っていたの」

「そうか、ありがとう」

「それより少し征哉に話があるの。ちょっと部屋にきてくれる?」

さっきまで表情から一転、真剣な表情に変わったのをみて何か悪い話かと思ったが、とりあえず一緒に部屋に入った。

「それで、話って?」

「ええ、直純くんのことなの」

「直純って……あの子か?」

「ええ、そう」

直純は、生まれたばかりの一花を病院から攫う協力をした、当時の看護師・迫田美代の息子。
母親が逮捕され、父親は中東での仕事を選び、直純は今、私の恩師である磯山先生のお宅で預かっていただいている。

「あの子がどうかしたのか?」

「実は、私……あなたたちが温泉に行っているときに、磯山先生のところに行って会ってきたの」

「えっ? そうなのか?」

「征哉から話を聞いて気になって絢斗くんに電話をしたら、ちょっと気になる話を聞いたものだから」

「気になる話って?」

「直純くん……母親に洗脳されてかなり抑圧的な生活をさせられていたわ。しかも虐待もされていたの」

「えっ? それは、本当に?」

一花を苦しめた人間の息子だということで、少なからず憎らしくも思っていた。
何も知らなかったとはいえ、自分の母親がやったことで一花が傷ついて辛い生活を過ごしている中、あの家で幸せに暮らしていたんだと思っていたから。

でも、あの子が虐待?
あの時、母親にくってかかって、思いっきり自分の意見を言えていたあの子が?
どうにも信じられない。

「信じられないのも無理はないわ。私もあなたの話を聞いた時は、はっきりと自分の意見を言える強い子だと思っていたの。でもね、彼がずっと母親の言いなりに抑圧された生活を過ごしていたのは、母親が正しいと信じ込まされていたからなの。でも、あの時にそれが全て嘘だと知らされた。母親の言うことが嘘で犯罪者だと分かった途端、感情がコントロールできなくなってしまったのよ。だからあの時、思いのたけをぶつけられたのよ。でも、それからまた日常がやってきて、自分が今まで過ごしてきた時と同じようにしか動けない。これが洗脳の怖いところなのよ」

「じゃあ、あの子は今……」

「絢斗くんと磯山さんが一生懸命愛情をかけて、少しずつ今までの生活を改善してあげているの。あの子ね、食事も毎日同じものしか与えられていなかったわ、しかも味付けもほとんどない野菜と鶏肉だけを」

「えっ……」

「それにお風呂も五分以内で入らされて、出てきたら全裸で身体を調べられてたんですって。だから、初めて磯山さんの家でお風呂に入らせたら、裸のまま出てきて調べてもらおうとしたらしいわ」

「――っ!!」

一花よりも幸せだと思っていた。
だから私は彼をどうしても許せずにいた。
でももし、同じことを一花がさせられていたら……。
考えるだけでも腑が煮え繰り返る思いがする。

「征哉があの子を許せない気持ちもわからないではない。でもね、あの子もある意味被害者なの。それを少し理解して欲しいのよ」

「母さん……」

「直純くんはいつか一花くんに謝りたいと言っていたけれど、謝罪はともかく、いつか二人を会わせてあげたいと思っているの。絶対に悪いようにはならないわ」

「少し、考えさせてくれ……」

「ええ、もちろんよ」

私は部屋を出て、しばらくその場に立ち尽くし考えてしまっていた。
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