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驚きの姿
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仕事帰りにいつものように志摩くんと自宅に向かう。
リハビリの指導を終えた谷垣くんと一緒に帰るためだが、今日は帰宅前に少し話をさせてもらおう。
そのために今日は仕事を早く切り上げて自宅に向かっている。
「志摩くん。谷垣くんと話をしている間、一花を頼めるか?」
「はい。本当は尚孝さんと一緒に会長の話を伺いたいところですが、一花さんをお一人にするわけにはいきませんからね」
「大丈夫だ、谷垣くんを怖がらせたりはしないよ」
「その点は心配はしておりません。ただ、どんなお話をしているかイヤホンで聴いていても構いませんか? 尚孝さんと自宅で話し合いたいと思っています」
「ああ、構わないよ。志摩くんも内容を知っている方が帰宅して話もしやすいだろうからな」
車内でそんな話をしながら、自宅に戻ると
「一花くん、すごく頑張ってるわよ」
と一花の部屋の前で母に声をかけられた。
そっと扉を開いて中を覗くと、そこには驚きの光景があった。
「一花が……立っている……」
歩行器に身を預けつつも、立っている一花の姿。
初めて会った時からベッドに横たわったままの一花しか見たことがない私にとっては衝撃の姿だった。
それだけではない。
汗をかき、苦痛に顔を歪めながらも、ゆっくりと一歩を踏み出している一花。
いつの間にここまで回復していたんだろう。
足や腕に筋肉がついてきたとわかっていたが、私の前では立ち上がろうとしたことはなかった。
いつだって一花は私に両手を差し出して抱っこをねだってくれていたんだ。
それが可愛くて、いつも抱っこしていたのだがここまで回復していたとは気づかなかったな。
「きっと完全に歩けるようになってから、会長に見せたいと思っていたのかもしれませんね」
ポツリとつぶやいた志摩くんの声に納得させられる。
「そうか、そうだったんだな……。一花も可愛いことをしてくれる」
「ええ、本当に」
一花がこんなにも頑張ってくれているんだ。
私はまだ知らない方がいいだろう。
いつもの時間まで志摩くんと私の自室で休んでから、一花の部屋に向かうと一花はいつものようにベッドに座ったまま私を出迎えてくれた。
「征哉さん、おかえりなさい」
「ああ、一花。ただいま」
満面の笑顔で私に両手を伸ばしてくる。
ギュッと抱きしめると、ほんのり汗の匂いを感じる。
これが一花が頑張った証だな。
「今日もリハビリは進んだか?」
「はい。頑張りました」
「そうか、それならよかった。一花、ここで志摩くんと待っていてもらえるか? 私は少し谷垣くんと今後のことで話があるからな」
「えっ? 今後のこと、ですか?」
「ああ、一花のリハビリに必要なものとかあれば準備をしておこうと思ってね」
「そうなんですね。わかりました」
「すぐに戻ってくるよ」
チュッと頬にキスを落として、
「谷垣くん、私の部屋に行こう」
と声をかけ、一花の部屋を出た。
私の後をついてくる谷垣くんから緊張感が漂ってくる。
ここまで緊張させてしまうのも、最初の印象のせいだろうか。
直純くんに私がいますぐに会っても、緊張させてしまうかもしれないな。
扉を閉め、ソファーに座るように促すと、彼は私の様子を窺うように浅めに腰を落とした。
「いきなり二人で話をと言い出したから、緊張をさせてしまったな。申し訳ない」
「い、いえ。そんなことは……っ」
「一花のリハビリに関しては、特に聞こうとは思っていない。もちろん、必要なものがあれば発注してくれて構わない。私に言い出しにくいなら、志摩くんに言ってくれたらいい。私に代わって全て用意してくれるはずだ」
「よろしいのですか?」
「ああ、一花が頑張ってくれていることに水を差したくないからな。一花の方から私に話してくれるまでは何も聞かないでいよう」
「会長……」
おそらく私が先ほどリハビリの様子を覗いていたことに気がついていたのだろう。
一花のために隠し通すべきか、雇い主である私の問いに答えるべきかを悩んでいたに違いない。
「今日、ここに来てもらったのはリハビリのこととは関係ないんだ。君に一つ頼みたいことがあって声をかけたんだよ」
「私に、頼みですか?」」
「ああ、谷垣くんに会ってもらいたい人がいる。彼と話をして、私にその様子を教えて欲しいんだ」
その言葉に、谷垣くんは驚きの表情を隠せないようだった。
「あの、その私に会って欲しい人とは、いったい誰でしょうか?」
「一花を誘拐した女に協力していた看護師・迫田美代の息子。直純だ」
「えっ……」
谷垣くんが言葉に詰まるのもわかる。
どうして自分が? と思うのも無理はない。
「あの、どうして私が……?」
「君にはなるべく前情報を与えたくないと思っている。私が話をするとどうしても被害者の一花や櫻葉会長側になって話をしてしまうからな。だから詳しい話は志摩くんに聞いて欲しい。その話を聞いた上で、直純に会うかどうかを決めて欲しいんだ」
「唯人……いえ、志摩さんはその理由をご存知なのですね」
「ああ。志摩くんなら第三者の立場で君に話をしてくれるだろう」
「わかりました。そのようにします。あの、一つだけお伺いしてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「私に彼と会うことを勧めたのは、志摩さんですか?」
「ああ、よくわかったな。そうだ。志摩くんの方から提案してくれた」
「そうですか、わかりました」
その時の谷垣くんの目は強い信頼に満ち溢れていたような気がした。
リハビリの指導を終えた谷垣くんと一緒に帰るためだが、今日は帰宅前に少し話をさせてもらおう。
そのために今日は仕事を早く切り上げて自宅に向かっている。
「志摩くん。谷垣くんと話をしている間、一花を頼めるか?」
「はい。本当は尚孝さんと一緒に会長の話を伺いたいところですが、一花さんをお一人にするわけにはいきませんからね」
「大丈夫だ、谷垣くんを怖がらせたりはしないよ」
「その点は心配はしておりません。ただ、どんなお話をしているかイヤホンで聴いていても構いませんか? 尚孝さんと自宅で話し合いたいと思っています」
「ああ、構わないよ。志摩くんも内容を知っている方が帰宅して話もしやすいだろうからな」
車内でそんな話をしながら、自宅に戻ると
「一花くん、すごく頑張ってるわよ」
と一花の部屋の前で母に声をかけられた。
そっと扉を開いて中を覗くと、そこには驚きの光景があった。
「一花が……立っている……」
歩行器に身を預けつつも、立っている一花の姿。
初めて会った時からベッドに横たわったままの一花しか見たことがない私にとっては衝撃の姿だった。
それだけではない。
汗をかき、苦痛に顔を歪めながらも、ゆっくりと一歩を踏み出している一花。
いつの間にここまで回復していたんだろう。
足や腕に筋肉がついてきたとわかっていたが、私の前では立ち上がろうとしたことはなかった。
いつだって一花は私に両手を差し出して抱っこをねだってくれていたんだ。
それが可愛くて、いつも抱っこしていたのだがここまで回復していたとは気づかなかったな。
「きっと完全に歩けるようになってから、会長に見せたいと思っていたのかもしれませんね」
ポツリとつぶやいた志摩くんの声に納得させられる。
「そうか、そうだったんだな……。一花も可愛いことをしてくれる」
「ええ、本当に」
一花がこんなにも頑張ってくれているんだ。
私はまだ知らない方がいいだろう。
いつもの時間まで志摩くんと私の自室で休んでから、一花の部屋に向かうと一花はいつものようにベッドに座ったまま私を出迎えてくれた。
「征哉さん、おかえりなさい」
「ああ、一花。ただいま」
満面の笑顔で私に両手を伸ばしてくる。
ギュッと抱きしめると、ほんのり汗の匂いを感じる。
これが一花が頑張った証だな。
「今日もリハビリは進んだか?」
「はい。頑張りました」
「そうか、それならよかった。一花、ここで志摩くんと待っていてもらえるか? 私は少し谷垣くんと今後のことで話があるからな」
「えっ? 今後のこと、ですか?」
「ああ、一花のリハビリに必要なものとかあれば準備をしておこうと思ってね」
「そうなんですね。わかりました」
「すぐに戻ってくるよ」
チュッと頬にキスを落として、
「谷垣くん、私の部屋に行こう」
と声をかけ、一花の部屋を出た。
私の後をついてくる谷垣くんから緊張感が漂ってくる。
ここまで緊張させてしまうのも、最初の印象のせいだろうか。
直純くんに私がいますぐに会っても、緊張させてしまうかもしれないな。
扉を閉め、ソファーに座るように促すと、彼は私の様子を窺うように浅めに腰を落とした。
「いきなり二人で話をと言い出したから、緊張をさせてしまったな。申し訳ない」
「い、いえ。そんなことは……っ」
「一花のリハビリに関しては、特に聞こうとは思っていない。もちろん、必要なものがあれば発注してくれて構わない。私に言い出しにくいなら、志摩くんに言ってくれたらいい。私に代わって全て用意してくれるはずだ」
「よろしいのですか?」
「ああ、一花が頑張ってくれていることに水を差したくないからな。一花の方から私に話してくれるまでは何も聞かないでいよう」
「会長……」
おそらく私が先ほどリハビリの様子を覗いていたことに気がついていたのだろう。
一花のために隠し通すべきか、雇い主である私の問いに答えるべきかを悩んでいたに違いない。
「今日、ここに来てもらったのはリハビリのこととは関係ないんだ。君に一つ頼みたいことがあって声をかけたんだよ」
「私に、頼みですか?」」
「ああ、谷垣くんに会ってもらいたい人がいる。彼と話をして、私にその様子を教えて欲しいんだ」
その言葉に、谷垣くんは驚きの表情を隠せないようだった。
「あの、その私に会って欲しい人とは、いったい誰でしょうか?」
「一花を誘拐した女に協力していた看護師・迫田美代の息子。直純だ」
「えっ……」
谷垣くんが言葉に詰まるのもわかる。
どうして自分が? と思うのも無理はない。
「あの、どうして私が……?」
「君にはなるべく前情報を与えたくないと思っている。私が話をするとどうしても被害者の一花や櫻葉会長側になって話をしてしまうからな。だから詳しい話は志摩くんに聞いて欲しい。その話を聞いた上で、直純に会うかどうかを決めて欲しいんだ」
「唯人……いえ、志摩さんはその理由をご存知なのですね」
「ああ。志摩くんなら第三者の立場で君に話をしてくれるだろう」
「わかりました。そのようにします。あの、一つだけお伺いしてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「私に彼と会うことを勧めたのは、志摩さんですか?」
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