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養父としての想い
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<side征哉>
谷垣くんがあれほど志摩くんを信頼しているとはな。
いや、わかっていたつもりだったがあれは驚いた。
あの様子では志摩くんが詳しく話そうが、要点のみを話そうが、直純くんと会ってくれることを決めているのだろう。
いつの間にそこまでの信頼関係を築いていたのだろうな。
なんとも素晴らしい。
直純くんと話に行く時には、志摩くんも一緒に同行させた方がいいだろう。
もちろん話を聞くのは二人っきりだろうが、一人で磯山先生のご自宅に行かせるのは谷垣くんにはハードルが高そうだからな。
翌日、いつものように志摩くんと一緒にやってきた谷垣くんは朝の挨拶もそこそこに
「会長、昨日の件お受け致します。日程はお任せしますので、日時が決まりましたらお知らせください」
と笑顔で言ってくれた。
「そうか、引き受けてくれて助かるよ。今日にでも早速相手方に連絡を取るから、詳しいことは志摩くんに聞いてくれ」
「承知しました」
「今日も一花のことを頼むよ」
「はい。お任せください」
やはりあの時、多少の葛藤はあれど谷垣くんを一花の担当にして良かった。
心からそう思う。
だから、きっと直純くんのことを改めて考え始めたことは間違いではないのだろう。
一花に行ってきますのキスをして、志摩くんと車に向かう。
「谷垣くん、随分と晴れやかな顔をしていたがどんな話をしたんだ?」
車中で志摩くんに尋ねると、
「できるだけ感情を入れず、ありのままを話しました」
と返ってきた。
「そうか。きっと私にはできなかっただろうからそれで良かった。志摩くんが話したからこそ、あれほど理解してくれたのだろうしな」
「尚孝さんは、直純くんをひどく心配していましたからできるだけ早く日程を調整できればと思っています」
「わかった。磯山先生にもその旨は伝えておこう」
谷垣くんにどう話したのかは気になったが、深くは聞かないでおいた。
一花のこれまでも、今の状況もよく知っている谷垣くんと志摩くんが話した結果だ。
決して悪いようにはならないはずだ。
会社につき、すぐに片付けなければいけない案件を終わらせてから、ゆっくりと磯山先生にメッセージを送った。
あの日以来ご無沙汰していたことの詫びから始まり、直純くんと会ったあの日は、誘拐の共犯である迫田美代への怒りに直純くんの状況を理解する余裕がなかったこと、一花よりも幸せな日々を過ごしていたことに対する恨みのような思いを抱いていたこと、しかし、母から直純くんが実家であの女から受けていた扱いの酷さを知り、己の気持ちを改めていることを伝えようと考えていたことをありのままに伝えた。
あの日、直純くんが一花に謝罪の言葉を告げたいと話していたことを当時は決して受け入れられないと考えていたが、こうして周りの状況も冷静に判断できるようになって、いつの日か、一花と直純くんを会わせたいと考えるようになったことを伝えた上で、その前に私が直純くんと会って、あの日に聞けなかった直純くんの思いを聞こうという考えに至ったことを告げた。
けれど、実の母親に虐待を受けていたという直純くんに、あの日恐怖を与えてしまっただろう私が二人で話をすることは彼の小さな心にさらに恐怖を与えるばかりか、威圧を感じさせるだけにしかならないということに気づき、志摩くんの提案で、今、一花のリハビリを担当している谷垣くんに、先に直純くんに対面させ話をしてほしいと思っていることを書いた。
彼も、直純くんとはまた違った罪悪感を一花に抱きながら一花のそばについていてくれることを考えれば、一花に対する直純くんの気持ちを一番理解できる相手ではないかと考えたことを告げ、近いうちに谷垣くんと直純くんを対面させ、話をしたいという要望を伝えた。
谷垣くん自身は直純くんと会い、話をすることを快諾してくれていることも併せて記載し、メールを送った。
さて、磯山先生からはなんと返事が来るだろうか。
養子にまで考えているのだからきっと彼の保護者として最善のことを考えて返事をしてくださるに違いない。
彼がまだ誰かと話をできる状態にないのなら、それも教えてくださるだろう。
あとは磯山先生からの回答を待つだけだな。
そう考えていた翌日、会社につきパソコンを開くと磯山先生からの返信が届いていた。
なぜか緊張してしまうのは思ったより早い返信だったからだろうか、
磯山先生からのメールを開くとそこには磯山先生の思いが深く綴られていた。
<征哉くん。メールありがとう。
いつか、君からこうやって連絡が来るのではないかと思っていただけに、想像よりも早いメールに驚きつつも、喜びの方が大きいかもしれない。
君がこうして直純くんに目を向けられるようになったということは、おそらく一花くんの回復が著しいということなのだろう。それはとても喜ばしいことだ。
私が直純くんを引き取ってからしばらく経つが、彼は本当に素直で優しい子だ。
一緒に暮らしているからこそよくわかるが、彼は父親のことも母親のことも決して悪くは言わない。
自分が一歩も外に出られず、日陰のような身で日々暮らすことを余儀なくされていても、決して泣き言を言わない。
今置かれた状況を粛々と受け入れ、その中で自分が何をできるかを考える子だ。
彼は自分の母親の犯した罪について、罪悪感を持っているのは確かだろう。
あの日、一花くんの辛い日々を知って自分が幸せになることを拒むような節があった。
それについては周りがどれほど違うと言ってあげても、彼の心を溶かすことはできない。
だからこそ、志摩くんの提案は私にとっても願ったり叶ったりといえよう。
同じ心に傷を持つ者同士だからこそ、理解できることもある。
それは私や君にはできないことだ。
彼を養父として一生守ろうと思っている私からも頼む。
直純と谷垣くんを話をさせてあげてほしい。
それで少しでも直純の心を軽くすることができるならその可能性に賭けたい>
このメールには磯山先生の父としての思いが込められている。
最後に彼を呼び捨てにしたのもその現れだろう。
都合が良ければ今週の土曜日午後一時と書かれていた。
早速志摩くんに話をしておこう。
谷垣くんと直純くん。
二人は一体どのような話をするのだろうな。
谷垣くんがあれほど志摩くんを信頼しているとはな。
いや、わかっていたつもりだったがあれは驚いた。
あの様子では志摩くんが詳しく話そうが、要点のみを話そうが、直純くんと会ってくれることを決めているのだろう。
いつの間にそこまでの信頼関係を築いていたのだろうな。
なんとも素晴らしい。
直純くんと話に行く時には、志摩くんも一緒に同行させた方がいいだろう。
もちろん話を聞くのは二人っきりだろうが、一人で磯山先生のご自宅に行かせるのは谷垣くんにはハードルが高そうだからな。
翌日、いつものように志摩くんと一緒にやってきた谷垣くんは朝の挨拶もそこそこに
「会長、昨日の件お受け致します。日程はお任せしますので、日時が決まりましたらお知らせください」
と笑顔で言ってくれた。
「そうか、引き受けてくれて助かるよ。今日にでも早速相手方に連絡を取るから、詳しいことは志摩くんに聞いてくれ」
「承知しました」
「今日も一花のことを頼むよ」
「はい。お任せください」
やはりあの時、多少の葛藤はあれど谷垣くんを一花の担当にして良かった。
心からそう思う。
だから、きっと直純くんのことを改めて考え始めたことは間違いではないのだろう。
一花に行ってきますのキスをして、志摩くんと車に向かう。
「谷垣くん、随分と晴れやかな顔をしていたがどんな話をしたんだ?」
車中で志摩くんに尋ねると、
「できるだけ感情を入れず、ありのままを話しました」
と返ってきた。
「そうか。きっと私にはできなかっただろうからそれで良かった。志摩くんが話したからこそ、あれほど理解してくれたのだろうしな」
「尚孝さんは、直純くんをひどく心配していましたからできるだけ早く日程を調整できればと思っています」
「わかった。磯山先生にもその旨は伝えておこう」
谷垣くんにどう話したのかは気になったが、深くは聞かないでおいた。
一花のこれまでも、今の状況もよく知っている谷垣くんと志摩くんが話した結果だ。
決して悪いようにはならないはずだ。
会社につき、すぐに片付けなければいけない案件を終わらせてから、ゆっくりと磯山先生にメッセージを送った。
あの日以来ご無沙汰していたことの詫びから始まり、直純くんと会ったあの日は、誘拐の共犯である迫田美代への怒りに直純くんの状況を理解する余裕がなかったこと、一花よりも幸せな日々を過ごしていたことに対する恨みのような思いを抱いていたこと、しかし、母から直純くんが実家であの女から受けていた扱いの酷さを知り、己の気持ちを改めていることを伝えようと考えていたことをありのままに伝えた。
あの日、直純くんが一花に謝罪の言葉を告げたいと話していたことを当時は決して受け入れられないと考えていたが、こうして周りの状況も冷静に判断できるようになって、いつの日か、一花と直純くんを会わせたいと考えるようになったことを伝えた上で、その前に私が直純くんと会って、あの日に聞けなかった直純くんの思いを聞こうという考えに至ったことを告げた。
けれど、実の母親に虐待を受けていたという直純くんに、あの日恐怖を与えてしまっただろう私が二人で話をすることは彼の小さな心にさらに恐怖を与えるばかりか、威圧を感じさせるだけにしかならないということに気づき、志摩くんの提案で、今、一花のリハビリを担当している谷垣くんに、先に直純くんに対面させ話をしてほしいと思っていることを書いた。
彼も、直純くんとはまた違った罪悪感を一花に抱きながら一花のそばについていてくれることを考えれば、一花に対する直純くんの気持ちを一番理解できる相手ではないかと考えたことを告げ、近いうちに谷垣くんと直純くんを対面させ、話をしたいという要望を伝えた。
谷垣くん自身は直純くんと会い、話をすることを快諾してくれていることも併せて記載し、メールを送った。
さて、磯山先生からはなんと返事が来るだろうか。
養子にまで考えているのだからきっと彼の保護者として最善のことを考えて返事をしてくださるに違いない。
彼がまだ誰かと話をできる状態にないのなら、それも教えてくださるだろう。
あとは磯山先生からの回答を待つだけだな。
そう考えていた翌日、会社につきパソコンを開くと磯山先生からの返信が届いていた。
なぜか緊張してしまうのは思ったより早い返信だったからだろうか、
磯山先生からのメールを開くとそこには磯山先生の思いが深く綴られていた。
<征哉くん。メールありがとう。
いつか、君からこうやって連絡が来るのではないかと思っていただけに、想像よりも早いメールに驚きつつも、喜びの方が大きいかもしれない。
君がこうして直純くんに目を向けられるようになったということは、おそらく一花くんの回復が著しいということなのだろう。それはとても喜ばしいことだ。
私が直純くんを引き取ってからしばらく経つが、彼は本当に素直で優しい子だ。
一緒に暮らしているからこそよくわかるが、彼は父親のことも母親のことも決して悪くは言わない。
自分が一歩も外に出られず、日陰のような身で日々暮らすことを余儀なくされていても、決して泣き言を言わない。
今置かれた状況を粛々と受け入れ、その中で自分が何をできるかを考える子だ。
彼は自分の母親の犯した罪について、罪悪感を持っているのは確かだろう。
あの日、一花くんの辛い日々を知って自分が幸せになることを拒むような節があった。
それについては周りがどれほど違うと言ってあげても、彼の心を溶かすことはできない。
だからこそ、志摩くんの提案は私にとっても願ったり叶ったりといえよう。
同じ心に傷を持つ者同士だからこそ、理解できることもある。
それは私や君にはできないことだ。
彼を養父として一生守ろうと思っている私からも頼む。
直純と谷垣くんを話をさせてあげてほしい。
それで少しでも直純の心を軽くすることができるならその可能性に賭けたい>
このメールには磯山先生の父としての思いが込められている。
最後に彼を呼び捨てにしたのもその現れだろう。
都合が良ければ今週の土曜日午後一時と書かれていた。
早速志摩くんに話をしておこう。
谷垣くんと直純くん。
二人は一体どのような話をするのだろうな。
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