171 / 310
我が家での楽しい時間
しおりを挟む
<side一眞>
「お父さん、ただいま!」
満面の笑みを浮かべた一花が私の目を見てそう言ってくれる。
「――っ!! 一花っ!! ただいまと言ってくれるのか?」
「だって、ここは僕の実家、なんですよね?」
「ああ、そうだとも! ああ、一花。おかえり」
私がおかえりと告げると、一花に笑顔で見つめられる。
ああ、本当に一花が帰ってきてくれたんだ。
征哉くんに抱きかかえられた一花の腕には以前も連れてきてくれた、麻友子の作ったベビー服を着たぬいぐるみが見える。
ライオンの征哉くんも一緒だ。
「一花、またこの子たちを連れてきてくれたのか? 麻友子が喜ぶよ」
「あの……実は、このぬいぐるみたちをお父さんとお母さんにプレゼントしたいなって思って……」
「えっ? 私たちに、このぬいぐるみを? だが、いいのか? 一花と征哉くんのために作ってもらったんじゃないのか?」
「僕、このぬいぐるみたちはこの家に置いておいて欲しいなって思ったんです。だって、この子は小さな僕だから……」
「一花……」
一花の気持ちがこの上なく嬉しい。
この子は本当に心の綺麗な優しい子に育ってくれたものだ。
「それで、小さな僕の隣には征哉さんも一緒に置いて欲しいんです。いいですか?」
「ああ、もちろんだよ!! じゃあ、早速麻友子のところに連れて行こう」
私の案内に征哉くんが一花を抱きかかえてついてくる。
その動きにはなんの心配も感じられないし、一花も完全に全てを預けているようだ。
まぁ、医師としても、そして恋人としても一花のそばについていてくれるのだから、心配などする必要もないか。
父親としては少し寂しさもあるが、一花の幸せな姿を見られるのはいい。
麻友子の部屋に連れて行くと、一花がぬいぐるみを麻友子の仏壇に綺麗に並べてくれる。
「お母さん、これからはずっと一花と征哉さんが一緒だよ」
そのことにきっと麻友子が喜んでいる。
よかったな、ずっと抱っこしたかった小さな一花が戻ってきたぞ。
これからはずっと一緒だ。
――ふふっ。一眞さん、私……嬉しい。もうこれで寂しくないわ。
麻友子がそう言って笑っている気がする。
本当に私たちは幸せだ。
麻友子への挨拶を終え、リビングに案内すると、二階堂がすぐに飲み物を運んでくる。
一花には、征哉くんにあらかじめ聞いておいた、一花の好きな林檎ジュースだ。
私と征哉くんの前にはコーヒーを置くと、一花の前にだけ小さな焼き菓子の入った小皿を置いた。
「えっ、これ……」
「お食事前ですから、少しだけお持ちしました。奥さまがお好きだった、クッキーでございます」
「お母さんが、好きなもの……。ありがとうございます、二階堂さん」
「いえいえ。どうぞお召し上がりください」
一花はそれを手に取る前に、征哉くんにそっと視線を向けた。
征哉くんが頷くのを見ると、嬉しそうにその小さな焼き菓子に手を伸ばした。
一花の身体のことは征哉くんが一番よくわかっているという表れだな。
お菓子を食べすぎて、食事が入らないことがないようにいつも気遣ってあげているのだろう。
そして、一花は征哉くんのいうことをよく聞く。
これがこの数ヶ月で培った二人の過ごし方なのだろうな。
「んっ! 美味しいっ!!」
「ふふっ。喜び方が麻友子によく似ている。やはり親子なのだな」
「お母さんに似てますか?」
「ああ、そっくりだよ」
一花はそれが嬉しかったのか、噛み締めるようにクッキーを味わっていた。
「昼食までは部屋でゆっくり休むといい。昼食後は地下のシアターで一緒に映画を見よう」
「しあたー? えいが?」
一花は私の言った言葉が理解できないようだった。
今まで映画も見たことないだろうからそれも当然か。
なんと言ってわかりやすく伝えようかと考えていると、
「一花がいつも聴いているオーディオブックがあるだろう? あれは声だけで物語を聴かせてくれるが、映画はそれを人が演じて物語を見せてくれるのだよ。シアターはそれを映像として映す場所だ」
と征哉くんが説明してくれていた。
「わぁー、楽しそうです!」
「一花が好きそうなものをいくつか用意してみたのだが征哉くん、どれがいと思う?」
本当なら父として好みをわかっておくべきなのだろうが、ここは仕方がない。
なんせ、一花とこうした時間を過ごすのは初めてなのだから。
一花のために用意しておいた映画のラインナップを見せると、
「ああ、これならきっと一花も楽しめると思いますよ」
と教えてくれた。
「そうか、じゃあそれにしよう」
「ここにはシアターがあるのですね。素晴らしい」
「いや、君の家にもあるだろう?」
「私は音楽が好きなのでオーディオルームはあるのですが、今日一花が気にいるようなら我が家にも作りますよ」
「ふふっ。それがいい。のんびりと映画を楽しむ時間もいいぞ」
征哉くんとこんな話ができるようになるとはな。
一花がいてくれるだけで関係も大きく変わる。
「二階堂、一花を部屋に案内するぞ。部屋は整っているか?」
「はい。旦那さま」
「よし、じゃあ一花の部屋に行こう」
スッと一花を抱きかかえる征哉くんとともに、私たちはリビングを出た。
「お父さん、ただいま!」
満面の笑みを浮かべた一花が私の目を見てそう言ってくれる。
「――っ!! 一花っ!! ただいまと言ってくれるのか?」
「だって、ここは僕の実家、なんですよね?」
「ああ、そうだとも! ああ、一花。おかえり」
私がおかえりと告げると、一花に笑顔で見つめられる。
ああ、本当に一花が帰ってきてくれたんだ。
征哉くんに抱きかかえられた一花の腕には以前も連れてきてくれた、麻友子の作ったベビー服を着たぬいぐるみが見える。
ライオンの征哉くんも一緒だ。
「一花、またこの子たちを連れてきてくれたのか? 麻友子が喜ぶよ」
「あの……実は、このぬいぐるみたちをお父さんとお母さんにプレゼントしたいなって思って……」
「えっ? 私たちに、このぬいぐるみを? だが、いいのか? 一花と征哉くんのために作ってもらったんじゃないのか?」
「僕、このぬいぐるみたちはこの家に置いておいて欲しいなって思ったんです。だって、この子は小さな僕だから……」
「一花……」
一花の気持ちがこの上なく嬉しい。
この子は本当に心の綺麗な優しい子に育ってくれたものだ。
「それで、小さな僕の隣には征哉さんも一緒に置いて欲しいんです。いいですか?」
「ああ、もちろんだよ!! じゃあ、早速麻友子のところに連れて行こう」
私の案内に征哉くんが一花を抱きかかえてついてくる。
その動きにはなんの心配も感じられないし、一花も完全に全てを預けているようだ。
まぁ、医師としても、そして恋人としても一花のそばについていてくれるのだから、心配などする必要もないか。
父親としては少し寂しさもあるが、一花の幸せな姿を見られるのはいい。
麻友子の部屋に連れて行くと、一花がぬいぐるみを麻友子の仏壇に綺麗に並べてくれる。
「お母さん、これからはずっと一花と征哉さんが一緒だよ」
そのことにきっと麻友子が喜んでいる。
よかったな、ずっと抱っこしたかった小さな一花が戻ってきたぞ。
これからはずっと一緒だ。
――ふふっ。一眞さん、私……嬉しい。もうこれで寂しくないわ。
麻友子がそう言って笑っている気がする。
本当に私たちは幸せだ。
麻友子への挨拶を終え、リビングに案内すると、二階堂がすぐに飲み物を運んでくる。
一花には、征哉くんにあらかじめ聞いておいた、一花の好きな林檎ジュースだ。
私と征哉くんの前にはコーヒーを置くと、一花の前にだけ小さな焼き菓子の入った小皿を置いた。
「えっ、これ……」
「お食事前ですから、少しだけお持ちしました。奥さまがお好きだった、クッキーでございます」
「お母さんが、好きなもの……。ありがとうございます、二階堂さん」
「いえいえ。どうぞお召し上がりください」
一花はそれを手に取る前に、征哉くんにそっと視線を向けた。
征哉くんが頷くのを見ると、嬉しそうにその小さな焼き菓子に手を伸ばした。
一花の身体のことは征哉くんが一番よくわかっているという表れだな。
お菓子を食べすぎて、食事が入らないことがないようにいつも気遣ってあげているのだろう。
そして、一花は征哉くんのいうことをよく聞く。
これがこの数ヶ月で培った二人の過ごし方なのだろうな。
「んっ! 美味しいっ!!」
「ふふっ。喜び方が麻友子によく似ている。やはり親子なのだな」
「お母さんに似てますか?」
「ああ、そっくりだよ」
一花はそれが嬉しかったのか、噛み締めるようにクッキーを味わっていた。
「昼食までは部屋でゆっくり休むといい。昼食後は地下のシアターで一緒に映画を見よう」
「しあたー? えいが?」
一花は私の言った言葉が理解できないようだった。
今まで映画も見たことないだろうからそれも当然か。
なんと言ってわかりやすく伝えようかと考えていると、
「一花がいつも聴いているオーディオブックがあるだろう? あれは声だけで物語を聴かせてくれるが、映画はそれを人が演じて物語を見せてくれるのだよ。シアターはそれを映像として映す場所だ」
と征哉くんが説明してくれていた。
「わぁー、楽しそうです!」
「一花が好きそうなものをいくつか用意してみたのだが征哉くん、どれがいと思う?」
本当なら父として好みをわかっておくべきなのだろうが、ここは仕方がない。
なんせ、一花とこうした時間を過ごすのは初めてなのだから。
一花のために用意しておいた映画のラインナップを見せると、
「ああ、これならきっと一花も楽しめると思いますよ」
と教えてくれた。
「そうか、じゃあそれにしよう」
「ここにはシアターがあるのですね。素晴らしい」
「いや、君の家にもあるだろう?」
「私は音楽が好きなのでオーディオルームはあるのですが、今日一花が気にいるようなら我が家にも作りますよ」
「ふふっ。それがいい。のんびりと映画を楽しむ時間もいいぞ」
征哉くんとこんな話ができるようになるとはな。
一花がいてくれるだけで関係も大きく変わる。
「二階堂、一花を部屋に案内するぞ。部屋は整っているか?」
「はい。旦那さま」
「よし、じゃあ一花の部屋に行こう」
スッと一花を抱きかかえる征哉くんとともに、私たちはリビングを出た。
832
あなたにおすすめの小説
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる