歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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悲しい記憶と両親の愛

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<side一花>

お父さんの家……ううん、違う。
征哉さんと未知子お母さんと過ごす家とは違う、僕を受け入れてくれるもう一つのお家。

誰からも必要としてもらえなかった僕が、実家と愛する人とのお家ができてこんなにも幸せになれるなんて思ってもみなかった。

麻友子お母さんのお墓参りに行ったあの日、その日のために征哉さんが用意してくれたぬいぐるみにお母さんが作ってくれた手作りのベビー服を着せて持っていった。

その時のお父さんの顔がとっても嬉しそうで僕は嬉しかった。

おうちの仏壇で、笑っているお母さんの写真の隣に並べていたけれど、家に帰るときに連れて帰ったのは、征哉さんが僕のために作ってくれたことをわかっていたから。
僕のために作ってくれたものは、僕の手元に置いておいたほうがいいのかなと思って持ち帰ってきたけれど、ベビー服を着た羊の僕を見るたびにお母さんのそばに置いていた方が良かったんじゃないかって思うようになった。

だから、今回お泊まりに行くときに征哉さんにお願いしたんだ。
あのぬいぐるみたちをお父さんとお母さんの家に置いておきたいって。

征哉さんはすぐに僕の気持ちを理解してくれた。
本当に優しい。

そのおかげで羊の僕もライオンの征哉さんもお母さんの仏壇に並べることができた。

赤ちゃんの僕はいつまでもお母さんの近くにいるよ。

手を合わせなから心の中でお母さんに語りかけると、

――嬉しい、一花……ありがとう。

そう聞こえた気がした。

この家にはお母さんの匂いも気配も感じる気がする。
だから、この家に僕を残しておきたい、そう思ったんだ。

お母さんへの挨拶を終えると、二階堂さんがお母さんの好きだったというお菓子をくれた。

サクサクして、とっても美味しい。
これをお母さんが好きだったんだ……。
お母さんの思い出に触れられるってすごく嬉しい。

「よし、じゃあ一花の部屋に行こう」

「僕の部屋?」

「ああ、一花が生まれる前から麻友子と一緒に作っていた部屋だよ。その時から随分物も増えた。一花への18年分の誕生日プレゼントも置いてあるんだ。やっと見せられて嬉しいよ」

「お父さん……」

お父さんとお母さんが作ってくれた部屋。
本当に僕は愛されていたんだな。

征哉さんが優しく抱っこしてくれて、お父さんに案内されながら階段を上がっていく。

「さぁ、ここが一花の部屋だよ」

嬉しそうに扉を開けて見せてくれた先には夢のような世界が広がっていた。

「わぁー、すごい!」

明るい光が差し込む窓のそばに置かれた大きくて座り心地が良さそうな水色のソファーには、真っ白で柔らかそうなクッションが置かれて、床には歩くと気持ちよさそうな白くてふわふわの敷物が敷かれている。

真っ白な家具の周りには、いろんなおもちゃが置かれていてどれも楽しそう。

「ここに置いてあるものは全て一花のものだから自由に開けてくれ」

「このリボンの付いている箱も、ですか?」

「ああ、これはみんな一花の誕生日プレゼントだ。毎年その年齢に合ったものを用意したから見てくれ」

「僕の、プレゼント……ありがとう、お父さん……」

「ふふっ。さぁ、この扉の向こうは寝室だよ」

カチャリと開けて見せてくれた扉の向こうには広い部屋に、それはもう大きなベッドが置かれていて、天井からひらひらとしたカーテンがかけられていた。

「可愛い!!」

「良かった、寝室は麻友子の希望がいっぱい詰まっているよ。この大きなクマのぬいぐるみも赤ちゃんの一花が寂しがらないようにって用意していたんだ。少し休みたかったらここで寝てもいいからな」

「お父さん、ありがとう……ずっと、待っててくれて嬉しいです……」

「いや、一花がこの部屋に来てくれただけで私は幸せだよ。さぁ、昼食まで少し休んでおいで。ああ、征哉くん。一花の宿泊についての注意点を知っておきたいから、少し話ができるか?」

「はい。一花を休ませてからすぐに行きます」

征哉さんの言葉にお父さんは笑顔を向けて部屋を出ていった。

「一花、可愛い部屋だな。お義父さんとお義母さんの愛が詰まっている」

「はい。すっごく嬉しいです。この部屋で赤ちゃんの頃から過ごすはずだったんだなって思ったら、なんだか不思議な感じがします」

「一花へのプレゼントを開けて、想いを受け取るといい。私はお義父さんと話をしてくるよ」

そういうと、征哉さんはいっぱいプレゼントの箱が置かれた、部屋の真ん中に僕を座らせてくれた。
ふわふわの敷物が気持ちがいい。

「何かあったら、これを押すんだ」

「これ……?」

「私の時計につながっているから、すぐに飛んでくるよ」

「わかりました!」

僕の返事に笑顔を向けると、僕のほっぺたにキスをして征哉さんは出て行った。

「この素敵な部屋が、僕の部屋か……。可愛いな」

幼い頃の僕がこの部屋で遊んでいる姿を想像するだけで幸せを感じる。

「それにしてもプレゼントがいっぱい。18年分の誕生日プレゼントって言ってたけど、それ以上に多そう」

それだけ愛されていたってことなんだろう。
僕はどれから開けようか迷ったけれど、その箱の中でも一際大きな箱が目についてそれを開けてみることにした。

「こんなに大きいのって……なんだろう? あっ、これ……!!」

ドキドキしながら箱を開けてみると、目に飛び込んできたのは……茶色のランドセル。

震える手で箱から取り出すと、かっこよくてピカピカのランドセルが僕の目の前に現れた。

ボロボロで、肩のベルトが壊れかけのランドセルを使っていた小学生の頃の思い出が一気に甦る。

――あんたみたいな子はこのランドセルで十分だ! 育ててやってんだからわがままは許さないよ!

悲しい思い出だ。

でも、僕だけのランドセルがあったんだ。
それだけで僕は嬉しい。

僕は真っ新なランドセルを胸に抱き、泣いてしまっていた。
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