181 / 310
新しい出会い
しおりを挟む
「わぁっ!」
「あっ、だめっ! 危ないっ!」
「ふふっ」
「きれーいっ!!」
「よかったぁ……っ」
映画を見ながら、一喜一憂する一花の素直な反応に私も、お義父さんも笑みが溢れる。
本当に素直で可愛らしい。
合間に二階堂さんが用意してくれたキャラメル味のポップコーンを口に入れてやると、目を輝かせて喜んでくれた。
映画の邪魔にならないタイミングを見計らって食べさせたり、飲み物を飲ませたり、こんなにも楽しい映画鑑賞は初めてだ。
映画が終わり、電気が灯ると
「はぁー-っ」
と一花が大きなため息を吐いた。
「一花、どうだった?」
「すっごく面白かったです!! 終わっちゃったのが寂しいくらいでした」
「ははっ。そうか。それはよかった。他にも作品はあるから好きなだけ見てもらって構わないが、あまり長時間だと一花が疲れるだろうからな。うちに来た時はいつも見てくれて構わないよ」
「はい。嬉しいです!!」
一花の楽しいことに、映画鑑賞が追加されたようだな。
我が家にもシアタールームを設置しようか。
それともしばらくはここだけの楽しみにしていた方がいいか、悩むところだな。
そういえば、そろそろ志摩くんから連絡が来ているだろうか。
一花がお義父さんと話している隙にさっとスマホを確認してみたが、メッセージも着信もまだ来ていない。
話し合いが長引いているのか……。
それとも打ち解けて楽しい時間でも過ごしているのか、見当もつかないが、とりあえず待つしかないか。
「旦那さま。甲斐さまがお越しになりました。応接室でお待ちいただいております」
一花を抱きかかえて、リビングへ移動していると、二階堂さんがやってきてお義父さんに伝えているのが聞こえた。
「おお、来たか。わかった、すぐに行く」
「お義父さん、私たちは部屋に行っておきましょうか?」
「ああ、いや。気にしないでいい。一花のために来てもらったんだ」
「一花のために?」
「先にリビングに行っておいてくれないか? 私は彼を連れてくるから」
「わかりました」
事情が全くわからないので気になるが、一花のためにと言っているのだから危険はないだろう。
名前に聞き覚えはないから、会社関係や身内ではなさそうだが……わざわざ一花が来ている時に呼ぶくらいだから、何か大事な用事でもあるのだろうか?
一花を抱きかかえたままソファーに腰を下ろすと、すぐに二階堂さんがお茶を出してくれた。
「ありがとう」
「いえ、旦那さまはすぐにお越しになりますので、しばらくお待ちください」
「あの、二階堂さん……甲斐さんって……」
「ふふっ。すぐにお分かりになりますよ」
気になって尋ねてみたが、二階堂さんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、すぐに部屋から出ていった。
「征哉さん、お父さんのお客さんってどんな人ですか?」
「うーん、私にもわからないな。だが、一花のためだと仰っていたからきっといい人だよ」
「はい。そうですね」
一花の笑顔はお義父さんへの絶対的な信頼だな。
それからしばらくさっきの映画の感想の話題で盛り上がっていると、扉をノックする音が聞こえてゆっくりと扉が開いた。
お義父さんがすぐに入ってくると思ったが、扉の影からひょっこり現れたのは柔らかなイエローの毛色が可愛いミニチュアダックスフンド。
「わぁっ!」
一花の嬉しそうな声に、驚くこともなくその犬は駆け寄ってきた。
万が一噛みつかれたりしてはいけないと一花を守りつつ、犬が寄ってくるのを見ていたが、その犬は私たちのすぐそばでピタッと止まり、一花に撫でてとでもいうようにそっと頭を差し出した。
「可愛いっ!!」
一花がそっと頭を撫でると、クゥンクゥンと嬉しそうな声をあげる。
その姿を少し離れた場所からお義父さんが嬉しそうに写真におさめている姿が私の視界に入っていた。
数枚写真を撮って満足したのか、お義父さんが我々の元にやってきた。
「一花、どうだ? 気に入ったかな?」
「お義父さん、この子……」
「我が家の新しい家族だよ」
「えっ、本当に?」
「ああ。実を言うと、子どもが生まれたら犬を飼って一緒に育てたいと思っていたんだ。だが、麻友子が犬アレルギーでね……諦めていたんだが、一花にはアレルギーはないと聞いて、我が家に迎え入れようと探していたんだ。つい先日、この子と出会って運命的なものを感じてね。一花が帰ってきた日に我が家に来てくれてよかったよ」
「お父さん……」
「この子に会いにいつでも帰ってきてくれ」
「はい。僕……いつか、この子のお散歩ができるように頑張ります!」
「ああ、そうだな」
一花の新しい目標ができたな。
きっとこの子は一花と会えない日のお義父さんの癒しにもなってくれるだろう。
「あっ、だめっ! 危ないっ!」
「ふふっ」
「きれーいっ!!」
「よかったぁ……っ」
映画を見ながら、一喜一憂する一花の素直な反応に私も、お義父さんも笑みが溢れる。
本当に素直で可愛らしい。
合間に二階堂さんが用意してくれたキャラメル味のポップコーンを口に入れてやると、目を輝かせて喜んでくれた。
映画の邪魔にならないタイミングを見計らって食べさせたり、飲み物を飲ませたり、こんなにも楽しい映画鑑賞は初めてだ。
映画が終わり、電気が灯ると
「はぁー-っ」
と一花が大きなため息を吐いた。
「一花、どうだった?」
「すっごく面白かったです!! 終わっちゃったのが寂しいくらいでした」
「ははっ。そうか。それはよかった。他にも作品はあるから好きなだけ見てもらって構わないが、あまり長時間だと一花が疲れるだろうからな。うちに来た時はいつも見てくれて構わないよ」
「はい。嬉しいです!!」
一花の楽しいことに、映画鑑賞が追加されたようだな。
我が家にもシアタールームを設置しようか。
それともしばらくはここだけの楽しみにしていた方がいいか、悩むところだな。
そういえば、そろそろ志摩くんから連絡が来ているだろうか。
一花がお義父さんと話している隙にさっとスマホを確認してみたが、メッセージも着信もまだ来ていない。
話し合いが長引いているのか……。
それとも打ち解けて楽しい時間でも過ごしているのか、見当もつかないが、とりあえず待つしかないか。
「旦那さま。甲斐さまがお越しになりました。応接室でお待ちいただいております」
一花を抱きかかえて、リビングへ移動していると、二階堂さんがやってきてお義父さんに伝えているのが聞こえた。
「おお、来たか。わかった、すぐに行く」
「お義父さん、私たちは部屋に行っておきましょうか?」
「ああ、いや。気にしないでいい。一花のために来てもらったんだ」
「一花のために?」
「先にリビングに行っておいてくれないか? 私は彼を連れてくるから」
「わかりました」
事情が全くわからないので気になるが、一花のためにと言っているのだから危険はないだろう。
名前に聞き覚えはないから、会社関係や身内ではなさそうだが……わざわざ一花が来ている時に呼ぶくらいだから、何か大事な用事でもあるのだろうか?
一花を抱きかかえたままソファーに腰を下ろすと、すぐに二階堂さんがお茶を出してくれた。
「ありがとう」
「いえ、旦那さまはすぐにお越しになりますので、しばらくお待ちください」
「あの、二階堂さん……甲斐さんって……」
「ふふっ。すぐにお分かりになりますよ」
気になって尋ねてみたが、二階堂さんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、すぐに部屋から出ていった。
「征哉さん、お父さんのお客さんってどんな人ですか?」
「うーん、私にもわからないな。だが、一花のためだと仰っていたからきっといい人だよ」
「はい。そうですね」
一花の笑顔はお義父さんへの絶対的な信頼だな。
それからしばらくさっきの映画の感想の話題で盛り上がっていると、扉をノックする音が聞こえてゆっくりと扉が開いた。
お義父さんがすぐに入ってくると思ったが、扉の影からひょっこり現れたのは柔らかなイエローの毛色が可愛いミニチュアダックスフンド。
「わぁっ!」
一花の嬉しそうな声に、驚くこともなくその犬は駆け寄ってきた。
万が一噛みつかれたりしてはいけないと一花を守りつつ、犬が寄ってくるのを見ていたが、その犬は私たちのすぐそばでピタッと止まり、一花に撫でてとでもいうようにそっと頭を差し出した。
「可愛いっ!!」
一花がそっと頭を撫でると、クゥンクゥンと嬉しそうな声をあげる。
その姿を少し離れた場所からお義父さんが嬉しそうに写真におさめている姿が私の視界に入っていた。
数枚写真を撮って満足したのか、お義父さんが我々の元にやってきた。
「一花、どうだ? 気に入ったかな?」
「お義父さん、この子……」
「我が家の新しい家族だよ」
「えっ、本当に?」
「ああ。実を言うと、子どもが生まれたら犬を飼って一緒に育てたいと思っていたんだ。だが、麻友子が犬アレルギーでね……諦めていたんだが、一花にはアレルギーはないと聞いて、我が家に迎え入れようと探していたんだ。つい先日、この子と出会って運命的なものを感じてね。一花が帰ってきた日に我が家に来てくれてよかったよ」
「お父さん……」
「この子に会いにいつでも帰ってきてくれ」
「はい。僕……いつか、この子のお散歩ができるように頑張ります!」
「ああ、そうだな」
一花の新しい目標ができたな。
きっとこの子は一花と会えない日のお義父さんの癒しにもなってくれるだろう。
2,504
あなたにおすすめの小説
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる