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「ねぇ、征哉さん」
「――っ、どうした?」
昇くんの困りごとに頭を悩ませていると、突然背中をポンと小さな力で叩かれて慌てて振り返った。
「ごめんなさい、お話ししていたのに」
「いや、気にしないでいい。それでどうしたんだ?」
「ご飯も食べ終わったから、直くんたちのところに行きたいなって」
一花の言葉に彼らに視線を向けると、直純くんと絢斗さんがフランとグリのいるサークルの中にボールを投げ入れたりして楽しそうに戯れているのが見える。
ちょうどサークルの前に少し広めの椅子が置かれているのは、きっと天沢が一花のために用意してくれたものだろう。
「ああ、そうか。じゃあ連れて行こう」
昇くんをその場に待たせて私は一花を抱きかかえて絢斗さんたちの元に連れて行き椅子に座らせた。
「あ、一花ちゃん。来てくれたんだ。征哉くん、連れてきてくれてありがとう」
「いえ、一花も絢斗さんたちと話したかったみたいなので。それじゃあ、しばらく一花をよろしくお願いします」
「任せて! ねっ、直くん」
「はい。一花さんとお話ししたかったので嬉しいです」
一花を見上げる目が憧れの眼差しになっている。
結婚式を含めた今日の出来事はまだ14歳の彼にとっては夢のような時間だったに違いない。
「一花、何かあったら声をかけてくれ。一人で無理をしてはいけないぞ」
「はい。わかりました、征哉さん」
「もうしばらくしたら、その着物でまた少し撮影があるそうだから時間になったら呼びにくるよ」
そういって、一花を絢斗さんたちに託し、その場を離れると待ってましたとばかりに一花たちの周りに、今日の結婚式を彩ってくれた花たちが集まり始めた。
母も含めて、あの場所だけ華やかな春の花畑のようになっている。
それを少し離れた席から愛でる私たちは、花見をしているような気分だな。
ふと見ると、甲斐さんとそのパートナーが一花たちの様子を気にしているのが見える。
サークルの前で集まって一花たちが話をしているから、気になっているのかもしれないと思い、
「フランたちに負担がかかっているようなら教えてください。場所を移動させますよ」
と声をかけると、甲斐さんは焦ったように手を振ってきた。
「いえいえ、フランたちはご機嫌にしているので心配は要りません」
「それなら安心しました。あの、よければ彼も一花たちと一緒に話でもどうですか?」
「ありがとうございます。伊月、どうしたい?」
「あ、あの……僕……」
以前、甲斐さんから人見知りだと伺っていたがかなりのものだな。
だが、直純くんも人見知りというかあまり人に慣れていないようだったが、谷垣くんや一花とはすぐに仲良くなれたようだし、入ってしまえば彼も仲良くなれそうな気はする。
とはいえ無理強いはできないが、ここで彼らだけ仲間はずれになってしまうのは避けたいな。
そう思っていると、
「ねぇ、君は桜城大学の子じゃなかった?」
と突然絢斗さんが声をかけてきた。
「えっ、は、はい。そうです」
「ああー、やっぱり! 見覚えがあると思ってたんだよね。確か、真琴くんのお友達だったよね? 伊月くん、だったかな?」
「は、はい。あの……」
「ああ、ごめんね。こんな格好じゃわからないよね。私、法学部の緑川だよ。覚えてるかな?」
「ええーーっ!! 緑川教授? ものすごくお綺麗でわかりませんでした」
「ありがとう。せっかくだからお着替えさせてもらったんだ。伊月くんも可愛いからお着替えしたらよかったのに」
「えっ、僕なんてそんな……っ」
照れる彼の横で甲斐さんは愛おしそうに見つめている。
というか、彼は桜城大学の卒業生だったんだな。
どう見ても桜守の方が合いそうな子だから、結構大変だっただろう。
「絢斗さん、彼をご存知なんですか?」
「うん。征哉くんは経済学部の志良堂教授と鳴宮教授の息子の伊織くん知ってるでしょう?」
「はい。安慶名先輩ですね」
「そうそう、その伊織くんの恋人の弟くんが伊月くんの友人なんだよ」
「えっ? そうなんですか! それは知らなかったな」
安慶名先輩が恋人との生活のために長く東京と沖縄を行き来していたけれど、一年ほど前に沖縄の離島に新居を構えたという話は聞いていたが、そこまでは知らなかった。
「まぁそこまではなかなか知らないよね。伊月くん、敬介くんも同じ経済学部の卒業生だし、他にも桜城のOBがいるよ。こっちにきて一緒に話そう」
「は、はい」
共通点があることに安心したのか、彼は絢斗さんと一緒に一花たちのところに向かった。
「貴船さん、伊月のこと気にかけてくださってありがとうございます。」
「いえいえ、私たちもせっかくの機会ですから、あちらでゆっくりと話をしましょう」
と甲斐さんにも声をかけて、すでに昇くんたちが集まっている席に向かった。
天沢が日本酒やワインとそれに合うつまみを追加で出してくれて、それを肴に少し離れた場所にいる花たちを愛でる。
本当に最高の時間だ。
「ああ、そうだ。今日は蓮見さんと榎木くんのカップル以外はうちの保養所で宿泊になるから、昇くん。さっきのことをみんなに相談してみようか?」
「えっ、でも……」
「アイディアを出してくれる人は多い方がいいんじゃないか?」
「それは、そうですね……お願いします」
昇くんは少し恥ずかしそうにしていたが、背に腹は変えられないと思ったのだろう。
私がみんなに意見を求めるのを止めることはしなかった。
「――っ、どうした?」
昇くんの困りごとに頭を悩ませていると、突然背中をポンと小さな力で叩かれて慌てて振り返った。
「ごめんなさい、お話ししていたのに」
「いや、気にしないでいい。それでどうしたんだ?」
「ご飯も食べ終わったから、直くんたちのところに行きたいなって」
一花の言葉に彼らに視線を向けると、直純くんと絢斗さんがフランとグリのいるサークルの中にボールを投げ入れたりして楽しそうに戯れているのが見える。
ちょうどサークルの前に少し広めの椅子が置かれているのは、きっと天沢が一花のために用意してくれたものだろう。
「ああ、そうか。じゃあ連れて行こう」
昇くんをその場に待たせて私は一花を抱きかかえて絢斗さんたちの元に連れて行き椅子に座らせた。
「あ、一花ちゃん。来てくれたんだ。征哉くん、連れてきてくれてありがとう」
「いえ、一花も絢斗さんたちと話したかったみたいなので。それじゃあ、しばらく一花をよろしくお願いします」
「任せて! ねっ、直くん」
「はい。一花さんとお話ししたかったので嬉しいです」
一花を見上げる目が憧れの眼差しになっている。
結婚式を含めた今日の出来事はまだ14歳の彼にとっては夢のような時間だったに違いない。
「一花、何かあったら声をかけてくれ。一人で無理をしてはいけないぞ」
「はい。わかりました、征哉さん」
「もうしばらくしたら、その着物でまた少し撮影があるそうだから時間になったら呼びにくるよ」
そういって、一花を絢斗さんたちに託し、その場を離れると待ってましたとばかりに一花たちの周りに、今日の結婚式を彩ってくれた花たちが集まり始めた。
母も含めて、あの場所だけ華やかな春の花畑のようになっている。
それを少し離れた席から愛でる私たちは、花見をしているような気分だな。
ふと見ると、甲斐さんとそのパートナーが一花たちの様子を気にしているのが見える。
サークルの前で集まって一花たちが話をしているから、気になっているのかもしれないと思い、
「フランたちに負担がかかっているようなら教えてください。場所を移動させますよ」
と声をかけると、甲斐さんは焦ったように手を振ってきた。
「いえいえ、フランたちはご機嫌にしているので心配は要りません」
「それなら安心しました。あの、よければ彼も一花たちと一緒に話でもどうですか?」
「ありがとうございます。伊月、どうしたい?」
「あ、あの……僕……」
以前、甲斐さんから人見知りだと伺っていたがかなりのものだな。
だが、直純くんも人見知りというかあまり人に慣れていないようだったが、谷垣くんや一花とはすぐに仲良くなれたようだし、入ってしまえば彼も仲良くなれそうな気はする。
とはいえ無理強いはできないが、ここで彼らだけ仲間はずれになってしまうのは避けたいな。
そう思っていると、
「ねぇ、君は桜城大学の子じゃなかった?」
と突然絢斗さんが声をかけてきた。
「えっ、は、はい。そうです」
「ああー、やっぱり! 見覚えがあると思ってたんだよね。確か、真琴くんのお友達だったよね? 伊月くん、だったかな?」
「は、はい。あの……」
「ああ、ごめんね。こんな格好じゃわからないよね。私、法学部の緑川だよ。覚えてるかな?」
「ええーーっ!! 緑川教授? ものすごくお綺麗でわかりませんでした」
「ありがとう。せっかくだからお着替えさせてもらったんだ。伊月くんも可愛いからお着替えしたらよかったのに」
「えっ、僕なんてそんな……っ」
照れる彼の横で甲斐さんは愛おしそうに見つめている。
というか、彼は桜城大学の卒業生だったんだな。
どう見ても桜守の方が合いそうな子だから、結構大変だっただろう。
「絢斗さん、彼をご存知なんですか?」
「うん。征哉くんは経済学部の志良堂教授と鳴宮教授の息子の伊織くん知ってるでしょう?」
「はい。安慶名先輩ですね」
「そうそう、その伊織くんの恋人の弟くんが伊月くんの友人なんだよ」
「えっ? そうなんですか! それは知らなかったな」
安慶名先輩が恋人との生活のために長く東京と沖縄を行き来していたけれど、一年ほど前に沖縄の離島に新居を構えたという話は聞いていたが、そこまでは知らなかった。
「まぁそこまではなかなか知らないよね。伊月くん、敬介くんも同じ経済学部の卒業生だし、他にも桜城のOBがいるよ。こっちにきて一緒に話そう」
「は、はい」
共通点があることに安心したのか、彼は絢斗さんと一緒に一花たちのところに向かった。
「貴船さん、伊月のこと気にかけてくださってありがとうございます。」
「いえいえ、私たちもせっかくの機会ですから、あちらでゆっくりと話をしましょう」
と甲斐さんにも声をかけて、すでに昇くんたちが集まっている席に向かった。
天沢が日本酒やワインとそれに合うつまみを追加で出してくれて、それを肴に少し離れた場所にいる花たちを愛でる。
本当に最高の時間だ。
「ああ、そうだ。今日は蓮見さんと榎木くんのカップル以外はうちの保養所で宿泊になるから、昇くん。さっきのことをみんなに相談してみようか?」
「えっ、でも……」
「アイディアを出してくれる人は多い方がいいんじゃないか?」
「それは、そうですね……お願いします」
昇くんは少し恥ずかしそうにしていたが、背に腹は変えられないと思ったのだろう。
私がみんなに意見を求めるのを止めることはしなかった。
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