299 / 310
番外編
一花との時間
しおりを挟む
<side一眞>
会社玄関で待っていると、征哉くんの車が入ってきた。
助手席には一花の姿が見える。
思わず手を振ると、一花も私に気づいてくれたようで手を振りかえしてくれた。
実に可愛らしい。
車が停まり、まず征哉くんが降りてきた。
「お義父さん。今日は十七時には迎えにきますので、それまで一花をお願いします」
「一花のことは心配しないでいい。任せてくれ」
その言葉にホッとしたように一花を車から降ろす。
さっと抱きかかえるのも手慣れたものだ。
それにしても今日の一花の服は可愛らしくて一花によく似合っている。
きっと征哉くんが選んだのだろう。
可愛い一花がおかしな目に遭わないように十分に気をつけないとな。
一花を抱いた征哉くんと一緒に会社のロビーに入ると、周りにいた社員の視線が一気に注がれる。
もちろん私と征哉くんに対しての視線もあるだろうが、大部分は征哉くんに抱きかかえられた一花に向けられている。そこに史紀と滝川くんがやってきた。
滝川くんが顔を赤くしているが、走ってきたからなのか。
それとも一花を見て赤くなっているのか……きっとどちらの理由もありそうだが、滝川くんが一花に対して良からぬ思いを抱くことはないだろう。
「史紀さん。おはようございます」
「おはよう、一花くん。会社で会えるなんて嬉しいよ」
「僕も嬉しいです。あの、この人は?」
一花は初めて見る滝川くんが気になるようだ。
「彼は秘書の滝川くんだよ。私や史紀の……そうだな、世話をしてくれる人だよ。征哉くんで言えば、志摩くんのような仕事をしているんだ」
「わぁ! じゃあ、すごい人ですね! 滝川さん、初めまして。貴船一花です。今日はよろしくお願いします」
「は、はい。た、滝川と申します。ど、どうぞよろしくお願いします」
一花の笑顔を真正面で受けた滝川くんは一気に顔を赤らめつつもなんとか挨拶できたようだ。
こんな滝川くんを見るのは初めてだな。
「お義父さん。一花のことをくれぐれもよろしくお願いします」
滝川くんの様子を見て、一花を私に預けながら真剣な目を向けてくるが滝川くんのことは心配はいらない。
「ああ、任せてくれ。大丈夫だから」
滝川くんのことは大丈夫だからと目で伝えながら、一花をこの腕に抱いた。
この前釣りに行った時よりも少し重くなっているようだが、まだまだ軽い。
「じゃあ、一花。行ってくるよ」
「はーい。征哉さん。行ってらっしゃい」
一花と挨拶をしてそのまま玄関に向かおうとする征哉くんを見送るつもりだったが、
「あっ! 征哉さん!」
と一花が引き留める。
何か忘れ物でもあったのだろうかと思ったが、一花は何も持っていない。
「一花、どうした?」
引き止められて一花の元に引き返してきた征哉くんに一花が私の腕から身を乗り出して征哉くんと唇を重ねた。
ちゅっと可愛らしい音が私の耳に入ってくる。
それどころかいつもならざわついているはずのロビーがそのリップ音だけは鮮明に聞こえた気がした。
「お仕事頑張ってくださいね」
しんと静まり返ったロビーに一花の可愛い声だけが響いて、征哉くんは嬉しそうに一花に見送られながら玄関に歩いていった。
見送りを済ませた一花は何事もなかったかのように私に笑顔を見せる。
「パパのお部屋に連れていってください!」
「ん? ああ、そうだな。よし、行こうか」
あれは二人のいつものルーティーン。
私も麻友子と毎日していたのだから、外野がとやかくいうことではない。
ここからは私と一花の時間だ。
思いっきり楽しむとしよう。
一花を抱きかかえてエレベーターホールに向かう。
後ろから史紀と滝川くんもついてきて、一番端のエレベーターのボタンをさっと押してくれた。
そのエレベーターは上階専用エレベーター。
途中の階には止まらないから他の社員との接触はないが、エレベーターホールには数名の社員がエレベーターを待っていた。おそらくさっきの場面も目撃しているだろう。
一花をチラチラ見ているが、私が抱きかかえているということもあって声はかけられないようだ。
すると一花が突然、近くに立っていた女子社員に声をかけた。
「あの……そのバッグについている飾り、すっごく可愛いです」
一花に話しかけられたその社員は驚きの表情を見せつつも、嬉しそうに笑顔を見せた。
「これはこの会社に入社した記念に頂いたものです。私も気に入ってます」
「入社、記念?」
一花はまだ理解が追いついていないようだったから、私が説明をしてあげると嬉しそうに笑っていた。
「だから桜の飾りなんですね! すっごく可愛い!!」
その純粋な笑顔にみんなが癒されるようだった。
会社玄関で待っていると、征哉くんの車が入ってきた。
助手席には一花の姿が見える。
思わず手を振ると、一花も私に気づいてくれたようで手を振りかえしてくれた。
実に可愛らしい。
車が停まり、まず征哉くんが降りてきた。
「お義父さん。今日は十七時には迎えにきますので、それまで一花をお願いします」
「一花のことは心配しないでいい。任せてくれ」
その言葉にホッとしたように一花を車から降ろす。
さっと抱きかかえるのも手慣れたものだ。
それにしても今日の一花の服は可愛らしくて一花によく似合っている。
きっと征哉くんが選んだのだろう。
可愛い一花がおかしな目に遭わないように十分に気をつけないとな。
一花を抱いた征哉くんと一緒に会社のロビーに入ると、周りにいた社員の視線が一気に注がれる。
もちろん私と征哉くんに対しての視線もあるだろうが、大部分は征哉くんに抱きかかえられた一花に向けられている。そこに史紀と滝川くんがやってきた。
滝川くんが顔を赤くしているが、走ってきたからなのか。
それとも一花を見て赤くなっているのか……きっとどちらの理由もありそうだが、滝川くんが一花に対して良からぬ思いを抱くことはないだろう。
「史紀さん。おはようございます」
「おはよう、一花くん。会社で会えるなんて嬉しいよ」
「僕も嬉しいです。あの、この人は?」
一花は初めて見る滝川くんが気になるようだ。
「彼は秘書の滝川くんだよ。私や史紀の……そうだな、世話をしてくれる人だよ。征哉くんで言えば、志摩くんのような仕事をしているんだ」
「わぁ! じゃあ、すごい人ですね! 滝川さん、初めまして。貴船一花です。今日はよろしくお願いします」
「は、はい。た、滝川と申します。ど、どうぞよろしくお願いします」
一花の笑顔を真正面で受けた滝川くんは一気に顔を赤らめつつもなんとか挨拶できたようだ。
こんな滝川くんを見るのは初めてだな。
「お義父さん。一花のことをくれぐれもよろしくお願いします」
滝川くんの様子を見て、一花を私に預けながら真剣な目を向けてくるが滝川くんのことは心配はいらない。
「ああ、任せてくれ。大丈夫だから」
滝川くんのことは大丈夫だからと目で伝えながら、一花をこの腕に抱いた。
この前釣りに行った時よりも少し重くなっているようだが、まだまだ軽い。
「じゃあ、一花。行ってくるよ」
「はーい。征哉さん。行ってらっしゃい」
一花と挨拶をしてそのまま玄関に向かおうとする征哉くんを見送るつもりだったが、
「あっ! 征哉さん!」
と一花が引き留める。
何か忘れ物でもあったのだろうかと思ったが、一花は何も持っていない。
「一花、どうした?」
引き止められて一花の元に引き返してきた征哉くんに一花が私の腕から身を乗り出して征哉くんと唇を重ねた。
ちゅっと可愛らしい音が私の耳に入ってくる。
それどころかいつもならざわついているはずのロビーがそのリップ音だけは鮮明に聞こえた気がした。
「お仕事頑張ってくださいね」
しんと静まり返ったロビーに一花の可愛い声だけが響いて、征哉くんは嬉しそうに一花に見送られながら玄関に歩いていった。
見送りを済ませた一花は何事もなかったかのように私に笑顔を見せる。
「パパのお部屋に連れていってください!」
「ん? ああ、そうだな。よし、行こうか」
あれは二人のいつものルーティーン。
私も麻友子と毎日していたのだから、外野がとやかくいうことではない。
ここからは私と一花の時間だ。
思いっきり楽しむとしよう。
一花を抱きかかえてエレベーターホールに向かう。
後ろから史紀と滝川くんもついてきて、一番端のエレベーターのボタンをさっと押してくれた。
そのエレベーターは上階専用エレベーター。
途中の階には止まらないから他の社員との接触はないが、エレベーターホールには数名の社員がエレベーターを待っていた。おそらくさっきの場面も目撃しているだろう。
一花をチラチラ見ているが、私が抱きかかえているということもあって声はかけられないようだ。
すると一花が突然、近くに立っていた女子社員に声をかけた。
「あの……そのバッグについている飾り、すっごく可愛いです」
一花に話しかけられたその社員は驚きの表情を見せつつも、嬉しそうに笑顔を見せた。
「これはこの会社に入社した記念に頂いたものです。私も気に入ってます」
「入社、記念?」
一花はまだ理解が追いついていないようだったから、私が説明をしてあげると嬉しそうに笑っていた。
「だから桜の飾りなんですね! すっごく可愛い!!」
その純粋な笑顔にみんなが癒されるようだった。
1,120
あなたにおすすめの小説
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる