歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

一花との時間

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<side一眞>

会社玄関で待っていると、征哉くんの車が入ってきた。
助手席には一花の姿が見える。

思わず手を振ると、一花も私に気づいてくれたようで手を振りかえしてくれた。
実に可愛らしい。

車が停まり、まず征哉くんが降りてきた。

「お義父さん。今日は十七時には迎えにきますので、それまで一花をお願いします」

「一花のことは心配しないでいい。任せてくれ」

その言葉にホッとしたように一花を車から降ろす。
さっと抱きかかえるのも手慣れたものだ。

それにしても今日の一花の服は可愛らしくて一花によく似合っている。
きっと征哉くんが選んだのだろう。

可愛い一花がおかしな目に遭わないように十分に気をつけないとな。

一花を抱いた征哉くんと一緒に会社のロビーに入ると、周りにいた社員の視線が一気に注がれる。
もちろん私と征哉くんに対しての視線もあるだろうが、大部分は征哉くんに抱きかかえられた一花に向けられている。そこに史紀と滝川くんがやってきた。

滝川くんが顔を赤くしているが、走ってきたからなのか。
それとも一花を見て赤くなっているのか……きっとどちらの理由もありそうだが、滝川くんが一花に対して良からぬ思いを抱くことはないだろう。

「史紀さん。おはようございます」

「おはよう、一花くん。会社で会えるなんて嬉しいよ」

「僕も嬉しいです。あの、この人は?」

一花は初めて見る滝川くんが気になるようだ。

「彼は秘書の滝川くんだよ。私や史紀の……そうだな、世話をしてくれる人だよ。征哉くんで言えば、志摩くんのような仕事をしているんだ」

「わぁ! じゃあ、すごい人ですね! 滝川さん、初めまして。貴船一花です。今日はよろしくお願いします」

「は、はい。た、滝川と申します。ど、どうぞよろしくお願いします」

一花の笑顔を真正面で受けた滝川くんは一気に顔を赤らめつつもなんとか挨拶できたようだ。
こんな滝川くんを見るのは初めてだな。

「お義父さん。一花のことをくれぐれも・・・・・よろしくお願いします」

滝川くんの様子を見て、一花を私に預けながら真剣な目を向けてくるが滝川くんのことは心配はいらない。

「ああ、任せてくれ。大丈夫だから」

滝川くんのことは大丈夫だからと目で伝えながら、一花をこの腕に抱いた。
この前釣りに行った時よりも少し重くなっているようだが、まだまだ軽い。

「じゃあ、一花。行ってくるよ」

「はーい。征哉さん。行ってらっしゃい」

一花と挨拶をしてそのまま玄関に向かおうとする征哉くんを見送るつもりだったが、

「あっ! 征哉さん!」

と一花が引き留める。
何か忘れ物でもあったのだろうかと思ったが、一花は何も持っていない。

「一花、どうした?」

引き止められて一花の元に引き返してきた征哉くんに一花が私の腕から身を乗り出して征哉くんと唇を重ねた。

ちゅっと可愛らしい音が私の耳に入ってくる。
それどころかいつもならざわついているはずのロビーがそのリップ音だけは鮮明に聞こえた気がした。

「お仕事頑張ってくださいね」

しんと静まり返ったロビーに一花の可愛い声だけが響いて、征哉くんは嬉しそうに一花に見送られながら玄関に歩いていった。

見送りを済ませた一花は何事もなかったかのように私に笑顔を見せる。

「パパのお部屋に連れていってください!」

「ん? ああ、そうだな。よし、行こうか」

あれは二人のいつものルーティーン。
私も麻友子と毎日していたのだから、外野がとやかくいうことではない。

ここからは私と一花の時間だ。
思いっきり楽しむとしよう。

一花を抱きかかえてエレベーターホールに向かう。
後ろから史紀と滝川くんもついてきて、一番端のエレベーターのボタンをさっと押してくれた。
そのエレベーターは上階専用エレベーター。
途中の階には止まらないから他の社員との接触はないが、エレベーターホールには数名の社員がエレベーターを待っていた。おそらくさっきの場面も目撃しているだろう。

一花をチラチラ見ているが、私が抱きかかえているということもあって声はかけられないようだ。

すると一花が突然、近くに立っていた女子社員に声をかけた。

「あの……そのバッグについている飾り、すっごく可愛いです」

一花に話しかけられたその社員は驚きの表情を見せつつも、嬉しそうに笑顔を見せた。

「これはこの会社に入社した記念に頂いたものです。私も気に入ってます」

「入社、記念?」

一花はまだ理解が追いついていないようだったから、私が説明をしてあげると嬉しそうに笑っていた。

「だから桜の飾りなんですね! すっごく可愛い!!」

その純粋な笑顔にみんなが癒されるようだった。
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