歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

一眞さんの夢

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「わぁーっ、すっごく大きな会社。これが全部パパの会社ですか?」

「そうだよ。ほら隣にあるカフェ。あそこが一花が行きたがっていたところだ」

入口が綺麗な花に囲まれた可愛い建物。
あそこに今日は行けるんだ! 楽しみ!!

「あっ! パパがいる!!」

玄関に立っている姿ですぐにパパだとわかる。
パパも僕の姿が見えたみたいで、こっちに向かって手を振ってくれている。

椅子に座ったままパパに向かって両手を振ると笑顔が見える。
それがすごく嬉しい。

征哉さんがパパの前に車を停めてくれた。
すぐに運転席から降りてパパたちと話をしている。
それを僕は待ち遠しく思っていたけれど、きっと僕のことで何か話をしているんだろう。
何も知らない場所だから、征哉さんが心配してくれているんだ。
大人しく車の中からパパと征哉さんの様子を見ていると、やっと征哉さんが助手席の扉を開けてくれた。

「一花。待たせて悪かったね」

「ううん。大丈夫です」

座っている僕をそのまま抱きかかえて車から降ろしてくれる。
だいぶ歩けるようになったけれど、スタスタと自由に歩けるわけじゃない。
すぐに疲れてしまうし、慣れた場所じゃないとまだまだ不安だ。
だから征哉さんに抱っこされるとすごく安心する。

征哉さんに抱っこされたまま、パパと並んで建物の中に入る。
すると、二人の男の人が走ってこっちにやってきた。
一人は知っている。史紀さんだ。
もう一人は誰だろう?

<side史紀>

今日は一花くんが会社にやってくる。
昨日の夜に会長……いや、一眞さんから連絡があってちょっと浮かれてしまった。

だって、一花くんが会社に来てくれることは一眞さんの夢だったから。
麻友子さんの発案でオープンした桜カフェを、麻友子さんの死後、一眞さんが麻友子さんを思い出して辛いだろうから閉めたほうがいいんじゃないかという意見も社内で上がったこともあった。
けれど、一眞さんが『息子の一花といつか一緒に行けるように麻友子の思い出を残しておきたい』と仰って、それからずっとその日を待ち望んでいた。

その夢が今日、とうとう叶うんだ。

いつも新作が出るたびに一花くんにメッセージを送り続けていた甲斐があったよと話していた一眞さんの笑顔は一生忘れない。

今日はいつもより早く出勤し、社長室に行く前に桜カフェに顔を出しておいた。
桜カフェの店長に今日は会長と会長のご子息がカフェに来ることを前もって伝えておくためだ。

このカフェのオープン時間は会社の就業時間と同じため、従業員は全て櫻葉グループの飲料部門の正社員という位置付けになっている。なので会長と一花くんにみすみすおかしな真似はしないと思うが、一花くんのあまりの可愛さに暴走するものがいないとも限らない。

店長にはあらかじめしっかりと接客をするようにと注意しておいた。

そうして、社長室に向かうまえに今日のことを打ち合わせしておこうと秘書室に顔を出すと、もうすでに会長が出社していて驚いた。

よほど今日の一花くんの会社訪問が楽しみで仕方がないのだろう。

秘書室長の滝川くんも一緒に会長と三人で綿密な打ち合わせをしていると、とうとう貴船さんからの連絡が来た。

まずは会長だけでお迎えに行き、私と滝川くんは少し遅れて出迎えに行くということになった。
やっぱり最初は邪魔者はいないほうがいい。

少し離れた場所で様子を窺っていると、会長と貴船さんに抱きかかえられた一花くんがロビーに入ってきた。
もうそろそろいいだろうと滝川くんと三人の元に駆け寄ると、

「あ、史紀さんだぁ!!」

と可愛らしい声が響いた。

「くっ! か、可愛いっ!」

その可愛い笑顔に隣にいた滝川くんが一瞬にして心を射抜かれたようで、苦しげな声が聞こえた。

「滝川くん。一花くんを好きになってはダメだよ。彼はもう大事なパートナー持ちだからね。貴船コンツェルンを敵に回すようなことがあればこれから先、どの業界でも生きていけないよ」

「ひぃっ、わ、わかっております」

初っ端から怯えさせることになってしまったが、これくらい驚かせておいたほうが余計なことを考えずに済むだろう。なんとか無事に今日が終えられるように。そう願うだけだ。
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