歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

パパの会社に行こう!

「おはよう」

いつもより数時間早く出社すると、秘書室の室長をしている滝川たきがわくんが驚きの声をあげた。

「お、おはようございます。櫻葉会長。今日は何か特別なことでもございましたか?」

一花のことがあってから私は櫻葉グループの全権を史紀に譲り、会長の職も辞するつもりだったが、史紀が社長を引き継ぐ条件として、会長として私の名前を残すこと、そして重要な会議や取引先との会合には必ず出席することを望んだ。
だから私はその日だけは必ず一般社員と同じく始業時間に合わせて出社していたが、それ以外の日は一般社員たちよりもずっと遅くかった。忙しい時間に出社して出迎えなどに気を遣わせたくなかったのだ。

一花が見つかり、私も仕事に対する意欲ができたことでこれまで無理をさせてきた史紀に労いの気持ちで私の仕事量を増やすことにしたが、それでもいつも出社は遅らせていた。今更毎日仰々しく出迎えられても困るからだ。

だが、今日は一花が来る。

征哉くんが一花を連れてきてくれる前にしっかりと整えておかなくてはいけない。
だから早く出社した。滝川くんにも一花のことは話をしておかなくてはいけないからな。

「ああ、この上なく特別なことだよ。今日は一花が会社訪問にきてくれるのだよ」

「えっ? ご子息が?」

いつも冷静な滝川くんが目を丸くして驚いていることに思わず笑ってしまう。

「驚いただろう? 私も昨夜聞いて驚いたよ。だが、せっかく来てくれるんだ。一花には良い会社だと思って帰ってもらいたい」

「そうですね。私も櫻葉グループの一員として心を込めておもてなしさせていただきます」

「ありがとう。史紀にも協力を頼んでいるが、滝川くんもついていてくれたら助かるよ。一花のことは理解してくれているだろう?」

十八になり世間では成人と言われる年齢になっている一花だが、これまで過ごしてきた環境のせいで見た目も中身もまだまだ幼い。中学生くらいだと思ってくれてちょうど良いくらいだ。
それに歩けるようになったとはいえ、まだ一人で歩き回ると言うこともできない。

私にとっては一花を抱きかかえられる良い機会だが、周りから見ればただの甘やかしにも思われかねない。

もちろん一花のことはある程度一般社員たちにも話をしてあるからそこまで心配はしていないが、もし一花が嫌な目に遭うようなことがあれば私は許せないだろう。

「ご安心ください。ご子息が笑顔でお過ごしになれますように尽力いたします」

「滝川くんがいてくれてよかったよ」

それから滝川くんは秘書室の他の社員たちとも情報共有を行い、出社してきた史紀とも綿密な打ち合わせをして一花を迎え入れるまでにしっかりと体制を整えてくれた。

ああ、これでいつ一花が来ても大丈夫だ。

スマホを握りしめ、何度も時計を見ては浮かれてしまう。

そうしてようやく征哉くんから今から家を出るとの連絡が届いた。

<side一花>

今日はパパの会社に行く日。
もう楽しみすぎて早く目が覚めてしまった。

「征哉さん、どんな格好がいいですか?」

「そうだな……」

征哉さんはクローゼットに並んだ洋服たちを前に真剣な表情で選んでいく。

「これかな」

征哉さんが選んでくれたのは、ケーブル模様が可愛い白の大きめのセーター。
それに灰色のズボン。もこもこの可愛い水色のコートも選んでくれた。

「まぁ、ずっと室内にいるならコートは必要ないが、一応持っていくといい」

「はーい!」

あったかいセーターの下に薄い肌着を着る。
これがめちゃくちゃあったかいからコートは必要ないかも。

おっきなセーターがすごく着心地が良くて長いお袖でほっぺたをすりすりしてしまう。

「征哉さん、お着替え終わりましたー!」

スーツに着替えていた征哉さんの前に立って見せると、征哉さんの表情が嬉しそうに変化した。

「一花、よく似合ってるな。だが可愛すぎるから絶対にお義父さんと史紀さんから離れてはダメだぞ」

僕をギュッと抱きしめながらそんなことを言ってくれる。
征哉さんに可愛いって言われるのってすごく嬉しいな。

ああ、パパの会社に行くの楽しみだ!


征哉さんが運転する車の助手席に乗せてもらって家を出る。
キャンピングカーじゃない車に乗る機会はあまりない上に、征哉さんの運転というのがすごく楽しい。

いつもは運転手さんがいるけれど、今日はいつでも僕をお迎えに来られるようにしてくれたんだ。

「一花、もう直ぐ着くよ。会社の玄関で待っていてくれるようだから、すぐに会えるよ」

「わぁー! 楽しみ!!」

パパの会社ってどんなところなんだろう。
ワクワクが止まらない。

そうして車は大きな建物に入って行った。
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