歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
297 / 310
番外編

パパの会社に行こう!

しおりを挟む
「おはよう」

いつもより数時間早く出社すると、秘書室の室長をしている滝川たきがわくんが驚きの声をあげた。

「お、おはようございます。櫻葉会長。今日は何か特別なことでもございましたか?」

一花のことがあってから私は櫻葉グループの全権を史紀に譲り、会長の職も辞するつもりだったが、史紀が社長を引き継ぐ条件として、会長として私の名前を残すこと、そして重要な会議や取引先との会合には必ず出席することを望んだ。
だから私はその日だけは必ず一般社員と同じく始業時間に合わせて出社していたが、それ以外の日は一般社員たちよりもずっと遅くかった。忙しい時間に出社して出迎えなどに気を遣わせたくなかったのだ。

一花が見つかり、私も仕事に対する意欲ができたことでこれまで無理をさせてきた史紀に労いの気持ちで私の仕事量を増やすことにしたが、それでもいつも出社は遅らせていた。今更毎日仰々しく出迎えられても困るからだ。

だが、今日は一花が来る。

征哉くんが一花を連れてきてくれる前にしっかりと整えておかなくてはいけない。
だから早く出社した。滝川くんにも一花のことは話をしておかなくてはいけないからな。

「ああ、この上なく特別なことだよ。今日は一花が会社訪問にきてくれるのだよ」

「えっ? ご子息が?」

いつも冷静な滝川くんが目を丸くして驚いていることに思わず笑ってしまう。

「驚いただろう? 私も昨夜聞いて驚いたよ。だが、せっかく来てくれるんだ。一花には良い会社だと思って帰ってもらいたい」

「そうですね。私も櫻葉グループの一員として心を込めておもてなしさせていただきます」

「ありがとう。史紀にも協力を頼んでいるが、滝川くんもついていてくれたら助かるよ。一花のことは理解してくれているだろう?」

十八になり世間では成人と言われる年齢になっている一花だが、これまで過ごしてきた環境のせいで見た目も中身もまだまだ幼い。中学生くらいだと思ってくれてちょうど良いくらいだ。
それに歩けるようになったとはいえ、まだ一人で歩き回ると言うこともできない。

私にとっては一花を抱きかかえられる良い機会だが、周りから見ればただの甘やかしにも思われかねない。

もちろん一花のことはある程度一般社員たちにも話をしてあるからそこまで心配はしていないが、もし一花が嫌な目に遭うようなことがあれば私は許せないだろう。

「ご安心ください。ご子息が笑顔でお過ごしになれますように尽力いたします」

「滝川くんがいてくれてよかったよ」

それから滝川くんは秘書室の他の社員たちとも情報共有を行い、出社してきた史紀とも綿密な打ち合わせをして一花を迎え入れるまでにしっかりと体制を整えてくれた。

ああ、これでいつ一花が来ても大丈夫だ。

スマホを握りしめ、何度も時計を見ては浮かれてしまう。

そうしてようやく征哉くんから今から家を出るとの連絡が届いた。

<side一花>

今日はパパの会社に行く日。
もう楽しみすぎて早く目が覚めてしまった。

「征哉さん、どんな格好がいいですか?」

「そうだな……」

征哉さんはクローゼットに並んだ洋服たちを前に真剣な表情で選んでいく。

「これかな」

征哉さんが選んでくれたのは、ケーブル模様が可愛い白の大きめのセーター。
それに灰色のズボン。もこもこの可愛い水色のコートも選んでくれた。

「まぁ、ずっと室内にいるならコートは必要ないが、一応持っていくといい」

「はーい!」

あったかいセーターの下に薄い肌着を着る。
これがめちゃくちゃあったかいからコートは必要ないかも。

おっきなセーターがすごく着心地が良くて長いお袖でほっぺたをすりすりしてしまう。

「征哉さん、お着替え終わりましたー!」

スーツに着替えていた征哉さんの前に立って見せると、征哉さんの表情が嬉しそうに変化した。

「一花、よく似合ってるな。だが可愛すぎるから絶対にお義父さんと史紀さんから離れてはダメだぞ」

僕をギュッと抱きしめながらそんなことを言ってくれる。
征哉さんに可愛いって言われるのってすごく嬉しいな。

ああ、パパの会社に行くの楽しみだ!


征哉さんが運転する車の助手席に乗せてもらって家を出る。
キャンピングカーじゃない車に乗る機会はあまりない上に、征哉さんの運転というのがすごく楽しい。

いつもは運転手さんがいるけれど、今日はいつでも僕をお迎えに来られるようにしてくれたんだ。

「一花、もう直ぐ着くよ。会社の玄関で待っていてくれるようだから、すぐに会えるよ」

「わぁー! 楽しみ!!」

パパの会社ってどんなところなんだろう。
ワクワクが止まらない。

そうして車は大きな建物に入って行った。
しおりを挟む
感想 545

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...