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番外編
待ち遠しくてたまらない
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私はすぐにお義父さんに連絡を入れた。
メッセージだけというのも味気なく感じられて、せっかく一花も一緒にいることだし電話をかけてみることにした。
ーもしもし、征哉くんか。
スピーカーからお義父さんの声が聞こえてくるだけで一花が嬉しそうに顔を綻ばせる。
そっと一花を抱き寄せながら、お義父さんに声をかけた。
ー今、お時間宜しいですか?
ー構わないよ。今は、自宅かな?
ーはい。一花も今隣にいます。
最初にそう告げておけば一花に聞かれたくない話は口にしないだろう。
そして、話の内容が一花に関することだというのは理解してもらえるはずだ。
ーパパー。一花だよー。
お義父さんの声が聞こえて嬉しいのか、一花がスマホに向かって声をかけた。
ーおお、一花か。どうした? 何かあったか?
電話口からでも声が柔らかくなったのがわかる。一花の声を聞いてお義父さん、嬉しそうだ。
ー明日、パパの会社に行きたいなって。
ーえっ? 一花が私の会社に?
顔が見えないこの電話からでも声だけでとてつもなく驚いている様子が感じられる。
ーだめ?
ーだめなわけがないだろう! 喜んで迎えるよ。
ーわぁー!! パパ、ありがとう!
大喜びの一花の頭を優しく撫で、私はスピーカーをオフにしてスマホを自分の耳に当てた。
ーもしもし、征哉です。
ー征哉くん、一花の今の話は本当かね?
ーはい。明日、一花の予定がオフになりそうなのでどこか行きたいところはないかと尋ねたらお義父さんの会社に行きたいと言いまして。あのカフェのラテとケーキが食べたいそうですよ。
ーああ、あれか。写真を送っておいてよかった。喜んで一花を連れて行くよ。明日は一花とカフェデートができるのか。楽しみだな。
すでに浮かれ切った様子のお義父さんだが、一応これだけは確認しておかないとな。
ーあの、明日史紀さんは?
ーん? 史紀か? 明日はもちろん出社するはずだ。安城くんと一緒に暮らすようになってから、すこぶる体調もいいようでね。
志摩くんの話では彼は菓子作りだけでなく、料理のほうも絶品らしい。
愛しい人と一緒に暮らすことができる上に、心身ともに大切にされて、史紀さんも充実しているんだろう。
お義父さんだけでももちろん安心だが、万が一のために史紀さんも一緒にいてくれたほうがさらに安心感が増す。
ーそれでは明日、一花を連れて櫻葉本社に向かいますのでロビーまで一花を迎えにきていただけますか?
私が抱きかかえて人目のあるロビーに一花を連れて行き、会長であるお義父さんがわざわざ迎えに下りてくる姿を見れば、一花がどれだけ大切な存在なのかを社員に知らせることができる。そうしておけば、一花によからぬことを考える者も現れないだろう。
ーもちろんだ。明日は夕方まで過ごしていいんだろう?
ーはい。夕方、一花を迎えに上がりますのでそれまで一花のことをよろしくお願いします。
終始浮かれた様子のお義父さんとの電話をきり、私は一花と顔を見合わせて笑った。
<side一眞>
一花が私に会いにきてくれる。
しかも、麻友子の愛したあのカフェに一緒に行けるなんて……なんて幸せなんだろう。
先日、一緒に釣りをして楽しい時間を過ごしたから次回会えるのはいつになるかと思っていたが、思っていたよりも早く一花との時間を過ごせるのか……。
それも征哉くんがいない一花との時間だ。
もちろん、征哉くんを邪魔に思っているなんてことはないが、やはり一緒にいれば一花を抱きかかえて歩くことも遠慮がちになる。一花は私の愛しい息子であるが、今は征哉くんの最愛の伴侶でもあるのだから。それは親としてしっかり理解している。
だが、明日は遠慮せずに抱きかかえることができる。
幼い時の一花を抱きかかえられなかった分、明日は父親としての幸せな時間を過ごさせてもらうとしよう。
朝から夕方までなら、昼も一緒に食べられる。
くーっ!! 明日は最高の日になりそうだ。
こうしてはいられない。史紀に連絡しておかないとな。
私は急いで電話をかけた。
ーもしもし、会長。何かありましたか?
私がこんな時間に史紀に電話をかけるなんてことが今までになかったから驚くのも無理はない。
ー今はプライベートだ。一眞でいい。それより今は電話は大丈夫か?
ーは、はい。大丈夫です。それで、一眞さん。何事ですか?
ー明日、一花がうちの会社に遊びにきてくれることになった。
ーえっ? 一花くんが、ですか?
ーああ、先日桜カフェの新作ラテとシフォンケーキの写真を送ったんだ。それを見てカフェに行きたいと言ってくれたんだよ。それで明日征哉くんが一花を朝、うちの会社に連れてきてくれることになったんだ。
ーそう、なんですか……それはよかったですね。
こころなしか、電話口の史紀の声が震えている気がする。
いや、気のせいじゃないな。史紀はこんな時間を私が過ごせるようになったことを心から喜んでくれているんだろう。
ーああ、本当に良かったよ。だから明日は一緒に頼むぞ。
ーはい、お任せください。桜カフェに行かれることは決まっているようですがお昼はどうされますか?
ーそこだが、それは一花の希望を聞いてからでもいいだろうか?
ーわかりました。そこは臨機応変に対応します。
心強い史紀の言葉にお礼を言って私は電話を切った。
明日は、一花と過ごせる。
私はそれがたまらなく嬉しかった。
メッセージだけというのも味気なく感じられて、せっかく一花も一緒にいることだし電話をかけてみることにした。
ーもしもし、征哉くんか。
スピーカーからお義父さんの声が聞こえてくるだけで一花が嬉しそうに顔を綻ばせる。
そっと一花を抱き寄せながら、お義父さんに声をかけた。
ー今、お時間宜しいですか?
ー構わないよ。今は、自宅かな?
ーはい。一花も今隣にいます。
最初にそう告げておけば一花に聞かれたくない話は口にしないだろう。
そして、話の内容が一花に関することだというのは理解してもらえるはずだ。
ーパパー。一花だよー。
お義父さんの声が聞こえて嬉しいのか、一花がスマホに向かって声をかけた。
ーおお、一花か。どうした? 何かあったか?
電話口からでも声が柔らかくなったのがわかる。一花の声を聞いてお義父さん、嬉しそうだ。
ー明日、パパの会社に行きたいなって。
ーえっ? 一花が私の会社に?
顔が見えないこの電話からでも声だけでとてつもなく驚いている様子が感じられる。
ーだめ?
ーだめなわけがないだろう! 喜んで迎えるよ。
ーわぁー!! パパ、ありがとう!
大喜びの一花の頭を優しく撫で、私はスピーカーをオフにしてスマホを自分の耳に当てた。
ーもしもし、征哉です。
ー征哉くん、一花の今の話は本当かね?
ーはい。明日、一花の予定がオフになりそうなのでどこか行きたいところはないかと尋ねたらお義父さんの会社に行きたいと言いまして。あのカフェのラテとケーキが食べたいそうですよ。
ーああ、あれか。写真を送っておいてよかった。喜んで一花を連れて行くよ。明日は一花とカフェデートができるのか。楽しみだな。
すでに浮かれ切った様子のお義父さんだが、一応これだけは確認しておかないとな。
ーあの、明日史紀さんは?
ーん? 史紀か? 明日はもちろん出社するはずだ。安城くんと一緒に暮らすようになってから、すこぶる体調もいいようでね。
志摩くんの話では彼は菓子作りだけでなく、料理のほうも絶品らしい。
愛しい人と一緒に暮らすことができる上に、心身ともに大切にされて、史紀さんも充実しているんだろう。
お義父さんだけでももちろん安心だが、万が一のために史紀さんも一緒にいてくれたほうがさらに安心感が増す。
ーそれでは明日、一花を連れて櫻葉本社に向かいますのでロビーまで一花を迎えにきていただけますか?
私が抱きかかえて人目のあるロビーに一花を連れて行き、会長であるお義父さんがわざわざ迎えに下りてくる姿を見れば、一花がどれだけ大切な存在なのかを社員に知らせることができる。そうしておけば、一花によからぬことを考える者も現れないだろう。
ーもちろんだ。明日は夕方まで過ごしていいんだろう?
ーはい。夕方、一花を迎えに上がりますのでそれまで一花のことをよろしくお願いします。
終始浮かれた様子のお義父さんとの電話をきり、私は一花と顔を見合わせて笑った。
<side一眞>
一花が私に会いにきてくれる。
しかも、麻友子の愛したあのカフェに一緒に行けるなんて……なんて幸せなんだろう。
先日、一緒に釣りをして楽しい時間を過ごしたから次回会えるのはいつになるかと思っていたが、思っていたよりも早く一花との時間を過ごせるのか……。
それも征哉くんがいない一花との時間だ。
もちろん、征哉くんを邪魔に思っているなんてことはないが、やはり一緒にいれば一花を抱きかかえて歩くことも遠慮がちになる。一花は私の愛しい息子であるが、今は征哉くんの最愛の伴侶でもあるのだから。それは親としてしっかり理解している。
だが、明日は遠慮せずに抱きかかえることができる。
幼い時の一花を抱きかかえられなかった分、明日は父親としての幸せな時間を過ごさせてもらうとしよう。
朝から夕方までなら、昼も一緒に食べられる。
くーっ!! 明日は最高の日になりそうだ。
こうしてはいられない。史紀に連絡しておかないとな。
私は急いで電話をかけた。
ーもしもし、会長。何かありましたか?
私がこんな時間に史紀に電話をかけるなんてことが今までになかったから驚くのも無理はない。
ー今はプライベートだ。一眞でいい。それより今は電話は大丈夫か?
ーは、はい。大丈夫です。それで、一眞さん。何事ですか?
ー明日、一花がうちの会社に遊びにきてくれることになった。
ーえっ? 一花くんが、ですか?
ーああ、先日桜カフェの新作ラテとシフォンケーキの写真を送ったんだ。それを見てカフェに行きたいと言ってくれたんだよ。それで明日征哉くんが一花を朝、うちの会社に連れてきてくれることになったんだ。
ーそう、なんですか……それはよかったですね。
こころなしか、電話口の史紀の声が震えている気がする。
いや、気のせいじゃないな。史紀はこんな時間を私が過ごせるようになったことを心から喜んでくれているんだろう。
ーああ、本当に良かったよ。だから明日は一緒に頼むぞ。
ーはい、お任せください。桜カフェに行かれることは決まっているようですがお昼はどうされますか?
ーそこだが、それは一花の希望を聞いてからでもいいだろうか?
ーわかりました。そこは臨機応変に対応します。
心強い史紀の言葉にお礼を言って私は電話を切った。
明日は、一花と過ごせる。
私はそれがたまらなく嬉しかった。
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