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番外編
一花の行きたいところ
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「征哉さん……志摩さん、どうしたんですか?」
一花は二人のやりとりというか、志摩くんのあの態度が分からなかったようだ。
母はそんな一花を笑顔で見やり、私に視線を向けた。
「ほら、征哉。教えてあげないと。私は部屋に行っているわ。今日は食事は別々でも構わないわよ」
揶揄い気味に笑顔を見せると、そそくさと部屋を出ていった。
「未知子ママまでどうしたんですか?」
一気に部屋の中が私と一花だけになり、一花は不思議そうにしている。
私は一花が座るベッドにそっと腰をかけた。
「一花は気にしないでいいよ。志摩くんは、谷垣くんが自分のために編んでくれたのが嬉しかったんだ。それでそのお礼を伝えたくて急いで家に帰ったんだ」
「お礼を伝えたくて?」
ここまで言っても察することもなくまだキョトンとしている一花が可愛くてたまらない。
私と心も身体も繋げて愛し合うようになってまだ日が浅いからお礼の仕方がどういうものかわからないのだろうな。
私は一花を抱き寄せて後ろに回り込み、すっぽりと覆い被さるように抱きしめた。
チュッとわざと音が聞こえるように耳に口付けると、一花から甘い声が漏れる。
ああ、可愛い。
「以前、一花が私にマフラーをプレゼントしてくれた時のことを覚えているか?」
「は、はい。征哉さんがすごく喜んでくれて嬉しかったです」
「そのあとどうしたか覚えてるか?」
「そのあと……」
一花は一瞬黙り込んだが、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
きっとあの日のことを思い出したのだろう。
「あの時、一花と幸せな時間を過ごしただろう?」
一花の顔を覗き込むように尋ねれば、一花が小さく頷いた。
「あの時の私たちと同じだ。志摩くんは谷垣くんが編んでいることも知らなかったようだから喜びもひとしおだったんだろう。そのお礼を谷垣くんに伝えたくて、早く二人になりたかったんだよ」
「あの、じゃあ今頃……」
「あの二人も私たちと同じく新婚だからな。これからたっぷりと甘い時間を過ごしながら。谷垣くんのお礼を伝えるはずだよ。きっと……いや、絶対に明日は谷垣くんは休むだろうな」
志摩くんのあの喜びようを見れば、手加減などできないことはわかる。
「それじゃあ、明日はリハビリはお休みですね」
「そうだな。一花は好きに過ごしたらいい。何かしたいことはないか?」
一花がしたいことならなんでも叶えてあげたい。
ようやく人並みの生活ができるようになったのだから。
「あ! 僕、行きたいところがあります!」
「一花が行きたいところ? どこだ?」
尋ねると、一花は近くに置いていたスマホを手に取った。
「今日、パパが写真を送ってきてくれたんです。これ!」
お義父さんが送ってきてくれたという写真は、桜の花びらが浮いた美味しそうな桜ラテ。
それにピンク色のシフォンケーキもある。これもおそらく桜味だろう。
「僕が行ったら、パパの会社も案内してくれるって。明日行ってもいいですか?」
「そうだな……」
お義父さんの会社なら、私が一花をお義父さんのところまで連れて行けば史紀さんもいるし安心だろう。
谷垣くんが明日休みなら私も一花とたっぷり愛し合おうかとも思っていたが、一花が出かけるとなれば今日は無理はさせられないな。まぁ、たまにはいいだろう。
「お義父さんに明日予定がないか確認してからにしよう。もし何もなければ行ってくるといい」
「わぁー!! 嬉しい!!」
一花を外に連れていく心配がないわけじゃない。
だが、一花にも普通の十八歳と変わらない楽しい時間を過ごしてほしい。
お義父さんが守ってくれるなら、少しくらいは一花にもお義父さんとの時間を過ごさせてあげたい。
そう思えるようになったのは、やはり一花と身も心も愛し合ったからだろう。
やはり私は少し寛大になれたようだ。
一花は二人のやりとりというか、志摩くんのあの態度が分からなかったようだ。
母はそんな一花を笑顔で見やり、私に視線を向けた。
「ほら、征哉。教えてあげないと。私は部屋に行っているわ。今日は食事は別々でも構わないわよ」
揶揄い気味に笑顔を見せると、そそくさと部屋を出ていった。
「未知子ママまでどうしたんですか?」
一気に部屋の中が私と一花だけになり、一花は不思議そうにしている。
私は一花が座るベッドにそっと腰をかけた。
「一花は気にしないでいいよ。志摩くんは、谷垣くんが自分のために編んでくれたのが嬉しかったんだ。それでそのお礼を伝えたくて急いで家に帰ったんだ」
「お礼を伝えたくて?」
ここまで言っても察することもなくまだキョトンとしている一花が可愛くてたまらない。
私と心も身体も繋げて愛し合うようになってまだ日が浅いからお礼の仕方がどういうものかわからないのだろうな。
私は一花を抱き寄せて後ろに回り込み、すっぽりと覆い被さるように抱きしめた。
チュッとわざと音が聞こえるように耳に口付けると、一花から甘い声が漏れる。
ああ、可愛い。
「以前、一花が私にマフラーをプレゼントしてくれた時のことを覚えているか?」
「は、はい。征哉さんがすごく喜んでくれて嬉しかったです」
「そのあとどうしたか覚えてるか?」
「そのあと……」
一花は一瞬黙り込んだが、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
きっとあの日のことを思い出したのだろう。
「あの時、一花と幸せな時間を過ごしただろう?」
一花の顔を覗き込むように尋ねれば、一花が小さく頷いた。
「あの時の私たちと同じだ。志摩くんは谷垣くんが編んでいることも知らなかったようだから喜びもひとしおだったんだろう。そのお礼を谷垣くんに伝えたくて、早く二人になりたかったんだよ」
「あの、じゃあ今頃……」
「あの二人も私たちと同じく新婚だからな。これからたっぷりと甘い時間を過ごしながら。谷垣くんのお礼を伝えるはずだよ。きっと……いや、絶対に明日は谷垣くんは休むだろうな」
志摩くんのあの喜びようを見れば、手加減などできないことはわかる。
「それじゃあ、明日はリハビリはお休みですね」
「そうだな。一花は好きに過ごしたらいい。何かしたいことはないか?」
一花がしたいことならなんでも叶えてあげたい。
ようやく人並みの生活ができるようになったのだから。
「あ! 僕、行きたいところがあります!」
「一花が行きたいところ? どこだ?」
尋ねると、一花は近くに置いていたスマホを手に取った。
「今日、パパが写真を送ってきてくれたんです。これ!」
お義父さんが送ってきてくれたという写真は、桜の花びらが浮いた美味しそうな桜ラテ。
それにピンク色のシフォンケーキもある。これもおそらく桜味だろう。
「僕が行ったら、パパの会社も案内してくれるって。明日行ってもいいですか?」
「そうだな……」
お義父さんの会社なら、私が一花をお義父さんのところまで連れて行けば史紀さんもいるし安心だろう。
谷垣くんが明日休みなら私も一花とたっぷり愛し合おうかとも思っていたが、一花が出かけるとなれば今日は無理はさせられないな。まぁ、たまにはいいだろう。
「お義父さんに明日予定がないか確認してからにしよう。もし何もなければ行ってくるといい」
「わぁー!! 嬉しい!!」
一花を外に連れていく心配がないわけじゃない。
だが、一花にも普通の十八歳と変わらない楽しい時間を過ごしてほしい。
お義父さんが守ってくれるなら、少しくらいは一花にもお義父さんとの時間を過ごさせてあげたい。
そう思えるようになったのは、やはり一花と身も心も愛し合ったからだろう。
やはり私は少し寛大になれたようだ。
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