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甘い夜のはじまり※
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このまま披露宴代わりの食事会をこのホテルのフレンチレストランでやることになっている。
空良にとっては初めてのフレンチだろう。
喜ぶ姿が目に浮かぶ。
大きめの個室を貸し切っての食事会は正面に綾城と佳都くん。
そして綾城の両親と七海ちゃんと翔太くんで一卓。
そして、俺たちと観月たちで一卓。
空良は理央くんと同じテーブルで喜んでいる。
「僕、こんな凄いところで食べるの初めて!!」
大きな窓から見える景色に興奮している理央くんとは対照的に空良はちょっと元気がなくなってきた。
さっきまですごく嬉しそうだったのにどうしたんだろう?
「空良? どうかしたか?」
「あの……僕、マナーがわからないから……」
と少し恥ずかしそうに俺の耳元でそう囁いてきた。
ああ、そういうことか。
「それなら心配しなくていい」
笑顔でそう言ってやると、空良は
「えっ?」
と驚きの表情を見せた。
「料理がくればわかるよ」
パチンとウインクして見せれば、空良は顔をほんのりと赤らめながらもまだ少し緊張しているように見えた。
部屋の扉が開き、スタッフたちが次々と俺たちの目の前に料理を並べていく。
透明の大きな皿には鯛やブリといった獲れたての魚や雲丹、キャビアが綺麗に盛り付けられている。
「うわぁっ、綺麗っ!」
「美味しそうっ!!」
空良も理央くんも嬉しそうだ。
「あ、あれ? お箸がついてる!」
「ふふっ。気づいたか? 今日の食事はフレンチ懐石だから、みんな箸だよ。その方が気にしないでゆっくり食べられるだろう?」
そういうと空良は目を輝かせて嬉しそうに笑っていた。
今日の食事会のフレンチを箸で食べられるように懐石にしようと提案したのは実は佳都くんだそうだ。
俺たちの同伴者の話を聞いて、初めてのフレンチを何も気にせず美味しく食べられるようにと配慮してくれたのだろう。
料理上手な佳都くんだからこその気遣いなんだろうな。
そっと佳都くんに視線を向けると、嬉しそうに食事をしている空良と理央くんを見て顔を綻ばせている。
ああ、きっと佳都くんは二人の頼れるお兄さん的存在になってくれるだろうな。
その後も伊勢海老のポアレや葉山牛のロース肉のグリエなど最高級食材を使った料理が続き、そのたびに空良と理央くんは幸せそうに顔を見合わせて『美味しいね』と言い合っていた。
二匹の猫が可愛く戯れあっているようなそんな様子を俺たちはもちろん綾城の両親も微笑ましそうに見ていて、終始和やかな雰囲気のまま食事会はお開きとなった。
空良と理央くんが佳都くんと名残惜しそうに話をしているのを見ていると、
「悠木、観月。明日はレイトチェックアウトを頼んでいるから夕方までゆっくりしていいぞ」
サラリと小声で綾城にそう囁かれた。
スイートを予約してくれたことはもちろん、俺たちの泊まりセットや例の準備も万全な上に、レイトチェックアウトまで全てにおいて抜かりない対応に驚いてしまう。
「何から何まで悪いな」
「何言ってるんだ。言っただろ? お前たちには借りがあるって。
それに佳都も準備を楽しんでたし……俺たちはお前たちが喜んでくれたらそれで十分なんだよ」
「ありがとう。たっぷり楽しませてもらうよ」
「ああ。でも、ほどほどにな」
「俺は大丈夫だが、観月はどうか……」
「何言ってるんだ。お前の方だろうが」
「俺から言わせればどっちもだよ」
「「お前もなっ」」
「くくっ」
「ハハッ」
3人それぞれ幸せな夜になるように思いを巡らせながら、それぞれの愛しい恋人を連れ宿泊する部屋へと向かった。
食事をしたレストランよりも上階にあるスイートルームへと案内すると空良は興奮に顔を赤らめていた。
その興奮がこれから行く部屋への興奮なのか、それとも俺と泊まることへの興奮なのか……俺としては後者であって欲しいと思うが、空良のことだ。
おそらく初めてのホテル宿泊に興味津々で興奮しているのだろう。
まぁそれでもいい。
空良が喜ぶ顔が見られるのなら。
カードキーをかざして、豪奢な扉を開けるとゆったりとした大理石のエントランスの先に広々としたリビングが見え、日が落ちた大きな窓からは横浜の綺麗な夜景がまるで絵画のように映し出されている。
「ひ、寛人さん……今日、こんな凄いところに泊まるんですか?」
「ああ。空良は気に入らないか?」
「そんなことっ! ただ、凄すぎて……」
「ふふっ。俺たちが初めて泊まるんだ。いい記念になるだろう?」
「――っ!」
えっ? もしかしたら、空良も俺との夜を期待してくれているのか?
そんなふうに思わせてくれる空良の反応に俺も期待してしまう。
俺はそれを確認するためにも、夜景の綺麗な窓をバックに空良に顔を近づけた。
空良が顔を背けなければ、そのまま空良の甘い唇を味わおう。
あれほどモテまくっていた俺が空良を前にして緊張している。
そんな自分に驚きながら、空良の唇に自分のそれを重ねる瞬間、空良の目がゆっくりと閉じられていくのが見えた。
「――っ!!」
空良の了承を得たと思ったら嬉しくて、俺は思いっきり空良の唇を味わった。
甘く柔らかな唇を軽く噛み、チュッチュと何度も啄むようなキスを繰り返すと空良の力が抜け唇が開いた。
その隙を奪うように舌を滑り込ませ、空良の小さな舌に絡ませると、空良は辿々しくも舌を絡ませてきた。
その積極さが嬉しくて激しさを増しながら空良の口内を味わうと
「んんっ、ふぅ……あぁ……っ」
可愛すぎる空良の声が俺をますます増長させていく。
何度も角度を変えながら唇を貪って名残惜しく思いながら唇を離すと、空良と俺の間にツーッと銀の糸がつながった。
恍惚とした表情でそれを見ていた空良が、銀の糸がプツリと途切れた瞬間
「あ――っ」
と寂しげな声を漏らしたのを俺は聞き逃さなかった。
空良にとっては初めてのフレンチだろう。
喜ぶ姿が目に浮かぶ。
大きめの個室を貸し切っての食事会は正面に綾城と佳都くん。
そして綾城の両親と七海ちゃんと翔太くんで一卓。
そして、俺たちと観月たちで一卓。
空良は理央くんと同じテーブルで喜んでいる。
「僕、こんな凄いところで食べるの初めて!!」
大きな窓から見える景色に興奮している理央くんとは対照的に空良はちょっと元気がなくなってきた。
さっきまですごく嬉しそうだったのにどうしたんだろう?
「空良? どうかしたか?」
「あの……僕、マナーがわからないから……」
と少し恥ずかしそうに俺の耳元でそう囁いてきた。
ああ、そういうことか。
「それなら心配しなくていい」
笑顔でそう言ってやると、空良は
「えっ?」
と驚きの表情を見せた。
「料理がくればわかるよ」
パチンとウインクして見せれば、空良は顔をほんのりと赤らめながらもまだ少し緊張しているように見えた。
部屋の扉が開き、スタッフたちが次々と俺たちの目の前に料理を並べていく。
透明の大きな皿には鯛やブリといった獲れたての魚や雲丹、キャビアが綺麗に盛り付けられている。
「うわぁっ、綺麗っ!」
「美味しそうっ!!」
空良も理央くんも嬉しそうだ。
「あ、あれ? お箸がついてる!」
「ふふっ。気づいたか? 今日の食事はフレンチ懐石だから、みんな箸だよ。その方が気にしないでゆっくり食べられるだろう?」
そういうと空良は目を輝かせて嬉しそうに笑っていた。
今日の食事会のフレンチを箸で食べられるように懐石にしようと提案したのは実は佳都くんだそうだ。
俺たちの同伴者の話を聞いて、初めてのフレンチを何も気にせず美味しく食べられるようにと配慮してくれたのだろう。
料理上手な佳都くんだからこその気遣いなんだろうな。
そっと佳都くんに視線を向けると、嬉しそうに食事をしている空良と理央くんを見て顔を綻ばせている。
ああ、きっと佳都くんは二人の頼れるお兄さん的存在になってくれるだろうな。
その後も伊勢海老のポアレや葉山牛のロース肉のグリエなど最高級食材を使った料理が続き、そのたびに空良と理央くんは幸せそうに顔を見合わせて『美味しいね』と言い合っていた。
二匹の猫が可愛く戯れあっているようなそんな様子を俺たちはもちろん綾城の両親も微笑ましそうに見ていて、終始和やかな雰囲気のまま食事会はお開きとなった。
空良と理央くんが佳都くんと名残惜しそうに話をしているのを見ていると、
「悠木、観月。明日はレイトチェックアウトを頼んでいるから夕方までゆっくりしていいぞ」
サラリと小声で綾城にそう囁かれた。
スイートを予約してくれたことはもちろん、俺たちの泊まりセットや例の準備も万全な上に、レイトチェックアウトまで全てにおいて抜かりない対応に驚いてしまう。
「何から何まで悪いな」
「何言ってるんだ。言っただろ? お前たちには借りがあるって。
それに佳都も準備を楽しんでたし……俺たちはお前たちが喜んでくれたらそれで十分なんだよ」
「ありがとう。たっぷり楽しませてもらうよ」
「ああ。でも、ほどほどにな」
「俺は大丈夫だが、観月はどうか……」
「何言ってるんだ。お前の方だろうが」
「俺から言わせればどっちもだよ」
「「お前もなっ」」
「くくっ」
「ハハッ」
3人それぞれ幸せな夜になるように思いを巡らせながら、それぞれの愛しい恋人を連れ宿泊する部屋へと向かった。
食事をしたレストランよりも上階にあるスイートルームへと案内すると空良は興奮に顔を赤らめていた。
その興奮がこれから行く部屋への興奮なのか、それとも俺と泊まることへの興奮なのか……俺としては後者であって欲しいと思うが、空良のことだ。
おそらく初めてのホテル宿泊に興味津々で興奮しているのだろう。
まぁそれでもいい。
空良が喜ぶ顔が見られるのなら。
カードキーをかざして、豪奢な扉を開けるとゆったりとした大理石のエントランスの先に広々としたリビングが見え、日が落ちた大きな窓からは横浜の綺麗な夜景がまるで絵画のように映し出されている。
「ひ、寛人さん……今日、こんな凄いところに泊まるんですか?」
「ああ。空良は気に入らないか?」
「そんなことっ! ただ、凄すぎて……」
「ふふっ。俺たちが初めて泊まるんだ。いい記念になるだろう?」
「――っ!」
えっ? もしかしたら、空良も俺との夜を期待してくれているのか?
そんなふうに思わせてくれる空良の反応に俺も期待してしまう。
俺はそれを確認するためにも、夜景の綺麗な窓をバックに空良に顔を近づけた。
空良が顔を背けなければ、そのまま空良の甘い唇を味わおう。
あれほどモテまくっていた俺が空良を前にして緊張している。
そんな自分に驚きながら、空良の唇に自分のそれを重ねる瞬間、空良の目がゆっくりと閉じられていくのが見えた。
「――っ!!」
空良の了承を得たと思ったら嬉しくて、俺は思いっきり空良の唇を味わった。
甘く柔らかな唇を軽く噛み、チュッチュと何度も啄むようなキスを繰り返すと空良の力が抜け唇が開いた。
その隙を奪うように舌を滑り込ませ、空良の小さな舌に絡ませると、空良は辿々しくも舌を絡ませてきた。
その積極さが嬉しくて激しさを増しながら空良の口内を味わうと
「んんっ、ふぅ……あぁ……っ」
可愛すぎる空良の声が俺をますます増長させていく。
何度も角度を変えながら唇を貪って名残惜しく思いながら唇を離すと、空良と俺の間にツーッと銀の糸がつながった。
恍惚とした表情でそれを見ていた空良が、銀の糸がプツリと途切れた瞬間
「あ――っ」
と寂しげな声を漏らしたのを俺は聞き逃さなかった。
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