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番外編
報告
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フランスでの結婚式を前に、まずは報告のお話から。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
ーどうした? お前から電話なんて珍しいな。
ー大事な話があるんだ。
ーほぉ、なんだ改まって。
ー実は、大切な子ができて……その子と一生生きていきたいと思ってる。
ーそれで……相手はどこのお嬢さんなんだ?
ー18になったばかりの、男の子だ。だから、孫は諦めてくれ。
ー……お前、本気なのか? 最近は寛容になってきたとはいえ、まだまだ偏見もある。わざわざそんな茨の道を歩まずとも、もっと良い相手がその辺にいるんじゃないか? そもそもお前はゲイじゃないだろう? それなのに、そんな若い子に手を出して……お前はその子を一生守り抜く覚悟があるのか?
ーああ、もちろんだ! 俺は今まで誰も心から愛したことはない。親父もそれは知ってるだろう? 空良だけなんだ。男とか女とか関係なく、俺は空良しか愛せない。たとえ、空良と一緒にいることを無理やり引き離されたとしても、俺は一生誰とも結婚する気はないんだ。そうすれば結局、孫も望めないんだから同じことだろう? それなら、愛し合うもの同士が一緒にいることを認めてくれないか? いや、認められなくても良い。俺は空良と一緒にいるよ。
ーふふっ。本気なようだな。お前がかわいい男の子に夢中になってるっていうのは秋芳からすでに連絡があったよ。
ー綾城の親父さんから?
ーああ。直己くんとそのパートナー、佳都くんだったか。二人の結婚式に連れてきていたそうだな。可愛くて礼儀正しくて良い子だってベタ褒めだったよ。秋芳があれほど褒めるのも珍しいなと思ってたが、お前の様子も聞いて驚いたよ。少しの時間も離れようとせず、蕩けるような甘い笑顔を見せてて、こっちの方が恥ずかしくなったと言ってたぞ。
ーそんなこと……。
ーないわけないだろ? お前が大事な親友の結婚式に誰かを連れて行く時点で、その子が大切な存在に決まってる。私は、お前にそんな存在ができただけで奇跡だと思ってるんだよ。
ー奇跡ってそんな大袈裟な……。
ー大袈裟なものか。私も茜音もお前の結婚なんて疾うの昔に諦めてる。それでもお前が私たちのために結婚をして一生素顔を隠して生きて行くよりは、一人ででも自由に生きていられる方が親として幸せだと思ったんだ。それが、一生を共にできる相手に出会えて……しかも、それがお前が一人でいるよりも楽に過ごせる相手なら、私たちは反対などするはずない。逆に彼・空良くんと言ったか、空良くんにお礼を言いたいくらいだ。お前と共に生きていく覚悟をしてくれてありがとうとな。
ー親父……。
ー私たちは親だから、いつかはお前より先に逝く。私たちのことなど気にせずに、お前が一生そばにいたいと思った相手を大切にすれば良いんだ。私たちはそれが幸せなんだぞ。
ーああ。ありがとう。
ーふふっ。お前からお礼を言われるのも久しぶりだな。近いうちに空良くんを連れてこい。お前のパートナーなら、私たちにとっても大事な息子だ。だいたい、秋芳が先に会って、私たちが会えてないってどういうことだ?
ーははっ。わかったよ。近いうちに連れて行く。母さんにもよろしく伝えてくれ。
ー茜音はもう張り切って、うちに空良くんの部屋を用意し出してるぞ。早く来ないと暴走するからさっさと連れてきた方がいい。
ーまじか……。わかったよ。空良と話して近々行くから。
ーああ、楽しみに待ってる。寛人……おめでとう。幸せにな。
ー――っ、あ、ああ。ありがとう……父さん。
何年ぶりに父さんと呼んだだろう?
だが、言わずにはいられなかった。
一人息子で期待もしていただろうに。
何一つ反対もせず、ただ俺の気持ちを引き出してくれた。
やっぱり親なんだな……。
俺は二人の子どもでよかったよ。
空良と幸せになるから見守っていてくれ。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
ーどうした? お前から電話なんて珍しいな。
ー大事な話があるんだ。
ーほぉ、なんだ改まって。
ー実は、大切な子ができて……その子と一生生きていきたいと思ってる。
ーそれで……相手はどこのお嬢さんなんだ?
ー18になったばかりの、男の子だ。だから、孫は諦めてくれ。
ー……お前、本気なのか? 最近は寛容になってきたとはいえ、まだまだ偏見もある。わざわざそんな茨の道を歩まずとも、もっと良い相手がその辺にいるんじゃないか? そもそもお前はゲイじゃないだろう? それなのに、そんな若い子に手を出して……お前はその子を一生守り抜く覚悟があるのか?
ーああ、もちろんだ! 俺は今まで誰も心から愛したことはない。親父もそれは知ってるだろう? 空良だけなんだ。男とか女とか関係なく、俺は空良しか愛せない。たとえ、空良と一緒にいることを無理やり引き離されたとしても、俺は一生誰とも結婚する気はないんだ。そうすれば結局、孫も望めないんだから同じことだろう? それなら、愛し合うもの同士が一緒にいることを認めてくれないか? いや、認められなくても良い。俺は空良と一緒にいるよ。
ーふふっ。本気なようだな。お前がかわいい男の子に夢中になってるっていうのは秋芳からすでに連絡があったよ。
ー綾城の親父さんから?
ーああ。直己くんとそのパートナー、佳都くんだったか。二人の結婚式に連れてきていたそうだな。可愛くて礼儀正しくて良い子だってベタ褒めだったよ。秋芳があれほど褒めるのも珍しいなと思ってたが、お前の様子も聞いて驚いたよ。少しの時間も離れようとせず、蕩けるような甘い笑顔を見せてて、こっちの方が恥ずかしくなったと言ってたぞ。
ーそんなこと……。
ーないわけないだろ? お前が大事な親友の結婚式に誰かを連れて行く時点で、その子が大切な存在に決まってる。私は、お前にそんな存在ができただけで奇跡だと思ってるんだよ。
ー奇跡ってそんな大袈裟な……。
ー大袈裟なものか。私も茜音もお前の結婚なんて疾うの昔に諦めてる。それでもお前が私たちのために結婚をして一生素顔を隠して生きて行くよりは、一人ででも自由に生きていられる方が親として幸せだと思ったんだ。それが、一生を共にできる相手に出会えて……しかも、それがお前が一人でいるよりも楽に過ごせる相手なら、私たちは反対などするはずない。逆に彼・空良くんと言ったか、空良くんにお礼を言いたいくらいだ。お前と共に生きていく覚悟をしてくれてありがとうとな。
ー親父……。
ー私たちは親だから、いつかはお前より先に逝く。私たちのことなど気にせずに、お前が一生そばにいたいと思った相手を大切にすれば良いんだ。私たちはそれが幸せなんだぞ。
ーああ。ありがとう。
ーふふっ。お前からお礼を言われるのも久しぶりだな。近いうちに空良くんを連れてこい。お前のパートナーなら、私たちにとっても大事な息子だ。だいたい、秋芳が先に会って、私たちが会えてないってどういうことだ?
ーははっ。わかったよ。近いうちに連れて行く。母さんにもよろしく伝えてくれ。
ー茜音はもう張り切って、うちに空良くんの部屋を用意し出してるぞ。早く来ないと暴走するからさっさと連れてきた方がいい。
ーまじか……。わかったよ。空良と話して近々行くから。
ーああ、楽しみに待ってる。寛人……おめでとう。幸せにな。
ー――っ、あ、ああ。ありがとう……父さん。
何年ぶりに父さんと呼んだだろう?
だが、言わずにはいられなかった。
一人息子で期待もしていただろうに。
何一つ反対もせず、ただ俺の気持ちを引き出してくれた。
やっぱり親なんだな……。
俺は二人の子どもでよかったよ。
空良と幸せになるから見守っていてくれ。
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