イケメンスパダリ医師は天涯孤独な彼を放っておけない

波木真帆

文字の大きさ
28 / 63
番外編

両親との会食  <前編>

しおりを挟む
「空良、明日は病院が終わったら出かけよう」

「どこにいくんですか?」

「俺の両親が空良に会いたがってるんだ」

「えっ……寛人さんの、お父さんとお母さんが、僕に?」

「そうだ。空良とこれから先の人生を歩んでいくって約束しただろ? そうなったら、俺の両親は空良の両親でもあるわけだからな」

「僕の、両親……」

俺の言葉に空良は急に俯き、肩を震わせた。
もしかして勝手に話したことを怒っているのか?

それとも……。

亡くなったとはいえ、空良にとっての両親は唯一の存在だろうからな。
急に俺の両親を自分の両親のように思えというのは無理かもしれない。

「いや、無理に親と思えと言ってるんじゃないんだ。ただ、うちの親は息子の伴侶だから、空良を本当の息子だと思ってくれるみたいだから……ごめん、空良が嫌なら明日の話はやめておこう」

俺は慌てて空良を抱きしめながら落ち着かせようと背中を優しく撫でた。

「ちが――っ、僕……嬉しくて……」

「えっ? 嬉しい?」

「寛人さんのお父さんとお母さんが僕を息子だと思ってくれるなんて……思ってなかったから……」

「空良……」

「佳都さんが綾城さんのご両親から本当の息子のように思われてるのを見て、すごく羨ましかったんです……。でも、僕……高校も卒業してないし、寛人さんの役にも立ててないから……だから、一生懸命勉強して……それで大検に受かったら、寛人さんにお願いしようと思ってたんです。ご両親に会わせて欲しいって……それで僕が寛人さんのそばにいるのを認めて欲しいって……ずっと思ってたから……だから……」

「空良……だからあんなにも必死に勉強をしていたのか??」

俺の質問に頷いて答える空良がいじらしくてたまらない。

「ああ、俺はバカだな。空良がそんなことを思っているのも知らずに……」

空良がこんなにも思ってくれていたのが嬉しくて、俺はひたすらに空良を抱きしめ続けた。

「もっと早く両親に話しておけばよかったな。そうしたら空良をこんなに不安にさせなくてよかったのに……」

「寛人さん……今でも僕、嬉しいですよ」

「空良、本当に悪かった。俺が空良を独占したくて……ずっと両親に言うのを躊躇ってたんだ」

「えっ? 躊躇ってたってどうしてですか……?」

「俺の両親は俺が選んだ子なら絶対に認めてくれる自信があった。もちろん、相手が男の子だと言えば最初こそ驚きはするだろうが、最後には認めてくれると思っていた。だから、そのことを心配もしてなかったが……母さんは可愛いものが好きなんだ」

「可愛いもの?」

「ああ、だから空良の存在を知れば、いつでも空良に会いたいと言い出す。そうなると俺と空良の時間が減ると思ったんだよ」

そう。
親父は綾城の父からの報告しか聞いてなさそうだったが、母さんは、綾城の相手が可愛い男の子で、綾城の母さんが楽しそうに部屋を整えていると聞いて羨ましそうにしていたし、あの分だときっと観月の母さんからも何かしら報告を受けていそうだ。

観月のところはすでに親の籍にも入れて、観月の実家にも理央くんの部屋が作られてると話していたし、そんな楽しい状況になっているのを、観月の母さんがうちの母さんに何も言わないわけない。

あの二人の話を聞いて、母さんも俺から連絡が来るのを今か今かと待っていたはずだ。

それがわかっていて、母さんたちへの報告を今頃にしたんだから怒られても不思議はないな。
まぁほんの数%くらいは反対されるかもという気持ちがないわけではなかったが……。

俺が本気で恋愛できないって親父も母さんも知ってたみたいだったから、反対しても無駄だと思ったのかもな。

「空良が俺の両親と交流を喜んでくれるのなら、俺はもう何も言わない。だが、約束してくれ。空良にとっても優先順位はいつでも俺を最優先にして欲しいんだ」

「ふふっ。寛人さんったら……」

「俺は本気だぞ。どうだ? 約束してくれるか?」

「もちろんです。僕にとって一番はずっと寛人さんですから……」

「空良……愛してるよ」

「あの、僕も……寛人さんを愛してます」

「空良……っ!!」

俺たちはそれから箍が外れたように愛し合った。
もちろん、明日両親と会うのを忘れない程度には……。


翌日、空良は朝から興奮しているように見えた。

「ふふっ。そんなに楽しみなのか?」

「だって、寛人さんのご両親に会えるんですよ!!」

「そんなに楽しみにされると、俺は妬けるぞ。昨日の約束覚えているか?」

「ふふっ。僕はいつでも寛人さんが一番ですから……」

「ならいい」

そういってチュッと空良の唇にキスを贈ると、顔を真っ赤にして答えてくれる。
ふふっ。こんなキス以上のこといくらでもやっているのに、本当に初心うぶで可愛らしい。

さて、両親との会食はどうなるか……。
母さんから空良を守らないとな。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
 社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。 *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

処理中です...