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番外編
両親との会食 <中編>
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どこか落ち着いたレストランでも予約しておこうかと言ったけれど、ゆっくり話せる方がいいだろうということで実家に集まることになっていた。
車で実家に向かい、そのまま地下のガレージに車を止めた。
空良をエスコートして車を降りると、
「わぁっ! 車がいっぱいっ!」
と驚きの声をあげていた。
親父は車が好きで用途ごとにいろいろな車を揃えているが、今はもっぱら母さんとのドライブ用のスポーツカーが気に入っているらしい。
綾城の父さんも、そして観月の父さんも車好きだから、この歳になった今でも会うたびに車の話で盛り上がっていると半ば呆れ気味に母さんが話していた。
こんな大学生のノリをいつまでも続けていられるのが長く親友でいられる秘訣なのかもしれない。
昨日から用意しておいたお土産の箱を片手でもち、もう片方の腕で空良の腰を抱き、ピッタリと寄り添いながらエレベーターに乗り込む。
「家の中にエレベーターがあるなんて……」
何もかも初めてと言った様子でキョロキョロと辺りを見回す空良が可愛くてたまらない。
ポーンと扉が開くと、
「わっ!」
目の前に満面の笑みを浮かべた両親が突然現れ、空良は驚きの声をあげながら、俺の腕にギュッとしがみついた。
ああ、可愛いな。
そんな空良の可愛らしい姿に早くも蕩けるような視線を送っている親父たちに
「急に現れたらびっくりするだろう」
と注意すると、
「だって、空良くんに会えると思ったら待ちきれなくて! さぁ、空良くん行きましょう!」
と母さんは俺から空良を奪い取るとそのままリビングへと連れて行った。
「ちょ――っ、母さんっ!!」
「ははっ。諦めろ、寛人。ああなったらもうどうしようもない」
「はぁーーっ、だから実家に連れてくの嫌だったんだよ」
「まぁいいじゃないか、ずっと独占してるんだろ。今日だけ母さんに譲ってやれ。母さんもずっと楽しみにしてたんだぞ。麗花さんたちから散々、自分たちの息子の可愛い伴侶を自慢されて、やれ家に遊びに来ただの、一緒に食事に行っただのと聞かされたら、何も言ってはなかったが正直羨ましいと思ってたはずだぞ。私だって、秋芳からお前と空良くんの様子を聞いてどれだけ羨ましかったか……」
「ああ……それはごめん……」
「どうせ、私たちに邪魔されるとでも思ってたんだろ。お前は昔から気に入ったものは自分だけの中に閉じ込めてしまうんだからな」
ぐうの音も出ないとはまさにこの通り。
流石に親だな、俺の性格をよくわかってる。
「だが、想像していた以上に可愛い子だな。少し痩せているのが気になるが、ちゃんと食べさせてるのか?」
「ああ、もちろんだよ。だが、両親が一度に亡くなってかなり困窮した生活を強いられていたせいか、食がすっかり細くなってしまっていて、一度にたくさんの量が食べられなくなってるんだよ。それでも空良に合う薬も飲ませながら少しずつ改善してきてるからまぁ大丈夫だ」
「そうか……ならいいが、お前があの子の健康をしっかり見てやらないといけないぞ」
「ああ、わかってる。あっ、これお土産」
「土産? 珍しいな。いつも手ぶらでくるのに」
「最高級のステーキ肉を買ってきたから、空良に食べさせたくて……」
「ああ、なるほど。じゃあ、私が美味しく焼いてやろう」
「じっくり見させてもらうから」
「なんでだ?」
「家で空良に焼いてあげたいから。親父、ステーキ焼くのはプロ級だろ?」
母さんがステーキが大好きだと知って、必死に上手く焼けるように勉強したという話は父さんから飽きるほど聞かされていた。
そんなにしてまで食べさせたい相手ができるものなのかと不思議に思っていたものだが、同じようなことを俺もしようとしている。
やはり親子なのだと笑ってしまう。
「ああ、好きに見てたらいい。だがそんな簡単に私の技は習得できないぞ。時々空良くんを連れてくるんだな」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる親父を見て、俺は親父もかなり空良を気に入っていると感じていた。
そうでもなければ親父から連れてこいだなんていうわけないからな。
「わかってるよ、一度連れてきたらもうそうなることはわかってたからな」
そういうと、親父は俺の肩をポンと叩いて、
「じゃあ、可愛い伴侶たちに食事の準備でもしようか」
と笑っていった。
リビングに入ると、母さんと空良が楽しそうに話をしているのが見える。
空良の目の前にはジュースとたくさんのお菓子が並んでいて、空良は遠慮がちにその中から一つ口に運ぶと蕩けるような笑顔を浮かべて
「わぁっ! 美味しいっ!」
と感嘆の声をあげた。
「ふふっ。空良くんが気に入ってくれて嬉しいわ。他にもいっぱいあるから、ゆっくり食べてね」
「は、はい。あの……お、お母さん……ありがとうございます」
「きゃーっ! お母さんだなんて!! 嬉しいっ!! ねぇ、空良くん、もう一度お母さんって言ってみて」
「お母さん……すっごく美味しいです」
「ああ、もうなんて可愛いのかしらっ!! 空良くん、このままここに住んじゃわない?」
「えっ?」
「いいじゃない。どうせ寛人は毎日忙しいんだし、昼間私と一緒にここで過ごしましょう?」
そう言って空良を抱きしめようとするのを
「母さんっ! 空良は俺のだからっ!」
とさっと奪い取り、腕の中に抱き締めると
「あっ、今私と話してたのに! 寛人ってば、心狭いんだからっ、空良くんに嫌われるわよ!」
と母さんが文句を言う。
反論しようとした瞬間、
「あ、あの……僕、寛人さんが大好きだから嫌いになったりしませんっ!」
と空良の大きな声がリビングに響いた。
車で実家に向かい、そのまま地下のガレージに車を止めた。
空良をエスコートして車を降りると、
「わぁっ! 車がいっぱいっ!」
と驚きの声をあげていた。
親父は車が好きで用途ごとにいろいろな車を揃えているが、今はもっぱら母さんとのドライブ用のスポーツカーが気に入っているらしい。
綾城の父さんも、そして観月の父さんも車好きだから、この歳になった今でも会うたびに車の話で盛り上がっていると半ば呆れ気味に母さんが話していた。
こんな大学生のノリをいつまでも続けていられるのが長く親友でいられる秘訣なのかもしれない。
昨日から用意しておいたお土産の箱を片手でもち、もう片方の腕で空良の腰を抱き、ピッタリと寄り添いながらエレベーターに乗り込む。
「家の中にエレベーターがあるなんて……」
何もかも初めてと言った様子でキョロキョロと辺りを見回す空良が可愛くてたまらない。
ポーンと扉が開くと、
「わっ!」
目の前に満面の笑みを浮かべた両親が突然現れ、空良は驚きの声をあげながら、俺の腕にギュッとしがみついた。
ああ、可愛いな。
そんな空良の可愛らしい姿に早くも蕩けるような視線を送っている親父たちに
「急に現れたらびっくりするだろう」
と注意すると、
「だって、空良くんに会えると思ったら待ちきれなくて! さぁ、空良くん行きましょう!」
と母さんは俺から空良を奪い取るとそのままリビングへと連れて行った。
「ちょ――っ、母さんっ!!」
「ははっ。諦めろ、寛人。ああなったらもうどうしようもない」
「はぁーーっ、だから実家に連れてくの嫌だったんだよ」
「まぁいいじゃないか、ずっと独占してるんだろ。今日だけ母さんに譲ってやれ。母さんもずっと楽しみにしてたんだぞ。麗花さんたちから散々、自分たちの息子の可愛い伴侶を自慢されて、やれ家に遊びに来ただの、一緒に食事に行っただのと聞かされたら、何も言ってはなかったが正直羨ましいと思ってたはずだぞ。私だって、秋芳からお前と空良くんの様子を聞いてどれだけ羨ましかったか……」
「ああ……それはごめん……」
「どうせ、私たちに邪魔されるとでも思ってたんだろ。お前は昔から気に入ったものは自分だけの中に閉じ込めてしまうんだからな」
ぐうの音も出ないとはまさにこの通り。
流石に親だな、俺の性格をよくわかってる。
「だが、想像していた以上に可愛い子だな。少し痩せているのが気になるが、ちゃんと食べさせてるのか?」
「ああ、もちろんだよ。だが、両親が一度に亡くなってかなり困窮した生活を強いられていたせいか、食がすっかり細くなってしまっていて、一度にたくさんの量が食べられなくなってるんだよ。それでも空良に合う薬も飲ませながら少しずつ改善してきてるからまぁ大丈夫だ」
「そうか……ならいいが、お前があの子の健康をしっかり見てやらないといけないぞ」
「ああ、わかってる。あっ、これお土産」
「土産? 珍しいな。いつも手ぶらでくるのに」
「最高級のステーキ肉を買ってきたから、空良に食べさせたくて……」
「ああ、なるほど。じゃあ、私が美味しく焼いてやろう」
「じっくり見させてもらうから」
「なんでだ?」
「家で空良に焼いてあげたいから。親父、ステーキ焼くのはプロ級だろ?」
母さんがステーキが大好きだと知って、必死に上手く焼けるように勉強したという話は父さんから飽きるほど聞かされていた。
そんなにしてまで食べさせたい相手ができるものなのかと不思議に思っていたものだが、同じようなことを俺もしようとしている。
やはり親子なのだと笑ってしまう。
「ああ、好きに見てたらいい。だがそんな簡単に私の技は習得できないぞ。時々空良くんを連れてくるんだな」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる親父を見て、俺は親父もかなり空良を気に入っていると感じていた。
そうでもなければ親父から連れてこいだなんていうわけないからな。
「わかってるよ、一度連れてきたらもうそうなることはわかってたからな」
そういうと、親父は俺の肩をポンと叩いて、
「じゃあ、可愛い伴侶たちに食事の準備でもしようか」
と笑っていった。
リビングに入ると、母さんと空良が楽しそうに話をしているのが見える。
空良の目の前にはジュースとたくさんのお菓子が並んでいて、空良は遠慮がちにその中から一つ口に運ぶと蕩けるような笑顔を浮かべて
「わぁっ! 美味しいっ!」
と感嘆の声をあげた。
「ふふっ。空良くんが気に入ってくれて嬉しいわ。他にもいっぱいあるから、ゆっくり食べてね」
「は、はい。あの……お、お母さん……ありがとうございます」
「きゃーっ! お母さんだなんて!! 嬉しいっ!! ねぇ、空良くん、もう一度お母さんって言ってみて」
「お母さん……すっごく美味しいです」
「ああ、もうなんて可愛いのかしらっ!! 空良くん、このままここに住んじゃわない?」
「えっ?」
「いいじゃない。どうせ寛人は毎日忙しいんだし、昼間私と一緒にここで過ごしましょう?」
そう言って空良を抱きしめようとするのを
「母さんっ! 空良は俺のだからっ!」
とさっと奪い取り、腕の中に抱き締めると
「あっ、今私と話してたのに! 寛人ってば、心狭いんだからっ、空良くんに嫌われるわよ!」
と母さんが文句を言う。
反論しようとした瞬間、
「あ、あの……僕、寛人さんが大好きだから嫌いになったりしませんっ!」
と空良の大きな声がリビングに響いた。
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