天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
52 / 235

エヴァンさんとの約束

しおりを挟む
「ユヅルーっ!」

エヴァンさんにエスコートされながら、お屋敷の中に入ると、階段の上から僕を呼ぶ声が聞こえた。
あの声はミシェルさんだ!

僕に手を振りながら駆け降りてくるその後ろにはセルジュさんの姿も見える。
今日は二人ともお仕事が休みだと言っていたから、一緒に過ごしていたんだろうな。

「ははっ。ミシェルはすっかりユヅルが気に入ったようだな」

「ミシェルさんみたいなお友達ができて僕、嬉しいです」

「前にも言ったが、決してミシェルと二人で外に出かけたりはしないようにな。ユヅルはまだフランスに慣れていないし、ミシェルは有名人だから変なのが寄ってきてしまうから。わかっているだろう?」

「はい。僕もまだ慣れないうちは怖いし……エヴァンさんと一緒じゃないと外には出ません」

「ああ、ユヅルはいい子だ」

エヴァンさんの大きな手で頭を撫でられるのが好きなんだよね。
ホッとするし、何より嬉しいもん。


「ユヅル、violonヴィオロン、弾けるってほんとう?」

駆け寄ってきたミシェルさんから聞こえた突然の日本語。
でも、

「えっ? ゔぃお、ろん??」

何それ?

ミシェルさんの日本語に戸惑っていると、

「ミシェルはユヅルがヴァイオリンが弾けるのかって聞いてるんだよ」

とエヴァンさんが耳元で教えてくれた。

「ああ、ゔぃおろんってヴァイオリンのことなんですね」

「そうだ。きっとセルジュがミシェルに教えたんだろう。Ouiはいと返すといい。ユヅルがフランス語を話せば喜ぶぞ」

エヴァンさんに耳元でこっそり教えてもらい、目を輝かせて僕の返事を待っているミシェルさんに、

『うぃ』

と返すと、ミシェルさんは一瞬止まったけれど、すぐに笑ってくれた。

後ろにいるセルジュさんと何やらフランス語で流れるような会話をして、会話を繰り返して、再び僕に振り向いた。
なぜか顔が赤かったのが気になったけれど、

「ユヅルがviolon弾くの聴きたいな」

そう言われて、一瞬で頭が真っ白になった。

「えっ? 僕の演奏をミシェルさんが???」

「うん、だめ?」

「でも……プロであるミシェルさんに聴いてもらうのはちょっと恥ずかしいかも……」

エヴァンさんと知り合ってから、短期間に何度か弾いているけど、それまでは受験勉強が大変でずっとサボってたし……。
こんなことならもっと母さんのレッスンを受けておけばよかったなぁ……なんて今頃言っても遅いけど……。

「エヴァンさん、どうしたらいいかなぁ?」

「ユヅルがどうしても嫌だというなら無理をすることはないが、技術的なものを心配しているならそれは杞憂だぞ。ユヅルの演奏は技術云々では測れないものだからな。ニコラやミシェルの演奏をいつも近くで聴いているジュールが涙を流して褒めていただろう?」

確かに、ジュールさんもクレマンさんも、そして周りで聴いていてくれた人たちも拍手してくれた。
プロの演奏家の人に聴いてもらえる機会なんてそうそうないんだから、これって嬉しいことなのかも。
それじゃあ、ずっと教えてくれた母さんの恥にならないように頑張ってみようかな。 

僕はエヴァンさんに頷いて見せてから、ミシェルさんに

「下手ですけど、聴いてもらえると嬉しいです。その代わり……ミシェルさんの演奏も勉強のために聴かせてもらえますか?」


というと、

「わぁーっ!! 嬉しいっ!! 僕の演奏なんて喜んで! こっちから聴いてってお願いしたいくらいだよ!」

と笑っていた。

「じゃあ、演奏部屋に行こう!!」

「演奏部屋? そんなのあるんですか?」

「ふふっ。すごいからびっくりするよ!」

そう言って、手を引かれてあっという間にその場から連れて行かれた。

後ろから

「ユヅルっ!」
「ミシェルっ!!」

とエヴァンさんとセルジュさんの声が聞こえたけれど、ミシェルさんはお構いなしといった様子で僕の手を握ったまま演奏部屋へと向かっていった。

ガチャリとやけに重そうな扉を開けると、中からものすごい場所が現れた。

「ここが……演奏部屋?」

「そう! すごいでしょ?」

僕の目の前にはまるでコンサートホールのような空間が広がっていた。

「これって……」

「ふふっ。Monsieurムッシュニコラの演奏部屋だったのを、僕が使わせてもらってるんだ。音の響きもすごく綺麗で、コンサートの前なんかにここで練習すると本番絶対に間違えないんだよ」

お父さんの演奏部屋……。
こんなすごい場所で僕が演奏できるなんて……。

「ユヅルっ!」

感動に震えていると、後ろからやってきたエヴァンさんにギュッと抱きしめられた。

「ミシェル! ユヅルを勝手に連れて行ってはダメだといっただろう? セルジュもしっかりしろ!」

「エヴァンさま、申し訳ございません」

セルジュさんは本当に申し訳なさそうにミシェルさんの頭を下げさせながら、セルジュさんも自分の頭を下げた。

そして、ミシェルさんに注意しているようだけど、フランス語だからか僕には全くわからない。
それを茫然と眺めていると、

「ユヅル!」

とエヴァンさんにさっきよりも強く抱きしめられる。

「あの、家の中だしそんなに心配しないで大丈夫ですよ。僕、ここに連れてきてもらえて嬉しかったですし」

「ユヅルのことになるとつい心配でムキになってしまうんだ……。申し訳ない」

「ふふっ」

反省したように項垂れるエヴァンさんを見て、思わず笑ってしまう。

「ユヅル……」

「あっ、ごめんなさい……。でも、本当に心配しすぎですよ。外には絶対に行かないですから、お家の中だけはミシェルさんと二人で行動する時があってもいいですか?」

「う、うーん……そう、だな……。そう、しようか」

こんなに歯切れの悪いエヴァンさんは見たことがない。
でも、ミシェルさんと過ごすのを許してもらえたからいいか。
しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...