天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
52 / 238

エヴァンさんとの約束

しおりを挟む
「ユヅルーっ!」

エヴァンさんにエスコートされながら、お屋敷の中に入ると、階段の上から僕を呼ぶ声が聞こえた。
あの声はミシェルさんだ!

僕に手を振りながら駆け降りてくるその後ろにはセルジュさんの姿も見える。
今日は二人ともお仕事が休みだと言っていたから、一緒に過ごしていたんだろうな。

「ははっ。ミシェルはすっかりユヅルが気に入ったようだな」

「ミシェルさんみたいなお友達ができて僕、嬉しいです」

「前にも言ったが、決してミシェルと二人で外に出かけたりはしないようにな。ユヅルはまだフランスに慣れていないし、ミシェルは有名人だから変なのが寄ってきてしまうから。わかっているだろう?」

「はい。僕もまだ慣れないうちは怖いし……エヴァンさんと一緒じゃないと外には出ません」

「ああ、ユヅルはいい子だ」

エヴァンさんの大きな手で頭を撫でられるのが好きなんだよね。
ホッとするし、何より嬉しいもん。


「ユヅル、violonヴィオロン、弾けるってほんとう?」

駆け寄ってきたミシェルさんから聞こえた突然の日本語。
でも、

「えっ? ゔぃお、ろん??」

何それ?

ミシェルさんの日本語に戸惑っていると、

「ミシェルはユヅルがヴァイオリンが弾けるのかって聞いてるんだよ」

とエヴァンさんが耳元で教えてくれた。

「ああ、ゔぃおろんってヴァイオリンのことなんですね」

「そうだ。きっとセルジュがミシェルに教えたんだろう。Ouiはいと返すといい。ユヅルがフランス語を話せば喜ぶぞ」

エヴァンさんに耳元でこっそり教えてもらい、目を輝かせて僕の返事を待っているミシェルさんに、

『うぃ』

と返すと、ミシェルさんは一瞬止まったけれど、すぐに笑ってくれた。

後ろにいるセルジュさんと何やらフランス語で流れるような会話をして、会話を繰り返して、再び僕に振り向いた。
なぜか顔が赤かったのが気になったけれど、

「ユヅルがviolon弾くの聴きたいな」

そう言われて、一瞬で頭が真っ白になった。

「えっ? 僕の演奏をミシェルさんが???」

「うん、だめ?」

「でも……プロであるミシェルさんに聴いてもらうのはちょっと恥ずかしいかも……」

エヴァンさんと知り合ってから、短期間に何度か弾いているけど、それまでは受験勉強が大変でずっとサボってたし……。
こんなことならもっと母さんのレッスンを受けておけばよかったなぁ……なんて今頃言っても遅いけど……。

「エヴァンさん、どうしたらいいかなぁ?」

「ユヅルがどうしても嫌だというなら無理をすることはないが、技術的なものを心配しているならそれは杞憂だぞ。ユヅルの演奏は技術云々では測れないものだからな。ニコラやミシェルの演奏をいつも近くで聴いているジュールが涙を流して褒めていただろう?」

確かに、ジュールさんもクレマンさんも、そして周りで聴いていてくれた人たちも拍手してくれた。
プロの演奏家の人に聴いてもらえる機会なんてそうそうないんだから、これって嬉しいことなのかも。
それじゃあ、ずっと教えてくれた母さんの恥にならないように頑張ってみようかな。 

僕はエヴァンさんに頷いて見せてから、ミシェルさんに

「下手ですけど、聴いてもらえると嬉しいです。その代わり……ミシェルさんの演奏も勉強のために聴かせてもらえますか?」


というと、

「わぁーっ!! 嬉しいっ!! 僕の演奏なんて喜んで! こっちから聴いてってお願いしたいくらいだよ!」

と笑っていた。

「じゃあ、演奏部屋に行こう!!」

「演奏部屋? そんなのあるんですか?」

「ふふっ。すごいからびっくりするよ!」

そう言って、手を引かれてあっという間にその場から連れて行かれた。

後ろから

「ユヅルっ!」
「ミシェルっ!!」

とエヴァンさんとセルジュさんの声が聞こえたけれど、ミシェルさんはお構いなしといった様子で僕の手を握ったまま演奏部屋へと向かっていった。

ガチャリとやけに重そうな扉を開けると、中からものすごい場所が現れた。

「ここが……演奏部屋?」

「そう! すごいでしょ?」

僕の目の前にはまるでコンサートホールのような空間が広がっていた。

「これって……」

「ふふっ。Monsieurムッシュニコラの演奏部屋だったのを、僕が使わせてもらってるんだ。音の響きもすごく綺麗で、コンサートの前なんかにここで練習すると本番絶対に間違えないんだよ」

お父さんの演奏部屋……。
こんなすごい場所で僕が演奏できるなんて……。

「ユヅルっ!」

感動に震えていると、後ろからやってきたエヴァンさんにギュッと抱きしめられた。

「ミシェル! ユヅルを勝手に連れて行ってはダメだといっただろう? セルジュもしっかりしろ!」

「エヴァンさま、申し訳ございません」

セルジュさんは本当に申し訳なさそうにミシェルさんの頭を下げさせながら、セルジュさんも自分の頭を下げた。

そして、ミシェルさんに注意しているようだけど、フランス語だからか僕には全くわからない。
それを茫然と眺めていると、

「ユヅル!」

とエヴァンさんにさっきよりも強く抱きしめられる。

「あの、家の中だしそんなに心配しないで大丈夫ですよ。僕、ここに連れてきてもらえて嬉しかったですし」

「ユヅルのことになるとつい心配でムキになってしまうんだ……。申し訳ない」

「ふふっ」

反省したように項垂れるエヴァンさんを見て、思わず笑ってしまう。

「ユヅル……」

「あっ、ごめんなさい……。でも、本当に心配しすぎですよ。外には絶対に行かないですから、お家の中だけはミシェルさんと二人で行動する時があってもいいですか?」

「う、うーん……そう、だな……。そう、しようか」

こんなに歯切れの悪いエヴァンさんは見たことがない。
でも、ミシェルさんと過ごすのを許してもらえたからいいか。
しおりを挟む
感想 248

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

やきもち

すずかけあおい
BL
攻めがやきもちを妬く話です。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

処理中です...