144 / 241
優しい愛に包まれて……
しばらく抱き合っていると、ジョルジュさんがエヴァンさんの耳元で何かを告げ、さっと足早に立ち去っていった。
「あの、エヴァンさん。ジョルジュさんは……?」
「ああ、急に動くのは危ないからここで少し休んでから車に来るようにって言っていたんだ」
「そうなんですね。ジョルジュさんにも心配かけちゃいましたね」
「気にすることはない。それより身体におかしなところはないか?」
「はい。大丈夫です。あの……僕の夢の話、聞いてもらえますか?」
そう尋ねると、エヴァンさんは優しい笑顔を向けながら、
「ああ、ユヅルの話を聞かせてくれ」
と言ってくれた。
「夢の中で、気がついたらこの場所にいて……エヴァンさんもいなくて一人で寂しいって思ってたら、突然この絵の前に誰かが立ってて……それがお父さんと母さんだったんです。僕と話したくて神さまが時間をくれたって言ってました」
「そうか……それで二人はなんだって?」
「結婚式も見てくれてたって。それで今日話をすることができたらもう思い残すことはないって……だから、今日が最後だったみたいです……」
もう二度と会えないんだと思った母さんとお父さんに会えて話ができて幸せだったけど、本当にもう最後なんだと思うと悲しくなる。
僕ってわがままだ。
「ユヅル……二人に会えなくてもいつでも心の中にいるだろう? それに私がついている」
「はい。母さんも言ってました。エヴァンさんとお友達がたくさんいるから寂しくないでしょうって。日本にいた頃の僕なら、母さんも心配だっただろうけど、今は僕を愛してくれる人がたくさんいますもんね」
「ああ。みんなもユヅルを大切に思っているし、何より私はユヅルを誰よりも愛して大切にしているよ」
ギュッと抱きしめられて、エヴァンさんの匂いに包まれる。
他の誰にも感じられないエヴァンさんだけの安心する匂い。
「うん、それがわかってるからかな。お父さんが、エヴァンさんと幸せになりなさいって……そう言ってくれたんです」
「ニコラが……そうか。私はニコラにユヅルを託されたのだな」
そのエヴァンさんの嬉しそうな声に僕も嬉しくなった。
「お父さんが、一度だけ抱きしめさせてほしいって言ってくれて、今のエヴァンさんみたいにギュッてしてくれたら、母さんと同じ匂いがしたんです。優しくて安心する……少しだけエヴァンさんと似てたかな。お父さん、大きな腕で僕と母さんを一緒に抱きしめてくれて……あの、誕生日の日にできなかった母さんとのハグもできたから僕、もう思い残すことはないです。これからずっとエヴァンさんと一緒ですよ」
「そうか……それなら、よかった。私はユヅルを失うんじゃないかと怖かったが、ユヅルがもう二度と離れることがないとわかったから安心だよ」
「心配かけてごめんなさい……」
「ユヅルが気にすることじゃない。ただ、ユヅルが私のものだという証をもらってもいいか?」
「証? 何かあったかな」
「これだよ」
「んんっ……」
甘い声で囁かれたと思ったら、エヴァンさんの唇が重なった。
僕のことを心配してなのか、いつもよりも甘く優しいキス。
それでもエヴァンさんからの思いはたくさん伝わってきた。
僕たちはモナ・リザの絵の前でしばらくの間、愛を確かめ合った。
そろそろ車に戻ろうかと抱き上げられ、出口までの道を進んでいく。
「もうみんな車にいるのかな? 待たせちゃって申し訳ないことしちゃったな」
「ユヅルは気にしないでいい。みんなも体調を崩したと聞いているはずだから、責めたりはしないよ」
「うん。みんな優しいもんね」
本当にみんな優しすぎるくらい優しい人ばかり。
エヴァンさんがとっても優しいからそんな人たちが集まるのかな。
僕もその中に入れてもらえて本当に嬉しいんだ。
「この後はクリスマスマーケットに行くつもりだが、ユヅルも行けそうか? 無理はしなくていいぞ」
「大丈夫です。でも……」
「んっ? 何か気になることがあるか?」
「エヴァンさんに抱っこしてもらえたら安心だなって……」
今日はずっと抱っこしてもらってばっかりでエヴァンさんを疲れさせてしまっているかなと思ったけれど、抱っこされていると安心感があって離れたくなくなってしまう。
今日だけは少しわがまま言ってもいいよね。
少しドキドキしながら頼んでみると、
「――っ!! ああ、もちろんだよ。任せてくれ!」
と嬉しそうに言ってくれた。
車が停まっているのが見えて、もう少しだと思っていると突然後部座席の扉が開き、理央くんが駆け出してきた。
もちろんすぐ後から観月さんも出てきてホッとしたけど、理央くんの突然の行動に驚いてしまった。
「理央くん。寒いのに……」
「だって……弓弦くんが心配で……もう、大丈夫なの?」
「理央くん……」
少し潤んだ瞳に気づく。
ああ、僕のことを心配して泣いてくれていたんだ。
僕は本当に優しい友人に恵まれたんだな。
母さん……お父さん……僕は、本当に幸せだよ。
* * *
いつも読んでいただきありがとうございます。
ふと気づけば、連載を始めて一年が経っていました。気づくのが遅い(汗)
ここまで長い間読んでいただいていいますが、一応フランス編が終わったら一旦本編は完結して、その後の日本でのお話やその他のお話は番外編で書いていけたらなと思っています。
本編完結までもうしばらくお付き合いいただければ嬉しいです。
「あの、エヴァンさん。ジョルジュさんは……?」
「ああ、急に動くのは危ないからここで少し休んでから車に来るようにって言っていたんだ」
「そうなんですね。ジョルジュさんにも心配かけちゃいましたね」
「気にすることはない。それより身体におかしなところはないか?」
「はい。大丈夫です。あの……僕の夢の話、聞いてもらえますか?」
そう尋ねると、エヴァンさんは優しい笑顔を向けながら、
「ああ、ユヅルの話を聞かせてくれ」
と言ってくれた。
「夢の中で、気がついたらこの場所にいて……エヴァンさんもいなくて一人で寂しいって思ってたら、突然この絵の前に誰かが立ってて……それがお父さんと母さんだったんです。僕と話したくて神さまが時間をくれたって言ってました」
「そうか……それで二人はなんだって?」
「結婚式も見てくれてたって。それで今日話をすることができたらもう思い残すことはないって……だから、今日が最後だったみたいです……」
もう二度と会えないんだと思った母さんとお父さんに会えて話ができて幸せだったけど、本当にもう最後なんだと思うと悲しくなる。
僕ってわがままだ。
「ユヅル……二人に会えなくてもいつでも心の中にいるだろう? それに私がついている」
「はい。母さんも言ってました。エヴァンさんとお友達がたくさんいるから寂しくないでしょうって。日本にいた頃の僕なら、母さんも心配だっただろうけど、今は僕を愛してくれる人がたくさんいますもんね」
「ああ。みんなもユヅルを大切に思っているし、何より私はユヅルを誰よりも愛して大切にしているよ」
ギュッと抱きしめられて、エヴァンさんの匂いに包まれる。
他の誰にも感じられないエヴァンさんだけの安心する匂い。
「うん、それがわかってるからかな。お父さんが、エヴァンさんと幸せになりなさいって……そう言ってくれたんです」
「ニコラが……そうか。私はニコラにユヅルを託されたのだな」
そのエヴァンさんの嬉しそうな声に僕も嬉しくなった。
「お父さんが、一度だけ抱きしめさせてほしいって言ってくれて、今のエヴァンさんみたいにギュッてしてくれたら、母さんと同じ匂いがしたんです。優しくて安心する……少しだけエヴァンさんと似てたかな。お父さん、大きな腕で僕と母さんを一緒に抱きしめてくれて……あの、誕生日の日にできなかった母さんとのハグもできたから僕、もう思い残すことはないです。これからずっとエヴァンさんと一緒ですよ」
「そうか……それなら、よかった。私はユヅルを失うんじゃないかと怖かったが、ユヅルがもう二度と離れることがないとわかったから安心だよ」
「心配かけてごめんなさい……」
「ユヅルが気にすることじゃない。ただ、ユヅルが私のものだという証をもらってもいいか?」
「証? 何かあったかな」
「これだよ」
「んんっ……」
甘い声で囁かれたと思ったら、エヴァンさんの唇が重なった。
僕のことを心配してなのか、いつもよりも甘く優しいキス。
それでもエヴァンさんからの思いはたくさん伝わってきた。
僕たちはモナ・リザの絵の前でしばらくの間、愛を確かめ合った。
そろそろ車に戻ろうかと抱き上げられ、出口までの道を進んでいく。
「もうみんな車にいるのかな? 待たせちゃって申し訳ないことしちゃったな」
「ユヅルは気にしないでいい。みんなも体調を崩したと聞いているはずだから、責めたりはしないよ」
「うん。みんな優しいもんね」
本当にみんな優しすぎるくらい優しい人ばかり。
エヴァンさんがとっても優しいからそんな人たちが集まるのかな。
僕もその中に入れてもらえて本当に嬉しいんだ。
「この後はクリスマスマーケットに行くつもりだが、ユヅルも行けそうか? 無理はしなくていいぞ」
「大丈夫です。でも……」
「んっ? 何か気になることがあるか?」
「エヴァンさんに抱っこしてもらえたら安心だなって……」
今日はずっと抱っこしてもらってばっかりでエヴァンさんを疲れさせてしまっているかなと思ったけれど、抱っこされていると安心感があって離れたくなくなってしまう。
今日だけは少しわがまま言ってもいいよね。
少しドキドキしながら頼んでみると、
「――っ!! ああ、もちろんだよ。任せてくれ!」
と嬉しそうに言ってくれた。
車が停まっているのが見えて、もう少しだと思っていると突然後部座席の扉が開き、理央くんが駆け出してきた。
もちろんすぐ後から観月さんも出てきてホッとしたけど、理央くんの突然の行動に驚いてしまった。
「理央くん。寒いのに……」
「だって……弓弦くんが心配で……もう、大丈夫なの?」
「理央くん……」
少し潤んだ瞳に気づく。
ああ、僕のことを心配して泣いてくれていたんだ。
僕は本当に優しい友人に恵まれたんだな。
母さん……お父さん……僕は、本当に幸せだよ。
* * *
いつも読んでいただきありがとうございます。
ふと気づけば、連載を始めて一年が経っていました。気づくのが遅い(汗)
ここまで長い間読んでいただいていいますが、一応フランス編が終わったら一旦本編は完結して、その後の日本でのお話やその他のお話は番外編で書いていけたらなと思っています。
本編完結までもうしばらくお付き合いいただければ嬉しいです。
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
「三年間、誕生日のたびに記録していたら、彼氏より先に幸せになれました」 ──全部、メモしてたんで。
まさき
恋愛
三年間、瀬川凛は笑い続けた。
誕生日のディナーを予約しても、記念日にプレゼントを用意しても——彼氏の柊悠樹は、幼馴染の水瀬奈々からLINEが届くたびに、「すぐ戻る」と言って消えた。
戻ってくるのは、いつも二〜三時間後。
「大丈夫だよ、気にしないで」
凛はそう言い続けた。ただし——スマホのメモには、全部記録していた。
日付、時刻、状況。感情は一切書かなかった。ただ、事実だけを。
三年分の記録が積み重なったころ、悠樹は言った。
「奈々と付き合いたい。別れよう」
凛は静かに微笑んで、答えた。
「——わかった」
そしてその翌週、悠樹の会社のライバル企業への転職が決まった。
内定通知は、別れ話の一ヶ月前に届いていた。
泣かなかったのは、強かったからじゃない。
ずっと、準備していたからだ。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ただのハイスペックなモブだと思ってた
はぴねこ
BL
神乃遥翔(じんの はると)は自分のことをモブだと思っていた。
少年漫画ではいつだって、平凡に見えて何か一つに秀でている人物が主人公だったから。
その点、遥翔は眉目秀麗文武両道、家も財閥の超お金持ち。
一通りのことがなんでも簡単にできる自分は夢中になれるものもなくて、きっと漫画のモブみたいに輝く主人公を引き立てるモブのように生きるのだと、そう遥翔は思っていた。
けれど、そんな遥翔に勉強を教わりに来ている葛城星 (かつらぎ ほし)は言った。
「BL漫画の中では、神乃くんみたいな人がいつだって主人公なんだよ?」
そう言って、星が貸してくれた一冊のBL漫画が遥翔の人生を一変させた。
自分にも輝ける人生を歩むことができるのかもしれないと希望を持った遥翔は、そのことを教えてくれた星に恋をする。
だけど、恋をした途端、星には思い人がいることに気づいてしまって……
眉目秀麗文武両道で完璧だけど漫画脳な遥翔が、お人好しで気弱な星の心に少しずつ少しずつ近づこうと頑張るお話です。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中