35 / 45
番外編
絶望と希望 <sideアシュリー>
しおりを挟む
ちょっと思いついてしまったアシュリーのお話。
前話のデーヴィッドとレジーに子どもができたとわかった翌日のお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideアシュリー>
はぁーーっ。
最近かなり疲れが溜まっている。
レイと過ごす時間は私の疲れた心を癒してくれる大切な時間だというのに、その時間が少なくなってきているのだ。
それはなぜか。
レイとリヒトを出産したルカは、産後の体調が万全でなく、常にウィリアムがそばで完全看護をしているからだ。
妊娠中もルカのそばには常にウィリアムがいたが、ルカの体調に合わせて数時間ではあったが、時々騎士団に顔を出しては溜まりまくった書類を片付けたり、若い騎士への訓練もやってくれて私の負担もかなり軽減されていた。
しかし、ルカが出産してからというもの少しの時間でも離れるのが心配なようで、ルカの体調が良くなるまで騎士団は休むということを国王である父上に認めさせてしまったのだ。
父上もルカの可愛い子どもたちにメロメロだから仕方がないといえばそうなのだが、せめて週に一度でもいい。
ウィリアムが騎士団にくる日を作って欲しかった。
だが、もう決まってしまったことにつべこべいうわけにはいかない。
こうなればデーヴィッドと力を合わせて騎士団を回していくしかない。
ウィリアムの仕事を全て私が担ってきたが、いい加減デーヴィッドにもウィリアムの仕事を任せよう。
そうでもないと、私がレイと過ごす時間が減ってしまう。
ただでさえ、最近短くなっているというのに、このままではレイが私のことを忘れてしまうではないか。
デーヴィッドにもようやくレイがルカの生まれ変わりで私の許嫁だという話をしたことだし、許嫁との時間を作りたいといえば少しくらいは私のために動いてくれることだろう。
よし、今日こそデーヴィッドに言ってやろう。
そもそも自分の兄のできないところを補うのは弟の役目だろう! と。
私は気合を入れて、騎士団に向かった。
まだか?
いつもなら時間よりも早く騎士団に来て訓練を始めているはずのデーヴィッドの姿が見えない。
一体どうしたのだろう。
イライラする気持ちを必死で抑えながら訓練場に向かったが、訓練場にもデーヴィッドの姿は見えない。
今日は私とデーヴィッドで騎士たちに剣術の稽古をつける大事な日であるというのに。
こんな日に遅刻か?
デーヴィッドにしては弛みすぎだな。
騎士たちに各々で練習をさせていると、
「遅くなりました」
というデーヴィッドの声が訓練場に響き渡った。
「デーヴィッド! 何をしていたんだ! たるんでるぞ!」
「アシュリー副団長。申し訳ありません。実は国王陛下の元にご挨拶に伺っておりました」
「何? 父上に? 何か重要な事柄でもあったのか?」
「はい。その件で今すぐにお時間をいただきたいのです。少しの時間で構いません」
「今からか? そんなに重要な話なのか?」
「はい。お願いします」
デーヴィッドのただならぬ様子に私は騎士たちに練習を続けるように指示を出し、副団長室に連れて行った。
「それでどうしたんだ? 何があった?」
「実は……レジーに子ができました」
「なに?! それはめでたいな!! お前も父親になるのか、おめでとう!」
「はい。私もレジーもずっと子どもを望んでおりましたのでとても嬉しく思っております。しかしながら……」
「なんだ? どうした?」
「レジーは特別な秘薬を使用しての妊娠です。また年齢のこともありますし、ジョージ医師からは安定期に入るまでは絶対安静だと言われております」
その言葉に背筋がスッと冷たいものが走る。
まさか……
「そういうわけで、これからレジーが安定期に入るまでの数ヶ月騎士団はお休みを――」
「いやいやいや、流石にそれは難しいだろう! ただでさえ今はウィリアムがあんな状態なんだ! お前まで休んだら騎士団はどうなるんだ?」
そういうと、なぜかデーヴィッドは突然私に笑顔を見せ始めた。
なんだ?
この表情は。
どういう意味だ?
「アシュリー殿下。こちらをご覧ください」
にっこりと笑顔を見せながら、デーヴィッドが差し出した紙に目をやると
「な――っ、こ、れ……う、そだろう……」
あまりの衝撃に膝から崩れ落ちる思いだった。
「これは正真正銘、国王陛下にいただいた私の休職を認めるという証明書にございます。というわけで私の休職はすでに決定事項でございますのでそのご連絡に伺った次第です」
「父上が……どうして……」
ウィリアムもおらず、デーヴィッドまで休職したらどうなるか、あの初夜籠りの時でわかっていただろうに。
あれは数日だったからまだ我慢もできたが、今度は数ヶ月……。
その間私が一人で騎士団をまとめるのか……。
「申し訳ありませんが、まだ妊娠したばかりで気持ちが不安定なレジーを一人家に残しておりますので、そろそろ私は失礼いたします」
「ちょ――っ、待ってくれ! せめて今日の騎士たちの稽古まではなんとか……」
「申し訳ありません。もう今日からお休みをいただいております。それでは失礼いたします」
縋りつこうとする私を残してデーヴィッドは愛しの伴侶の待つ自宅へ足早に戻って行った。
ああ……なんてことだ。
これでまたレイと過ごす時間が少なくなってしまう。
こうなれば、ウィリアムに頭を下げてなんとか少しの時間でも騎士団に来てもらうことにしよう。
それしか私の生きる道はない。
私は自分の限界の力を振り絞って、全ての騎士との稽古を終え、ふらふらになりながら、フローレス邸に向かった。
デーヴィッドとのことを話し、なんとか騎士団に来てほしいと訴えると最初こそ渋っていたウィリアムだったが、あまりにもボロボロになった私の様子に同情したのと、ルカが
「アシュリーさんを手伝ってあげて。アシュリーさんが疲れ果ててお世話に来てくれなくなったらレイが悲しむよ」
と言ってくれたおかげで、ウィリアムは週に二度、数時間ならという約束で来てくれることになった。
「ああ、ルカっ!! ありがとう! ルカのおかげだ!!」
あまりの嬉しさにルカに近づこうとした瞬間、さっと私とルカの間にウィリアムが割り込んでくる。
「約束を反故にしてもいいのだぞ」
低い声で止められて、慌ててルカから離れた。
いやいや、言っておくが私は王子なのだぞ。
王子にあんな脅迫めいたことをするなんて……と言いたいくらいだったが、今は大人しくしておこう。
なんと言ってもレイとの時間を奪われずに済むのだから。
私は喜びですっかりと体力が戻った身体でレイの元に急いだ。
前話のデーヴィッドとレジーに子どもができたとわかった翌日のお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideアシュリー>
はぁーーっ。
最近かなり疲れが溜まっている。
レイと過ごす時間は私の疲れた心を癒してくれる大切な時間だというのに、その時間が少なくなってきているのだ。
それはなぜか。
レイとリヒトを出産したルカは、産後の体調が万全でなく、常にウィリアムがそばで完全看護をしているからだ。
妊娠中もルカのそばには常にウィリアムがいたが、ルカの体調に合わせて数時間ではあったが、時々騎士団に顔を出しては溜まりまくった書類を片付けたり、若い騎士への訓練もやってくれて私の負担もかなり軽減されていた。
しかし、ルカが出産してからというもの少しの時間でも離れるのが心配なようで、ルカの体調が良くなるまで騎士団は休むということを国王である父上に認めさせてしまったのだ。
父上もルカの可愛い子どもたちにメロメロだから仕方がないといえばそうなのだが、せめて週に一度でもいい。
ウィリアムが騎士団にくる日を作って欲しかった。
だが、もう決まってしまったことにつべこべいうわけにはいかない。
こうなればデーヴィッドと力を合わせて騎士団を回していくしかない。
ウィリアムの仕事を全て私が担ってきたが、いい加減デーヴィッドにもウィリアムの仕事を任せよう。
そうでもないと、私がレイと過ごす時間が減ってしまう。
ただでさえ、最近短くなっているというのに、このままではレイが私のことを忘れてしまうではないか。
デーヴィッドにもようやくレイがルカの生まれ変わりで私の許嫁だという話をしたことだし、許嫁との時間を作りたいといえば少しくらいは私のために動いてくれることだろう。
よし、今日こそデーヴィッドに言ってやろう。
そもそも自分の兄のできないところを補うのは弟の役目だろう! と。
私は気合を入れて、騎士団に向かった。
まだか?
いつもなら時間よりも早く騎士団に来て訓練を始めているはずのデーヴィッドの姿が見えない。
一体どうしたのだろう。
イライラする気持ちを必死で抑えながら訓練場に向かったが、訓練場にもデーヴィッドの姿は見えない。
今日は私とデーヴィッドで騎士たちに剣術の稽古をつける大事な日であるというのに。
こんな日に遅刻か?
デーヴィッドにしては弛みすぎだな。
騎士たちに各々で練習をさせていると、
「遅くなりました」
というデーヴィッドの声が訓練場に響き渡った。
「デーヴィッド! 何をしていたんだ! たるんでるぞ!」
「アシュリー副団長。申し訳ありません。実は国王陛下の元にご挨拶に伺っておりました」
「何? 父上に? 何か重要な事柄でもあったのか?」
「はい。その件で今すぐにお時間をいただきたいのです。少しの時間で構いません」
「今からか? そんなに重要な話なのか?」
「はい。お願いします」
デーヴィッドのただならぬ様子に私は騎士たちに練習を続けるように指示を出し、副団長室に連れて行った。
「それでどうしたんだ? 何があった?」
「実は……レジーに子ができました」
「なに?! それはめでたいな!! お前も父親になるのか、おめでとう!」
「はい。私もレジーもずっと子どもを望んでおりましたのでとても嬉しく思っております。しかしながら……」
「なんだ? どうした?」
「レジーは特別な秘薬を使用しての妊娠です。また年齢のこともありますし、ジョージ医師からは安定期に入るまでは絶対安静だと言われております」
その言葉に背筋がスッと冷たいものが走る。
まさか……
「そういうわけで、これからレジーが安定期に入るまでの数ヶ月騎士団はお休みを――」
「いやいやいや、流石にそれは難しいだろう! ただでさえ今はウィリアムがあんな状態なんだ! お前まで休んだら騎士団はどうなるんだ?」
そういうと、なぜかデーヴィッドは突然私に笑顔を見せ始めた。
なんだ?
この表情は。
どういう意味だ?
「アシュリー殿下。こちらをご覧ください」
にっこりと笑顔を見せながら、デーヴィッドが差し出した紙に目をやると
「な――っ、こ、れ……う、そだろう……」
あまりの衝撃に膝から崩れ落ちる思いだった。
「これは正真正銘、国王陛下にいただいた私の休職を認めるという証明書にございます。というわけで私の休職はすでに決定事項でございますのでそのご連絡に伺った次第です」
「父上が……どうして……」
ウィリアムもおらず、デーヴィッドまで休職したらどうなるか、あの初夜籠りの時でわかっていただろうに。
あれは数日だったからまだ我慢もできたが、今度は数ヶ月……。
その間私が一人で騎士団をまとめるのか……。
「申し訳ありませんが、まだ妊娠したばかりで気持ちが不安定なレジーを一人家に残しておりますので、そろそろ私は失礼いたします」
「ちょ――っ、待ってくれ! せめて今日の騎士たちの稽古まではなんとか……」
「申し訳ありません。もう今日からお休みをいただいております。それでは失礼いたします」
縋りつこうとする私を残してデーヴィッドは愛しの伴侶の待つ自宅へ足早に戻って行った。
ああ……なんてことだ。
これでまたレイと過ごす時間が少なくなってしまう。
こうなれば、ウィリアムに頭を下げてなんとか少しの時間でも騎士団に来てもらうことにしよう。
それしか私の生きる道はない。
私は自分の限界の力を振り絞って、全ての騎士との稽古を終え、ふらふらになりながら、フローレス邸に向かった。
デーヴィッドとのことを話し、なんとか騎士団に来てほしいと訴えると最初こそ渋っていたウィリアムだったが、あまりにもボロボロになった私の様子に同情したのと、ルカが
「アシュリーさんを手伝ってあげて。アシュリーさんが疲れ果ててお世話に来てくれなくなったらレイが悲しむよ」
と言ってくれたおかげで、ウィリアムは週に二度、数時間ならという約束で来てくれることになった。
「ああ、ルカっ!! ありがとう! ルカのおかげだ!!」
あまりの嬉しさにルカに近づこうとした瞬間、さっと私とルカの間にウィリアムが割り込んでくる。
「約束を反故にしてもいいのだぞ」
低い声で止められて、慌ててルカから離れた。
いやいや、言っておくが私は王子なのだぞ。
王子にあんな脅迫めいたことをするなんて……と言いたいくらいだったが、今は大人しくしておこう。
なんと言ってもレイとの時間を奪われずに済むのだから。
私は喜びですっかりと体力が戻った身体でレイの元に急いだ。
485
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。