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番外編
もし、あの時ひかりと出会わずに待ち合わせ場所から離れていたら…… 1
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沖野先生がもし、冬貴の連絡に気づいてどちらも来られなくなったのを知って待ち合わせ場所を離れて自宅に帰っていたら……それでも二人は会いそうな気がする。
そんな感想をいただいて、つい書きたくなってしまいました。
というわけで、ひかり編は独立させることにしました。
『ウブな子猫はゲイアプリで出会った理想の男性に愛されたくてたまらない!』
というタイトルでこれまでの分も含めて独立させたので、次回からひかりsideのお話はそちらに投稿します。
どちらも楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
なんだ、真壁も部下の子も来られなくなったのか……
だが、仕事なら仕方がないな。
ここで何時間も待ちぼうけをくうよりは早めに連絡をもらえてよかったと思おうか。
私はスマホを胸ポケットに戻し、ベンチを立った。
車に戻り、自宅に帰る途中に行きつけのワインショップでワインを買った。
今日は飲む気でいたから、美味しいワインでも買って帰らないと眠れそうにない。
スモークサーモンのテリーヌの瓶詰めがまだ残っていたはずだ。
バゲットと合わせたらいいつまみになるだろう。
約束は無くなったがせっかくの休日前夜だ。
一人でも楽しむとしよう。
近所のパン屋でバゲットを買って、自宅に戻り買ったものをテーブルに置く。
すると、胸ポケットで振動を感じた。
今日はオンコールはないはずだ。
画面を見るとそこには真壁冬貴の名前が出ていた。
珍しくメッセージではない。
わざわざ今日の詫びの電話をかけてきたのだろうか?
それとも……
なんとなく気になって、すぐに電話をとった。
ー真壁。どうした?
ー悪い。今、大丈夫か?
ーついさっき自宅に着いたところだ。何かあったのか?
その声が少し焦っている気がして、問いかけた。
ー実は、沖野に診てもらいたい子がいるんだ。できれば、一晩預かってほしい。
ーどういうことだ?
ー話せば長くなるんだが……
と言いつつ、優秀な頭でまとめた話をわかりやすく伝えてくれた。
今日の約束をドタキャンすることになった理由はある男を捕まえるためのものだったが、その男に騙されて東京までやってきた大学生の子を保護したのだそうだ。男に会う前に保護できたから怪我はしていないが、健康状態に不安があり、一人にはしておけない。だが、保護者を呼ぶことをその子が拒み続けているため、一人で帰すこともできず、困っているということらしい。
ー成瀬には別件で来てもらっているんだが、一応成瀬の見立てで身体の問題よりも心に強い不安を抱えているようだから、安心できる大人と一緒に居させたほうがいいということだったんだ。だが、警察では彼の心には負担をかけてしまうだろう? だから、沖野なら医師としても大人としても安心できる相手だと思うんだ。どうだろう? 彼を預かってもらえないだろうか?
真壁がそこまで頼んでくるんだ。
しかも成瀬がそう診断したのなら間違いはないだろう。
高校時代から知っている彼らに頼まれたらここで断るなんてことはできないな。
ーわかった。すぐにその子を迎えに行くよ。どこに向かえばいい?
警視庁の受付で名前を伝えれば話が通じるようにしてもらい、私は急いで家を出た。
駐車場に車をとめ、言われた通りに受付に回り名前を告げると、奥の部屋に案内された。
しばらく部屋で待機していた私のもとにまずやってきたのは、成瀬だった。
「久しぶりだな、沖野」
「あ、ああ。成瀬も。真壁から話は聞いていたが、元気そうだな」
成瀬に恋人ができたと聞いて以来、しょっちゅう話は聞いていたが実際に成瀬と顔を合わせるのは十年ぶりくらいだ。
多分、あの臨床研修以来だろう。
あのあと、成瀬はすぐに司法修習に行ったし、私も少しして海外に渡ったからそれ以来だ。
あの時は成瀬に追いつくことばかり考えていたが、今こうして顔を合わせてわかる。
やはり、成瀬は異次元の凄さなのだと。
まとっているオーラが違う。
同級生とは思えない迫力に少し緊張しつつ言葉を返すと、成瀬はこれからくる彼のことを教えてくれた。
「理由は本人が話してくれたらわかるだろうが、本人的にはかなり切羽詰まった状況に陥っている」
「切羽詰まった状況……それは教えてもらえないのか?」
「かなりセンシティブな内容だから、本人の許可が必要なんだ。ただ、今回それがダメになったことでかなりショックを受けているのは確かだ。できるだけ大きな心を持って話を聞いてやると、心を開くかもしれない。心もかなり傷ついているが、身体も……かなり寝不足のようだったな」
「なるほど……わかった」
成瀬にいろいろ聞いて参考にしたかったが、私だって医師として現場を見てきたんだ。
弁護士になった成瀬の言葉より、自分の経験と腕を信じよう。
何より本人に会ってからだ。
覚悟と気合を入れて前を向くと、成瀬がふっと表情を和らげた気がした。
そして、しばらくして扉が開かれた。
真壁と共に現れたのは大きな旅行鞄を斜めがけにした、華奢な男の子。
その子と目が合った瞬間、全身を電流が走ったような衝撃に襲われた。
そんな感想をいただいて、つい書きたくなってしまいました。
というわけで、ひかり編は独立させることにしました。
『ウブな子猫はゲイアプリで出会った理想の男性に愛されたくてたまらない!』
というタイトルでこれまでの分も含めて独立させたので、次回からひかりsideのお話はそちらに投稿します。
どちらも楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
なんだ、真壁も部下の子も来られなくなったのか……
だが、仕事なら仕方がないな。
ここで何時間も待ちぼうけをくうよりは早めに連絡をもらえてよかったと思おうか。
私はスマホを胸ポケットに戻し、ベンチを立った。
車に戻り、自宅に帰る途中に行きつけのワインショップでワインを買った。
今日は飲む気でいたから、美味しいワインでも買って帰らないと眠れそうにない。
スモークサーモンのテリーヌの瓶詰めがまだ残っていたはずだ。
バゲットと合わせたらいいつまみになるだろう。
約束は無くなったがせっかくの休日前夜だ。
一人でも楽しむとしよう。
近所のパン屋でバゲットを買って、自宅に戻り買ったものをテーブルに置く。
すると、胸ポケットで振動を感じた。
今日はオンコールはないはずだ。
画面を見るとそこには真壁冬貴の名前が出ていた。
珍しくメッセージではない。
わざわざ今日の詫びの電話をかけてきたのだろうか?
それとも……
なんとなく気になって、すぐに電話をとった。
ー真壁。どうした?
ー悪い。今、大丈夫か?
ーついさっき自宅に着いたところだ。何かあったのか?
その声が少し焦っている気がして、問いかけた。
ー実は、沖野に診てもらいたい子がいるんだ。できれば、一晩預かってほしい。
ーどういうことだ?
ー話せば長くなるんだが……
と言いつつ、優秀な頭でまとめた話をわかりやすく伝えてくれた。
今日の約束をドタキャンすることになった理由はある男を捕まえるためのものだったが、その男に騙されて東京までやってきた大学生の子を保護したのだそうだ。男に会う前に保護できたから怪我はしていないが、健康状態に不安があり、一人にはしておけない。だが、保護者を呼ぶことをその子が拒み続けているため、一人で帰すこともできず、困っているということらしい。
ー成瀬には別件で来てもらっているんだが、一応成瀬の見立てで身体の問題よりも心に強い不安を抱えているようだから、安心できる大人と一緒に居させたほうがいいということだったんだ。だが、警察では彼の心には負担をかけてしまうだろう? だから、沖野なら医師としても大人としても安心できる相手だと思うんだ。どうだろう? 彼を預かってもらえないだろうか?
真壁がそこまで頼んでくるんだ。
しかも成瀬がそう診断したのなら間違いはないだろう。
高校時代から知っている彼らに頼まれたらここで断るなんてことはできないな。
ーわかった。すぐにその子を迎えに行くよ。どこに向かえばいい?
警視庁の受付で名前を伝えれば話が通じるようにしてもらい、私は急いで家を出た。
駐車場に車をとめ、言われた通りに受付に回り名前を告げると、奥の部屋に案内された。
しばらく部屋で待機していた私のもとにまずやってきたのは、成瀬だった。
「久しぶりだな、沖野」
「あ、ああ。成瀬も。真壁から話は聞いていたが、元気そうだな」
成瀬に恋人ができたと聞いて以来、しょっちゅう話は聞いていたが実際に成瀬と顔を合わせるのは十年ぶりくらいだ。
多分、あの臨床研修以来だろう。
あのあと、成瀬はすぐに司法修習に行ったし、私も少しして海外に渡ったからそれ以来だ。
あの時は成瀬に追いつくことばかり考えていたが、今こうして顔を合わせてわかる。
やはり、成瀬は異次元の凄さなのだと。
まとっているオーラが違う。
同級生とは思えない迫力に少し緊張しつつ言葉を返すと、成瀬はこれからくる彼のことを教えてくれた。
「理由は本人が話してくれたらわかるだろうが、本人的にはかなり切羽詰まった状況に陥っている」
「切羽詰まった状況……それは教えてもらえないのか?」
「かなりセンシティブな内容だから、本人の許可が必要なんだ。ただ、今回それがダメになったことでかなりショックを受けているのは確かだ。できるだけ大きな心を持って話を聞いてやると、心を開くかもしれない。心もかなり傷ついているが、身体も……かなり寝不足のようだったな」
「なるほど……わかった」
成瀬にいろいろ聞いて参考にしたかったが、私だって医師として現場を見てきたんだ。
弁護士になった成瀬の言葉より、自分の経験と腕を信じよう。
何より本人に会ってからだ。
覚悟と気合を入れて前を向くと、成瀬がふっと表情を和らげた気がした。
そして、しばらくして扉が開かれた。
真壁と共に現れたのは大きな旅行鞄を斜めがけにした、華奢な男の子。
その子と目が合った瞬間、全身を電流が走ったような衝撃に襲われた。
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