15 / 22
番外編
もし、あの時ひかりと出会わずに待ち合わせ場所から離れていたら…… 4
「うわぁー、すごい! ミンチになってる!」
それだけで大喜びしてくれるのが可愛い。
時間のある時にストックしておいた飴色玉ねぎを冷凍庫から取り出し、解凍してミンチ肉を入れたボウルに入れる。
牛乳に浸したパン粉と卵などを加え、クラッシュ氷と一緒に練るように混ぜていく。
氷が溶けるまで練り混ざったら肉ダネの完成だ。
イリゼホテルの缶詰スープシリーズのクラムチャウダーを取り出し、鍋で温めながらハンバーグを焼いていく。
一人でゆっくりワインを飲もうとバゲットを買っておいて正解だったな。
「美味しそう……」
いい匂いがしてきたから、いよいよお腹が空いてきたんだろう。
ひかりくんがフライパンを覗き込むように身を乗り出す。
フライパンの蓋を開けて、ふっくらといい感じで焦げ目のついたハンバーグを見せてやる。
「わぁー! こんなおっきなの初めてー!」
くっ、これはハンバーグに向けての言葉だ。
勘違いするな。
いつもならこんなバカな勘違いなんてしないのに、この子の言動にはすぐに心を乱される。
必死に冷静をよそおい、焼き上がったハンバーグをグリル野菜をのせた皿に盛り付ける。
さっとソースを作ってハンバーグにかけて出来上がりだ。
クラムチャウダーをカップに注ぎ、少し温め直したバゲットと一緒にハンバーグプレートをひかりくんに出してやると目を輝かせてくれた。
「そういえば、ひかりくんは成人しているんだったね」
「は、はい。先月二十歳になりました」
「それじゃあ食事をしながら少しお酒を飲もうか。飲める?」
「えっと……多分、少しなら……」
この感じだと弱いのかもしれない。もしくはまだ飲んだことはないのかも。
「それじゃあ弱いのを持ってこよう」
翌日も仕事がある日は軽めの酒にしているから、一応アルコール度数が低いものも我が家にはある。
その中でも一番飲みやすそうなものをチョイスして持ってきた。
さっとワインを開け、二人分のワイングラスを持ってひかりくんの元に戻った。
「せっかくだから乾杯しようか」
グラスを持たせて、そっとグラスを重ねる。
「ひかりくんと出会えた夜に、乾杯」
「かん、ぱい……」
ひかりくんはうっとりとした顔で私を見つめながら、グラスに口をつけた。
恐る恐ると言った様子で口に入っていく。
「あ、美味しい」
「良かった。これなら飲めそうだね」
量を飲ませなければ、酔っ払って眠ることはなさそうだ。
「ハンバーグも食べてみて」
「はい。いただきます!」
ひかりくんがナイフを入れると、ジュワッと肉汁が溢れ出す。
「わっ、わっ! すごい! 肉汁がジュワッって……!」
興奮しながら、嬉しそうにハンバーグを口に入れるひかりくんをみているだけで満足している自分がいる。
「んー! んーひぃー!」
私の作ったものをこんなにも美味しそうに食べてくれるなんて……
あっ!
ひかりくんの唇の端からソースが垂れるのをみた瞬間、身体が動いた。
手を伸ばし、指でひかりくんの唇に優しく触れる。
「えっ……」
「ソース、ついてたよ」
驚くひかりくんをみながら彼の唇に触れた指を自分の口に運び、舐め取った。
そのソースは今まで味わったことのないほど、極上の味に感じられた。
私は最高の幸せを味わっていたが、ひかりくんは私の突然の行動に驚きを隠せない様子だ。
無理もない。少し暴走し過ぎてしまったようだ。
「ごめん、イヤだったかな?」
「えっ、そんなっ! イヤだなんて! ちょっとびっくりしちゃっただけで……東京じゃ、普通のことなんですよね? 僕、田舎者だからわからなくてドキドキしちゃって……」
私がひかりくんのソースを舐め取ったことで顔を真っ赤にしてドキドキしてくれるなんて……私に好意を持ってくれているのは間違いないな。
ただ気になるのは、成瀬が言っていた言葉、
ひかりくんがかなり切羽詰まった状況に陥っているということと、それがセンシティブな内容だということ。それにより心が傷ついている状態だということ。
これを聞かないうちは何も動けない。
知らない間に私が彼を傷つけてしまったら困るからな。
ただ、今の私の行動はひかりくんを特別だと思っているが故のことだというのははっきり伝えておかなくては。
「普通じゃないよ。ひかりくんだからしたんだ。ひかりくんじゃなきゃ、あんなことしないよ。君が特別だからやったんだ」
真っ直ぐに見つめながら伝えると、ひかりくんは茫然と私を見つめたまま動かなかった。
それだけで大喜びしてくれるのが可愛い。
時間のある時にストックしておいた飴色玉ねぎを冷凍庫から取り出し、解凍してミンチ肉を入れたボウルに入れる。
牛乳に浸したパン粉と卵などを加え、クラッシュ氷と一緒に練るように混ぜていく。
氷が溶けるまで練り混ざったら肉ダネの完成だ。
イリゼホテルの缶詰スープシリーズのクラムチャウダーを取り出し、鍋で温めながらハンバーグを焼いていく。
一人でゆっくりワインを飲もうとバゲットを買っておいて正解だったな。
「美味しそう……」
いい匂いがしてきたから、いよいよお腹が空いてきたんだろう。
ひかりくんがフライパンを覗き込むように身を乗り出す。
フライパンの蓋を開けて、ふっくらといい感じで焦げ目のついたハンバーグを見せてやる。
「わぁー! こんなおっきなの初めてー!」
くっ、これはハンバーグに向けての言葉だ。
勘違いするな。
いつもならこんなバカな勘違いなんてしないのに、この子の言動にはすぐに心を乱される。
必死に冷静をよそおい、焼き上がったハンバーグをグリル野菜をのせた皿に盛り付ける。
さっとソースを作ってハンバーグにかけて出来上がりだ。
クラムチャウダーをカップに注ぎ、少し温め直したバゲットと一緒にハンバーグプレートをひかりくんに出してやると目を輝かせてくれた。
「そういえば、ひかりくんは成人しているんだったね」
「は、はい。先月二十歳になりました」
「それじゃあ食事をしながら少しお酒を飲もうか。飲める?」
「えっと……多分、少しなら……」
この感じだと弱いのかもしれない。もしくはまだ飲んだことはないのかも。
「それじゃあ弱いのを持ってこよう」
翌日も仕事がある日は軽めの酒にしているから、一応アルコール度数が低いものも我が家にはある。
その中でも一番飲みやすそうなものをチョイスして持ってきた。
さっとワインを開け、二人分のワイングラスを持ってひかりくんの元に戻った。
「せっかくだから乾杯しようか」
グラスを持たせて、そっとグラスを重ねる。
「ひかりくんと出会えた夜に、乾杯」
「かん、ぱい……」
ひかりくんはうっとりとした顔で私を見つめながら、グラスに口をつけた。
恐る恐ると言った様子で口に入っていく。
「あ、美味しい」
「良かった。これなら飲めそうだね」
量を飲ませなければ、酔っ払って眠ることはなさそうだ。
「ハンバーグも食べてみて」
「はい。いただきます!」
ひかりくんがナイフを入れると、ジュワッと肉汁が溢れ出す。
「わっ、わっ! すごい! 肉汁がジュワッって……!」
興奮しながら、嬉しそうにハンバーグを口に入れるひかりくんをみているだけで満足している自分がいる。
「んー! んーひぃー!」
私の作ったものをこんなにも美味しそうに食べてくれるなんて……
あっ!
ひかりくんの唇の端からソースが垂れるのをみた瞬間、身体が動いた。
手を伸ばし、指でひかりくんの唇に優しく触れる。
「えっ……」
「ソース、ついてたよ」
驚くひかりくんをみながら彼の唇に触れた指を自分の口に運び、舐め取った。
そのソースは今まで味わったことのないほど、極上の味に感じられた。
私は最高の幸せを味わっていたが、ひかりくんは私の突然の行動に驚きを隠せない様子だ。
無理もない。少し暴走し過ぎてしまったようだ。
「ごめん、イヤだったかな?」
「えっ、そんなっ! イヤだなんて! ちょっとびっくりしちゃっただけで……東京じゃ、普通のことなんですよね? 僕、田舎者だからわからなくてドキドキしちゃって……」
私がひかりくんのソースを舐め取ったことで顔を真っ赤にしてドキドキしてくれるなんて……私に好意を持ってくれているのは間違いないな。
ただ気になるのは、成瀬が言っていた言葉、
ひかりくんがかなり切羽詰まった状況に陥っているということと、それがセンシティブな内容だということ。それにより心が傷ついている状態だということ。
これを聞かないうちは何も動けない。
知らない間に私が彼を傷つけてしまったら困るからな。
ただ、今の私の行動はひかりくんを特別だと思っているが故のことだというのははっきり伝えておかなくては。
「普通じゃないよ。ひかりくんだからしたんだ。ひかりくんじゃなきゃ、あんなことしないよ。君が特別だからやったんだ」
真っ直ぐに見つめながら伝えると、ひかりくんは茫然と私を見つめたまま動かなかった。
あなたにおすすめの小説
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。