悠木さんちの王子と可愛い姫 〜寛人と空良が同級生だったら……

波木真帆

文字の大きさ
3 / 6

公園デビュー

しおりを挟む
「うちで引き取るとなったら、すぐに用意しなくちゃ!」

寛人の赤ちゃん服を購入している店のアプリから、新生児用の服を選ぶ。
可愛いものがいっぱいで悩んでしまう。
すぐに小さくなって着れなくなるとわかっていてもやっぱり着せたい欲のほうが上回ってしまった。

「寛海さん、これもいいかしら?」

「ああ。茜音が欲しいものを好きなだけ買うといい。私も空良が可愛い服を着ているところが見たいよ」

そんな優しい言葉をかけてくれる。
その言葉に甘えて、数十着の服を購入した。
もちろん、その中には少し大きくなってから着られるものも入っている。
お急ぎ便で注文すると二時間後には配達されると通知が来た。

おむつは寛人が新生児の頃使っていたものが余っていたからちょうどいい。
それがなくなる頃には追加も家に届く。
赤ちゃん用のシャンプーやボディーソープも追加しておかないと。

寛人の時はあまり動けなくて、ほとんど寛海さんが用意してくれた。
だから今回は自分が動けることが嬉しくてたまらない。

「とりあえず空良のお洋服が届くまで、寛人の服を着させておきましょう」

「じゃあ私は空良をお風呂に入れてくるよ」

汗もかいているし、おむつも綺麗にしてあげないとね。

私もお風呂に入れてあげたいけれど、正直に言ってお風呂に入れるのは寛海さんが上手なのよね。
大きな手のほうが安心感があるみたい。

「あぶーっ! あぶーっ!」

寛海さんが空良を連れてお風呂場に向かおうとすると寛人が大きな声をあげた。
空良がどこかに連れて行かれると思って心配なのかもしれない。

「大丈夫。お風呂に入るだけよ。寛人も一緒に見る?」

「だぁーっ!!」

なんだかそれが嬉しそうに見えて私は寛人を抱き上げて、お風呂場についていった。

ベビーバスに赤ちゃん用の入浴剤を入れる。
これを入れるとお風呂上がりの保湿クリームがいらないのよね。
それくらいしっとりさせてくれる優れもの。

寛海さんが脱衣所にあるベッドに空良を寝かせて服を脱がせる。
寛人は私の腕から身を乗り出すようにその様子を見ていた。

まだ生まれて一週間。
この頃は生まれてすぐよりも少し体重が減るんだって寛海さんが言っていた。
その言葉通り、空良は本当に小さくて痩せて見えた。
多分、すぐそばでぷくぷくの寛人を見ているからだろう。
このこも一ヶ月後にはぷくぷくになってくれるかと思うと成長が楽しみでたまらなくなる。

手慣れた手つきで空良を洗い終えると、フワッフワのバスタオルで包んであげて一緒にリビングに戻る。

寛人が新生児の頃着ていた服も空良には大きく感じられるけれど、それはそれで可愛い。

その間空良はずっとご機嫌だった。

「一緒のベッドに寝かせても大丈夫かしら?」

「そうだな。寛人、いいか?」

寛海さんが寛人に声をかけるとまるで「任せてよ!」とでも言いたげに笑顔を見せる。
その笑顔に安心して空良を寛人のベッドに寝かせると、ぐるりんとものすごい勢いで寝返りをして空良を覗き込む。

「空良がいたら寛人の成長が早まりそうね」

「ああ。そうだな。小さい子を守りたい意識は芽生えるだろうな」

人間の本能にそういうものがあるのかもしれない。
凌也くんが理央くんを抱きしめたりするのもそれだろう。

生まれたてのまだ小さな空良ともうすぐ六ヶ月の寛人。
半年でこうも変わるものかと驚いてしまうけれど、これからまた成長を見守れるのはいい。

「ねぇ、寛海さん。うちにもあの双子ちゃん用のベビーカーが欲しいわ」

「そうだな。まだ一ヶ月は外には連れ出せないから空良の外出デビューまでには用意しておこう」

寛人は縦型と横型のどちらを気にいるからしら?
気持ち的には寛人が空良を後ろから抱きしめて守るのが見てみたい。

そんなことを思っている間に、二人はいつの間にか眠っていた。

「なんだか二人のほうが楽みたい」

「そうだな。空良も隣に寛人がいるほうが安心しているみたいだ」

それからの日々は、本当に穏やかと言ってもいいくらい楽しい育児が始まった。
空良におっぱいをあげたり、おむつを替えている間、寛人はおとなしくしているし、二人とも夜泣きが全くなくて昼も夜もぐっすり寝てくれるから、私にも心の余裕がある。
年子よりも近い二人の育児なのに、こんなに楽でいいのかしらと思ってしまうほど。

楽しいままに空良も無事に一ヶ月検診を迎え、元気に育っているとお墨付きをもらえた。

「今日は家族で公園に散歩にでも行こうか」

「ええ。やっとあのベビーカーが使えるのね」

早く縦型を使いたいけれど、まだ首が座っていないから今日は横型。
空良を寝かせて、隣に寛人も寝かせる。

花が咲き乱れる外の景色に目を輝かせる空良の横で、寛人は空良にくっついたままただ空良だけを見つめていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

異世界転移したら獣人王子様から一途に溺愛される!?

わをん
BL
『異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?』チャプター025とエピローグのお話です♡

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

オメガのブルーノは第一王子様に愛されたくない

あさざきゆずき
BL
悪事を働く侯爵家に生まれてしまった。両親からスパイ活動を行うよう命じられてしまい、逆らうこともできない。僕は第一王子に接近したものの、騙している罪悪感でいっぱいだった。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男カナルは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 どうして男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へいく。 しかし、殿下は自分に触れることはなく、何か思いがあるようだった。 優しい二人の恋のお話です。

処理中です...