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番外編

俺たちのミッション2  <中編>

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いつも読んでいただきありがとうございます!
これは祐悟編のはずなんですが……このお話の関係上、かなり周平&敬介がでばってます(汗)
視点が途中で変わっていきます。
すみません……しかも長すぎて中編になっちゃいました。
後編には祐悟も登場するのでそちらをどうぞお楽しみに♡


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それから奴はあっという間に俺たちの話を信じて、明日にも1億円を用意すると言い出した。
本当に馬鹿みたいに引っかかる奴だ。
そのまま偽の契約書を交わし、明日指定の場所に金を持ってくるということで話がついた。

酒で気が大きくなっているのか、それとも金持ちになれるとテンションが上がっているのかはわからないが、こちらが聞いてもいないのに、××県にある藤乃くんのあの実家の誰にもわからない場所にこっそりと隠してあるという現金を今から取りに行ってくると言い出し、意気揚々と店を出ていった。
あの分なら、探偵のユウさんが後をついていっているのも気づいていないだろう。
まぁ忍者のように忍ぶのがうまいユウさんだから、たとえどんなに警戒していても気づかれることはないだろうけど。

「私たちも帰ろう」

奴を見送り周平さんにそう誘われて、俺たちは店を出た。

「あ、あの……今日は周平さんの家に泊まらせていただいてもいいですか?」

「――っ! もちろんだよ。もう遅いから1人で帰らせるのが心配だったんだ」

周平さんはそういうが早いか、あっという間にタクシーを止め俺を奥へと座らせ隣にさっと腰を下ろした。
まるで俺の気が変わるのを恐れているような、そんな余裕のなさに思わず可愛いと思ってしまった。

さっきまで奴相手に堂々としていた周平さんが、俺にだけこんなに余裕がなくなるなんて……。

俺はそんな周平さんがたまらなく愛おしくて、運転手に行き先を告げる周平さんの手をそっと握ると、ピクっと反応しながらも周平さんは俺の手を離そうとはしなかった。
何も言葉がなくしんと静まり返ったタクシーの中で、自分の鼓動だけがとてつもなくうるさく感じる。

ああ、このドキドキが指から伝わっていないといいんだけど……。

あっという間に周平さんのマンションの前にタクシーが止まり、俺はエスコートされるようにタクシーを降りた。

数日ぶりの周平さんのマンションだ。
今日はもしかしたら最後までするのかもしれない。

俺は今日何度目かかもわからないくらいに心臓をドキドキと震わせた。

部屋に入ると、湯を張るから入ってゆっくりするといいと声をかけられた。
着替えはすぐに用意できるからと言われて、俺はお言葉に甘えて風呂に入ることにした。
というのも、奴と同じ空間にいたままの格好で周平さんとイチャイチャする気にはなれなかったからだ。

きっと周平さんも同じ気持ちなんだろうと思った。
髪を洗っている最中にカタンと扉が開く音がした。
一瞬中に入ってきたらどうしよう……そんな思いが頭をよぎったけれど、周平さんは紳士だからそんなことするわけがない。
そう思った通り、周平さんは俺の着替えだけを置いてバスルームから出て行った。

それにホッとした反面、少しがっかりした。
やっぱりガツガツとはきてくれないんだろうか……。

俺が周平さんのモノを見て怖がったりしたから……優しい周平さんのことだからきっと、俺の方から行かない限り無理やりはしないだろうな。

でもどうしたらいいのかわからない……。

俺はシャワーを頭から浴びながらどうすればいいのか悩み続けていた。

遅くなっちゃったかなと思いつつ、リビングに戻ると周平さんがソファーに身体を横たえて眠っていた。
こんなところで眠るなんて、よっぽど疲れているんだろう。
部屋着に着替えたところで力尽きた感じだ。
お風呂にも入っていないし本当なら起こしたほうがいいんだろうけど起こすのはかわいそうに思えてしまう。

考えてみたら、俺と会うためだと言って2週間予定の仕事を1週間で終わらせて海外から帰ってきた上に、倉橋の頼みで夜はずっと出歩いているとくれば、疲れてないわけがない。

嫌な顔ひとつしないで頼みを引き受けてくれるから、周平さんに無理させてるなんて思いもしなかった。
本当はベッドで眠って欲しいけど、俺には寝室まで連れて行けそうもない。

俺はそっと寝室から掛け布団だけ持ってリビングに戻ると、周平さんに布団をかけ俺も周平さんの隣に潜り込んだ。
周平さんの濃い香りがする。
俺はその周平さんの匂いを纏ったまま寄り添って眠りについた。


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身体がぽかぽかと心地良い温もりに包まれたような気がして、私は目を覚ました。

どうやらソファーで眠ってしまっていたらしい。
ぼーっとしていた頭が少しずつクリアになって行ったと同時に敬介と一緒に帰ってきていたことを思い出した。

そういえば敬介は??
もしかして私が眠ったから帰ってしまったのでは??

慌てて起きあがろうとすると、隣に何かがいる気配を感じた。
いつの間にか掛けられていた布団を捲り上げると、敬介がいた。
私の身体にピッタリと寄り添うように。

ああ、さっき感じた温もりは敬介だったのか……。

家にまで連れ帰っておきながら、勝手に眠ってしまった私にこんなにも優しくしてくれる敬介にこの上ない愛おしさが募る。

敬介……君が私のそばにいてくれることがこんなにも幸せだなんて。

もう君のいない生活は考えられないな。

明日敬介が目覚めたら一緒に住もうと言ってみようか。
いや、今回のことが終わってからがいいか。

せっかくの2人の門出だ。
敬介の頭の中に私以外がいるのは許せないからな。

さっさと奴を終わらせて、敬介との未来を考えるとしよう。

そうと決まれば、敬介をこんなところで寝かせるわけにはいかない。

私はそっと敬介を抱き上げ寝室のベッドに寝かせた。

そして、奴の後をついていったユウからの連絡を確認して、倉橋くんに進捗状況を連絡しておいた。

明日さえ終われば……。
その思いを胸に私もまた敬介の隣で眠りについた。

翌日早々に目を覚ました私はさっとシャワーを浴び倉橋くんからの返信を確認すると、その場に倉橋くんも立ち会う旨が書かれていた。
私は確認のためにターゲットと会う時間と場所の地図を送り、準備を始めた。

私の家のクローゼットには随分前から敬介用の服も靴も何もかもが揃っている。
いつか敬介にきてもらえるときが来るかもしれないと買い揃えたものだったが、本当にそれが実現する日が来るとはな。
敬介に見せたらかなり驚いてはいたが、引かれずに済んでホッとした。
本当に優しい心の持ち主なんだ、敬介は。

昨日と同じ社長秘書のようなコーディネートに身を包んだ敬介は見惚れてしまうほど似合っている。
特にこの眼鏡は私の心を撃ち抜いた。
本当にこのまま私の秘書として雇いたいくらいだ。
そうしたら今よりも数倍も業績を上げることは確実なのだが。
まぁ、敬介には大事な仕事があるのだからそれを望むことはできないがな。

昨日と同じように私のコーディネートをしてくれた敬介はなぜかとても嬉しそうで楽しそうに髪をセットしてくれた。

「周平さん、今日もバッチリです」

「そうか。こうやっていつも敬介に身支度を整えてもらえたら幸せだろうな」

「えっ、それは……」

一瞬敬介の顔が強張ったことに私は気づいた。
朝から敬介と過ごせることが嬉しくてつい一緒に住みたいと隠していた気持ちが漏れ出てしまったのだが、敬介のあの表情を見ると、敬介はそれを望んでいないのかもしれない。

咄嗟に

「冗談だよ」

と気持ちを隠したが、私の心は晴れなかった。

今まで一人暮らしが長かったから、きっと人と一緒に住むことは考えてもいないのかもしれない。
もう少し私は敬介の気持ちを汲み取ってやらなければ。
私だけの思いで突き進んではダメだな。

  ✳︎    ✳︎    ✳︎

「こうやっていつも敬介に身支度を整えてもらえたら幸せだろうな」

周平さんから紡がれた言葉があまりにも嬉しすぎて、脳が意味を理解するまでに一瞬止まってしまった。
それって一緒に住みたいってこと?

今までずっと1人で気ままに生活していたけれど、周平さんとお付き合いを始めてからは部屋がなんとなく広く感じて寂しく思っていた。
自分がずっと住んでいた部屋なのにそんな感情になることが信じられなかった。

だから俺は周平さんと一緒に住めたら……なんて思い始めていたから、周平さんの言葉が嬉しかった。
でもすぐに『冗談だよ』と笑顔で取り消されて……俺には辛い冗談だった。

一瞬でも喜んだ自分が馬鹿みたいだと思った。

ああ、周平さんは俺のことをそこまで思ってはくれていないんだろうか……。
俺はあなたのうさぎになれたと思っていたのに……。
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