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番外編
ロレーヌ総帥への贈り物
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ロレーヌ総帥の自室はなんとも豪華な調度品に囲まれていたが、決して嫌味な感じはしない。
センスの良さが現れているのだろう。
ソファーに案内され腰を下ろすと、その座り心地の良さに驚かされる。
『飲み物でも?』
『いえ、お気になさらず。それよりもまずお礼をお伝えしなければ』
俺はフランスでのホテル滞在についての手配と支払い、そしてエッフェル塔での食事の手配と支払いについての礼を伝えた。
『クラハシ殿が愛しい伴侶を連れてフランスまで来てくださるのだから、フランスを代表して私がもてなすのは当然のことです。それなのにフランスを心から楽しんでいただけるように配慮したはずが、本日はご不快にさせてしまい申し訳ありません』
深々と頭を下げられる。俺一人なら大丈夫だと返すところだが、航と二葉さんも恐怖を味わわせてしまったから、これで終わらせるわけにはいかない。
『大丈夫と言いたいところだが、申し訳ないがそれはできない。私は奴への制裁とこれからの対処についてはっきりと聞いておきたい。それによってはロレーヌ総帥との関係も見直さなければいけないだろう』
俺がはっきりと告げたことで、俺の本気が伝わったのだろう。
ロレーヌ総帥は真剣な顔つきで、俺の質問に答えた。
『あの店についてはパリ警視庁より即刻営業停止命令を下しました。それによりあの店は我がロレーヌ家が買取り、新しい店を開店させる予定です。私の愛しいユヅルを連れて行ける安心で安全な店にすることをお約束します。オーナーについては奴を雇い入れた責任を取らせ、飲食店経営の権利を剥奪の上、パリ市内から退去させました。そして、奴についてはとある遊戯施設で一生働いてもらうことになりましたのでもう二度と出てくることはないでしょう』
とある遊戯施設……おそらくそれは俺が持っているものと同じような場所なのだろう。
ロレーヌ家が手を貸しているのか、それともその大元がロレーヌ家かはわからないが、ここまではっきりと言い切るのだから奴の顔をもう見ることはないだろう。奴をこの手で殴りたかったが、その汚れた手で航に触れるのも嫌だからこれでいいのかもしれない。
『そこまでしっかりやってくれたなら私からはいうことはありません。一つだけ注文をつけるとすれば、私の友人である磯山夫妻がこれ以上フランスで怖い目に遭わないようにしっかりと守ってほしい。それだけです』
『それはお任せください。もう二度と今日のようなことは起きません。ロレーヌ一族の名にかけて保証します』
世界のロレーヌ総帥の言葉だ。これでもう大丈夫だろう。
『それならその話はこれで終わりです。これからは友人として話をしましょう。フランスに来た記念にロレーヌ総帥にプレゼントを用意してきたんです』
『クラハシ殿が、私にプレゼントを?』
『ええ。これですよ』
俺は持ってきた小さな紙袋から二つの小瓶を取り出してテーブルに置いた。
『これは……?』
『どちらも私が開発した薬ですが、今はまだ世界中で私しか持っていない貴重なものです』
俺が開発した薬だと聞いてロレーヌ総帥がゴクリと息を呑む。
それほど俺が開発したものに興味があるということだ。
『左側の薬は、一瞬で火照りをとる薬です。どれだけ愛し合ってもこれを一錠飲ませるだけで瞬時に火照りを取ることができ、体力の回復も助けます。これなら愛しい伴侶の可愛い顔を誰にも見せずに済みますよ。もちろん効果は実証済みです。航も飲んでいますから安全も保証済みですよ』
『おおっ、なんと素晴らしい……っ』
愛しい伴侶の口に入れるものだ。どれだけ効果があっても安全でなければ手を出さないだろうからな。
『こんなに素晴らしい薬に、まだもう一つ贈り物をくださるのですか?』
『ええ。これはロレーヌ総帥のために開発したものです』
『私のために?』
『これは、一時的に酔っ払った状態を作り出す薬です。どれだけ酒に強くてもこれを一錠飲むだけでほろ酔い状態にしてくれます。ロレーヌ総帥自身が飲んで弓弦くんに介抱されるのもよし。弓弦くんに飲ませて酔っ払った可愛い姿を見るもよし。使い方はお好みでどうぞ』
航もだが、酒に弱い子は酔っ払うといつもとは違って積極的になり、自分から可愛い姿を惜しげもなく晒してくれると友人たちの会話からも何度も聞いていた。
ロレーヌ総帥からは、弓弦くんが父親であるニコラ・ロレーヌの遺伝により酒が強いらしいというのを聞いていた。
だから試しに作って、安慶名さんに頼んで砂川に試してもらった。
砂川がどんなふうになったかまでは聞いていないが、安慶名さんがご機嫌であれは素晴らしい薬だったと褒めてくれたのを見るとよほどいいことがあったらしい。
だからそれをロレーヌ総帥にも試して欲しくて持ってきたんだ。
気にいるだろうかと思ったが、ロレーヌ総帥の表情を見てすぐにわかった。
きっと今夜すぐにでも試しそうだと。
今夜はきっと楽しい夜になるだろうな。
センスの良さが現れているのだろう。
ソファーに案内され腰を下ろすと、その座り心地の良さに驚かされる。
『飲み物でも?』
『いえ、お気になさらず。それよりもまずお礼をお伝えしなければ』
俺はフランスでのホテル滞在についての手配と支払い、そしてエッフェル塔での食事の手配と支払いについての礼を伝えた。
『クラハシ殿が愛しい伴侶を連れてフランスまで来てくださるのだから、フランスを代表して私がもてなすのは当然のことです。それなのにフランスを心から楽しんでいただけるように配慮したはずが、本日はご不快にさせてしまい申し訳ありません』
深々と頭を下げられる。俺一人なら大丈夫だと返すところだが、航と二葉さんも恐怖を味わわせてしまったから、これで終わらせるわけにはいかない。
『大丈夫と言いたいところだが、申し訳ないがそれはできない。私は奴への制裁とこれからの対処についてはっきりと聞いておきたい。それによってはロレーヌ総帥との関係も見直さなければいけないだろう』
俺がはっきりと告げたことで、俺の本気が伝わったのだろう。
ロレーヌ総帥は真剣な顔つきで、俺の質問に答えた。
『あの店についてはパリ警視庁より即刻営業停止命令を下しました。それによりあの店は我がロレーヌ家が買取り、新しい店を開店させる予定です。私の愛しいユヅルを連れて行ける安心で安全な店にすることをお約束します。オーナーについては奴を雇い入れた責任を取らせ、飲食店経営の権利を剥奪の上、パリ市内から退去させました。そして、奴についてはとある遊戯施設で一生働いてもらうことになりましたのでもう二度と出てくることはないでしょう』
とある遊戯施設……おそらくそれは俺が持っているものと同じような場所なのだろう。
ロレーヌ家が手を貸しているのか、それともその大元がロレーヌ家かはわからないが、ここまではっきりと言い切るのだから奴の顔をもう見ることはないだろう。奴をこの手で殴りたかったが、その汚れた手で航に触れるのも嫌だからこれでいいのかもしれない。
『そこまでしっかりやってくれたなら私からはいうことはありません。一つだけ注文をつけるとすれば、私の友人である磯山夫妻がこれ以上フランスで怖い目に遭わないようにしっかりと守ってほしい。それだけです』
『それはお任せください。もう二度と今日のようなことは起きません。ロレーヌ一族の名にかけて保証します』
世界のロレーヌ総帥の言葉だ。これでもう大丈夫だろう。
『それならその話はこれで終わりです。これからは友人として話をしましょう。フランスに来た記念にロレーヌ総帥にプレゼントを用意してきたんです』
『クラハシ殿が、私にプレゼントを?』
『ええ。これですよ』
俺は持ってきた小さな紙袋から二つの小瓶を取り出してテーブルに置いた。
『これは……?』
『どちらも私が開発した薬ですが、今はまだ世界中で私しか持っていない貴重なものです』
俺が開発した薬だと聞いてロレーヌ総帥がゴクリと息を呑む。
それほど俺が開発したものに興味があるということだ。
『左側の薬は、一瞬で火照りをとる薬です。どれだけ愛し合ってもこれを一錠飲ませるだけで瞬時に火照りを取ることができ、体力の回復も助けます。これなら愛しい伴侶の可愛い顔を誰にも見せずに済みますよ。もちろん効果は実証済みです。航も飲んでいますから安全も保証済みですよ』
『おおっ、なんと素晴らしい……っ』
愛しい伴侶の口に入れるものだ。どれだけ効果があっても安全でなければ手を出さないだろうからな。
『こんなに素晴らしい薬に、まだもう一つ贈り物をくださるのですか?』
『ええ。これはロレーヌ総帥のために開発したものです』
『私のために?』
『これは、一時的に酔っ払った状態を作り出す薬です。どれだけ酒に強くてもこれを一錠飲むだけでほろ酔い状態にしてくれます。ロレーヌ総帥自身が飲んで弓弦くんに介抱されるのもよし。弓弦くんに飲ませて酔っ払った可愛い姿を見るもよし。使い方はお好みでどうぞ』
航もだが、酒に弱い子は酔っ払うといつもとは違って積極的になり、自分から可愛い姿を惜しげもなく晒してくれると友人たちの会話からも何度も聞いていた。
ロレーヌ総帥からは、弓弦くんが父親であるニコラ・ロレーヌの遺伝により酒が強いらしいというのを聞いていた。
だから試しに作って、安慶名さんに頼んで砂川に試してもらった。
砂川がどんなふうになったかまでは聞いていないが、安慶名さんがご機嫌であれは素晴らしい薬だったと褒めてくれたのを見るとよほどいいことがあったらしい。
だからそれをロレーヌ総帥にも試して欲しくて持ってきたんだ。
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きっと今夜すぐにでも試しそうだと。
今夜はきっと楽しい夜になるだろうな。
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