73 / 155
魅惑の贈り物
しおりを挟む
リオもソラもユヅルの選んだ、美しい色をしたブックカバーをいたく気に入った様子だ。
「これに本を入れたらどんな本でも自分だけの本だって気がして特別なものに思えそう!」
頬を高揚させ、そんなことを言ってくれるリオ。
自分だけの本か……。
それさえも叶えられない環境にいたのだろうな。
それだけに自分だけのものというのが、リオにとっては他の誰よりも深い意味を持つのだろう。
ケイトもシュウゴもユヅルが一生懸命選んでいたバッグをとても嬉しそうに見つめている。
本当に欲しいものだったと喜んでくれている様子にユヅルも嬉しそうだ。
ユヅルはプレゼントを選ぶということが初めてだったせいか、今回みんなへの贈り物を選ぶのにかなり悩んでいたが、みんなのこの反応を見てプレゼントを選ぶということの意味がわかったかもしれないな。
そんなことを考えていると、ユヅルの元にリュカとジョルジュがやってきた。
ああ、そういえばこの二人には揃いのコーヒーカップを選んだのだったな。
コーヒー好きのリュカなら喜ぶだろうと思っていたが、リュカの表情を見るとそれ以上の何かがあったように窺い知れる。
ジョルジュとの対になるカップが嬉しかったのかとも思ったが、理由はもっと深いものだったようだ。
リュカは両親を早くに亡くし祖母に育てられていたと話を聞いていたが、あのコーヒーカップはその昔、リュカがクリスマスプレゼントに祖母に贈ったコーヒーカップと同じ柄のものだったらしい。
しかもそれが対のもので、ジョルジュとの揃いのカップなら尚のこと、懐かしさに加えてかなり嬉しい贈り物になった子はーとだろう。
あのクリスマスマーケットに行きたいと望んだのはユヅル、そしてあのカップに目をつけたのもユヅル。
やはりユヅルには人を喜ばせる才能があるのかもしれない。
ミシェルやソラからも贈り物を貰い、残すはリオとケイトのみ。
そういえば、ミヅキがリオの贈り物について意味深なことを話していたな。
確か……考え方を変えさせた、と。
あの言葉の意味はどういうものだったのか……。
ようやく謎が解けるというわけか。
だが、当のリオは自分の選んだ贈り物に自信がないようだったが、ミヅキが声をかけてやると少し不安げにしながらもユヅルたちに配り始めた。
みんな同じような包装紙だから、きっと皆で揃いのものなのだろう。
だが、そんなに不安になるものなのか?
なぜか私の方がドキドキしながら、ユヅルが堤を開けるのを見ていると、中から柔らかくて暖かそうな手袋が出てきた。
これがどうしてそんなにも不安だったのか……んっ?
もしかして?
一瞬頭をよぎったが、それにしても上手すぎる。
そっとミヅキに視線を送れば、私だけにわかるように小さく頷いた。
なるほど、考え方を変えさせた……とはそういう意味だったのだな。
ユヅルもそれ以外の者たちもリオからの贈り物が手編みだと気づいている様子はない。
それくらい素晴らしい出来だということだ。
あの手袋が手編みだということに気づいたのはシュウゴだった。
この中にいる者の中で手編みに触れている者は彼くらいだろうからな。
それでも触れただけで気づくのは大したものだ。
リオ自身は手作りの物を贈り物にしたことをかなり不安がっていたようだが、贈り物は買ったものと決められているわけではない。
その人の思いが込められていれば既製品だろうが手作りだろうがどうでもいいのだ。
ミヅキは震えるリオのそばでユヅルたちに経緯を説明しているがその顔は実に嬉しそうなのがわかる。
リオの思いのこもった贈り物をユヅルたちが大喜びしてくれているのが嬉しくてたまらないのだろう。
あれだけの数を一人で編んだのならかなり大変だったはず。
ミヅキはそれを間近で見ているし、共に闘ってきたようなものだろうからな。
嬉しさに泣きじゃくるリオをユヅルたちが囲んでいると、ケイトが最後は自分のプレゼントを渡すよと声をあげていた。
さて、プレゼント交換をしたいと提案したというケイトからの贈り物は一体なんだろうな。
些か興味があるなと思っていると、
「あっ、直己さん! 僕からのプレゼントは僕たちだけでみたいから、しばらくみんなであっちに行っててください」
とアヤシロに声をかけていた。
私たちに見せられないものということか?
着ぐるみといい、さっきの演奏会でのあの衣装といい、ケイトが選ぶものはかなり奇抜なものが多いが今回もその類なのか?
いや、クリスマスプレゼントにまさかそれはな……。
気になりつつもアヤシロに離れた場所でワインでも飲もうと言われ、私たちは離れたソファー席に移動した。
ワインセラーからヴィンテージのロマネコンティを持って来させ、皆で味わいながらユヅルたちの動向に気を配る。
「アヤシロ、ケイトからの贈り物は一体なんなんだ?」
「悪い。実は俺も知らないんだ。七海……俺の妹とかなり盛り上がって決めていたからな。洋服だと聞いているがどんなものかまでは……」
「そうなのか。気になるな」
そんな話をしながらユヅルを見ていると、ケイトから受け取った贈り物を開け、中から布のような物を取り出しているのが見える。
んっ? あれは?
自分の視力をいかんなく発揮して見つめると、
「な――っ!!!」
私の目に飛び込んできたのは、なんとも情欲的でエロティックな下着。
それをユヅルが胸に当てているという衝撃的なシーンに思わず声が出た。
私の声が聞こえたのか、ユヅルがパッとこちらを見たから何も見ていないそぶりをしたのだがどうやら気付かれなかったようでホッとした。
それにしてもなんという下着をユヅルに……。
というかユヅルだけでなく、皆お揃いのようだ。
「アヤシロ、あれは……」
「悪い。結婚式を挙げたときに初夜で佳都が着てくれたのを大喜びしたものだから、きっとそれで選んだんだろう。ほら、ロレーヌたちは明日結婚式だろう?」
「なるほど……。ということはあれを明日ユヅルが? くっ――!!」
想像しただけで鼻血が出そうだ。
見ると、ミヅキもユウキも茫然としているから明日のことを考えているのだろう。
明日、ただでさえユヅルの美しいドレス姿で昂りそうなのに、その上あの下着を着て誘ってくれるとしたら……もう抑えられる自信がないな。
まぁ一生に一度の結婚式の夜なのだからそれくらい許してくれるだろう。
「これに本を入れたらどんな本でも自分だけの本だって気がして特別なものに思えそう!」
頬を高揚させ、そんなことを言ってくれるリオ。
自分だけの本か……。
それさえも叶えられない環境にいたのだろうな。
それだけに自分だけのものというのが、リオにとっては他の誰よりも深い意味を持つのだろう。
ケイトもシュウゴもユヅルが一生懸命選んでいたバッグをとても嬉しそうに見つめている。
本当に欲しいものだったと喜んでくれている様子にユヅルも嬉しそうだ。
ユヅルはプレゼントを選ぶということが初めてだったせいか、今回みんなへの贈り物を選ぶのにかなり悩んでいたが、みんなのこの反応を見てプレゼントを選ぶということの意味がわかったかもしれないな。
そんなことを考えていると、ユヅルの元にリュカとジョルジュがやってきた。
ああ、そういえばこの二人には揃いのコーヒーカップを選んだのだったな。
コーヒー好きのリュカなら喜ぶだろうと思っていたが、リュカの表情を見るとそれ以上の何かがあったように窺い知れる。
ジョルジュとの対になるカップが嬉しかったのかとも思ったが、理由はもっと深いものだったようだ。
リュカは両親を早くに亡くし祖母に育てられていたと話を聞いていたが、あのコーヒーカップはその昔、リュカがクリスマスプレゼントに祖母に贈ったコーヒーカップと同じ柄のものだったらしい。
しかもそれが対のもので、ジョルジュとの揃いのカップなら尚のこと、懐かしさに加えてかなり嬉しい贈り物になった子はーとだろう。
あのクリスマスマーケットに行きたいと望んだのはユヅル、そしてあのカップに目をつけたのもユヅル。
やはりユヅルには人を喜ばせる才能があるのかもしれない。
ミシェルやソラからも贈り物を貰い、残すはリオとケイトのみ。
そういえば、ミヅキがリオの贈り物について意味深なことを話していたな。
確か……考え方を変えさせた、と。
あの言葉の意味はどういうものだったのか……。
ようやく謎が解けるというわけか。
だが、当のリオは自分の選んだ贈り物に自信がないようだったが、ミヅキが声をかけてやると少し不安げにしながらもユヅルたちに配り始めた。
みんな同じような包装紙だから、きっと皆で揃いのものなのだろう。
だが、そんなに不安になるものなのか?
なぜか私の方がドキドキしながら、ユヅルが堤を開けるのを見ていると、中から柔らかくて暖かそうな手袋が出てきた。
これがどうしてそんなにも不安だったのか……んっ?
もしかして?
一瞬頭をよぎったが、それにしても上手すぎる。
そっとミヅキに視線を送れば、私だけにわかるように小さく頷いた。
なるほど、考え方を変えさせた……とはそういう意味だったのだな。
ユヅルもそれ以外の者たちもリオからの贈り物が手編みだと気づいている様子はない。
それくらい素晴らしい出来だということだ。
あの手袋が手編みだということに気づいたのはシュウゴだった。
この中にいる者の中で手編みに触れている者は彼くらいだろうからな。
それでも触れただけで気づくのは大したものだ。
リオ自身は手作りの物を贈り物にしたことをかなり不安がっていたようだが、贈り物は買ったものと決められているわけではない。
その人の思いが込められていれば既製品だろうが手作りだろうがどうでもいいのだ。
ミヅキは震えるリオのそばでユヅルたちに経緯を説明しているがその顔は実に嬉しそうなのがわかる。
リオの思いのこもった贈り物をユヅルたちが大喜びしてくれているのが嬉しくてたまらないのだろう。
あれだけの数を一人で編んだのならかなり大変だったはず。
ミヅキはそれを間近で見ているし、共に闘ってきたようなものだろうからな。
嬉しさに泣きじゃくるリオをユヅルたちが囲んでいると、ケイトが最後は自分のプレゼントを渡すよと声をあげていた。
さて、プレゼント交換をしたいと提案したというケイトからの贈り物は一体なんだろうな。
些か興味があるなと思っていると、
「あっ、直己さん! 僕からのプレゼントは僕たちだけでみたいから、しばらくみんなであっちに行っててください」
とアヤシロに声をかけていた。
私たちに見せられないものということか?
着ぐるみといい、さっきの演奏会でのあの衣装といい、ケイトが選ぶものはかなり奇抜なものが多いが今回もその類なのか?
いや、クリスマスプレゼントにまさかそれはな……。
気になりつつもアヤシロに離れた場所でワインでも飲もうと言われ、私たちは離れたソファー席に移動した。
ワインセラーからヴィンテージのロマネコンティを持って来させ、皆で味わいながらユヅルたちの動向に気を配る。
「アヤシロ、ケイトからの贈り物は一体なんなんだ?」
「悪い。実は俺も知らないんだ。七海……俺の妹とかなり盛り上がって決めていたからな。洋服だと聞いているがどんなものかまでは……」
「そうなのか。気になるな」
そんな話をしながらユヅルを見ていると、ケイトから受け取った贈り物を開け、中から布のような物を取り出しているのが見える。
んっ? あれは?
自分の視力をいかんなく発揮して見つめると、
「な――っ!!!」
私の目に飛び込んできたのは、なんとも情欲的でエロティックな下着。
それをユヅルが胸に当てているという衝撃的なシーンに思わず声が出た。
私の声が聞こえたのか、ユヅルがパッとこちらを見たから何も見ていないそぶりをしたのだがどうやら気付かれなかったようでホッとした。
それにしてもなんという下着をユヅルに……。
というかユヅルだけでなく、皆お揃いのようだ。
「アヤシロ、あれは……」
「悪い。結婚式を挙げたときに初夜で佳都が着てくれたのを大喜びしたものだから、きっとそれで選んだんだろう。ほら、ロレーヌたちは明日結婚式だろう?」
「なるほど……。ということはあれを明日ユヅルが? くっ――!!」
想像しただけで鼻血が出そうだ。
見ると、ミヅキもユウキも茫然としているから明日のことを考えているのだろう。
明日、ただでさえユヅルの美しいドレス姿で昂りそうなのに、その上あの下着を着て誘ってくれるとしたら……もう抑えられる自信がないな。
まぁ一生に一度の結婚式の夜なのだからそれくらい許してくれるだろう。
応援ありがとうございます!
36
お気に入りに追加
1,579
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる