大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

文字の大きさ
151 / 177

ユヅルの会いたい人

しおりを挟む
「ユヅル! 会いたい人って誰だ?」

私が突然大声をあげながら寄ってきて、ユヅルは驚いていたがそんなこと構っていられない。
なんと言ってもユヅルの会いたい人だ。

これは私にも知る権利がある。

ユヅルが会いたい人とは一体誰だ?
あの祖父母?
いや、まさかな。
でも優しいユヅルのことだ。
もしかしてということもあり得る。
だが、奴らの件はもうミヅキが動いてくれて、ユヅルとは会えないようになっているから無理だろう。

ならば地元の……ああっ!!

もしかして奴か?
ユヅルが地元を離れるときに家まで押しかけてきたあの男。
車に駆け寄ってきて叫んでいたが、完全防音の車内には全く聞こえていなかったが。

まさかあの男に会いたいとでもいうのだろうか。
ユヅルが私を裏切るとは思っていない。
ただ幸せな姿を見せたいと思ってくれているのかもしれない。

それなら、私はユヅルとともに行動すればいい。

ああ、そうだな。
こんなことでオロオロしている場合じゃない。

私は一生ユヅルを手放す気などないのだから。

私の中の思いが込み上げて勢いのままにユヅルに声をかけ続けていると、

「エヴァンさま。少し落ち着いてください。ユヅルさまがお話ししたくてもできませんよ」

とセルジュの声が耳に入ってきて、はっと我に返る。

目の前には茫然と私を見つめるユヅルの姿があった。

慌てて謝ると、ユヅルは優しい声で許してくれた。
ああ、本当に優しい子だ。

もう、誰だと言われても取り乱さないようにしよう。
ユヅルは私を思ってくれているのだから。

「それで、弓弦くんの会いたい人って、誰? 誰?」

興味津々なケイトの声に、ユヅルは少し照れながらゆっくりと口を開いた。

「えっと、あ、あの……僕、秀吾さんの……お母さんに会いたいなって……」

思いもかけない言葉に、私だけでなく当のシュウゴも驚きの声をあげた。

どうやら、ユヅルはクリスマスプレゼントでシュウゴからもらった、あのニコラとアマネの映像を撮ってくれたというシュウゴの母にお礼が言いたいと思っていたようだ。
そして、その時の様子も聞けたらという思いもあったのだそうだ。

ああ、本当にユヅルは……。

私が抱いていたよからぬ妄想など恥ずかしくなるほどに、純粋で素直で心の清らかな子なのだな。

シュウゴはそんなことを言われて茫然としていたが、やっぱり無理ですよねというユヅルの言葉に思いっきり否定して、ユヅルの手をギュッと握った。

「僕嬉しいんだ。弓弦くんに会えるなんて聞いたら、母も大喜びだよ! ねぇ、将臣」

といつになく興奮した様子でスオウにも声をかけると、

「ああ、お義母さんなら弓弦くんと会えるって聞いたら張り切ってそうだな。というか、話を出した日から<いつ会えるの?>って聞いてきそう」

と同調する。
本当にこの二人は息もぴったりだ。

「ぜひ、うちの母に会ってあげて」

そう笑顔で言われて、ユヅルも嬉しそうだ。
ああ、これは絶対に日本に連れて行かなくてはいけないな。

「ねぇねぇ。じゃあ日本に来たら、お母さんたちと会う日を作るっていうのはどう?」

そんなケイトの提案にリオも同意する。
ユヅルもクリスマスプレゼントのお礼が言いたいから会いたいと言っているし、もうこれは計画ではなく、決定事項だろう。

ユヅルが幸せならそれでいい。
私はユヅルに絶対に日本に連れていって、ユヅルの会いたい人全員に合わせようと約束をすると、ユヅルはほんの少し涙を浮かべて喜んでいた。


それからしばらくユヅルたちが日本行きの話で盛り上がっているのを聞いていると、不意に

「おっ、やっと来たか」

というアヤシロの声が聞こえ、条件反射のように入り口に視線を向けた。

そこには艶々とした表情で幸せオーラを振り撒くユウキが当然のようにソラを抱きかかえて立っていた。

まだ時間的にはそこまで遅くはない。
ただみんなが集まるのが早かっただけだ。
それを考えたらユウキも頑張ったのだろう。
少し手加減が足りなかったようだがな。

腕の中のソラがうとうとしているのがその証だろう。

眠っているソラをユウキが起こそうと声をかけると、

「う、ん……ちゅーしたら、おき、れる……」

いつものソラの声とは違う、甘く掠れた色っぽい声が聞こえてきた。
どう聞いたって、情事を想像させるような声に一瞬ドキッとしていると、

「空良くん、風邪ひいちゃったの? 大丈夫?」

と無邪気なリオの声が響いた。

ユウキは慌てて、

「大丈夫、すぐに治るよ」

と答えていたが、それはそうだろう。
風邪ではないのだから。
だが、リオの無邪気な発言で安心したことだろう。
まぁこの中にいるもので、リオのように風邪だと思ったのは、ユヅルくらいのものだろうが。

そこは深く掘り下げないでおくとするか。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

処理中です...